(砂沙美の航海日誌「第十四話」)
「!? りょ、リョウコさん・・・・・・」
「なんだよ、オレがここに居たら何か都合が悪いのかよ?」
「いえ・・・そんな事ありません」
「ふん、どうだか・・・」
どんな場面かと言うと、イツキがトレーニングルームに来てみると先客が、
スバル・リョウコが来ていてトレーニングをしていたのでありますが・・・ リョウコさん不機嫌そうですね
どうもアキトの件のせいか、現在イツキとリョウコは折り合いがよくないようです
その辺は、ヒカルちゃんあたりが一生懸命フォロ−しようとしてるのですけどね(苦笑)
ちなみに、パイロットは身体が資本であり、リョウコにかぎらずヒカルもイズミも、
当然イツキやアキトもここをここを利用して身体を鍛えており、鉢合わせる事自体は別段珍しい事ではないだろう
ただ、現在の両者の微妙な関係のために気まずいのはしょうがないかもしれないが・・・・・・
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
何ともいえない沈黙が流れる・・・
この沈黙に耐えられなかったのか、それとも他の事が気になったのか、まずリョウコが先に口を開いた
「アイツとはうまくやってるんだってな・・・で、どうなんだアイツは?」
「えええっ!?、うまくやってるだなんて・・・・・・私とアキトさんはそんなんじゃなくて・・・」
「・・・誰がのろけ話を聞いている?、一緒に訓練してるんだろ? あのカワイってヤツの実力はどうだって聞いてるんだ!!」
顔を赤らめイヤイヤをするイツキに呆れつつリョウコが聞きなおした
「え?、そ、そうですよね、あははははは・・・」
イツキ、笑って誤魔化したが少し残念そうでもあった
それにしてもイツキさん、いつの間にか彼の事を『アキトさん』と呼んでいますね、それだけ親しくなっているという事ですが
でも、イツキはすぐに真顔にもどって話を始めたのだった
「正直な所、技術的にはまだまだです。 テクニックなんてすぐ身につくものじゃないですし・・・」
本当に正直な話である。
リョウコも、あまりにもあっさりとそう言い切られて拍子抜けしたが、
それだけにまあそうだろうなあ、と納得しながら話を聞いていた
「でも、この先は楽しみですよ、アキトさんはきっと強くなりますから・・・」
イツキは迷うことなくそう言いきった。 その根拠はというと・・・・・・
「アキトさんは器用だし飲み込みは早いですから、いずれはね・・・
努力は惜しまないですし、何事にも一生懸命で頑張ってますし
何よりあの人には、誰にも教えられなくても持っている戦いのセンスとか閃きとかがありますから」
「はあ? なんだよそりゃ??」
リョウコの疑問ももっともである。 前半のイツキののろけ話はともかく、
後半のセンスとか閃きとかいう話は聞き流せなかったようだ
「上手く言えないですけど、アキトさんの戦闘センスや閃きを生かすだけの技術を、まだ身につけていないだけです
そう言うものを身につけたらアキトさんはきっと大化けしますよ・・・リョウコさんもいずれはわかると思います」
イツキは自信満々にそう言い切った。 彼女なりに何か感じた事があるのだろう
リョウコは面白くなかったが、実際に見ていないので何ともいえない
頭ごなしに否定するのも大人気ない気もするし
「わーったよ、いずれどの程度出来るか楽しみにしといてやるぜ・・・駄目だったら思い切り笑ってやるからな」
リョウコは、その場は捨て台詞を残して立ち去ったのだった
「まあ、努力してる事は認めるけどな・・・」
リョウコはふと前日見かけたアキトの姿を思い浮かべた
イツキの言う通り、その姿はとても一生懸命で・・・・・・
「ふん、面白くない・・・」
なぜそんな事思い浮かべたのだろう?
自分でもわからないが、リョウコは不機嫌そうにそうつぶやいたのであった
ところで、アキトの戦いのセンスとか言う話は、実際の所はどうなのでしょうね?
僕は、アキトはセンスや素質は潜在的に持っていると解釈しています。
極端な話、行き着くところまで行ったなら、時ナデアキトの漆黒の戦神クラスまで行く『可能性』はある・・・と思ってます
このシリーズでは、そこまで行くことはありませんけどね、でも
TVシリーズより前向きに頑張ってる分、アキト君TVシリーズのそれよりは強くなるでしょう・・・あとは成り行きかな(オイ)
ちなみに冒頭の話は、アキトの過去や素性が、艦長のミスマル・ユリカさんに知られる少し前の出来事であります
この頃は、周りからアキト君とイツキさんの仲がいい感じだね、と見られていた頃であり
何事もなかったら、あるいはこの二人の仲はすんなりとそのまま進んでいたのかもしれない
(二人ともまんざらでもなさそうな雰囲気であったし、この時はいらんちょっかいをかける者もいなかったからね)
今から思えばこの頃は、アキトにとっては最後の(?)平和なひとときだったのかも・・・・・・
(ユリカが周りに遠慮せず、アキトアキトと追いかけ始めると、人間関係のバランスが崩れるような気がするのは気のせいでしょうか?)
機動戦艦ナデシコ
砂沙美の航海日誌
〜第十四話「火星への道」〜
By 三平
ナデシコが地球を発進してからはや1ヵ月半
火星の敵勢力圏に到達し、現在その迎撃を受けている真最中
敵の無人艦隊と、その直掩の無人機動兵器がナデシコ前方に展開していた
そして、ナデシコからもその迎撃のためにエステバリス隊が発進していた
「いくぜーっ!! ヒカル!!」
「はいは〜い♪」
リョウコがバッタ達を撃破しつつそれを引き付け、
それをヒカルが連携して攻撃し、引き付けたそれを一気に撃滅する。
「ほ〜らお花畑♪」
「あははははは」
葬った敵の爆発で宇宙に咲く光・・・それは、確かにお花畑であった
けどまあ、あなたたち、余裕というかお気楽と言うか・・・・・・
「あはははは・・・・・・ふざけていると、棺桶行きだよ・・・」
と、そこにイズミの突っ込み・・・・・・縁起でもないというか洒落にならないというか(汗)
「何だよいきなり!!」
「本当、イズミちゃんハードボイルドブリッコなんだから」
さすがにこれにはリョウコもヒカルも引いてるようで・・・目がジト目だったりして
「甲板1枚下は真空の地獄、心を持たぬ機械の虫どもをはふる時、
わが心は興奮の中、なぜか・・・醒めたまま・・・悪いわね、性分なの」
「あああっ、変なヤツ・・・変なヤツ変なヤツ変なヤツ・・・・・・」
なんて言うか・・・・・・イズミさん、いい味出してますね(汗)
さすがにリョウコさんも気が滅入ってるようです。
一方、リョウコ、ヒカル、イズミの三人娘達とは別に
アキト、イツキ組も彼女達ほど派手さはないが、確実に戦果を上げていた
アキトはまだ無重力での戦闘に慣れていないせいか、まだ不安定ではあるものの
いつぞやのようにエステに振り回される事無く、善戦をしてると言えるだろう。
また、イツキはそんなアキトの後方につき、その掩護、サポートに専念していた
その為に、その実力ほどの戦果を上げる事が出来ていなかったものの、
自分の果たすべき役割を、充分理解したうえでそれをしていると言える
この二人がコンビを組んでの初戦闘であったが、
以後何度も組む事になる、息のあったコンビになるのであった。
(もっとも、その事に関しては、後にスバル・リョウコさんがとてもとても悔しがる事になるのですが・・・)
「・・・あの三人、何だかんだ言いながら楽しそうにやってるじゃないか!!」
「そうですね・・・だけどアキトさん、今は気にしちゃ駄目です!
あせったって、私たちはあの三人のようには出来ないんですから・・・
私たちは私たちのペースでいきましょう、今は生き残る事が先決です」
「それはそうかもしれないけれど・・・・・・」
この場合私たち、と言ってもアキトがいなければ、イツキ一人ならもっと暴れられるのですけどね(苦笑)
それはともかく、『あの三人が派手にやっているから私たちは余裕を持った戦い方が出来るのだ』、とイツキは思っているようですが
アキトは内心穏やかではないようです。
そんな訳で、エステバリス隊による機動戦は、ナデシコ側有利に展開しつつあったのであるが
火星宙域に集結し展開しつつあった敵無人艦隊の、本格的なナデシコに対する砲撃が始まったのであった。
「か、艦長、エステバリスを回収したまえ!」
「必要ありませんわアキトファイト!!」
第一次火星会戦の敗北の記憶がそう言わしめているのだろうか?
敵の攻撃にフクベ提督が焦りながらそう言ったのだが、ユリカの返事は落ち着いていた。
「し、しかし」
「敵はグラビティーブラスト備えた戦艦である。と、そうおっしゃりたいのですね・・・」
なおも食い下がろうとするフクベに対し、今度はプロスペクターが答えた。
「でもご心配なく、その為の相転移エンジン
その為のディストンションフィールド
そして、グラビティーブラスト・・・
あの時の戦いとは違いますぞ、お気楽にお気楽に・・・。」
絶対の自信を持ってプロスはそう答えた
そんなプロスに対し、フクベは複雑な表情をする事しか出来なかったのであった
『勝ってるうちはそうも言えるだろう。 だが・・・』
戦闘態勢をとっているナデシコのブリッジでは、当然ブリッジ要員達が所定の位置に付いていた
オペレーターは、現在はメインオペレーターのササミがそれを行い、
サブオペレーターのハーリー君がそれを補佐するという形をとっているようである
戦場の状況は刻一刻とめまぐるしく変化する
敵艦隊、敵機動兵器、エステバリス隊、そしてナデシコ、それらを全て把握しつつフォローする
ある意味もっとも大変な作業を、この二人の少年少女がやっているといえるだろう
普通なら戦場になど出るはずのない年頃の子供達が・・・・・・
『すごいすごい、ハーリー君てすごいや、慣れてるし流石だね、ササミのやりやすいようにフォローしてくれているし・・・』
ササミは素直に感心していた・・・・・・そしてそれによってハーリーの事を信頼もしていた
ある意味ハーリー君が居てくれるからササミは安心して自分に与えられた作業をこなす事が出来るのだから
『これがササミさん? 今までよりずっと早いし正確だし、この前までこの人が素人同然だったなんて信じられない!!』
ハーリーはハーリーでササミの実力に改めて驚いていた
ササミさんははじめての時、ぶっつけ本番でナデシコを動かしたとも聞いているし・・・
『ササミさん・・・多分実戦で実力を発揮するタイプなんだ!!』
ハーリーは思う、ササミさんはルリさんとは違ったタイプの天才なんだ・・・と
困った事に、本人はその自覚が全く無いと思われるけれど(苦笑)
一時はそんなササミの急激な追い上げに、焦りを感じたハーリーだったが、現在は吹っ切れている
そしてハーリー君、今はササミと一緒に仕事するのを楽しく感じているようで、その補佐に徹していたのだった。
敵機動兵器群を突破した、三人娘のエステバリス隊が敵艦隊前面に達し、突入を試みた
「敵戦艦のフィールドが増大!!」
ブリッジでササミが報告を行う・・・その状況に三人娘も攻めあぐんでいるようだ
「ちっ、敵のフィールドか!!」
「どうやら死神が見えてきたみたいね・・・」
「「見えん見えん!!」」
イズミの縁起でもない発言に、残り二人が激しく突っ込んでいるなか
少し遅れてアキトとイツキの二人も到着したようである。
「・・・エステバリス隊の動きが止まった? お兄ちゃん達、大丈夫かなあ・・・・・・」
なまじ状況がわかるだけにササミの心配は募る様だ
「アキト兄ちゃん頑張って!!」
当のエステバリス隊、どうすべきか迷いがあったようだが・・・
「そうだ!!」
アキトは何か閃いたのか、エステのイミディエットナイフを取り出して敵戦艦に突入を開始する
「おいカワイ! 無茶だ!!」
「本当に特攻!!?」
「死ぬ気なの!?」
三人娘がアキトの無茶な突入に騒ぐ中、イツキは冷静だった
「大丈夫です・・・アキトさんは真っ直ぐ突入している訳ではありません」
さすがにこの中ではアキトとの付き合い(?)が一番あるだけに、その意図がわかったようだ
「・・・私はアキトさんを信じます」
アキトのエステバリスは、敵戦艦の斜め下方から加速してそのフィールドを側面から切り裂くように突入
そのスピードと、イミディエットナイフの一点に集中した圧力で、フィールドの突破に成功し、
そのまま敵戦艦にダメージを与えてその場を離脱した。
当たり所が良かったのか悪かったのか、その無人戦艦はそのまま爆発し、密集隊形の僚艦に次々誘爆していった。
(んなあほな!! でもアニメじゃあっさり誘爆して敵艦隊吹き飛んでいるし、苦笑)
「・・・・・・無茶しやがって!!」
トーシローなアキトの無茶を見せたれて、リョウコは・・・
「何なんだアイツは!!・・・・・・だけど」
なぜかリョウコは、その無茶で無鉄砲なそれに・・・心引かれるモノを感じているのだった
「グラビティブラストスタンバイ!! エステバリス隊を射線から退避させちゃってください」
その状況を好機と見たのだろう、艦長のユリカから指示が飛ぶ
エステバリス隊を退避させ、体勢の乱れた敵艦隊に追い討ちの砲撃を行った
「グラビティーブラスト敵まとめてテーッ!!」
このナデシコの砲撃により、敵艦隊の八割が消滅し、ナデシコは火星への降下軌道を取る事が可能となったのであった。
(本当はTVシリーズにこんなシーンはないのだけど、アキトのエステだけで敵八割消滅とは信じられなかったのでこうしてみました)
「敵艦隊退避・・・これでナデシコは降下軌道がとれます」
ササミは素早く現状の把握を行い、そのデーターを躁舵手のミナトに転送した
ハーリーが実戦で実力発揮するタイプと評した通りなのか、この時のササミの仕事振りは完璧だった。
「サンキュー、サミー♪」
ずる〜っ!!
・・・・・・ササミの完璧な仕事振りも緊張感も、ミナトさんのその一言で吹き飛んだようで(汗)
「み、ミナト姉ちゃん・・・・・・それってササミの事?」(汗)
「そうだけど・・・気に入らなかった? サミーって結構いいと思うけど?」
読者の皆さんは忘れているかもしれませんが、
以前、『ササミちゃんの愛称考えてあげなくちゃ♪』と、妖しげな事考えていたミナトさんの答えがこれだったようで(大汗)
「つつしんで辞退します。サミーなんていくらなんでも・・・」
「・・・いいと思ったんだけどな『サミー』・・・ササミちゃん気に入らなかったみたいでちょっと残念だなあ・・・・・・」
ササミちゃんがこうはっきり断るのも珍しいことかもしれませんが、よほど嫌なのかな(苦笑)
ミナトさん、本当に残念そうですが・・・・・・(ここは諦めましょう、笑)
何にせよ、『サミー』のニックネームは、『ルリルリ』のように普及する事はないようであった。
(まあ、某魔法少女に変身する訳ではないのですしね、このニックネームの話はお遊びと言う事で)
そんな事をしている間にも、ナデシコはエステバリス隊を回収し、火星への降下軌道を取り始めたのであった
「アキトさん、お疲れ様」
「ありがとう、でもイツキさんもお疲れ様だよ」
ナデシコに帰還したアキト達は、とりあえず着替えも終わってほっと一息といった所でしょうか?
とりあえず、アキトはカードを取り出して、自動販売機のドリンクを買おうとして・・・・・・
「あ、それくらいだったら私が・・・」
「いいよ、イツキちゃん。自分のぶんくらい」
と、アキトとイツキがやり取りしているなか、横から別の人物が自販機にカードを差し込んで・・・
「おごるよ・・・」
それは、パイロットのスバル・リョウコさんだった。
あと、アマノ・ヒカルさんとマキ・イズミさんも連れ立っていたりして
「びっくりしちゃた・・・こーんな感じ」
そう言ってヒカルさん目玉が飛び出るビックリメガネで愛嬌振りまいてます(笑)
「・・・今更だけど、見直したぜアンタの事」
「ホントホント、見直したよ」
リョウコは今までの経緯もあってか少し言いにくそうであったが、ヒカルあたりは軽く受け答えしてたりします
「・・・ありがとう、そう言ってくれると僕も嬉しい」
そういうアキトの表情は、本当に嬉しそうだった
今まで自分の事を認めてくれなかったパイロット達が、自分の事を認めてくれたのだから
だからアキトは遠慮せず、そのおごって貰ったドリンクを受け取ったし、
とても嬉しそうな、とびっきりの笑顔を振りまいたのだった。
「火星熱圏内、相転移エンジン反応さがりま〜す」
ナデシコはすでに降下軌道を取り始めて、大気圏に突入を開始していた。
ミナトは、それによる相転移エンジンの反応低下を報告していたのであるが・・・
「なにあれ?」
火星の大気を取り巻くキラキラ光る層を見て、通信士のメグミ・レイナードが声を上げた
「ナノマシンの集合体だ」
「ナノ?」
ゴートの言葉に、やっぱりわからないと言った風のメグミ
「ナノマシンは小さな自己増殖機械だよ」
その疑問にこたえたのは火星生まれのササミちゃんだった
あとは淡々とそれの説明を行った・・・いわく
「昔、火星を人の住める星にする為に・・・テラフォーミングだったかな?
その為に散布したんだって、火星の空気を地球のそれに近づけるために」
「そう、今でも大気の状態を一定に保つとともに、有害な宇宙放射線を防いでいるのです。
たとえ、その恩恵を受ける者がいなくなっても・・・・・・」
ササミの言葉を引き取って後の説明を行ったのはプロスさん・・・少し感慨深げのようだ
「ナノマシンの第一層を通過します」
なにやら感慨深げなササミやプロスを尻目に、サブオペレーターのハーリー君が報告を行った
ナノマシンの層を通過の際、何やら音がするようであるが・・・特に実害が無いようではある
「そんなのナデシコの中に入っちゃっていいんですか?」
「心配要りません、火星ではみんなその空気を吸って生きていたんですから
基本的に無害です、おトイレで出ちゃいます・・・あっいけない」
メグミの疑問に答えたのは艦長のミスマル・ユリカ・・・最後のおトイレ発言で少し恥ずかしそうでありますが
「そうか、そう言えばユリカ姉ちゃんも火星生まれだったんだよね」
「あれ? ササミちゃん、何時の間に艦長の事お姉ちゃんって呼んでるの?」
その事に気が付いたメグミさん、ふとその事を聞いてみたりして
「えっ!?、あっ、それは・・・・・・ついうっかり・・・」
プライベートでならともかく
ササミちゃんはブリッジでの公務の時はちゃんと『艦長』、と呼ぶことにしていたのだが、ホントついうっかりのようで
「いいんだよメグちゃん、ササミちゃんにはお姉ちゃんと呼んでもらえた方が嬉しいし」
そう言うユリカさんは、確かにとても嬉しそうである
ユリカがそう言うので、他の者(ゴートとかジュンとか)はその件でササミの事をとやかく言う事はないようであった。
あの時、その場に居合わせたミナトさん・・・この件では苦笑していたりしてるようです。
「グラビティブラスト、スタンバイ!!
地上に敵の第二陣がいるはずです。包囲される前に撃破します!!。」
普段はお気楽というか、軽く見られがちなユリカだが、こういう時はしっかりとしているようだ、てきぱきと指示が出る。
「艦首を敵に向けてください!!」
実際、地上で待ち受けている木星蜥蜴のチューリップからは、
次々とバッタなどの機動兵器が吐き出されて発進、配置されつつあった。
それを先制攻撃で撃破しようというのは悪い考えではないのだが・・・・・・
「きゃ!」
「わあ〜っ」
「ちゃんと重力制御をしろ〜〜っ!!!」
ここ格納庫では、ナデシコが重力制御無しに急激に艦首を地上の敵に向けたため、
その床が急角度で傾斜し、各人いろんな物に掴まったりして必死にこらえていたのだった。
アキトの側にいたパイロットの女の子達は、なぜかアキトにしがみついていたりして(苦笑)
特に、すぐ目の前にいたせいか、
リョウコとイツキが積極的(?)に抱きついているような気がするのは気のせいだろうか?
「くそ〜っ、なんであいつだけいい思いしてやがんだあ〜〜っ!!」
別の箇所に掴まって堪えていたウリバタケは、そのを光景をみて思わず心からそう叫ぶのであった(笑)
とまあ、ナデシコ艦内でドタバタなど色々ありましたが、グラビティブラストの地上への斉射で、
ナデシコの迎撃準備をしていた木星蜥蜴の部隊を、チュ−リップごと完全に殲滅したのであった。
「敵影はナデシコの砲撃で消滅」
「周囲三十キロ圏内に木星蜥蜴の反応は無し」
ササミやハーリーが現状を報告を行い
とりあえず近くに敵が居ない事が確認され、ブリッジはホッとした空気に包まれたようだ。
それから、ナデシコが上空から地上におりるまでの僅かな時間の間に
プロスはゴートやフクベ提督などと協議を行い、地上班の編成作業を行い
アキトとパイロット達は、格納庫近くの控え室で少しだけ込み入った話をしていた(これに関しては後述)
また、その格納庫ではブリッジからの指示で、エステバリスの地上仕様への換装も行われていたようである。
それらとは別に・・・・・・
「ルリルリ・・・大丈夫?」
ミナトさん、すでに一ヶ月以上眠ったままで未だに目を覚まさない少女の様子を見に来た模様
先ほどの火星突入の際、ナデシコが重力制御なしで艦首を急角度で下げたためあちこちで混乱などがおこったが
この少女、ホシノ・ルリの部屋とて例外でなく、眠ったまま少女はベットから放り出されていたのだった。
「大丈夫です・・・身体は何ともないみたいですよ」
そう言うのはハーリー君、ミナトさんと一緒にルリの様子を見に来たようです。
ちなみに、ルリの身体は転落の際、うまく掛け布団に包まれて、それがクッションになって無傷ですんだようだ。
「そう、よかった・・・でも、こんなになってもまだこの子は目を覚まさないんだ・・・・・・」
「そうですね・・・」
ミナトさん、ホッとしつつも残念そうである・・・心底ルリの事を心配しているから
受け答えしていたハーリー君も、ホッとしつつも複雑な心境のようで・・・・・
「艦長・・・ルリさんが無事でよかった・・・だけど」
ハーリーは、自分の心の中に、相反する二つの心情がある事に気が付いてしまったようだ
ルリさんには早く目を覚まして元気になってほしいと望む心と、
今はまだルリさん眠ったままでいい、今のままの状態を望む心と・・・・・・
ミナトさんと一緒にブリッジを出るとき
「ここの事は心配いらないよハーリー君、だからササミの分までルリちゃんの事見てきてあげてよ」
そう言って、快く送り出してくれたササミさんに、ハーリー君は感謝しつつも
その場を離れがたい、この場にいたい、ササミさんに引き止めてほしいと望む自分も見つけてしまったのだ
ほんの半月、いや、つい先日までならそんな事考えることもなかったはずなのに・・・
『僕はどうしてそんな事を考えてしまったんだろう?』
生真面目な少年にとって、それは戸惑うどころの話ではなかったのだった。
ともかく、ミナトとハーリーの二人で眠ったままのルリをベットに寝かしつけ、この件は無事済んだようだ。
(ルリの件は、瑞白さんのSSの影響うけて始めましたが、だからと言って目の覚まし方まで一緒にしませんよ、苦笑)
「これより地上班の編成を行い、揚陸艇ヒナギクで地上に降りる」
フクベ提督が淡々と説明を行っていた。
どうやら、ブリッジに主要メンバーとパイロット達を集めて今後の事を話し合っているようですが
「でも、どこに下りるのですか? 軌道上から見る限り生き残っているコロニーはなさそうですが・・・」
副長アオイ・ジュンのもっともな質問に対し、プロスは用意しておいた答えを披露する。
「まずは、オリンポス山の研究施設に向かいます」
「ネルガルの?・・・抜け目ないな」
プロスの言にリョウコさん軽い突っ込み、
もっとも、抜け目ないどころかすでにスケジュールに入っていた予定の行動なのだけどね
「わが社の研究所は一種のシェルターでしてね、一番生存確率が高いものですから・・・」
「では、地上班メンバーを発表する」
プロスの言を受け、ゴートがそのメンバーを発表した。
基本的にはプロスとゴート、それにパイロット三人娘の組み合わせなのだが、
そのメンバーの中にはアキトの名前はなかった・・・実力主義ならば当然の事かもしれないが
「僕は・・・連れて行ってもらえないんですね・・・・・・」
「そう言えば、カワイさんは火星の生まれでしたな・・・うーむ」
プロスさん、その事を失念していたようで
実力でメンバーを考慮した結果なので、そこまで考えが及ばなかったようである。
「カワイ・・・・・・」
そんな様子に、リョウコはさっきの控え室でのカワイ・・・カワイ・アキト君との会話を思い出していた
アキトは一体何のために戦うのか? 戦っているのか?
そんな話が出たのだが、別に隠すほどの事ではないので、アキトは正直に話したのだが
いわく・・・守りたい人、守りたいものの為に・・・そして、火星には残された家族がいる事を・・・・・・
「ギンジ父さんやホノカ母さん、二人とも今でも生きているか、生きていてくれているか、正直わからない・・・・・・
だけど、それを確かめなきゃ僕もササミも前に進めないんだ・・・それまで負けられないし負ける訳にはいかないんだ」
あと、火星に残されている人たちも助けたいと思っているし、その為に強くなりたいんだ、とも語ったのだが
そんなアキトの話を聞いて、リョウコはあの時の事を悔やんでいた・・・何も知らずにあの時酷い事を言ってしまった事を
『ああっ、・・・カワイはいい加減な半端な気持ちで戦っていた訳じゃなかったんだ・・・なのにオレはあの時・・・』
「リョウコさん、どうして急にそんな!!」
「りょ、リョウコ、何もそこまでしなくても・・・・・・」
何を思ったのか、リョウコはアキトの目の前で、土下座して両手をついて謝り出したのだ
「すまねえ・・・オレはあの時、お前の気持ちも事情も知らずに酷い事言っちまった・・・
こうでもしないとオレの気が済まないんだ・・・・・・本当にすまねえ・・・」
あの時とは・・・アキトはパイロットとしては実力が伴わない未熟である事を痛感し、
リョウコたちパイロットに教えを乞うたのだが、
その時リョウコは、土下座までしたアキトにやめちまえと言い放ち罵倒までしたのだが
今になってその時の事がリョウコに帰ってきたのだ・・・何よりこうでもしないとリョウコ本人の気が済まないのだ
「リョウコさん、すまないも何も、あの時の事、僕はもう気にしてないよ・・・だから」
アキトはそう言ってリョウコの両手をとって土下座していたのを止めさせて、やさしく微笑みかけたのだった
あの時リョウコが言っていた事も間違いではなかったし、それによりアキトも却って頑張れたのだから
ところで、その様子をヒカルは面白そうに見ていたし、イツキは何故か面白くなさそうに見ていたようです(苦笑)
で、話はもどりますが、アキトは両親の行方を知りたいと思っており、ネルガルの研究所の事は気にしているようで
地上班のメンバーの選に漏れてアキトは残念そうにしているようだった。
そのアキトの様子を見てリョウコは自分がかわろうか? と言おうとしたのだが・・・
その前にアキトの方からプロスやゴート達に別の提案がされたようだ
「それなら、エステ一機貸してくれませんか? 生まれ故郷を、ユートピアコロニーを見ておきたいんです」
「なんだと!!」
「あそこにはもう何もありませんよ、チュ−リップの勢力圏です。」
「わかっています、だけど・・・・・・」
でも、アキトのその提案は、誰も賛成してくれる気配は無かった・・・当然だろう、それは労多く益無しなのだから
それどころかこの場合危険ですらあるのだから(この時ササミは声を上げようとしたようだが・・・・・・)
だが、救いの声は意外な所から上がったのであった
「行きたまえ」
「し、しかし」
それはフクベ提督だった。 思わずゴートが意見しようとするが・・・
「確かにお飾りだが、戦闘指揮権は私にあるはずだね、ゴート君
故郷を見る権利は誰にでもあるはずだ、それが若者ならばなおさらだ」
普段は口出ししないでオブザーバーに徹していたフクベ提督だが、
一旦意見をのべれば流石に無視できない迫力があった・・・プロスといえども軽視出来ないのだった
「それと、ササミちゃんにとっても生まれ故郷だったと思うがどうするかね?」
「ササミも、ササミも行っていいの? お兄ちゃんと一緒に・・・」
思いもかけないフクベの提案に、ササミは一瞬戸惑ったがすぐに答えが決まったようだ
「行く、ユートピアコロニーに、行ってササミも見ておきたいから・・・おじいさんありがとう」
「・・・提督、どういうつもりか知らないけど、一応礼はいっておきます」
そんな訳で、アキトはササミを伴ってアキトがユートピアコロニーに行く事にきまったようだ
「私にとっても生まれ故郷なんですけど」
この話の成り行きに、艦長のミスマル・ユリカさんも一緒に行きたがったようですが
「いくらなんでも艦長は駄目です!!」
プロスさん、さすがにこれ以上は妥協するつもりはないようです。
「プロスさんの意地悪・・・・・・」そこ、勝手にいじけないように
まず、オリンポス山のネルガル研究所を調査のための調査隊が、ヒナギクで発進していき
次いで、アキトのエステバリスが発進しようとしていた
「行くぞ砂沙美・・・大丈夫かい?」
「平気だよ、砂沙美は平気、大丈夫・・・お兄ちゃんが一緒だから」
ササミは、コクピットの中で、アキトのひざの上に腰掛けて・・・
お兄ちゃんと一緒に出かけられるのが、とても嬉しそうなのであった。
「アキトさ〜ん、待ってくださ〜い」
「い、イツキさん、どうしてここに?」
ナデシコを発進した直後のアキトのエステにやや遅れて、イツキがエステで追いついて来たようです。
「私も、アキトさんの生まれ故郷、見てみたいです。」
そんな訳で、アキトとササミ、それを追いかけてきたイツキさんの三人が、
ユートピアコロニーに向かうようで、いったいそこで何が待ち受けているのでしょうか?
今はまだわからないのであった。
つづく
あとがき
予定より半月以上遅れましたが、砂沙美の航海日誌、第十四話ようやく出来ましたので送ります。
予定外の「僕の名前は〜」を書いてみたり、サッカーワールドカップ見てたりしてはかどらなかったのもありますが(苦笑)
こんなもんでどうでしょうか?
ところで、この連載始めた時、密かにヒロイン候補の筆頭は、ユリカさんでした。 でも不人気でねえ(苦笑)
逆に、主人公(?)の砂沙美ちゃんは、連載開始時はヒロイン候補ではなかったのですが、
なぜか希望者が多くてヒロイン候補に入ってきました。(その場合、シスコン、ブラコン、ロリコンだけどいいのかな?)
とりあえず、その方向性でいけるように砂沙美ちゃんにアキト兄ちゃん意識してもらうように仕向けましたが(ちと強引かな?)
(だって、この2人、兄妹の意識強いから早めに意識し合うように仕向けないと、カップリング成立しようがないもの)
読者の皆様はどう思いますか?
あと、イツキさんもいい感じかなと思ってますし、リョウコさん今回書き方中途半端だけど、アキトの事意識しはじめてます。
まだ未登場の方たちもいる事だし、どうなりますかね
このSSでのハーリーの扱いはどうでしょうか?
どうも、ほかのSSでは扱いが悪かったりもするし、フォローしてみたいキャラではありますが
他の方からは、どうみえるだろうか?
ちなみに、ナデシコにハーリー乗せるかラピス乗せるか初めの頃迷ってたりしてましたが
砂沙美との兼ね合いでハーリーにしてみました。
だって、ラピスが砂沙美にオペレーター技術を教えるなんて、想像もつかなかったもの(そういうタイプでもないし)
ハーリー君、ルリと砂沙美の間で揺れ動くことになるかな? と思いますが、さてどうなりますかね
次の第十五話は、序盤の山場になると思います。(多分)
ユートピアコロニーで何がおこるのか? 楽しみにしてくださいね
それでは今回はこのへんで
コメント代理人 別人28号のコメント
どうやら、アキト達とリョーコ達との確執は解決したみたいですね
同時に別問題が発生したような気もしますが、こちらは見なかった事にしておきます(苦笑)
それにしても、リョーコの行動・・・漢らしいと感じたのは私だけでしょうか?
あと、ユリカが戦闘に関して ちょっと増長気味みたいですね
どうも、落とし穴がぽっかり口開けていそうな予感
ヒロインに関してですが
今までの展開の中でもアキトの方は随分と砂沙美に入れ込んでるように感じてましたし
私も砂沙美に一票を投じます
せっかく「この連載は他のとココが違うんぢゃ ドーン!」と『砂沙美』という
無数の作品の跋扈するActionを渡り歩くための武器があるのですから
やっぱり 砂沙美は前面に押し出していくべきでしょう
「砂沙美ヒロインのナデシコSSが読めるのは三平さんの部屋だけ!」って感じに(笑)
ハーリーの扱いに関しては
やっぱり、ハーリーはハーリーですからハーリーらしく扱えばいいのではないでしょうか?(爆)
どうも、2人の間で揺れ動くヲトメ心のようですが
ハーリーですから「二兎追うものは一兎も得ず」というオチが似合うと思います
不幸? ノンノン これは「オイシイ」と言うのデス