Anytime

authored by Effandross




  Interstates−10を降りて東に銀のマスタングを走らせる。 ネルガルL.A.支部からおよそ120マイルほど離れたところにあるパイロット訓練校の格納庫に、次の訓練に向かうための足、そして俺の手足として働く者たちが待機している。 そこから我々はアリゾナに建てた襲撃地点を模した建物にてこのミッションに対する最終訓練を行い、オーストラリアのミッションに向かう。 こんな訓練は、毎回できるというわけではない、それだけ次のミッションが重大だということだ。 集結時間までまだ80分、ここからならあと35分も走らせば余裕で間に合う。 カウンティの境に来たのか、ラジオの音が不鮮明になる。 だがそれはすぐに自動的に修復され、再び気だるいレゲェを流し始める。
  燦々と輝く太陽の下、左も右も礫砂漠のような乾いた風景に灌木が砂埃に被って風に揺れているのが見える。 ごくまれに崩れかけたような家屋が見えることもあるが、活気というものはまるでない。 このカリフォルニアの田舎の風景は俺の好みに合わない。 さっさと集合地点に向かって喉を潤したいものだ。
  しかし、任務に次ぐ任務。 任務、訓練、そしてまた任務。 火星の後継者とクリムゾンを明確な敵として認識した後にはこのサイクルはますます早くなった。 硝煙と死の臭いは身体にすっかり染み付き、潤いというものから縁遠くなってしまった。 ……いや、臭いそのものは消すことはできる。 だがその臭いは魂に染み付き、雰囲気という形で現れるものだ。 ちょっと勘の鋭い者なら俺が暴力の世界に生きることは感じ取れるようだ。 最後に笑ったのはいつのことだったか。 唯一心が休まる時は、ちょうど今のように時間に余裕を持って移動しているような時くらいか。
  そう、こんな時ぐらいしか心が休まることが無い。 ならば急いで集合地に着こうと心をせきたてるまでも無い。 多少なりとも、好みの場所ではないがゆっくりとしようではないか。

  俺は道すがらのMobileに止まり、キンキンに冷えたノンアルコールのビールとビーフジャーキーを買う。 ラジオのボリュームを心持ち大きくし、ビールを片手に再び車を走らせる。 アップテンポの古いロックを聴き、指でリズムをとる。 悪くない。
  そんな中、ラジオのDJが告げる。

"Tired of damn hot weather, huh?クソ暑いこの毎日に嫌気が差してないか?  To forget it, here is a good song for you.そんなむしゃくしゃを忘れるためのにお勧めの曲がある It is my favorite old sweet song, 'Anytime' by Brian McKnight.ボクが大好きな、古くて甘い曲、”Anytime”、Brian Mcknight だ Enjoy.痺れるぜ"

  パーカッションとピアノの静かな音がスピーカーから流れ出す。 俺がかつて良く聴いていた曲だ。 まだこんな世界に入っていないときに。 とっさに時間を確認、集結時間まで1時間近く残っている。 5分、使う。
  俺は車を道端に停め、エンジンをかけたままシートを軽く倒す。 歌詞は全て頭に入っている。 そして頭に浮かんでくるのは、あの運命の戦艦で知り合い、愛し合い、そして別れた女。 ハルカ ミナト。
  やがて流れてくる心をくすぐる歌声に、彼女を思い出して思いに浸る。






I cannot remember why we fell apart

なぜ別れることになったのか、今でもよくわからない。

For something that was so meant to me, yeah

お前が無事でいて俺を待っていて欲しいと思うことは俺のただのエゴだったのか。

Forever was the promise in our hearts

いつまでも、そうあって欲しいと願っていたのは俺だけだったのか。

Now more and more I wonder where you are...

今になってお前のことばかりが気になる……。



Do I ever cross your mind, anytime?

俺のことが心にかかったことは無いか?

Do you ever wake up reaching out for me?

俺のことを探しに目が覚めてしまうことはないか?

Do I ever cross your mind, anytime?

思い出してくれることは無いか?

I miss you...

会いたい……。



Still have your picture in the frame

お前の写真は今でもすぐそばにある。

Hear your footstep down in the hall

お前の足音を夢に見ることすらある。

I swear I hear your voice driving me insane

お前の声を聞きたくて狂おしく思う夜が幾夜続いたことか。

How I wish that you would call to say...

そして俺がお前が電話してこう言ってくれることを望んでいることか……。



Do I ever cross your mind, anytime?

『わたしのことを思い出すことはない?』

Do you ever wake up reaching out for me?

『私を思って起きてしまったことはないの?』

Do I ever cross your mind, anytime?

『心のどこかに思っていて欲しい』

I miss you...

『寂しいよ……』





No more--Loneliness and heartbreak

もうたくさんだ、孤独の寂しさにも胸の痛みにも。

No more--Crying myself for sleep

心で泣きつつ眠ることも、

And no more--Wondering about tomorrow

明日が見えないままでいることも。

Won't you come back to me? Come back to me?

だから帰ってきてくれ! そばにいて欲しいんだ!



Do I ever cross your mind, anytime?

いつでもいい、俺のことを思い出すことはないのか?

Do you ever wake up reaching out for me?

俺を思い出して目を覚ましてしまうことはないのか?

Do I ever cross your mind, anytime?

俺が心にかかることはないのか?

I miss you...

会いたい……。

I miss you...

会いたい……。

I miss you...

会いたいぞ、ミナト……。





  突然目の前に蜘蛛の巣のようなひびが入り右腕に痛みが走る。
  痛みを無視してハンドルを切りつつアクセルをふかし、視界の隅に狙撃者の乗るジープを捕らえる。
  左手でハンドルを操りつつ懐から45口径を引っ張り出し、同時に三連射。
  右側の窓ガラスを崩壊させつつ放った銃弾が、確実にジープを破壊したのを見ると、俺は満足してグレネードを放ち、結果を見ずに走り出した。 背後から聞こえる爆音。 ミラー越しに完全に破壊されたジープが見える。

「惜しかったな」

  かすかに唇を歪めてそう一言言い捨てると、マスタングを走らせながら右腕の応急手当を済ませる。 
  曲が終わるまで待っていてくれた無粋な襲撃者に感謝しつつ、この糞ったれな戦争が終わったら彼女に会ってみよう、そう思った。






後書き
  2005年最初の投稿です。 最近すっかり短編作家のEffandrossですが、一緒にやや長編も投稿してしまいます。 久々にはまった曲をベースに、適当に書いてみました。 執筆時間2時間というのは、自己最短記録です。 まああんまり内容もないですが。 
  あ、それと、歌詞の左についてる日本語を、間違っても英語の歌詞の日本語訳とは思わないでください。 ある程度重ねてありますが、まあ念のため。


 

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代理人の感想

内容がないy(ZAPZAPZAP)

 

げふんげふん。ただいま、見苦しい場面がありましたことをお詫び申し上げます。

 

とは言えお話というより一つの場面でしかなく、まともに感想つけられるほど内容が無いのは事実で。

強いて言うなら「ゴートさんの意外な一面」ととるか、「ゴートさんっぽくない」ととるか、微妙なところだなぁという位でしょうか。

 

後、狙撃されたのに拳銃で反撃できるのかとか、

反撃できるような距離ならサブマシンガンでもばら撒いたほうが有効だよなとか、

3発で車一台をお釈迦にできるような銃を撃たれた腕一本で保持して正確に撃てるのかとか、

そういうことに関しては突っ込まないことにしましょう。

まぁ最後の点に関しては「痛みが走った」だけで確かにどの程度の傷かという描写は全くないんですけどね(確信犯?)。