俺は頭の中が真っ白になった








嗚呼、薔薇色の人生
〜ある男の悲劇と対策 IF IN 時ナデ〜
第2話







「・・・・・しんくのらせちゅ」

思わず口をついて出た言葉だが、ろれつが回っていなかったらしい。
それを聞いた北斗ははじめ、はっと目を見開いたが、やがて

「・・・らせちゅって何だ。らせちゅって」

と言って不機嫌な顔になり俺を睨みつけた。

「北斗、そのような顔をするでない。可愛い顔が台無しだ」

いつの間にか目を覚ましていた北辰が言う

「げっ!親父いたのか!?」
「その言葉遣いも止めよ。我の事は「パパ」か「父さま」と呼べと何度も言っておるだろう?
 少しは枝織を見習ったらどうだ」
「そんな事言えるか!」
「北ちゃんメーなの。父さまと喧嘩しちゃ駄目」
「五月蝿いぞ枝織。お前は黙ってろ」
「うぅ〜、北ちゃんが怒った〜」
「おお、可哀想な枝織。こっちへおいで」

枝織はトテテテッ と駆け出し、北辰の胸へ飛び込む。
北辰は枝織を優しく抱きしめ、よしよしと頭を撫でながら言った。

「愛いやつよ。さすが我が娘(※枝織は男の子です)。
 どうだ?何か欲しいモノはあるか?可愛いお前の為、何でも手に入れて来よう。
 ・・・・・ただし男は駄目だぞ。それだけは許さん」

子供相手に何を言っているのか。

「枝織新しいお洋服が欲しいの〜」
「前から言っておったやつか?あれならば買わずとも、
 コツコツと夜なべして作っておいたわ。
 ついさっき完成したぞ!どうだ?着てみたいか?」
「父さま本当!?」
「うむ」
「アリガト父さま!」

ちゅっ

「早速着てみるね!」

枝織は北辰の頬にキスをして去っていった。
北辰は満面の笑みを浮かべている。心なしか目尻もトロンと垂れているように見える。

「くくくっ。計画は順調だ。これで近いうちに・・・・」
「まったく。気持ち悪いぞ親父」

北斗は本当に厭そうだ。よく見ると鳥肌も立てている。

「心配するな北斗。お前の分もちゃんと用意してある」
「な、何だと!?」
「ちゃんとぷりちぃ に仕上げたぞ。枝織の物の2倍は時間をかけた力作だ」
「そんなモノ着れるか!!」
「何を言う。せっかく作ったのだぞ?」
「俺はいらん!」
「また自分の事を俺などと・・・・そんな言葉遣いは止めよと言っただろう!」
「五月蝿い!」

コノヤロー!とばかりに北辰に向かっていく北斗。
しかしそこは6歳児。あっさりと北辰に捕まってしまった。

「くっ」
「北斗よ、心配せんでも分かっておる。
 今までの服が気に入らなかったのは、枝織と同じモノだったからだろう?
 お前の方がお姉ちゃんなのにな・・・・・。
 だから今回の物はそのあたりをちゃんと考慮して、豪華に仕上げたのだ。
 これでお前の可愛さも引き立つ事間違いなし!
 どうだ?着てみたくなっただろう?さあ帰るぞ」
「放せ親父!はーなーせーーーー!!!

北辰は北斗を引き摺りながら出て行った。

「はぁ・・・。まったくいつもいつもあの2人は」

さな子がこめかみをヒクヒクさせながら言う。

「幸一殿、八雲殿。それでは失礼します。ご迷惑をお掛けしてすみません」
「ははは。何時もの事ではないですか。なぁ、八雲」
「はい、父上。流石にもう慣れましたから」
「・・・・・・本当にすみません」



こうして、着任1日目は慌ただしく過ぎていった。
ちなみに、夕食は影護家でご馳走になった。歓迎会を開いてくれたのだ。
料理は肉じゃがなど和風のものが中心。・・・・・作ったのは何故か俺だったが。
枝織は、大きなヌイグルミを改良して作られた「ねこスーツ(黒色)」を着用していて、
再び北辰の顔をとろけさせていた。
北斗が着せられていたのは、ピンクを基調にして作られた
フリルいっぱいのゴズロリの服だった。
顔を恥辱で真っ赤にしながらも

こんな事で泣いて堪るか・・・・。俺は真紅の羅刹なんだ!

と目に涙を浮かべて呟く様は、とても保護欲をそそられるものだった。
そんな状態だったので、北斗の呟きに重要な言葉があったのだが、
俺はそれに気付かなかった。









1ヵ月後

「・・・・・ここが火星か」

大地をしっかり踏みしめて、しみじみと呟く。
宇宙に行くだけでも大事だった時代に生まれた俺にとっては、
こうして他の惑星に行けることへの感動はひとしおだった。

げしっ

「何呆けてるんだ。さっさと行けよ」

突っ立っていたら北斗に蹴られてしまった。
ここ1ヶ月、影護家との関係はいたって良好だった。
朝早くから副長補佐として書類と格闘しなければならなかった事は辛かったが、
影護家、とかく北斗と枝織との触れ合いは、そんな生活の癒しだった。
毎日2時間は北斗や枝織、それに東舞歌と遊んだ。
鍛錬に付き合った時は骨折などする事も多かったが、それでも俺は毎日3人と遊んだ。
それに骨折くらいなら一晩寝れば完治している。
そんな目にあっても文句1つ言わずに相手をしていたからだろうか?
北斗たちはすぐに俺の事を気に入ってくれた。
ただ、俺の体で技の研究をするのはやめて欲しかったが。
舞歌にはよく悪戯をされた。
一度それで無視した事もあったのだが、何故か次の日からの書類の量が2倍になり、
舞歌に無視した事を謝るまでそれが続いた。
その時、この子には逆らってはいけないと悟った。

「火星は初めてだから感動してたんだ」
「どうだか・・・・・。それよりさっさと行くぞ」

そう言って車に乗り込んだ。
ちなみにこの車は幸一が部下に言って用意してくれたものだ。
俺達は今ユートピアコロニーを目指している。
北斗は上機嫌だった。よほど火星に来たのが、コロニーへ行くのが嬉しいらしい。
昨日のこと、北斗が急に

「ユートピアコロニーへ行きたい」

と言い出した。
だが生憎、北辰やさな子には和平協議の護衛の仕事が入っていたので、
代わりに俺が連れて行くことになったのだ。
枝織も行きたがっていたが、流石に2人は面倒見切れないので、
八雲や舞歌に頼んで引き止めてもらった。

「なぁ北斗。どうしてユートピアコロニーへ行きたくなったんだ?」
「・・・・・・逢わなければならんやつがいるんだ」
「知り合いでもいるのか?そんな事は聞いていなかったが」
「俺が勝手に知っているだけだ。むこうが知っているとは限らない」
「そうか」

俺達は車を走らせる。










「いない?」
「ああ、10日くらい前だ。お隣のミスマルさんが急に地球に行く事になってな。
 家族そろって空港まで見送りに行ったんだが・・・・・テロが起こってな。
 ご夫妻は巻き込まれて死んでしまって、息子さんは施設に預けられたよ」
「そう、ですか・・・・・。施設の場所は分かりますか?」
「すまんね。そこまでは知らないよ」
「教えていただき、ありがとうございました」

北斗が逢いたかったのは、テンカワ親子らしい。
さな子さんが地図を教えてくれたので、それを頼りに行ったのだが、
家には誰もいなかった。そこで通りかかった人を捕まえて話を聞いたのだ。
北斗は、ここにいないと聞いて目に見えて落ち込んでいる。

「どうする北斗?とりあえず、コロニーを見て回るか?」
「いや。もう帰ろう」
「もういいのか?来たばかりなのに」
「いいんだ。枝織も待ってるしな」

そう言った横顔はとても儚げだった。

 
 
 
 

 
 
 



 
 
 



そして、運命の時が訪れる

 
 
 
 

 
 
 



 
 
 



ドガァアアアアアアアアアン!

「な、何だ?」

ユートピアコロニーを後にしてイザヨイに向かっていると、爆発音がした。
見上げると、連合の艦が1つ地表へ向かって落ちていく。
その時、幸一から通信が入った

『ゲンドウ君、早く戻りたまえ!戦闘が始まった!』
「幸一殿!一体何故ですか!?和平は・・・・」
『・・・・協議は失敗だ。和平とは名ばかりの無茶な要求を突きつけられてな!くそっ。
我々も何とか抑えて協議を続けたが、氷室が業を煮やし連合の高官を撃ったのだ!
閣下の命があったとはいえ、あの若造を連れてきたのはやはり失敗だったか』
「閣下はどうなったのです?」
『行方不明だ。現在、北辰殿と八雲が捜索している。
 私や氷室はさな子殿のおかげで艦に戻る事ができたが・・・。
 君も早く戻れ。北斗に何かあっては北辰殿に申し訳が立たん』
「しかしこちらは車です!!どうやって艦に乗り込めというのですか!?」

戦闘が始まった為、イザヨイはいち早く浮上し始めている。
草壁は行方不明だが、この艦には四方天の1人が乗っているのだ。
間違っても落とされるわけにはいかないとの艦長判断だった。

『何を言っている!轟(くるま)は飛べるだろうが!』
「飛びませんよ!これは普通の車なんですから!」
『だから、普通の轟は飛ぶんだよ!機動兵器なんだから!!』
「・・・・・機動兵器?」
『そうだ。我々の新兵器だ。さっきからさな子殿が轟に乗って戦っているだろう?』

それを聞いて上空を見上げると、
人型の機動兵器が連合の戦艦をまた一つ落としていた。

「あれが「くるま」ですか?」
『あれが・・・って、君達も同じものに乗っているだろう?』
「違います。私たちが乗っているのはタイヤの4つある普通の車です!」
『なんだと!?轟じゃないのか?』
「用意されていたのはこれです」
『なんてことだ・・・・・』

幸一に言われて「くるま」を用意したのは、政治関係を担当している人間だった。
それも職務怠慢ぎみの。当然、新兵器の名前などろくに覚えていなかった。
「車」と「轟」、似た名前だから間違えたのだ。

「取りあえず、私たちはここから避難しようと思います。
 どこへ向かえばよいか指示をお願いします」
『・・・・・ここから北西に地球の企業、ネルガルの研究所がある。
そこへ行ってくれ。北辰殿もそこへ向かう事になっている』
「ネルガルですか?地球人は危険ではないのですか?」
『心配要らん。ネルガルとは技術協定を結んでいる。北辰殿の友人で、
 次元跳躍の研究者であるテンカワ夫妻が橋渡しになってくれてな。
 さな子殿が乗っている轟も、ネルガルが開発したものだ』




8年前、北辰たちが火星で身分を隠し生活をしていた頃、
ネルガルと木連の仲は緊迫していた。
ネルガルは地球でいち早く火星の遺跡の価値に気付き、確保に乗り出したのだが、
当時から火星には木連の諜報員が多数潜伏していた。
木連も遺跡の価値は十分に知っていたので、当然争いが起こった。
そして膠着状態に至ったのだが、転機が訪れる。
テンカワ夫妻と影護夫妻の出会いである。
こう着状態に陥った最大の原因は、話し合いの場がもてなかったからである。
木連側から見れば、相手は憎むべき地球人で、しかも遺跡を狙っている。
しかしネルガル側は当初から協定を結べないかと考えていた。
相手についての見当は、早いうちから付いていた。
ネルガルは軍に顔が利く。しかも月での独立戦争にも関与していたので、
相手が木星に逃げ延びた当時の亡霊たちであることは直ぐに分かった。
会長、アカツキ サイゾウの決断は早かった。
協定を結ぶべきだと。
理由はあった。連合やライバル企業がいつ遺跡の価値に気付くとも限らなかったし、
そうなれば遺跡技術の独占は難しい。
このままではいずれ戦争が起こることも予測できた。
連合の腐敗ぶりは知っていたので、例え木連が和平を望んでも実現できないのは分かっている。
その時、協定を結んでさえいれば、木連の技術も手に入れることができるし、
偽装としての破壊活動は仕方ないが、受ける被害もかなり軽減できるだろう。
急がなければ、クリムゾンあたりに先手を取られかねない。
それに、連合と木連のどちらが勝利しようと利益を得ることができる。
どちらが扱う戦力も、ネルガルの設計した兵器なのだ。
だが、いくらネルガルが話し合いに積極的でも、木連は聞く耳を持たなかった。
そこに現れたのが、火星にあるボソンジャンプ研究所に勤めるテンカワ夫妻である。
テンカワ夫妻の隣で生活を始めた影護夫妻だったが、
ネルガルの研究者と聞いて、ネルガルの実態を知る為に夫妻に近づいた。
そして月日を重ねるうちに段々と親しくなり、
さな子が北辰の留守中に家でセイジと特別な関係を結んだ日、
つい自分達が木連の人間である事を話してしまったのだ!
それを聞いたセイジはさな子の了解を得、すぐさま深い友人である
アカツキ ミドリ(サイゾウの妻)に連絡。
そしてサイゾウまで話が伝わり、その数日後ついに話し合いの場が設けられ、
ここに協定を結ぶ事ができたのである。

「了解しました。直ぐに向かいます」
『いいか、絶対に死ぬなよ』
「はい!」
『仮に死んでも、北斗は守れよ!以上だ』

プツッ

通信は切れてしまった。

「・・・・・はい」

俺は力なく返事を返した。



 
 
 
 





結局、俺達がネルガルの研究所へ到着した時には、既に戦闘は終了していた。
さな子の活躍により、戦闘には勝利をした。
ちなみに、さな子はたった一機で連合の戦艦を5隻全て沈めたらしい。
イザヨイの被害も殆どなかったようだ。
だがしかし、連合の第2陣が火星近くまで来ていたため、
やむなくイザヨイは木連へ帰還することに。
俺達は置いて行かれてしまった。
北辰と八雲が到着したのは3日後だった。
草壁は見つかったが、意識不明だった。急に老けた様に見える。髪も白髪だ。
火星は連合により厳重に封鎖されてしまったし、
今回の事で木連の和平ムードも一新されるだろう。
救助は来ないかもしれない。もし来ても、何年先になる事やら。
既に死んだ事になっているかもしれない。
そこで俺達は、新しく所長になったイネス・フレサンジュと相談し、
草壁の治療も兼ねて、ネルガルを頼り地球へ行く事になった。
地球へ行くのは、俺を含め影護親子、八雲、草壁。
それに山崎義男(やまさきよしお)の6人。
山崎は木連から手伝いに来ていたらしいのだが、
マッド同士譲れぬものがあるのか、イネスと何やら敵対していたらしく、
地球行きの提案は厄介払いも兼ねていたようだ。
イネスたちは、研究を続ける為に残るという。













月日は流れ
 
10数年後
 
 
 
 
「お兄ちゃん助けて!」
「アイちゃん!」

ユートピアコロニー消滅
 
 
 
 
そして

 
 
 

2196年





舞台はナデシコへ




嗚呼、薔薇色の人生
〜ある男の悲劇と対策 IF IN 時ナデ〜

序章







作者後書き
ようやく序章が終わりました。
これでようやく時の流れに本編にいくことができます。
今回は特にですが、うまく書けないものですねぇ。
考えた事がなかなか文章にできない。
文章は書けても、思ってたのと違う感じになってしまってたり。
経験も知識も足りないのでこういう事態になっているわけですが。
もっといろんな本を読んで勉強すればよかった・・・・・ ライトノベルだけじゃなくて。
後半部分は特にですが、話に無理があるって感じです。
ですが、これが精一杯なんです。これ以上は無理です(涙)
皆さんごめんなさい。

轟(くるま)について
書いておいてなんですが、設定は特に考えていません(汗)
とりあえずは、名前は忘れたのですが、ジュンがユリカの火星行きを止めるために
乗って出撃した機体。あれのテストタイプだと思ってください。
という訳で、機体自体の性能は殆ど同じです。
ただしソフトが古いので、比べると扱いにくく、繊細な動きもできません。
10年以上前なので、これが最新のものです。
この後改良が重ねられ、量産体制も整い、それが軍に配備されて
ジュンが乗ることになるのです。

補足しておきますが、北辰とさな子は火星生活のおり、IFSを保有しています。
火星で生活するために何かと必要ですからね。IFSは

木連には、ネルガルと関係を結んでいただきました。
しかし、今回の戦いで事実上草壁が失脚した為、この関係は白紙になり、
代わりに首魅となったH氏は、クリムゾンと手を結ぶ事になります。
白紙に戻った為に、ネルガルもかなりの損失を出す事になりました。
木連への高額な援助も無駄になってしまいましたし。
アカツキ サイゾウも、責任をとる形で引退。
息子が跡を継ぐことになります。

次からはようやく本編突入ですが、プロローグ部分ですからね。
そんなに大きな違いはないです。
というか、はじめの方の話は殆ど変化ないです。
ただし飛ばして読んだりすると、人物関係が分からなくなるかもしれません。
ゲンドウさんとかナデシコに乗り込みますので。
それと、ナデシコクルーが1人ほどいなくなります。

最後に、このような文章を最後まで読んでくださった皆様、
本当にありがとうございます。
また次の話でお会いしましょう
それでは皆様ごきげんよう
※注意
この話は鋼の城さま、及び別人28号さまに
キャラクターの使用許可を得ています。
許可を下さり、本当にありがとうございます。
子煩悩北辰は、空明美さまの作品「孫」に影響を受けています。



 

 

感想代理人プロフィール

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代理人の感想

うわぁ〜ん、さな子の良妻賢母のイメージが木っ端微塵だぁ(笑)。

まぁどっかの誰かさん(HLJINNさんにあらず)に使用許可を出した時点でもう遅いんですが。

 

>くるま

あー、SS書くなら設定位は一応調べておきましょうよ。あれは「デルフィニュウム」という機体です。

兵器の開発スパンが現在と大差ないなら10年前の兵器が未だに現役でも問題ないでしょうが、

アレはちょっと大気圏内で運用できそうな機体には思えないなぁ・・・・(笑)。

 

ではまた。