連合軍ヨコスカドック 第三艦隊


「この非常時に民間用戦艦だと」
「ネルガルは一体なにを考えている?」
「あの威力を見た以上、戦艦ナデシコを放置する訳にはいかない」


地球連合軍のお偉方より第三艦隊司令部に対し、一方的な通信が送られている

まあ、軍隊なんてそんなものだが、司令官のミスマル コウイチロウはいかつい表情を変えず黙って聞いていた。


「あの艦の艦長は君の娘だそうだな・・・」
「もし、ナデシコの艦長が連合軍への参加を望むなら受け容れよう」

お偉方が言いたいことを言い終えると、通信は切れた・・・

 

「提督・・・」
幕僚の一人がコウイチロウを気遣うように声をかける・・・が


「直ちに発進準備、機動戦艦ナデシコを拿捕する」
第三艦隊司令、ミスマル コウイチロウ中将は命令を下した。

その顔にはうっすらと苦悩がにじみ出ていたかもしれない・・・・・・

 

 

 

機動戦艦ナデシコ

「Takuyaの戦い」



〜第二話『緑の地球』は任せとけ〜



By 三平

 

 

戦闘の後 ナデシコの格納庫にて


「で、俺はどうなるんです?」

エステバリスを勝手に操縦したテンカワ タクヤをゴート ホーリーが尋問していた

「ロボットを勝手に操縦した件を初め、問題行為は山積みだが、我々は軍人ではないので・・・そこうるさいぞ!!」

まあ、格納庫ではウリバタケたち整備班が作業しているので多少うるさいのはしかたあるまい・・・
というより別の場所で尋問すれば・・・? と思うのは僕だけだろうか(苦笑)


「なんでお咎めなしなんです、勝手に人の見せ場うばいやがって・・・・・・」

と言うのは、そこで見ていたダイゴウジ ガイ(本名・ヤマダ ジロウ)


「勝手に骨を折ったくせに」

「うぐっ!!」

ヤマダの言い分に突っ込むゴ−ト・・・ けっこうきついかも

「大体こいつなれなれしいですよ、艦長のこと呼び捨てだし・・・」

どうもガイ君(自称) タクヤのこと気に入らないようだ


「とりあえず補充がすむまで臨時のパイロットとして待機をしてもらう・・・コックよりは給料は上がる・・・・・・」

と、ゴート氏言うべきこと言うと行ってしまったようだ


「今度は臨時のパイロットか・・・整備士見習いにコック見習い・・・
 相変わらず半端だよなあ俺は・・・・・・」

タクヤの自嘲ぎみのつぶやきは誰にも聞かれることはなかった

 

 

 

 

ナデシコ艦長のミスマル ユリカは
必要な仕事を副官のジュンに押し付けて(笑)
タクヤの部屋の前に来ていた


アキトったら私が艦長だからって、遠慮して会いに来てくれないんです・・・
だから私から会いに来ました(ニコッ)

・・・まだ勘違いしたままらしい・・・・・・(汗)


コンコン コンコン

「アキト〜、アキト、アキトってばあ・・・」

そう言ってタクヤの部屋のドアを、たたくユリカ



「・・・誰だよ、もう・・・はいはいちょっとまってて・・・・・・」

タクヤはシャワーを浴びた直後で、これから服を着るところのようだ・・・

と、思ったらいきなりロックしてあったはずの入り口のドアが開いた!!

「そうかあ、私艦長だから合鍵持ってたんだっけ」

「・・・あのなあ・・・・・・」

のろけながら入ってきたユリカと
タオル一枚でほとんど素っ裸のタクヤが鉢合わせたのだった・・・
こころなしかタクヤの顔は引きつっているようだ・・・・・・


「えっ!?、あっ、ああ〜っ!!、きゃあああ〜〜ッ」


ユリカの悲鳴が木霊した・・・・・・なんだかなあ





「まあ、アキトだって男の子だもん、今回は許してあげます・・・」

「・・・・・・」

と、いいつつお茶を飲むユリカ・・・ 勝手に部屋の鍵を開けたのあんたでしょ(苦笑)

タクヤもそう思ったのか反論

「何言ってる、元はと言えばユリカが・・・」

「うれしい、今でも私のことユリカって呼んでくれて」

反論しようとしてたちまち話の腰を折られたのであった(苦笑)
ユリカはマイペースだし・・・・・・


「火星じゃいつも私のこと、ユリカ、ユリカって追いかけて・・・」


(違うだろうがっ)タクヤは心のなかで突っ込んだ

子供の頃、いつもアキトのこと追いかけていたのはユリカのほうである
そしてタクヤはそんなシーンをイヤと言うほど見せ付けられたのだ・・・・・・

子供の頃の苦い思い出・・・すっかり忘れていたのになあ


「良かった、アキトに会えて・・・私、何度も連絡取ろうとしたの
 そしたらお父様がテンカワの家は火星で全員亡くなったって・・・・・・
 でもアキト無事だった・・・地球にはいつ来たの?」


そう言うユリカの目にはうっすらと涙が光って見える・・・・・・
本当に心配してたんだろう・・・でも
それでもタクヤはガマンができなかった


「・・・いないよ・・・・・・」

「えっ!?」


「誰も生きちゃいない、父さんも母さんも、兄さんも・・・」


「何を言っているの?何を怒っているの?わからないよアキト・・・」

「俺はアキトじゃないし、兄さんは・・・アキトはもういないんだ」


激昂するタクヤに突然のことで戸惑うユリカ・・・だが、ある一言に反応した


「アキトはもういない?・・・」

それは、ユリカに冷や水をぶっかける効果があった

「うそ・・・だってアキトはここにいるじゃない・・・」

「俺はアキトじゃない・・・俺はタクヤだ!!」

「タクヤ・・・・・・あっ!!」


ユリカもようやく思い出したようだ
アキトには双子の弟がいたことを・・・

 

 

「どうして違うって言ってくれなかったの・・・」

「何度も違うと言ってたのに、聞こうともしなかったのはユリカの方だろう!」


「あうっ・・・いいわ、今はそれより・・・おしえて、一体何があったの? だれも生きてないって・・・
 ご両親やそれに・・・・・・アキト、アキトはどうなったの? 」


タクヤは 『はあ〜っ』 と、おおきく息を吐き出すと、再び口を開いた

「わかった、説明してやる・・・俺もお前に聞かなきゃなんないことがあるしな・・・・・・」

 

 

あれは十年前・・・ユリカたちミスマル家や多くの火星駐留軍人達が火星を引き上げたその日
アキトや両親もユリカの見送りに宇宙港に来ていた


「俺はその日は腹痛で家にいて見送りに来てなかったけどな・・・」

「そうだっけ? 私はよく覚えてないけど・・・あ、でもアキトは来てたよ・・・」


そして軍人たちが飛び立った直後、火星ではクーデターがおこり


「俺の両親は死んだ、殺されたんだ・・・兄さんは、アキトはその時から行方がわからなくなってる
 おそらく爆発に巻き込まれて死体も残らなかったんだろう、って言われたけどな・・・
 俺は真相が知りたいんだ・・・何で父さんたちは死ななきゃならなかったのか・・・・・・」


タクヤはそこまで淡々と話してユリカの方を見てみると・・・
彼女は泣いていた、目にいっぱい涙をうかべて・・・・・・

「・・・アキトは・・・もう居ないんだね・・・アキトは・・・・・・」

ユリカはそう涙声で言葉をしぼり出すのがやっとだった


「・・・あきとぉ〜・・・・・・うぅぅぅ」

「わあああぁぁぁ〜〜〜」


ユリカは泣き出した・・・まるで子供のように
タクヤはその光景を呆然と見ていた・・・

彼にとって火星でのクーデターは忘れられないことだが過去のことだ
だが、今話を聞いたユリカにとっては決して過去の話ではないのだろう・・・


ユリカ・・・おまえにとってアキト兄さんはそんなに大切だったのか? と、タクヤは思う
『ズキッ』 泣きじゃくるユリカを見てると胸が痛む・・・見てはいられない


「泣くなよ・・・そんなに泣いたら兄さんが悲しむだろう・・・」

タクヤはそう言って、ユリカの両肩をつかんで正面から見据えた


「言ったろう、兄さんだけ見つかってないって・・・きっとどこかで生きているって
 ユリカの王子様なんだろう? ユリカを置いてどこかにいくはずないじゃないか・・・」

何言ってるんだ俺は・・・そんな事は望み薄だ、生きているならとっくに姿をあらわしてるさ・・・
でも、そう言わずにはいられない・・・

「・・・ひっく・・・いきて・・・いる?・・・・・・」

「ああ・・・生きているさ・・・いつかユリカの前に現れるさ・・・」

タクヤはまだしゃくり上げているユリカにそう言った

そう言った本人もだんだんそんな気がしてきた・・・

でなければユリカを信じさせる事はできないだろう

もっともそんな現実から目を逸らさせるやり方は

かえってユリカにとって残酷なことかもしれないけれど・・・・・・





少し時間をおくと、ユリカも落ち着いてきたようだ

「ありがとう・・・もう大丈夫だから、ごめんねタクヤにとってもつらい話だったよね・・・・・・」

「いや・・・その、なんだ・・・そんなわけでも・・・・・・」

タクヤはかえってどう反応していいか戸惑っているようだ・・・と、そこへ

「艦長、ブリッジまで来てください。 重大な発表があるそうです」

ブリッジのメグミ レイナードから通信が入った



「じゃあ、私はブリッジに行くから・・・」

「ああ、俺も食堂に行かなきゃなんなかったんだ・・・」

二人は別れてそれぞれの場所にむかった



『タクヤ・・・優しいんだね・・・・・・』

それはやさしいウソ・・・
ユリカにはタクヤのウソが分かってたのかもしれない・・・でも

 

 

『泣くなんて・・・反則だよな・・・・・・』

結局そのせいでユリカへの追求は中途半端になってしまった
「でもまあ、あの様子だと何も知らないんだろうな・・・・・・」


タクヤは改めて、あの日のことを思い出していた

 

 

西暦2186年 火星ユートピアコロニーの宇宙港


この日、テンカワ一家は宇宙港に来ていた

「タクヤ、いつまでもすねてないでいい加減に来なさい」

母親の呼ぶ声が聞こえる

この日は隣のミスマル家が、地球に帰るためその見送りに来てたのだ

もちろんユリカもである

だから、タクヤは行きたくなかった・・・仮病を使って家に残る積もりだったのだが


「仲良くしていた隣のユリカちゃんが遠くへ行っちゃうのよ・・・行ってあげないと寂しがるわよ
 それにタクヤ最近はユリカちゃんのこと避けてたみたいだけど、最後の見送りくらいしないと後悔するわよ」

そんな事はわかっている・・・でも、ユリカが来てほしいのはアキトだけだよ・・・
僕なんかはどうでもいいんだ・・・だったらこのまま会いたくない

それは、本当に子供っぽい子供の意地だった

でも、母はそれを許さずタクヤも無理やり連れてきたのだ(もちろんアキトも来てます)



「・・・やっぱりいやだ・・・・・・」

「!?待ちなさいタクヤ・・・・・・タクヤーッ!」

タクヤは母親の手をすり抜けて宇宙港の中に逃げ込んだ・・・

外に逃げるより人が多く、隠れるところの多い中の方が良いと、子供ながらに感じ・・・その判断は正しかった
だが、それが両親や双子の兄との最後のわかれになるとは、このときタクヤは思ってもみなかっただろう


タクヤは隠れるのが得意だった・・・

両親に見つからないように遮蔽物の陰に隠れ
ユリカ達が行ってしまうのを待つことにした


どれくらい時間がたっただろうか?


どごおおおぉぉぉ〜〜〜ん


宇宙港で爆発が起こり・・・タクヤは気を失った


「・・・痛い、痛いよう・・・お母さん、お母さ〜ん・・・・・・」

目を覚ましたタクヤは怪我の痛さに泣きながら母親をさがした
もっとも幸いなことに、遮蔽物に隠れていたためたいした怪我は無かったが


そして・・・

混乱の中、タクヤは見つけた

何者かに撃たれて、すでに冷たくなった両親の遺体を・・・・・・

「ねえ、起きてよお母さん・・・ねえったら・・・・・・」

両親が死んだことをなかなか理解できなかったタクヤだが・・・
やがて、理屈でなく両親がもう起きてくることはない・・・死んだことを理解した。

「いやだよ・・・こんなのいやだよ・・・・・・お母さん・・・」

そして、タクヤは泣いた・・・母の死体に取りすがって

この、混乱の中・・・タクヤの双子の兄アキトの行方もわからなくなり・・・


そしてその日からタクヤは一人ぼっちになったのだった

 

 

 

 

「テンカワ タクヤです。よろしくおねがいします」

ナデシコ食堂で、タクヤは自己紹介をしていた

パチパチパチパチ・・・

料理長のリュウ ホウメイさんと、食堂で働く5人の女の子達の拍手で迎えられた


でもって、その5人の紹介をば簡単に・・・

リーダーで最年長、ホウメイの補助的役割をになっているポニーテールの女の子
『テラサキ サユリ』

ボブカットの女の子が
『ミズハラ ジュンコ』

三つ編みの子が
『タナカ ハルミ』

短いポニーテールのちょっとミーハな子が
『ウエムラ エリ』

小柄で最年少の子が
『サトウ ミカコ』

彼女達は後にホウメイガールズと呼ばれることになるとかならないとか



さて、それはともかくとして自己紹介も終わり
これからナデシコ食堂での初仕事を開始しようとしたそのとき・・・
艦内放送が流れ始めた





話はチョコッと前にもどす・・・ナデシコのブリッジでは

「ユリカ、どうしたんだよその顔は?」

「な、何でもない心配ないよ・・・それより重大発表って何ですか?」

「ユリカ・・・・・・」

ユリカを見て心配して声をかけるジュンだが、かわされてしまった
ここに来る前にユリカは顔を洗って来たようだが、目が少し赤かったのだ
まるで泣いた後みたいに・・・・・・


ともかくユリカにたずねられ、プロスペクターは話をはじめた

「いままで、ナデシコの目的地を明らかにしなかったのは、妨害者の目をあざむく必要があったためです
 ネルガルがわざわざ独自に機動戦艦を建造した理由は別にあります。
 以後ナデシコはスキャパレリプロジェクトの一端を担い軍とは別行動をとります。」

「我々の目的地は火星だ」

プロスの言葉を引き取りフクベ提督が目的地を言い放つ


「では、現在地球が抱えている侵略は見過ごすと言うのですか?」

おもわず疑問を投げかけるジュン・・・気質が生真面目なだけに容認しがたいのだろう
それに対しプロスもすぐ答える

「多くの地球人が火星と月に殖民していたというのに、連合軍はそれらを見捨て
 地球にのみ防衛線を引きました。火星に残された人々と資源はどうなったのでしょう?」

「どうせ死んでんでしょ」
ルリがしれっとシビアに言った


「わかりません・・・ただ確かめる価値は・・・」
「ないわねそんなこと」

プロスの言葉をさえぎるようにムネタケが現れて言った

と、同時にナデシコの艦内各所で武装した兵士達によって要所を制圧された
兵達はクルー達に銃をつきつける。
食堂でもタクヤや女の子達にさえであった


「ムネタケ、血迷ったか!!」

「うふふふ、提督この艦をいただくわ」

絶対優位を確信してか、ムネタケ余裕である


「その人数でなにができる」
ゴートが言う・・・たしかに二百人以上乗員のいるナデシコを制圧するには少ないかも


「わかったぞ、おまえら木星のスパイだな」
ピントはずれなこと言うのは熱血野郎のヤマダ ジロウ(自称ガイ)
銃をつきつけられたちまち大人しくなったが・・・・・・


「勘違いしないで、ほら来たわよ」

 

 

ナデシコ前方の海面が盛り上がり、そこから先回りしていた第三艦隊旗艦、戦艦トビウメが現れた


「こちらは連合宇宙軍第三艦隊提督、ミスマルである。」

スクリーンに現れた、いかつい提督が名乗る
ちなみに見かけはごついサリーちゃんのパパ、といった風情である。(爆)

「お父様・・・お父様これはいったいどういうことですの?」

「おおユリカ元気か? これも任務だ許してくれ、パパも辛いんだよ・・・」

「こまりましたな、軍とは話がついているはずなんですが・・・
 ナデシコはネルガルが私的に使用すると」


このままほおっておいたら、親子の会話が続いてしまうと感じたプロステクター
すかさず会話に割り込んだ


「我々が欲しいのは今確実に木星蜥蜴どもと戦える兵器だ!! それをみすみす民間に!」

「いや〜さすがミスマル提督分かり易い、では交渉ですなそちらにうかがいましょう」

「よかろう、ただし作動キーと艦長は当艦があずかる」


そう話をふられ、ユリカは作動キーのあるパネルをだまって見つめていた


「艦長! やつらの言いなりになるつもりか?」

「ユリカ、ミスマル提督が正しい。これほどの戦艦をみすみす火星になど・・・」

ヤマダやジュンがそれぞれユリカを説得にかかる・・・ユリカはなお黙って聞いていた


「いや、我々は軍人ではない。命令に従う必要はない!!」

そう言うのはフクベ提督、彼には何か思うところがあるのだろう・・・

「フクベさん、これ以上生き恥をさらすつもりですか・・・
 ユリカ〜私が間違ったこといった事などないだろう」

目を潤ませユリカに訴えかけるコウイチロウ・・・親ばか


黙って聞いていたユリカだが、なにかを決意したのかそのまま作動キーを抜いてしまった
だれも止める間もなく・・・


「ああっ」

「せ、正義が・・・・・・」

「あ〜あ、エンジン止まっちゃう」

「これでナデシコはまったくの無防備」




艦長のユリカはジュンとプロスぺクターを伴ってトビウメにむかう
その表情には、いつもの軽さはなく強い意志が感じられた

 

 

他のメンバーはナデシコ食堂に集められ、まとめて監禁されていた


「ちくしょうおぼえてろよ」

「自由への夢は一日にして終わる・・・か」

「だ〜〜っあきらめるなっ、まだ希望はそこにある」

「はいはい・・・」


なんか暑苦しいやつがわめいてるが、それはおいといて(苦笑)


「なんかがっかり、戦艦に乗ればカッコいい人いっぱいいると思ってたのに」
メグミちゃん君何しにこの船に来たの?

「まあ、世の中そんなものよ」
ミナトさんなんかさとってますね

「ほんと、この船変な人ばっか」
それは言えます


「でも、ネルガルのあのひげメガネの人大丈夫かなあ? ちょっと頼りないよねえ」

「人は見かけによらないよメグちゃん、意外とね大丈夫よ」



「みんな元気出せ、よーしおれが元気の出るモノを見せてやる」

そういうとガイ(ヤマダ)は何かのディスクとプレイヤーをとりだした


「テンカワ、何か始まるみたいだよ」

そう、タクヤに話しかけてきたのは料理長のホウメイさん
そう言われタクヤはジャガイモの皮むきの手を休める

「はあ」

「何かのビデオだってさ」

 

 

「すんげえ旧式のプレイヤーだからさあ、今のテレビに映すの面倒なんだよなあ・・・」

ぶつぶつ文句を言いながらも作業をするウリバタケ・・・やがて作業は終わった

「さーて見て驚け、ディスク・イン・ザ・スタート、スイッチオン」


テレビのスクリーンに映し出されたのは・・・・・・

「ゲキガンガースリー」

早い話がアニメである

そこにいる者ほとんどが表情を引きつらせ固まっていた


「なんだこれは?」

まじめくさった顔をしてまともに聞き返すのはゴート ホーリー

「幻の傑作ゲキガンガー3、いやあモエモエッス」

なんか嬉しそうだねガイ君


「へえー、これオープニングがちがうんだ?」

ゲキガンガーを知っているのかタクヤはそんなことを言った・・・とたんに

「だー、わかる? オープニングは三話からが本当のやつになるんだよなあ・・・」

すぐ反応するガイ君、思わずタクヤも引いてしまう・・・

「なんだ、おまえか・・・」

それがタクヤだと知って露骨に態度変えるガイ


「お前にゲキガンガーを語る資格は無い!」


カチン


なにか音がしたような気がしたが、タクヤ君気を悪くしたらしい

「悪かったな、わかったよ俺は見ないよ・・・」

で、とっとときびすを返してその場を離れようと・・・

「まてまてーっ、お前この俺がせっかくゲキガンガーを見せてやろうというのにどこへいくつもりだ!!」

「おまえ言ってることどっちだ? 俺は資格がないんだろう?」

「そこまでは言ってない、俺が言いたいのは・・・・・・」


「無敵!!ゲキガンガー発進」


わ〜パチパチパチ
ゲキガンガーが始まったとたん二人仲良く並んで見始めたのであった


「バカ?」

 

 

そのころトビウメの応接室では

「まあ落ち着きなさい、それよりユリカやつれたんじゃないのかあ」

「まだ別れて二日しか経ってませんわ、お父様」

「だが、目が赤いぞ・・・何かつらいことあったのではないのかね?」


さすが親馬鹿、目ざとく見つけたようです


「!!・・・たいした事じゃありませんわ、お父様」

「・・・そうかまあよい、それよりおなか空いたろう? たくさんお食べ、たまやのケーキだ。ショ-トもチョコレートもレア
 チーズもいっぱいいっぱいあるからな・・・」

だが、ユリカがここに来たのはそんな事のためではない、にっこり笑ってこう言った

「ねえお父様、テンカワ アキト君覚えてます?」

「はて?、テンカワ、テンカワ・・・だれだったけなあ・・・」

「火星でおとなりだった子です」

「火星?」(このおやぢ結構すっとぼけてるなあ)

「お父様、私アキトの双子の弟のタクヤに会いました」

 

 

「殺された!?」

「ええ、お父様は何かご存知かと・・・」


(まさか、今更こんな話が出てくるとはなあ・・・だが)

「何かの間違いだろう? テンカワが事故で死んだのは事実だが」


と、話がここまで進んだ所で扉が開き、話がすんだプロスペクターとジュンが入ってきた


「結論は出たかね?」

「はい、いろいろ協議いたしまして、ナデシコはあくまでわが社の私有物でありその行動に制限うける必要なし」

プロスペクターははっきりと宣言した

 

 

 

そのころナデシコではゲキガンガーのビデオ鑑賞をしていた


「ゲキガンパンチ」

「ゲキガンカッター」

「ゲキガンビーム」




「地球の自然を・・・」


「緑の地球を・・・」


「俺達が守る・・・」


ゲキガンガーの主人公たちが決め台詞を言っているようだ



「しかし暑苦しいなあこいつら・・・」

ウリバタケさんまっとうな感想です

「武器の名前を叫ぶのは音声入力なのか?」

ゴートさん真面目腐った顔をしてそんなこと言うと
冗談か本気かわからないんですが・・・多分本気で聞いてんだろうけど


「だーっちがうちがう、これが熱血なんだよ、魂のほとばしりなんだよぉ〜」

ガイ君熱のこもった演説です・・・ん?

『うつらうつら・・・』フクベ提督、退屈?なのかおねむ〜のようです

その光景見てガイはさらにヒートアップした

「みんな〜、このシュチュエーションに燃える物を感じないのか〜っ
 奪われた秘密基地、軍部の陰謀、残された子供達だけでも事態を打開して鼻を明かしてやろうと思わねえかぁ」


ガイ君仁王立ちになって訴えかけます
たしか骨折したよな足大丈夫か?


「でもさあ、艦長いないと動かないよこの船」

ルリ、的確な突っ込みです

「根性でなんとかなる!」

無茶言うなよ(苦笑)


と、こんな会話が交わされる間に、タクヤは考え続けていた・・・俺はなぜここにいるんだろう、何をしたいんだろうと
火星にいたころは機械にも興味があったので整備士のまねごとをしたりした、よくわからないうちに地球に来たあとは
ある食堂で拾われてそこで食べた食事に感激して料理人を目指したりもした・・・

その食堂を飛び出した後、なりゆきでナデシコにきていまここにいる・・・

正直な話、タクヤは自分が何をしたいのか今でも良くわからない・・・だが


ガキ〜ン


気が付いたら入り口にいた兵士を後ろから中華なべで度突き倒していた

「オレ、ロボットで脱出して艦長を連れ戻してくる」

タクヤは静かに宣言した

「オレは火星を助けたい・・・たとえ世界中が戦争のことしか考えてなくても・・・正直オレなにをしたいのか
 今でもよくわからない。・・・でも、その何かをさがすためにみんなここにいるんじゃないかって・・・」


タクヤの気持ちがどう伝わったのかわからない・・・
だがこれを切っ掛けにナデシコクルーによる反撃が始まるのだった


「やるじゃないかタクヤ、見直したぜ・・・」

 

 

 

 

「チューリップだと?」

トビウメ艦橋に移動したミスマル提督が報告をうける

「護衛艦パンジー、クロッカスともにつかまりました」

「やつめ、生きていたのか」

チューリップの口が開き二隻の護衛艦は次々と吸い込まれていく・・・・・・


「ナデシコの発進準備、さあユリカ作動キーを渡しな・・・ん!?」

見るとそこにはユリカはいなかった

「ユリカはどこだ?」

「ここですわ、お父様」

艦橋のメインスクリーンにユリカの姿が映し出される

「もういちど聞きます、アキトのご両親の件ですわ」

「ユリカ、こんなときになに言ってるんだ」

気が付きゃおいてきぼりくってるジュンが聞き返します

「私には大事なことなの」

ジュンおまえ立場ないな・・・

「お父様、本当のことおっしゃって」

「ユリカ・・・」

ミスマル提督しかたなく・・・

「たしかにそんな話も聞いたような・・・だがお前に聞かせるにはその・・・」

「わかりました・・・行きましょう」

プロスにうながしてヘリを発進させるユリカ


「ま、待たんかユリカ、行くってどこへ」

「どこへって、ナデシコですわお父様」

さも、当然という顔をしてそう言うユリカ


「ユリカ、提督に艦を明け渡すんじゃ・・・」

「ええっ、私はただタクヤの話が本当なのか確かめにきただけだもん」

「ユリカ〜ッ」

「艦長たるもの、たとえどのような時でも艦を見捨てるようなことはいたしません。そう教えてくれたのはお父様ですわ」

「し、しかし・・・」

「それではお父様、これで」

そこまで言うと通信を切ってユリカは行ってしまった・・・ジュンとおやぢを置き去りにして

 

 

 

 

「ありがとうオッケイです」

エステバリスに乗り込んだタクヤはマシンガンを乱射しつつ
援護しているゴートに礼をいう

「ルリの指示に従え」

事務的に指示をだすゴート




意外な成り行きに作業をしつつ口元がほころぶルリ

「あれ、ルリちゃんいま笑った?」

「別に・・・」

メグミの問いにそっけなくルリは答える
だが、ぽつりと独り言

「私もけっこうバカよね・・・」




「ぶいっ」

「えええ〜っ」

「今から帰ります、おむかえよろしく」

ユリカの宣言に驚くムネタケ
そのムネタケのもとにはあちこちからナデシコクルーに制圧された報告が入る

そのブリッジもあっさり制圧された・・・ムネタケあわれ・・・




「いきまーす」

「位置について」

「マニュアル発進、よーいどん」


「まて〜っテンカワ、それは陸戦用、飛べないやつなんだよ〜」

遅れてきたウリバタケがあわてて通信をおくる・・・が間に合わない


「飛べー」

「それは陸戦タイプなんだよーー」


どぼ〜ん


陸戦エステはあっさりおちた・・・(汗)


何度かジャンプと墜落を繰り返す・・・その上空をユリカを乗せたヘリが通過してゆく

「タクヤ、またおとりになってくれるのね?」

「なにい」

「この隙にユリカはナデシコに乗り込みます」

で、その海中のエステの横を何か巨大な触手のようなものが通過してゆく

「だから、陸戦タイプなんだってばあ」

ウリバタケがしつこく突っ込むが、この場合役にたたないのであった



「ぴょこぴょん、ぴょこぴょん元気いいわね」

ブリッジではその様子をミナトさんがあきれて見ていた


「超特急でおまたせ」

メグミとルリがゴートに抱えられて入場、片手で女の子それぞれ抱えてこれるとは・・・すごいぞゴート

つづいてユリカがブイサイン出しながら入場

もどったユリカが作動キーをまわし、ナデシコは再起動する


「それでは早速全速前進」

「ええっ〜」

ユリカの指示に驚くクルー

「その前にヤマダさんが発進許可を求めてます」

こんなときでもルリちゃん冷静だね

「「「ヤマダさん?」」」

「ダイゴウジ ガイだっ、さあ準備は万全いこうかあ」

そんなわけでヤマダのエステバリス空戦フレームが発進していく

「ダイゴウジ ガイだ」





陸戦フレームで思うように身動きとれないタクヤ・・・ピンチです

「あきらめるな、またせたなぼうや」

カッコつけて登場は(自称)ガイであった


ゲキガンウィーング


なにやら掛け声かけつつチューリップの触手をかわすガイ
腕はたしかにすごいようだが・・・


「いいか、空中でこの空戦フレームをおまえのコクピットと合体させる。掛け声はクロスクラッシュ」

「・・・言わなきゃだめか?」

「だ〜め、ではいくぞ」

「クロスクラ「声が小さい!!」

・・・タクヤもうやけくそである


「「クロスクラッシュ」」


二機のエステの機体とコクピットがそれぞれ分離し
タクヤの乗るコクピットがガイの空戦フレームと合体をはたす


「いけータクヤーゲキガンフレアーだ」


「ゲキガンフレアー」


すでに乗せられているタクヤだった


タクヤのエステバリスのディストンションフィールドによる高速アタックにより
チューリップの触手はすべてたたき折られた

 

 

「うそ〜」

「ゲキガンフレアーって何?」

ルリ、素朴な疑問のようだ

「こちらも負けずに全速前進」

「やっぱ行くの?」

聞き返すミナト

「行きます」

ユリカは躊躇なく言い切った



ナデシコは前進を開始してチューリップに突入する

「やめろー何かんがえてるんだ」

思わずタクヤが叫ぶ

『ユリカ〜』



「グラビティーブラストチャージ」

「グラビティーブラスト発射」

チューリップ内部からの砲撃でこれを完全に殲滅した


「・・・内側から砲撃・・・何考えてんだユリカ・・・」

たしかに大胆な作戦ですね・・・うーん

「タクヤのエステバリスを回収します」

「ヤマダさんも出てますけど」

メグミちゃんフォローします

「ついでに回収します」

「ヤマダさんお手柄ね」

ルリめずらしくほめてます

「ダイゴウジ ガイ〜ッ」

ガイの抗議は・・・いつものことか

 

 

 

タクヤ達エステバリス隊を回収したナデシコはこの海域を去っていった・・・

「提督、ナデシコが去って行きます。追撃しますか?」

幕僚の進言に、コウイチロウは首を振って答えた

「もうあの艦のスピードには追いつけんよ作戦は失敗だ
 それよりも アオイ君、キミはこれからどうするのかね?」


「ユリカ・・・」

ユリカに置いてきぼりにされたアオイ ジュンは
ナデシコの去っていった方向をただ見つめているだけだった・・・

 

 

つづく





あとがき


さて、ようやくできたのでおとどけします

これ書き始めてから改めて思ったのですが、僕はユリカというキャラがすきなんだなあ・・・と

書いてみると、読むだけではわからないこともわかったような気もします

SS書くのはむずかしいけど楽しいと思うのはこういうことなのかな・・・なんてね



今回は、本当はユリカをもっと追い込めるつもりだったのですが・・・

どうも僕は非情に徹しきれないようです。

タクヤも僕も甘いなあ・・・

でも、それもいいかなと思ってます



次回はジュンがナデシコの前に立ちふさがります・・・はたしてナデシコは宇宙に飛びたてるのか?

なーんてね、結果は言うまでもありませんが・・・でも次は星界の漂流者先に書くのでしばしまってね、では

     

 

 

 

代理人の感想

 

う〜む、なんのかんの言いつつ兄とそっくり同じ行動取ってやがる(笑)。

ユリカに対する態度はちょっぴり違うけど。

 

ふと思ったけど、アキトが木連側について登場、ってことは・・・・・・ないかな(笑)?

 

業務連絡:装飾はこんな物でOKであります。