(砂沙美の航海日誌「第十二話」)

ここはフクベ提督の部屋

この部屋には、部屋のヌシのフクベ・ジン提督と
二人のお客さん、カワイ・アキト、ササミの兄妹がいて、フクベ提督の話を聞いていた
あの日の事を、フクベ提督が第一次火星会戦の指揮をとっていた時の話を・・・淡々とありのままに

あ、この話は前回のフクベ提督が第一次火星会戦の事をササミに告白したその日の夜のことです
ササミに告白しておいてアキトに黙っているなどと、話の流れ的に出来るモノでもないですし
仲介役(?)のササミが落ち着いたあと、何よりもフクベ提督の希望で実現したようだ
本当なら、フクベはアキトと二人きりで話すので良かったのであるが、ササミはそれに不安を感じてこの場に同席しているのだった


『アキト兄ちゃんは、フクベのお爺ちゃんの事をどう思うのだろうか?』と


黙ってフクベ提督の話を聞いていたアキト君だが、どうやら話を聞き終わったようだ
アキトは静かに立ち上がりフクベ提督に詰め寄った



「・・・話はよくわかったよ・・・あんたがあの時の指揮をとっていたって・・・・・・」



口調は静かだが、普段はおとなしいアキトには珍しくはっきりと怒気が含まれていた



・・・あんたのせいで! あんたのせいで火星のみんなは!!



あの時、フクベがチューリップを落とさなければ・・・みんなは、アイちゃんは!!
アキトはそのままフクベ提督に掴みかかろうとして・・・



!?、・・・邪魔するな砂沙美!! そこをどけ!!!!



フクベとアキトの間に入ってアキトの行動の邪魔をしたのはササミだった
ササミは何も言わず、フクベ提督をかばいながら、黙って首を振るだけだった

ただ、悲しそうな目で兄を見て



砂沙美・・・どうしてそいつをかばうんだ!!

 火星のみんなやアイちゃんだってそいつのせいで・・・・・・




でも、ササミはどかなかった・・・どいたら兄がどうするのかわかっていたから


「ササミはどかない・・・ううんどけないよ、だって、もしどいたらお兄ちゃん、お爺ちゃんの事をどうするつもりなの・・・」


そのササミの行動に、アキトの握りこぶしは行き場を失い、ただ怒りに震えるだけだった
兄と妹はその場でにらみ合い・・・
というか、ササミの方は悲しそうな、それでいて強い意思を感じさせる瞳でアキトの事を見つめ返していただけなのだが

ほんの僅かの間だが、二人には長く感じられる沈黙の時間が流れた



「お兄ちゃんの言いたいことも気持ちもササミにはわかるよ・・・

 だけど、だからってお爺ちゃんの事殴ったって何にもならないよ

 お爺ちゃんだっていっぱい苦しんだしいっぱい後悔したんだよ・・・

 それに、・・・ササミはそんな事するお兄ちゃんは見たくないよ」



沈黙を先に破ったのはササミだった・・・それがササミの意思表示
たとえお兄ちゃんに何と思われようとも、こういう時のササミは頑固でてこでも動かないだろう



「・・・・・・わかったよササミ、もう何もしないよ

 だけど僕はそいつがやった事は許さないし忘れない、それだけは覚えていてくれ!!」



アキトはそう言い捨ててフクベの部屋を出た
そう言いながらも、まだ怒りが収まらないのだろうか?
その後姿も、握ったままの拳も、小刻みに震えていたようだが・・・・・・







「すまなかったね、ササミちゃん・・・

 私なんかのために、お兄さんと気まずい思いをさせてしまって・・・私などあのまま殴られても良かったのだが」



そう言ったのはフクベ提督
さすがに自分なんかのために、ササミちゃんがお兄さんと気まずくなるのは本意ではないのだろう



「ううん、そんな事ないよ・・・今は無理でも、そのうちお兄ちゃんもわかってくれるよ・・・・・・」



そう言いつつも、ササミの表情は浮かないもののようだ
自分でもわかっている、お人よしにも程があると
お兄ちゃんの事を怒らせちゃったかな・・・お兄ちゃんに嫌われただろうか
だけど、それでもササミはこうしていただろう・・・たとえそうだとわかっていても



そんな訳で、なぜか三話にわたってしまった(苦笑)フクベ提督の話、どうにかようやくシメです。
これだけ間延びしてしまったのは、僕の構成力の無さのせいですね・・・すみません
でも、色々人間関係など波紋を残したけれど、この後どうなるのでしょうね?











機動戦艦ナデシコ

砂沙美の航海日誌



〜第十二話「兄妹の絆と幼馴染と・・・」〜



By 三平









ササミとわかれた後もアキトは不機嫌だった・・・



『ササミのやつ、なんだってあんなヤツの事なんか!! ササミだってわかっているハズなのに!!!』



もちろん、くどい様だがあの日の事とは、ユートピアコロニーの地下シェルターでの事である
忘れるはずがない・・・もちろんアイちゃんの事も

それでも、フクベの事をかばうのは、むしろササミらしいとも思う
そう、アキトは妹が、ササミがあの行動をしたのは理解できているのだ
だけど、なぜだか感情がそれを許せないでいたのだ
・・・ササミがアキトとは違う自分の答えを出した事を



『・・・・・・ササミは小さな子供の頃からずっと一緒だった、いつもずっと僕の後をついて来ていたっけ・・・だけど・・・』



そのいつもアキトの後をついて来ていた小さな妹は、何時の間にやら成長していた
単に身体が大きくなったと言うだけではなく、その心も・・・自分で考えて、自分で行動して・・・・・・
ササミはまだまだ子供だけれども、大人への階段を確実に登っていってるのだろう

でも、なぜだかアキトはその事が、面白くなかった・・・本当なら喜ぶべき事なのに

もしかしたら、アキトは薄々気が付いたのかもしれない
成長した妹は、いつか自分の元をはなれるかもしれない、という事を
いつかササミは自分の手の届かない所にでも行ってしまうのだろうか・・・
理由はわからないけれど、ふと、そんな事考えてアキトは戸惑いを感じていた



『はあ〜〜っ』アキトくんおもわずため息がでたようだ



この兄妹は、妹の方は、ササミはたしかにお兄ちゃん子で甘えんぼさんである
だけど、アキト自身自覚はないが、彼もまた妹に、ササミに甘えている所があり・・・

だから、まあ、なんだ・・・アキトはササミと気まずくなった事などにもより面白くない、と感じているのだろう
(なんと言うか・・・男はいくつになっても甘えんぼさんなんだという事ですかね)









「こんな所にいたんだアキト!!、捜したんだよアキト!
 ねえアキトったらお話しようよねえ、アキトアキトアキト・・・」




突然!!、アキトに奇襲攻撃(?)をかけてきたのは、ナデシコ艦長のミスマル・ユリカさん(20)でありました(笑)
いきなりの超音波ボイス(爆)でアキト君意識が朦朧としかけているようです(汗)



「・・・・・・ま、またか・・・何を考えてるんだ一体・・・」



またか・・・とはどういう事でしょうか?
では、時間を巻き戻して見て見ましょうか





それは、その日の午後の事・・・アキトがイツキと待ち合わせてトレーニングルームにいた時の事である
(ちなみに、ササミがフクベ提督の部屋にいて会話していたのも、ちょうどこの頃でしょうか)

あ、でも本題に入る前に
この二人がやっている訓練は、トレーニングルームでは筋力トレーニングなどの体力づくりや格闘訓練
シュミレーターではエステバリスの操縦訓練
あと、無重力室で無重力状態に慣れる訓練などをやったりしているようです
その結果がどうでるかは、まだ少し先の事ではありますが、さてどうなりますやら



それはともかく、この所アキトとイツキは傍から見るといい雰囲気であるように見えるらしい
まあ、実際いい雰囲気のようですけどね


「アキトさんって何かの格闘の技も習っていたんですね、筋もいいみたいですけど誰かに教わったのですか?」


「それほどの事じゃないよ・・・ギンジ父さんに少しだけ習っていた事なんだけど、本当に少しかじった程度だし」


いつの間にかイツキさんがアキトを呼ぶ呼び名は、『カワイさん』から『アキトさん』に変化しているみたいですね
ニュアンスも随分親しげのようですし
対するアキトのほうも照れくさそうではありますが、まんざらでもない様子・・・ところでギンジさんに習っていたのって、一体何なんでしょうね?


と、そこへ・・・・・・



「アキト〜〜ッ!! アキトアキトアキト、アキトってば!!」



第一撃、ユリカのボイスアタックの直撃を受けたアキトとイツキは、この時ダメージを受けて一時停止したようだ(苦笑)
かつて、コウイチロウパパのボイスアタック(サリーちゃんのパパ砲)の洗礼を受けたブリッジ要員たちならばともかく
その時食堂にいたアキトも、あとから加わったイツキも、この時初体験であり、まったく免疫がなかったようであります



「懐かしいなあ、やっぱりアキトだったんだ
 アキトったらどうして今まで黙っていたの?
 言ってくれなかったの?
 ううん、言わなくてもわかってる、
 アキトは相変わらず照れ屋さんだね・・・」




さらに追い討ち・・・この時の二人のダメージはいかほどでありましょうか(笑)







少し時間が経過して、どうやら落ち着いて来たようです

「・・・一体いきなりなんなんですか!! 艦長!!


いきなりアレである・・・そう言うアキト君の声にもさすがに少しばかり怒気が含まれていた・・・のだが


「もう、アキトったら艦長だなんてそんなの他人行儀だよ、・・・昔みたいにユリカって呼んでほしいな、ねっ、アキト」


そう言って、しっかり激しくアキトに抱きつく艦長ユリカ
アキトはあまりにとーとつな展開にあたふたしていた、冷静さも欠いていたかも


「だーっ、一体突然何がどうしてこうなるんだ!!?」


少なくともこの方、昨日までは多少ノー天気な所はあっても、艦長としてわりとしっかりしている・・・ように見えたのだが
何が何だかわからないが、突然態度が豹変して、こんなふうに言い寄ってきたのである・・・印象が変わったかも?


アキトでなくとも引くわなそりゃ(汗)


「・・・ふ〜ん、ユリカ先輩とは随分親しそうなんですねアキトさん、これって一体どういう事なんですか?」


イツキはそう言ってジト目でアキト達の事見ていたりして・・・・・・
いきなりユリカがアキトに抱きついてきて熱い抱擁(?)をしているのである・・・傍から見るとねえ(滝汗)
アキトも改めて自分の置かれている状況に気が付いたようだ
柔らかな二つの膨らみが身体に押し当てられていて・・・じゃあなくて(苦笑)


「ちがうっ、イツキさん、これはそんなんじゃなくって・・・」 アキト君さすがにあせっているようですね


「照れる事なんてなーんもないよ。わかってる、アキトは私の王子様だって」



「「!!はい?、王子様!!?」」



さすがに、アキトとイツキの呆れたような声がハモっちゃったようで(苦笑)







「それで艦長、いきなり僕に抱きついてきたり、僕の事を王子様呼ばわりしたり、どういう事なんですか?」


ようやくユリカの事を引き剥がす事ができたアキトが事情説明を求めたようだ、艦長の部分を強調しているのが何とも言えないが
なお、再び飛び掛られないように警戒を怠ってないのは言うまでもない(笑)


「アキトったら相変わらず照れ屋さんだね、火星でお隣だったユリカだよ、火星じゃいつも一緒だったじゃない」


「火星?、お隣?・・・」そう言われて考え込むアキト、何か引っかかるような・・・・・・・・・あっ!!(何かを思い出したらしい)



「ユリカ!!、ユリカってあのミスマルユリカかあ!!?」



「やっぱり覚えていてくれたんだねアキト、ユリカもう感激」



そう、思い出した、思い出したけれど・・・・・・
感激しているユリカとは対照的に、アキトは表情を引きつらせ困惑していた

どうして今になってユリカとこんな形で再会せにゃならんのだ?・・・あのトラブルメーカーと

僕は何か悪い事でもしたのでしょうか? 誰でもいいから教えてプリーズ

どうやらアキト君、幼馴染との再会(?)を素直には喜んではいないようです



その様子に、アキトとは別にイツキも困惑していた


『アキトさんとユリカ先輩が子供の頃の知り合い? 幼馴染?』


どうやら、ハイテンションなユリカ先輩に対し、アキトさんの方は再会をそれほど喜んではいないようで
その点では少しだけホッとできる材料だが・・・
だけどイツキは、それでもユリカがアキトに馴れ馴れしくしているのを見ているのはすごくイヤだった



・・・そうか、私はたとえそれがユリカ先輩だろうと誰だろうと、アキトさんの側に別の女性が来るのがイヤなんだ
だって、私は・・・!!あっ、そうか、私はアキトさんの事が・・・・・・だから・・・


イツキは自分の心の中で、密かに育てていたその気持ちに気が付いてしまったようである
いずれにせよ、この事がきっかけで、イツキはこの時からアキトに対する接し方が変化する事になるのであった

より、積極的な方向へと・・・・・・



(それまで二人は自然体で接していたのですけどね・・・ユリカさんのおかげでパワーバランスがくずれたようです)





そして、アキトは知る由もないが、この日を境にそれまでの平穏無事(?)な日常が終わり
お約束といえばお約束な、女難の日々がはじまったのであった(爆)


『さだめじゃ』とでも言ってあげたくなったりして(合掌)









さて、場面と時間が移動して、ここはナデシコ艦内の大浴場、それも女湯だったりする
だからどうなんだ?、と言われたら困っちゃいますけどね(苦笑)
読者の皆さんが期待するようなシーンはありませんので(今の所は、ですが)



「へえ〜っ、けっこう大きいんだねここ」



その大浴場に入ってきたのはカワイ・ササミちゃん、どうやらここは初めてのようだ
と、言うのも、いつもはリョウオウキことリョーちゃんがいる関係で、自分の部屋にあるユニットバス使っているのだが
今日は少しばかり精神的に落ち込むような事があったので、たまには気分転換に大きな風呂に入りたくなったようだ
(まあ、女の子の気分転換と言えば、食べる事とかお風呂とか、そういうものもあるようであるし)
今は結構時間が遅いので、誰も来ていなくてここは貸切状態のようである



「はあ〜〜っ、いい湯だね、リョウちゃ・・・・・・」


そう言いかけてササミは苦笑した。
さっきも書いたが、リョウちゃんをここに連れてくる訳にはいかないので部屋に置いて来たのである
改めてその事に気づき、ササミは少し残念な気分になったようだ
もっとも、当のリョウオウキは他の事ならばともかく、お風呂に入るのはいやがるようであり
今回も、ササミが風呂に入る準備をしていると察して、リョウちゃんの方でさっと姿を隠したようでありますが・・・
(お風呂以外は勇敢なんですけどね、リョウオウキは・・・あれ、どっかで聞いたような表現だなあ、笑)



何にせよササミちゃん、髪や身体を洗い終わったあとは風呂につかっているようだ
広いお風呂で手足を伸ばしてゆっくりと、リラックスしていて気分も良さそうである。



「あら、ササミちゃんもお風呂入ってたんだ、珍しいわね?」



「どえええっ!!、・・・みっ、ミナトお姉ちゃん、何時の間に!?」



ササミちゃん、ミナトさんが入ってきた事に気が付かなかったようです。
まあ、くつろいでいたのはいいけれど、思い切り気を抜いてましたからねえ
ミナトさん、そんなササミの様子に苦笑してます



「ササミちゃん、気持ちよさそうにうとうとしてたから、
 お仕事で疲れが溜まっているんだろうけど、お風呂で寝ちゃったら危ないわよ」



「あはははは・・・、メンゴメンゴ、ササミとっても疲れちゃってたから・・・・・・」



まあ、公共の(?)お風呂でありますから、時間が遅くても誰かと鉢合わせる事もありでしょう
ただ、ササミにとって裸に近いこの状況で、ミナトさんと二人きりというこのシュチュエーションは・・・



『うー、やっぱり自信なくしちゃうよねえ・・・・・・はあ〜っ』



健全な男の子ならば、思わず目が釘付けになってしまうようなミナトさんのナイスバディであるが
自分のと見比べて・・・・・・ササミのコンプレックスも、思わず刺激してしまっているようだ(苦笑)
何にどうコンプレックス抱いているのかは・・・・・・まあ、おいておくとして、そのせいでため息も出るようだ
(もっとも、ルリあたりとはちがってササミの場合、将来的には解消されるものなのですけどね、今は知る由もないが)



「ササミちゃんと一緒にお風呂に入るなんて、初めてじゃないかしら?」


「うん、初めてだよ・・・だってササミがこのお風呂に入るのは今日が初めてだもん」


そう言って、普段はリョウちゃんがいるからユニットバスを使っている事とか話しはじめ
気が付けば、いつの間にかササミとミナトは、他愛もない日常会話に花をさかせているのであった
まあ、女性はお風呂とかお話とか好きだしね・・・・・・のぼせなければいいのですけどね


「ああそうそう、今日わかった事だけど、ササミちゃんのお兄さん艦長と幼馴染だったんだって知っていた?」


「ええっ、そうだったの? ササミそんな事知らなかったよ」


ブリッジでその話題でてましたからね・・・なぜかハーリー君がその事知っていたりしていたけれど



「あら、また誰か来たみたいね、誰かしら?」


ミナトのその言葉に、ササミは思わず入り口の方を見やった
すりガラスの向こうにいる人は誰だろう?
メグミお姉ちゃんくらいならいいんだけど・・・などと思わず酷い事考えていると



『え、か、艦長?』



それは、ナデシコ艦長のミスマル・ユリカさんであった・・・噂をすればなんとやらかな
それはともかく、おもわず密かに、ササミのコンプレックスを再び刺激してしまったようでありますが(苦笑)


『・・・そりゃあ、ササミはまだお子様だけどさあ・・・・・・』 って、おいおい


現在、現時点でのナデシコでナンバーワンとナンバーツーの二人がここに来ちゃったようですけどね
(何のナンバーワンとナンバーツーかは・・・説明するまでもなかろう)
ルリを除いて最小(?)であろうササミとしては・・・・・・



「どうしたの艦長、めずらしく元気がないみたいだけど?」



ミナトさんがそう言うのを聞いてササミもふと気が付く・・・確かに艦長は元気がないように見える
ササミの目には、今にも泣きそうにも見えていた・・・何かあったのかなあ?


「・・・アキト」


「えっ?」


「アキトは私の事嫌いなのかな」


・・・・・・ササミは思った・・・話が見えてこないのですけど(汗)









また舞台と時間を戻しまして・・・

アキトがフクベの部屋を出て、艦長のユリカに見つかって引き止められていた場面から・・・



「・・・ねえアキト、どうしたのアキト?、さっきからずっと黙ってばっかりで、お話しようよねえ・・・」



と、まあ、こんな感じでユリカさんはアキトにくっついて来ていたのですが・・・・・・
こんな調子だからユリカは気づいていなかった・・・アキトがとても機嫌が悪そうだという事に



「・・・いい加減にしてくれ」



「え、何を言っているのアキト?」



「いい加減にしてくれって言ったんだ!! さっきからなんなんだ!!

 確かに僕はユリカとは幼馴染だったかもしれないけれど、それとこれとは話が別だろ

 僕は王子様なんかじゃない、ユリカがそう思い込んでいるだけだ!!!」



「そんな事ないよ、アキトは私の王子様だよ、あの頃からずっとユリカの事を助けてくれて・・・」



「そうだよな、ユリカにとって大事なのは、大事なのは子供の頃助けてくれた王子様であって僕じゃないよな・・・」



「!!何を言ってるのアキト、おんなじじゃない、だってアキトは・・・」



ただでさえ不機嫌そうだったアキトの声は、より不機嫌なものに変わり・・・
さすがにユリカもそれに気が付いたようだ、気が付いたときは少し遅かったかも知れないが



「だってそうだろ!! 昨日までユリカは僕の事をどうとも思っていなかったのに
 僕が幼馴染の王子様だとわかったとたんに態度を変えてるじゃないか!!
 ユリカが見ているのは僕じゃない! 昔の王子様と言う名の幻だ!!」




アキトには思う所があったのだろう、一気に言い放っていた
たしかにアキトは機嫌が悪かったかもしれない・・・だが、言ってる事は本気で本音だった
ユリカが僕の事を好きだと言うのなら、
それは今の僕を見ているのじゃない、思い出の中の僕を見ているんだ・・・そう思うから



「もし、僕が幼馴染の王子様じゃなかったらどうだった?
 それでも僕の事を王子様だと思ったのか?、違うだろ、
 とにかく、もう振り回されるのはたくさんだ!! 今日はもう帰ってくれ!!」




そう言い放った後、アキトは自分の部屋に入ると、ドアをロックしてそのまま部屋にこもってしまったのだった



「そんなんじゃない、私はそんなつもりじゃないよ
 聞いてよ、ねえアキト、アキト、アキトォ〜〜」




そう、ユリカは決してそんなつもりじゃない・・・アキトが幼馴染だと気づく前から気になっていたのだ
だけど、幼馴染のテンカワ・アキトだと気づいてはじけてしまったのも確かではあるが・・・・・・

ともかく、ユリカはそれでもドア越しにアキトと話をしようとしたのだが、とりあってもらえなかったようだ







女湯の脱衣所にて、風呂上りの女性陣の会話は一区切りついたようだ
もっとも、その場に男がいれば、その格好を見て喜ぶかもしれませんけどね
バスタオルを巻きつけただけの格好ですし・・・・・・


それはともかく、話を聞き終わってのササミの反応だが・・・


『・・・あははははは・・・・・・お兄ちゃん、それって八つ当たりなんじゃあ・・・』


などと思ったらしい・・・ササミちゃん、風呂出たばかりなのに少し汗かいてたりして
いや、アキト兄ちゃんがそう言ったのはおそらく本音だろう
だけど、普段ならばそこまでストレートに(それも相手が傷ついてしまう言い方で)言ったりなどしない
いつもならもっと相手の気をつかうのだ・・・それがいいのか悪いのかはともかく
お兄ちゃん、例の件で虫の居所が悪かったのだろうなあ(はあ〜っ)


ともかく、ササミは少し責任を感じていた


「艦長は今のお兄ちゃんの事どれだけ知っている?」


「今のアキトの事?」


「お兄ちゃんがそう言うのはしょうがないよ、
 だって艦長は昔のお兄ちゃんの事知っているかもしれないけど、今のおにいちゃんの事知らないんでしょ?」


ユリカは思った・・・そう言われればそうかもしれない、と


「だったら、お兄ちゃんの事もう一度よく見て、お兄ちゃんの事をよく知って、それからじゃないかな」


「そう、そうよね・・・私はアキトの事もっとよく知らなくちゃ、ううんもっとよく知りたい」


どうやら、艦長さん少し元気が出てきたみたいです


「それと、お兄ちゃんはあんな事言ったけど、本気で艦長の事嫌っている訳じゃないと思うよ」


「そうよね、アキトが本気でユリカの事嫌いになる訳ないもんね」


すっかり元気が出てきたみたいです
このあと、ユリカはササミにアキトの事いろいろ聞いたり話したり・・・ユリカの知らないアキトの話に花をさかせたようです



「ありがとうねササミちゃん、あ、私の事は艦長じゃなくてユリカお姉ちゃんて言ってくれたらうれしいな」


「ユリカお姉ちゃん・・・ですか?」


「そうだよ、ユリカお姉ちゃんだよ」


ユリカはにっこり笑ってそう言ったのだった
ユリカは知っていた、ササミは親しくなったメグミやミナトの事をお姉ちゃんと呼んでいる事を
自分もそうでありたいと思うのであろうか


『それに、ササミちゃんがアキトにとって妹だったらユリカにとっても妹みたいなものだし』


・・・そういう事も考えてるんですね、ユリカさん


「それじゃ、ありがとうねササミちゃん、ミナトさん、おやすみなさい」


「おやすみなさい、ユリカお姉ちゃん」


ササミがそう言うとユリカは嬉しそうな顔をしたのであった



はあ〜、行っちゃったかな・・・落ち込んだり元気になったり、いそがしい人だなあユリカお姉ちゃんて・・・

ササミは落ち込んでいたユリカを元気づけたつもりだったが、まだアキトがらみのユリカの事をよく知っている訳ではなかった
はて、これからどうなるのやら





つづく



あとがき

そんなわけで、これを送ります

予定より遅れて、予定より分量も少ないですが

次回はホウメイさんの調味料イベントと反乱イベント、そして火星に突入と行きたいですね

やっとここまで来たなあ

それでは、短いですけど今回はこの辺で





代理人の感想

おー、調味料イベント!

好きなエピソードなんですが逆行ものだと完全に無視されるイベントなんでちょっと悔しいんですよね(苦笑)。

三平さんの料理の仕方に期待します。(笑)