機動戦艦 ナデシコ 劇場編
NOR Wings 〜放たれた鳥〜
(ノアー ウイングス)
【プロローグ:世界観】
2195年―――
人々の知らない情報や思考、政治や状況によって起ってしまった戦争・・・・・・
何も知らされないまま、死んでいった者達。
真実を知らない者達。
この時。
木星蜥蜴と呼ばれるようになった木連が地球へ攻撃をしかけてきたときだった・・・・・・。
火星はこのとき、地球軍は抵抗をみせたものの―――圧倒的といえる力の前に無残に散り。
火星は植民地ごと―――落ちた。
これが後に"第1次火星大戦"と呼ばれるものだった。
木星蜥蜴と呼ばれた木連と地球軍の和平がなされ、戦争は終わった。
木連や地球、ネルガルやクリムゾンなどの企業。
それらが別々の理由で手に入れようとしていた≪遺跡≫はナデシコ
( NERGAL ND−001 通称ナデシコ。2196年完成、出港。
2201年現在、ナデシコBが起動、使用中なので区別する為にナデシコAと呼ばれる )
のクルーにより、≪遺跡≫
( ボソン・ジャンプの巨大演算ユニットのことを呼ぶ場合が多いが、火星に存在する
を回収。A級ジャンパーと呼ばれる演算ユニットへイメージを送るナビゲーターである
テンカワ・アキト
ミスマル・ユリカ
イネス・フレサンジュ
の3名により≪遺跡≫を載せて宇宙空間へとナデシコと共にジャンプ。ジャンプ・アウト後、艦首ブロックを切り離し、Yユニットとオモイカネと共に辺境宇宙へと送り出した。
≪遺跡≫の中枢たる演算ユニットは誰にもわたることなく、演算を続けるだけ―――のはずだった・・・・・・
時は流れて2201年
人はときに好奇心に突き動かされ、好奇心にのみ動くときがある。
ときにはいい面をみせる場合もあるが・・・どんなものにも・・・"逆"はある。
そして、ときにそれはとても危険な行為へと変貌をとげる。
人はそのとき、こう言う
非人道的
だと。
だが、それは人の好奇心や欲望、性欲や食欲と同じように本能という言葉で表された――――"形"
誰もが持っているもの。
消すことのできないもの。
"形"は違っていても等しく存在するもの。
そう、思われているもの。
そして、また、生まれる。
人の知らない"闇"の部分。
誰もがもっている "闇の渦" が。
【プロローグ:出会い。そして、始まり】
2199年末頃
(場所:??? 語り、視点:???)
「君はだれ? どうしてうずくまっているの?」
目の前に"何か"がいる。形があるわけじゃない。ただ、ポォォっと光っているだけなのに僕はそれがうずくまっているように思えた。
なんの根拠もない。
ただ、―――そう思った。
彼なのかも、彼女なのかも、何者なのかも、何かもわからないそれは、……いつのまにかいた。
気づいたときから、ただなんとなくそこにうずくまっていると思って話しかけている。
でも、返事はない。
いつも、返事をしてくれない。
最初はなんで返事をしないんだろう。なんでここにいる? と、いつも疑問に思い、苛立った。
けど、
今は違う。
それでいい。
と、思うようになった。
なんでそう思うようになったのかはわからない。
自分のことなのに、自分の"思い"を理解できない。
でも、それでいいと思う。
それが"自分"なんだから。
「・・・・・・・・・」
返事はない。
今日も見ているだけで終わってしまうのだろうか?
それでもいいと思うようになってから、ずっと側で見てきた。
何も変わらない。ポォォっと光っている"何か"を。
今日も見ているだけで終わる。
そう思うといつも自分の力のなさに腹が立ったり、悲しくなる。
目の前の、触れられそうなものも助けられない。
見ているしかできない。
何もしてやれないことが自分の心を痛くさせる。
でも、・・・今日は、違った。
「・・・・・・あなたは・・・どうして悲しむの?」
えっ?
いつもと違うできごとに僕は目をまるくして話かけてくれた"光"を見ることしかできなかった。
『なにか返事をしなくては』、と思っても何を言ったらいいのか混乱してしまって言えない。
そんな僕の状況をジッと見ているような感じを"光"からうけた。
僕が質問を答え様と口を開く前に"光"が先に言った。
「…どうしてあなたは、いつも私に話しかけて悲しむの?」
その"光"からの言葉に、僕は正直に言った方がいいと思った。
何かで飾るより、その方がいいと。
なぜ、そう思ったのかはわからなかった。
「君を見ることしかできない自分がいやだったから・・・
君に何もしてやれないから・・・
悲しい」
僕は今の思いを言葉にできたと思った。
うまくはけして言えなかったけど、なんとか言えたと思った。
そんな矛盾的なことを起す"心"ができたのはいつだろう? と思った。
「・・・・・・・・・」
沈黙がながれた。
僕は"光"を見つめ、"光"は僕を見つめている。
いつもとは違う状態ではあるが、沈黙はいつもと同じ状況だった。
そんないつもの沈黙に、今日は耐えることはできそうになかった。
せっかく話してくれたのに。
せっかく会話ができたのに。
沈黙を破りたくて何かを口に出そうとするのに何を言っていいのか思いつかない。
そんな自分に苛立ちを覚えてきた。
そんな僕の状態を知ってか知らずか。
"光"が沈黙を破った。
「…ご…な…さい…」
え?
またの不意打ちに混乱してしまったが、さすがに2度目なだけにすぐに回復できたが"光"の声は聞こえにくく、弱々しかった。
そんな"光"の声に僕は"光"が俯いているのにやっと気づいた。
「…ご…な…さい…」
また弱々しい声で"光"が言った。
これも聞き取れなかった。
俯いている"光"を心配しながら自分が何かしたのだろうか? と考えつつ近づく。
今までは距離をおいて立って見ていたが"光"の前に座るようなかたちで覗き込む。
だが、足を抱え、顔をうめているために顔は見えない。
顔が見えないことで僕は余計に心配になってしまっていた。
「・・・ごめ・・・んな・・・さい・・・」
さすがにここまで寄ると何を言っているのかわかった。
その言葉は意外だった。
僕には悪いところがあるかもしれないが、"光"が謝る理由が思いつかなかった。
だからこそ聞きたくなった。
「どうして? どうして君があやまるの?」
少しの沈黙の後。"光"は答えた。
「・・・あなたを・・・私は悲しくさせてしまっているから・・・」
「なあ〜んだぁ。よかったぁ」
「え?」
"光"は僕の発言が意外だったのか、顔を上げて目を見張っている。
そんな"光"に僕は微笑【びしょう】して話す。
「なにか僕が悪いことをしちゃったのかと思って心配してたんだ。違っててよかったよ」
にこにこと笑う僕の顔を疑問と不安とが入り混じった複雑な顔をして"光"は見ていた。
多分、「なんで自分が悪いことしたって考えるの?」と光は思っていると思う。
僕はこのときとてもほっとしていた。
そして、"光"に僕は言った。
「君は決して悪くないよ。こうやって話してくれるだけで僕はうれしいから。決して僕は君のせいで悲しんでないよ。・・・ごめんね。そんな思いをさせちゃって・・・」
最初は相手を慰(なぐさ)める口調で僕は話していた。けど、最後の方は相手を不安にさせてしまったことに申し訳なく思い、謝罪の言葉になっていた。
そんな僕の雰囲気と言葉から一生懸命に"光"が謝った。
「ごめんなさい。・・・・・・やっぱり、私といないほうがいい」
「どうして?」
"光"の発言は意外なものだった。『私といないほうがいい』などと、とても悲しいことを言うとは思ってもいなかった。
そして、その言葉についてきた『やっぱり』というのも気になった。
内心「何かいけないことをいったかな?」と不安になっていた。
それもあり、聞き返してしまった。
「私は不幸にする存在。・・・私はいない方がよかった存在だから・・・こうして一人でいるの。だから、あなたを悲しませてしまっている・・・」
その言葉に僕は声を大きくして間を空けずに言ってしまった。
どうしても僕は否定をしたかった。絶対に間違っていることを目の前のとても優しい"光"に―――
「そんなこと絶対におかしいよ!! 一人でいることがいいことなんてあるわけない!! 不幸にするなんてことは絶対にないよ!!」
「!・・・・・・」
「・・・それに。一人でいることの方が不幸だよ。誰かに頼ったっていいんだよ。それに、…頼られないのも悲しいものだよ」
「え・・・?」
疑問をうかべた顔の"光"を見ながら僕は話をはじめた。
「この船―――僕の体って言ってもいいのかな。ある時まではたくさんの人が乗っていたんだ。ユニークな人達ばかりだった。生まれたばかりの知識だけの僕にココロっていうのかな? 何かを感じるってことを教えてくれた。そして仲間も友達もできた。たまに反抗したときもあったかな、だけどとっても楽しかった。だけど、それも戦争と利益、私欲からしかたなく僕を残して誰も知らないところに送り出したんだ。そして、今も君を乗せて漂っているんだよ」
「・・・・・・・・・」
"光"は黙って僕の話を聞いていた。
黙って聞いていてくれる"光"に話を続けた。
「最初のうちはしょうがないと思ってたんだ。だって、誰かがやらなきゃいけないことだし、自分が残るって言ったし・・・でも、耐えられなくなってきちゃって。だんだんと・・・・・・自分でもいけないと思っているのに悲しくて、寂しくなってきちゃって・・・・・・」
僕は自分の目が熱を帯びてきているのが感じられていた。
いや、そう思っているだけなくかもしれない。本当ならありえないことだから・・・・・・
そんな自分をおさ抑えつつ、話を続ける。
「自分からこうするって決めたことだから、戻らないんだ。・・・でも、・・・ときどき考えちゃうんだ・・・もう誰にも会うことなく、終わっちゃうのかなって。暗い考えをするとダメだね。どんどん暗い考えになっていちゃって・・・。そんなことを考えていると自分がおさ抑えられなくなりそうになるんだ。
自分はいらないのかなって、どうしてこんなことをしなくちゃいけないのかなってね。
誰かに聞きたくても誰にも会えない、話せない。一人で誰とも会えないまま知らない場所を歩いていくのは辛いものなんだなって皆に会えなくなって、ひとりになってはじめて気づいた。
一人は寂しすぎるよ。一人ってことは誰かを頼りにすることができない。それは逆に"頼られることがない"ってことと同じじゃないかな?
だから、一人でいるのが寂しいように、"頼られることがない"ってことも寂しいし、悲しいんだよ」
黙って聞いていてくれた"光"に僕は顔を向けて、首を傾げて無言の問いをした。
"光"は僕をジーっと見つめていたが、顔を隠してうつむ俯いてしまった。まだ、戸惑っているのか、それともまた、悲しませてしまったと思っているのかはわからない。でも、戸惑っているんじゃないかな、と僕は思った。
"光"の頭に左手でポンポンとやさしく叩いたあと、僕はやさしくなでた。そしていった。
「もう、一人でいる必要はないんだよ。僕がずっといっしょにいるから。ううん、違うね。一緒にいてくれないかな? 君といるととても楽しそうだから…だから、もうあんなことは言わないで、ね?」
いい終わったと同時に"光"が僕の胸にもたれかかってきた。"光"は泣いているようだった。そんな"光"を見ながら僕はやさしく"光"の頭をなでていた。
そろそろと申し訳なさげに"光"が僕の背中に腕を回した。
「ありがとう」
僕はこのとき、"光"だった光が少女になっていたことにようやく気が付いた。
僕は"光"と話すことに集中しすぎていたみたい。
それが"僕"と"光"の初めて話したときの出来事だった。
そして、これがこれから始まることになる物語の最初の話・・・・・・
ここから
ボソンの光が導く
ものがたりが始まる
僕もこのときはこんなことになるなんて予想もできなかったなぁ。
ゴールドアームの辛口感想。
ども、ゴールドアームです。
辛口ご希望との事なので、思いっきり辛く、
このばかものがあっ!
プロローグだけ送ってくるとは何事じゃあっ!
物語を『批評できるだけは書いて送る』という、
常識も知らんのかあっ!
……と、書こうかと思ったのですが。
いえ、今のはプロローグだけ送ってくる人に対する怒りです。某所でテンプレ症候群といわれているくらい、情けない現実なんですが。
ですが、読んでみたら合格でした。最初はまたかと思ったのですが、目の付け所がお見事です。まさか彼を主役というか語り手に持ってくるとは。
プロローグや第一話で大切なのは、読み手の興味を捕まえる事。その点、あなたは合格です。
後はこのテンションを切らさぬよう、弛めすぎぬよう、お話を引っ張っていく事を期待します。
で、一応問題点を一言。
文庫本じゃないんですから、タイトルの後には名前くらい入れましょう。
入っていたとしたら、それは代理人が入れてくれたものです。感謝してください。
後もう一つ。
サブタイトル、【プロローグ:世界観】となっていますが、こういう所で『世界観』という言葉を使うと、非常に興を削ぎます。2ch的な言い方をすれば、『厨くさい』というやつです。これは単純にプロローグだけで良し。
世界観という言葉は、こういう意味においては作品内部で使ってしまってはいけない言葉です。注意してください。
では、続き楽しみにしています。ゴールドアームでした。