第2話「皆には内緒にしておいて下さいね」
「ん・・・」
太陽の日差しが眩しい。
もう朝か・・・
コン コン・・・
「アキトさ〜ん、朝ですよぉ。」
この声はむつき・・・ママか。
そういえばいつの間にかいなくなっていたな。
出て行くのに気付かなかったなんて・・・よほどぐっすり寝ていたんだな・・・・・・
「今行きます。」
そうだ・・・今日から学校が始まるんだった。
早く制服な着替えないとな・・・
「なつかしいな・・・こういうの。」
こうしていると本当に落ち着くな・・・
俺はこんな普通の生活を送りたかった・・・
火星の後継者さえいなければ・・・
俺がA級ジャンパーでなければ・・・
サセボでユリカと出逢っていなければ・・・
「ま、今の生活は悪くないけどね・・・」
そう、過去があるから今があり、そして未来がある。
あの過去があったから、今は皆笑っていられるし、これからも笑っていられるだろう。
俺は朝食を済ますためにリビングに向かった。
・ ・ ・
だけど全く問題がないわけでもないんだよな。
「私達は、昨日からあなたのママになりました。
けれど皆には内緒にしておいて下さいね。
さすがに私達が同居してるなんて知られたら大変な事になりますからね。
学校ではきちんと先生と呼ぶように。」
という訳だ。
俺だって今の状況には不満は抱いていないのだから、学校にはバレないようにしたい。
だけど俺って嘘がつけない、というよりはつくのが下手なんだよな・・・
すぐにボロを出してしまうからな・・・
うん、気をつけよう。
「私としては学校でもママってよんでほしかったんですけど・・・」
なんでそこで残念がるんですか?むつきママ。
「むつき、その卵焼きもらうぜ。」
「あ!何するんですかさつきさん。」
「じゃあさつきちゃん、この鮭うづきに頂戴。」
「やなこった・・・って、あ〜〜!!何勝手に持っていってやがる!!」
「食事のときくらい静かにしなさいよ。」
「・・・ごちそうさま。」
リビングは戦場と化した・・・(といってもうづきママとさつきママが主体)
「いってきまーす。」
「「「「「いってらっしゃーい!」」」」」
俺は5人のママ達に見送られバス停に向かった。
それにしてもママ達は間に合うのだろうか?
今の時間を乗り損ねると遅刻は必至なのに。
プシャア・・・
「お、来たな・・・」
バスの中は意外にも空いていた。
そこで俺が目にしたものは・・・
「何でここに・・・ていうかどうやってここに?」
何やら本を読んでいるむつきママとやよいママ。
ヘッドホンで音楽を聴いているきさらぎママ。
なにやら楽しそうに話をしているうづきママとさつきママ。
っと、ママって言っちゃいけないんだった。
「あの〜、先生方。
一体どうやってこのバスに乗ったんですか?」
「それは勿論、バス停から乗りましたよアキト君。」
なんてこった・・・この人達も同類だったのか。
「君が仁歳アキト君だね。
私はここの学校の校長をしているものだ。
校長先生と呼んでくれ。」
「分かりました。」
「君の教室は3−Aだ。
ようこそ、こよみ学院に。」
こよみ学院。
下は幼稚園から上は大学。
続に言うエスカレータ(それともエレベータだっけ?)式の学校であり、一つの敷地にそれらが全て集結している。
他にも、学生食堂は勿論、一般開放の図書室。
様々なスポーツ競技の専用体育館とグラウンド(時には一般に貸し出しをしたりしている)。
徒歩5分のところには2000人もの学生寮もある。(3LDKで家族も一緒に住めると聞いたときはさすがに驚いた。)
校訓は・・・多分すぐ忘れるだろうから覚えなくていいや。
あんなのは学級目標と同じで「え、そんなのあったっけ?」てなかんじになるんだから。
「これから直ぐに始業式が始まって次に入学式が始まるから、君はこの学校を見学しておきなさい。
終わったら連絡しよう。
なあに、1時間半程で終わると思うから。」
確かに、この学校はかなりの広さだ。
今の内うちにどこに何があるか覚えておいた方がいいだろう。
「分かりました。
では、失礼します。」
俺は校長先生に一礼して、校長室を出た。
・・・迷った。
俺は確かまず3−Aの教室に行こうとしたはずだ。
何が悲しくてまた校長室に戻ってきてるんだ?
とりあえず案内板を見てみる。
「ここが多目的ホールになっていて・・・教室はそこからこう行けばいいのか・・・
よし、まずは多目的ホールに行こう。」
それから5分後、やっと多目的ホールに俺はたどり着いた。
「ここからこう行けば教室に行けるんだな。
そういえばここはどうなってるんだろうう?
カギは・・・掛かってないな。」
そう言って俺はホールのドアを開けた。
・・・今思えば、ホールの中にはかすかな気配が多数存在していた。
「あっ!!」
俺がホールで見たのは今年高校一年生になった新入生の入学式だった。
会場全員の視線がすっとんきょんな声を上げた俺に集中する。
「し、失礼しました〜〜。」
俺は逃げるように(事実そうなった)その場から去った。
なんで俺ってこんなんばっかりなんだろう。
「皆さん、おはようございます。
まずは今日から皆さんと一緒に勉強する事になった転校生を紹介します。」
むつき先生にうながされ俺は自己紹介を始めた。
第一印象は大切だからな・・・明るくいこう
「仁歳アキトです。
両親が亡くなってしまい今まで施設にいましたが、18歳になった為、ここ師走町に戻ってきました。
どうかよろしくお願いします。(ニコッ)」
あれ?失敗したかな?
女の子達はなんかぼ〜っとしてるし・・・聞いてなかったのかな?
男の方からは殺意を感じるし・・・なんかまずい事言ったかな?
「え〜、では何か質問のある人は?」
「はいっ!」 「はいっ!」 「はいっ!」 「はいっ!」
「はいっ!」 「はいっ!」 「はいっ!」 「はいっ!」
「はいっ!」 「はいっ!」 「はいっ!」「はいっ!」 「はいっ!」
うっ・・・なんか男子から殺意のこもった気を感じる。
さらに女の子の方からもそれを上回るただならぬ気を多数感じる・・・
「で、では・・・陣内まどかさん。」
「あ、あの・・・仁歳さん・・・」
「何?(ニコッ)」
「はうっ・・・こ、恋人は・・・いるんですか?」
・・・なんて答えよう?
下手に答えるとルリちゃんたちから「おしおき」を受けてしまいそうだ。
「テンカワ君。
君は仁歳アキトとして学園生活を楽しんでくれたまえ。」
ふとアカツキの言葉を思い出した。
そういえば今朝のニュースで「ネルガルの会長行方不明!?」という報道があったのを思い出した。
そうだ・・・アカツキは(多分)俺の所為でルリちゃん達から「おしおき」を受けているに違いない!!
俺は親友の遺言を素直に聞く事にした。
「いや、いないよ。
それと俺の事はアキトでいいよ、まどかちゃん。(ニコッ)」
「きゃああ〜〜〜〜!!!」 (クラス女子多数の声・・・まどかは卒倒)
ゾクッ・・・
急に男子の方からの殺気が上昇した。
どうなってるんだ一体?
「他に質問のある人はいませんか?」
「はいっ!!」 「はいっ!!」 「はいっ!!」 「はいっ!」
「はいっ!!」 「はいっ!」 「はいっ!」 「はいっ!」
「はいっ!!」 「はいっ!」 「はいっ!!」「はいっ!!」 「はいっ!」
男子の質問が増えたな・・・それ以前に殺気がすごい。
「先生!次は俺に!!」
「何よ!!男子は黙ってなさいよ!!」
「何だと!!でしゃばるんじゃねえよ、ネコかぶりやがって!!」
「なんですって〜。」 (女子全員)
「なんだよ。」 (男子全員)
教室はさながら、”○三国無双”状態になった。
男子達が女の子達に向かっていったが、女の子達のかばんの一振りで吹っ飛んでいった。
「うわぁぁぁ!!」と男子の断末魔の叫びがこだまする。
「敵将!!討ち取ったり!!!」なんて叫ぶ女子もいる。
窮地に陥った男子は、机の中から中華まんを取り出し、体力の回復を図る。
だが、食べてる最中に女の子達が一斉に無双乱舞をしたため、全員戦闘不能となった。
ここで、後に”転校生の乱”と呼ばれる争いは、女子の大勝で幕を下ろしたのであった。
「質問はないようですね。
それじゃあ、HRを終わります。
今日はこれで学校はお終いです。
皆さん、気を付けて帰りましょうね。」
場を理解していなかったむつき先生がHRの終了を告げた。
「ふっ・・・どうにか今日という日を生き延びる事が出来た・・・ってちが〜う!!」
なんなんだここは!?
これじゃあナデシコとなんら変わりないじゃないか!!
・・・いつになったら俺の周りは平穏になるのだろうか?
俺は足取りも重く、学校を出ようとした。
校門の前に一人の少女が立っていた。
俺の姿を確認するなり、走ってこちらに向かってきた
誰だろう?この子・・・
その少女が俺の顔を見るとこう言った。
「あの〜〜。
テンカワ アキトさんですよね?」
「!」
この子は俺の正体を知っている!?
俺は動揺しているのを何とか悟られないようにして少女に聞き返した。
「誰なんだい?君は・・・」
次回予告
「テンカワアキトさんですよね?」、見知らぬ少女が発した言葉・・・
アキトは動揺を隠せないままでいた・・・
この子は一体誰だ・・・そして何者なんだ・・・
少女は語った。「私だよ。六祭みなづき。」・・・
アキトは昔、施設で仲良しの女の子がいたのを思い出す・・・
「お兄ちゃん・・・逢いたかった・・・・・・」不意に抱きついてきた少女・・・・・・
「とりあえずどこかで話そう」。彼女に連れられ、入った喫茶店・・・
このときアキトは気付かなかった・・・
彼女が食べるデラックスジャンボパフェ(定価¥3000)の精算を自分が済ます事になるのを・・・・・・
HAPPY★NADESICO 第3話 「お兄ちゃん!!」
後書き・・・
うう・・・ふみつきより先にみなづきを出しちゃった。
でも、彼女は作者のハピナデでは一番のお気に入りなんだよね。
ともかく、次こそふみつきを出して「フケツよ!!」と委員長であるなら誰しもが叫ぶ名セリフを言わしたいです。
今回は後書き短かったな・・・
代理人の感想
メインキャラは全員月の名前ですか、ひょっとして。
なんかキャラの登場順が変わってるようですが・・・
ま、七月(文月)の前に六月(水無月)が来るのは自然な流れなんでしょう(笑)。