キィンッ、キィンッ!!

         ガッ、ガゴォンッ!!






  リーバンとアデュー達の戦闘は、激化の一途を辿っていた!

 先程までの戦闘と違い、リーバンがアデュー達に若干押され気味の展開へと変化している。

 だが、それでも決定的なそれまでには至っていない。


  起動キィでもあり、魔力の源でもあるカードを失い、”力”を著しく損失したリーバン。

 一方、新たな起動キィであるカードを手に入れ、パワーアップを果たしたアデュー達。



  結果だけを見れば、戦力差が逆転したようにも思えた。

 事実、戦闘当初に至っては、アデュー達も「これで勝てる!!」と思っていたのも確かである。



  ところが、現実はそう上手くはいってはくれなかった・・・・・・・・。



 「な・・・なんて再生力なの? これだけの攻撃を受けて!」

 「我々の力は上がったというのに・・・、これでは・・・・」



  力の大半を失い、攻撃・防御力の両方が低下したスケルトン。

 だが、再生能力自体には殆ど影響がなく、損傷を受けた次の瞬間には再生が始まる。

 先程からこの繰り返しの戦闘が続いた事により、パッフィーは悲鳴にも似た声を挙げ、

 イズミの口からは不安そうな声が出た。



 「ふはははッ! どうした、先程までの勢いぶりは何処に行ったのかね?

  この私を倒すのではなかったのか!?」



  この展開により、ある程度の冷静さを取り戻したリーバンは、アデュー達を嘲る。

 だが、リーバンに対しアデューは言い返す。流れをこちら側に引き戻す為に!!



 「へッ!! 思った程やるじゃないか。確かにお前はスゲェ魔導士だよっ!!」

 「当然だ! 長い年月修行を積み重ねたのだ!! 人間ながら、此処まで”闇の力”を手にした者はいないッ!!!」

 「それほどの力を持ちながら、人の道を踏み外しやがって! 最低だぜ、お前はッ!!」



  そんな事を言ったくらいで相手が心変わりするのなら、争いなど起きはしない。

 それでもアデューは叫ばずにはいられなかった、騎士として、又一人の人間として!!



 「ヒヒッ! そんな世迷い言は、私に勝ってから言うのだな!!

  この私に止めを刺せる技が君たちにあるのかね? ないだろう!! 

  あったら既に私は倒されているのだからなぁっ!!!」

 「くッ!!」

 「チィッ!!」



  リーバンの言葉は事実なだけに、アデューとサルトビは同時に舌打ちをする。

 だが、アデュー達は今できる最高の攻撃をリーバンに繰り出す。リーバンを倒す為に!!



 「無駄無駄ァッ!! その程度の攻撃など効かんわァッ!!」



  しかし、驚異の再生能力の前には決定力に欠け、逆に反撃される隙をリーバンに与えてしまう。



 「カードの記憶では、騎士の小僧の技は覇翔クラッシュ斬り・ドーンただ一つ! カードを得て

  如何にパワーアップした技だろうと、このスケルトンは倒せんよ!!」

 「た、確かにアデューの剣技が破れていては、・・・・勝てぬッ!!」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



  リーバンの言葉に対してイズミは、悔しくも肯定するしかなかった。

 ちょっとやそっとの攻撃では直ぐに再生してしまうのなら、再生を上回る破壊力をぶつけるのが

 一番いい手段である事は、イズミ自身がよく分かっている。だが、パーティーで一番の破壊力を誇る

 アデューの秘剣でさえ効かない相手なのだ。このまま時間が経てばやられるのは必至。



  絶望といっても可笑しくない状況の中、アデューは、何故か無言でリーバンを直視するだけだった。



 「ククッ、どうした小僧。ショックで何も言えないか? 無理もない、貴様等に勝ち目などないのだからな!」



  何も言い返してこないアデューを見て、リーバンは勝ち誇ったように言い放つ。

 だが、そうではなかった事をリーバンは否応なく思い知らされる事となる。



  アデューは、右手に携えた剣に視線を移す。

 脳裏には、ある人物の秘術が鮮明に浮かんでいた・・・・・・。




 (アレ・・なら、確実にリーバンを倒す事が出来るはず!だが・・・・、今の俺にできるか?

  ・・・・・いや『出来るか?』じゃない! 『やらなきゃ』いけないんだ!!)




  アデューの強い決意に、カードが同意を示す! そして、秘められし”力”の一部が解放された!!



 「リューナイトの”盾”が光っているでござる!」

 「認めてくれたんですわ、リューナイトを、そしてアデューの事を!!」



  リューナイトはカードの力を得て、それまで左手に持っていた盾を変貌させた。

 今まで表面に”炎の紋章”が描かれていたシンプルなものから、より鋭角的で大きな盾へと!!



 「やらせるかァッーーーーー!!!」



  それを見た途端にリーバンは叫び、アデューに向かって大鎌を力任せに投げつけた!



  常人がみれば、ただ『盾』が変わっただけと言うかもしれない。

 だがリーバンは直感的に理解できてしまった。己が持つ強大な”力”故に!!



 (カードの記憶では、小僧の技は一つだけ! 他に技は無いはず!!

  だが・・・だが、あの盾は危険だ! アレは防御だけに使われる代物ではない!!

  アレは私を滅ぼしかねない”力”を持っている!!!)



  高速で回転し飛来する大鎌! しかし、その攻撃は虚しく空を切る!!

 リューナイトは、天井高く跳び上がっていた!!



 「みんな離れていろ! できるだけ遠くへッ!!」



  盾が変貌した瞬間、アデューは全てを理解した。アレを発動する為にどうすればいいのか。

 そして、その為には盾をどのように使えば良いかを!!



 ガコンッ!!



  ”盾”上部の空き部分を下向きへと持ち替え、盾に剣を組み込む!

 瞬間! 剣先が盾の先端から生えるかのように伸び、身の丈以上へと変化した!!


  アデューは両手で柄を持ち上空へと掲げる。

 すると、盾の両側が開き、開いた部分に幾何学模様が浮かぶと、

 全身が眩いばかりの魔力光に包まれた!!



 「喰らえッ! リーバンッ!!」



  リーバンに向かい、両手に携えた”武器”を振り下ろす!!




「秘剣! 重閃メテオ爆剣・ザッパーッ!!」


 「ぎょえええッ そ、そんな!! バカなァギャーーー!!!」





 ズドドドドドッ!!

         ガッ、ガゴォンッ!!





  リーバンの悲鳴と同時に、閃光と爆音が周囲を支配した。



  ”武器”が振り下ろされた瞬間、幾筋もの光がスケルトンに向かって迸る。

 そして、迸った光は幾度となくスケルトンの身体を貫き、そして砕く!!




  再び空間に静寂が戻った時、スケルトン・・・否リーバンの姿は跡形もなく消え去っていた。

 更に攻撃の余波で、大きな部屋の天井を含めリーバン城の殆どが吹き飛び、

 満天の星空が姿を現していた。



 「大丈夫ですか、アデュー!?」

 「何という恐ろしい技だ!!」



  パッフィーとイズミがアデューに駆け寄ってくる。サルトビは少し離れた場所から様子を見ていた。

 全員が無事だった事に安堵したアデューは、手に持っているあるモノに目を移す。



 「ああ・・・・、リュー達とコイツに助けられたな」



  手元にあるコイツは、秘剣を発動させた影響なのか、淡い光りが灯っている。

 アデューはソレを見ながら言葉を続けた。



 「重閃メテオ爆剣・ザッパー・・・、本当は山一つを破壊する程の技さ。

  俺の師匠が、『ゼファー』でただ一度だけ使った技だ・・・・・・。」

 「『ゼファー』?」

 「ッ!!」



  目標としていた秘剣を使えた事で、ある種の興奮をしていたアデューは、秘めていた単語をつい口にした。

 パッフィーの呟きで我に返り、口元を抑えるが一端出てしまった言葉は取り消せない。

 それを見ていたイズミは、アデューに問い掛ける。



 「『ゼファー』。それが君のリューの名前ですね。君は一度として、その名を口にしてこなかったが・・・」



  しばらく黙っていたアデューだったが、観念したのか理由を話し始める。



 「そうさ・・・、一応願掛けでな・・・・」

 「フンッ、願掛けだと!」



  サルトビは面白くなさそうに言葉を出す。リューの名前を隠していたアデューが、どことなく気に食わなかった為。

 だが、アデューはサルトビの言葉を気に留めることなく、話を続けた。



 「ああ、願掛けさ。ゼファーの騎士は、師匠只一人! 本来の乗り手が突然死んでしまって、

  ゼファーを正式に受け継いだ分けじゃない。だから・・・あの技を覚えるまでは・・・と思っていたんだ」



  頭上を見上げ、星空を眺めるアデュー・・・・。その顔は僅かに悲しみに彩られている。

 彼の脳裏に今ある光景は、決して忘れる事ができないあの日 ― ゼファーを受け継がなければならない場面だった。



 「アデュー・・・・・・・・」



  その顔を見て、何か声を掛けてあげたいのに掛ける言葉が見つけられず、

 ただただアデューの名を呼ぶ事しかできないパッフィーの顔は、今にも泣きそうだった。



  それに気付いたアデューは、無理矢理気持ちを切り替え、努めて明るい声を出す。



 「そんな事より、行こうぜ!!やっとコイツも取り返せたんだ」



  言葉を発しながら、アデューは街のある方向へ歩き出す。



 「近くの街で手当てして、腹一杯飯食って出発だぜ!! 大賢者のジジィが待ちくたびれちまうぜッ!!」



  その後、全ての準備を終えたアデュー達は、再び大いなる剣アース・ブレードに向けて旅立ちを開始した!!









  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  










  一部始終を見ていたナジー達。アデューの最後の掛け声に対し、



 「ふん! ここで見とったわい!!」



  ナジーは鼻息を荒くして叫んでいた。

 勿論、本気ではない事は一目瞭然だが、その仕草にアキトを筆頭に全員が苦笑する。



 「にしてもあ奴め、何という技じゃ!! あの”盾”がなければ確実に命を落とす剣技じゃぞ、アレは」

 「確かにナジー様の仰る通りですね、アレは諸刃の剣です」

 「そうだな、現に完璧に制御できていないのも事実だからな」



  ナジーが指摘するように、アデューの放った技は危険極まりない秘術だった。

 尤も、グラチェスもアキトも見ただけで本質を看破するのだから、力量の深さを伺い知る事ができる。

  レオーネも「危ない技だ」と理解はしているが、深い所までは見抜けないでいた。



 「じゃが、これで一安心じゃな。どうじゃ、アキトにグラチェス、あの新しい勇者殿は?」

 「まったく、ナジーも人が悪い。一歩間違っていれば全滅していたぞ、彼等は・・・・・・」



  落ち着いていたアキトだったがナジーの言葉を受け、アキトは半目でナジーを睨みつつ静かに言い放つ。

 アデュー達が、リューから放り出された直後の光景が思い浮かんだからだ。

 アキトの変化にいち早く気付いたレオーネは、アキトとナジーの間に割ってはいる。



 「ア・アキト、怒るのはわかるけど向ける相手が違うよぉ」



  レオーネに言われるまでもなく、アキトは筋違いの怒りだという事は理解していた。

 だが、対象となるべきリーバンがいなくなった今、矛先がナジーに向いてしまったのだ・・・。


 「いいんじゃよ、レオーネちゃん。アキトの怒りは当然じゃからな・・・。コイツの発動がなければ

  アキトのいう通りになっていた事は確かなのじゃからな、済まんなアキトよ」

 「・・・・・・・いや俺もどうかしていたな。怒るべき相手はリーバ・・・・!?」



 バッ!!



  会話の途中でアキトは言いようのない違和感を感じ、瓦礫の山 ― リーバン城に視線を移す。

 アキトの只ならぬ様子に、全員が疑問を持った。たが、直ぐに理解する事になる。



 「ぬぅッ! この魔力の波動は・・・」

 「まさか、あの攻撃を受けて!」

 「滅ぶまでは至らなかった・・・という事ですか」



  三者三様の言い方ではあったが、ナジー・レオーネ・グラチェスの言いたい事は同じ事だった!

 それは・・・・



 「リーバンはまだ生きている!!」



  アキトの身体が蒼銀の光りに包まれ、呼び名と共にリューが召還された。

 そして、エステルと一緒に乗り込み、先程まで闘いが繰り広げられた場所へ文字通り飛んでいく!!



 「アキトォ!!」



  レオーネもアキトを追いかけようとリューを召還しようとするが、グラチェスに止められる。

 そして、こうレオーネに言った。



 「アキトに任せましょう、この場は」

 「で、でも・・・・・」



  無論、納得できる訳はなく反論しようとするが・・・



 「アキトのあの顔を見たじゃろ? 大丈夫、負けはせんよ。

  まあ、リーバンにとってはあのまま滅んでいた方が楽じゃったろうな・・・」

 「・・・・・・・・・うん、そうだね」



  ナジーの言葉で、飛び出す前のアキトの顔を思い出したレオーネは、少しの沈黙の後、

 不安は残るもののこの場に残る事を承諾した。



 (アキトのあんなに怒った顔を見たのは、あれ以来だけど・・・、無茶しちゃ駄目だからね・・・)



  しばらくの間、レオーネの視線は、リーバン城があった場所から動く事は無かった・・・。









  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  










  至る所に瓦礫の山が点在している、リーバン城だった場所。

 そのとある一点、ドゥーム・スケルトンが封印されていた場所であり、又破壊された場所に僅かな異変が起きつつあった。



 ・・・・・・コツン、

      ・・・・・・コロコロ、

            ・・・・・・ガコンッ!



  瓦礫の山々の至るところから、城の材質とは異なる物質が一カ所に集まり始めていた。

 ソレは次第に大きくなっていき、あるものを形取る。



 「フフフッ・・・・、まだだ・・・! 私の力と”ドゥーム”の再生能力を甘く見たのが、奴等の運の尽きよ!!」



  そこに立っていたのは、アデューの秘剣メテオ・ザッパーで滅ぼされたはずのリーバンだった。



 「・・・あのガキどもめ、許さん!! 再び、力を蓄えて今度こそ我が僕としてくれるわッ!!!」



  一頻り叫んだ後、行動を開始しようとしたリーバンの耳に、男の声が飛び込んできた。



 「残念だがリーバン、これ以上貴様を野放しにしておく訳にはいかない・・・」

 「!? 誰だ!!」



  振り向いた先には、一体の漆黒のリューが佇んでいた。

 リーバンは驚いた。自分がここまで接近を許した事に。だが、ある事に気付き冷静さを取り戻す。



 (くくくっ、どうやら此奴も私を倒しに来たクチらしいが、見たところ大した”力”も感じない。

  接近を許したのは、私が再生直後だった為だ。それより、私の運も満更ではないな。

  ”餌”のほうからのこのことやって来たのだからな。リューの乗り手なら、

  常人よりも豊富な”生命エネルギー”を持っているはず。!)



  リーバンは静かに、己の力を高め始めていった。



 「一つ聞きたいが、もしかして私を倒しに来たのかな?」

 「そうだ、これ以上犠牲者を出す訳にはいかないからな・・・」

 「犠牲者? はて私には何の事だか分かりませんねェ。魔導を研究するものとして、当たり前の事をしていただけだが?」



  リーバンは、わざと・・・そう言ってのけた。経験上、自分を倒しに来た輩は、自分の研究に対し何故か怒り、逆上した。

 その為、この手の相手に対して、隙を作らせる一番有効な手段だと知っていたから。



   ただ、リーバンにとって倒しに来た輩の心中は、理解しがたいモノであることは確かであった。



 「当たり前の事・・・だと!!」



  漆黒のリューの乗り手の声が荒れる。明らかに怒っている証拠だった。

 それを見たリーバンは、間髪入れずに己の秘術の名を叫ぶ!!




  「喰らえッ! 秘術・魔塵イビル流骸破・ストリームッッ!!




  乗り手をリューから切り離すリーバンの秘術が発動した。しかし、漆黒のリューは微動だにしない。

 リーバンは「貰った!!」と確信した。


  だが!!



 「・・・・・・何かしたかリーバン?」

 「バ、バカなぁ!? な・・・何も起きんだとぉッ!!!」



  リーバンは目の前で起きた現実に、何が起きたが理解出来なかった。












 「当たり前の事・・・だと!!」



  予想していたとはいえ、リーバンの返答は俺に忌まわしき過去を否が応でも思い出させた。

 自分の探求の為なら、人間をゴミ程度としか認識していない、狂った科学者達の顔。

 そして、彼等が行ったおぞましき実験の数々が鮮明に浮かぶ!!



  直後! スケルトンの胸部から、無数の光弾が射出された。リューと乗り手の”絆”を強制的に切り離す技を!!

 だが、俺にとっては一度見た技。避けようと思えば避けれた攻撃。だが、敢えて攻撃を受ける事を選択した。

 リーバンに精神的なダメージを与える為に!!



  リーバンの秘術は、寸分の狂い無く俺に直撃し、そして何もなかったかのように霧散した。

 それを見た奴は、予測できない事態にパニックに陥ってる。



 「な、何故リューから切り離されないのだ? ま・・・まさか、聖騎士パラディン だというのか、貴様の階級クラスは!?」

 「貴様に答える義務など無い! それよりも、あの世で今までお前が虐げていた人々への言い訳でも考えるんだな!!」



  俺は、微弱程度に纏っていた昂氣を全開へと切り替える。同じくして、ブローディアも眩いばかりの蒼銀色に包まれ、

 同時にブローディアの背中には、一対の同系色の翼が展開された!!



 「!?!?ま・・・まさか、貴様・・・”ソウル”の使い手か? 馬鹿な!! あれは伝承だけの話ではなかったのかッ!!!」



  リーバンは更に動揺し、思考の混乱は頂点に達しているようだった。

 だが、それでも状況を打破しようとアキトに攻撃を仕掛けてくる。



 「ふひゃひゃひゃッ! そ、そんなはずはない!! まやかしで私を滅ぼす事などできんわぁーーーーッ!!」



  リーバンの心を支えているのは、スケルトンの再生能力。これがある限り負ける事はないと信じていた。

 事実アデューの秘剣ですら消滅できなかったのだから。



  だが、アキトのの前に於いては、まったく意味のなさない事だった。



 〔エステル、お前の”力”を借りるぞ!!〕

 ‘うん、私の”力”はアキトの為にあるから



  エステルの声が直接アキトの脳裏に響くと、コクピット内部に姿を現す。

 そして、額の中心にある宝石を俺の額へと重ねた。そして、宝石が輝きだすと、彼女の身体は

 光りの粒子と化し俺の両腕を覆う。


  俺の両腕を覆う虹色の粒子。それに伴い、ブローディアの両腕も変移メタモルフォーゼしていく。

 腕の太さは通常の倍近くなり、比例して指も太く、且つ刃物のような鋭利なモノへと変化した。


  そして大気魔力ミスト・ルーンが両手に集中し、ある現象を引き起こす!!



 「ホノオン系とフルム系の力だと? 何をする気だ、貴様ァッ!!」



  奴の言う通り、右手にはホノオン系の”力”、そして左手にはフルム系の”力”が宿っている。

 異なった力が宿る二つの手を、リーバンに突き出すような形で両手を組む!!


  直後! 突き出した両手から螺旋状のエネルギーがスケルトンに向かって放たれ、リーバンの身体が空中に固定された!!



 「し、しまった!! ク・・・クソッ、身動きがとれん!!」



  なんとか脱出しようと足掻くが、ピクリとも動かない事にリーバンは、生まれて初めて恐怖を感じた。

 漆黒のリューを見れば、組んだ両手は白銀の光りの粒子を纏い、凄まじいスパークを引き起こしていた。



 「リーバン! 貴様に蹂躙されし者達と俺の怒りを思い知れ!!」



  俺は、奴に言い放ち”技の名”を叫ぶ!





「秘術! 九天エクステンス崩壊・ブレイクッ!!」





  一対の蒼銀の翼を大きく羽ばたかせ、高速で突撃するブローディアは、

 ”白銀の嘴を持つ蒼銀色の不死鳥”と姿を変え、スケルトンへと突撃する。

 そして”白銀の嘴”がスケルトンに触れた途端、スケルトンのボディは、まるで砂礫のように崩れていった!!



  「ま、まさか貴様はアノ・・・・・・・・・・・・・・」



  消滅の瞬間、リーバンは謎の言葉を残し、今度こそこの世から姿を消した。

 死の間際、彼が何を言いたかったのか、誰も知るよしが無かった・・・・・・・・・・。










  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  










 「あれが、アキトの”秘術”・・・。恐ろしい破壊力だ!!」



  一部始終を見ていた3人。そんな中、グラチェスはアキトが繰り出した秘術を目の当たりにして、驚きを隠せないでいた。



 「話しには聞いていたが、これ程じゃとは。しっかし、アキトもアデューの事は言えんのう。

  あれも一歩間違えれば、術者は一溜まりもないぞ・・・」



  聞くのと見るのは大違いで、ナジーも驚嘆している。

 と同時に、技の危険性についても一目見ただけで看破した!

 そして、技の特性について語り始めた・・・・・・。



 「アレの凄い所は、相反する力を一つに融合する処にあるのじゃ。ホノオン系もフルム系のどちらも熱エネルギー

  を利用している呪文じゃ。ただ、扱うエネルギーが『正』か『負』の違いだけじゃからな、両者の違いは。

  数々の秘術に於いて、力の度合いはあれど炎や氷を利用した”技”は存在しているように、単一で使うのであれば問題はない。

  じゃが、融合させるとなると話は別じゃ。かなりの魔法使いでさえ、同時に相反する力を発生させる事すらできんからな」

 「・・・・・・・・・・」



  ナジーの解説を聞き、絶句するグラチェス。以前アキトと手合わせした時には、互いに”秘術”の発動をしなかったが、

 もし、真剣勝負をしていたらどうなっていたのか・・・・。その事が頭の大半を占める。

  けれど、一戦士としての興味があったのも確かで、何故アキトが制御できるようになったのか聞かずにはいられなかった。



 「それ程までに難しい”技”を制御するには、並大抵の鍛錬では得られないはず。彼は一体どうやって・・・・」

 「ここからはワシよりもレオーネちゃんの方が詳しいじゃろ? 実際に見ていたのじゃからな」



  ナジーの言葉にレオーネの表情が曇る。が、それも僅かな時間。レオーネはいつもの表情に戻ると、

 アキトが秘術を得る過程を話し始めた。



 「・・・秘術の雛形は、2ヶ月前に出来上がっていたんだ、エルゴの街に到着する前にね。

  あの頃のアキトはリューに慣れていなくてね、旅を続けながら、空き時間を見つけては手合わせしていたんだ。

  そんな中、アキトはリューの力を借りて、炎と氷を発生出来る事を偶然知り得た。当時、秘術を発動できなかったアキトは

  コレを利用して、何らかの”技”が出来ないかを模索し始めた。そして、ひょんな事からこの二つの力を、

  融合してみようと考えたアキトは、実際にやってみたけど、最初は融合なんてしなかった。

  けど、同時に異なった力だけは最初から発動できていたんだよ」



  常日頃から魔法使いを職業としている者達でさえ、同時発動が極めて困難な事を発動したアキト。

 これだけでも、驚くには十分すぎる程。しかし、



 「ある日、アキトは昂氣・・・、私も後で知ったんだけど、この世界アースティアではかつて”ソウル”って呼ばれていたらしい力を発動した

  状態で融合を試み、その結果、融合自体は上手くいった。けれど、融合した瞬間、反作用が起きてアキトは2日も昏睡したんだ。

  大して力も込めていないのにも関わらずに・・・・・ね。そして、目覚めた後も身体に後遺症が残っていた。

  ”ソウル”を使おうとすると、肉体に激痛が奔るという後遺症が。だから完全に制御できるまでは、封印しようとしていたんだけど・・・・」

 「2ヶ月前のガルデンとの激闘で再び使ってしまい、肉体に著しいダメージを負ってしまったんじゃな」

 「・・・・うん。で、アキトはこのままでは駄目だと思い、制御しよう色々な事を試みた。けれど駄目だった、”リュー”の力を借りても・・・・」

 「じゃが、エステルのお陰で克服する事ができた・・・と」



  ナジーの言葉を受け、レオーネはコクンと頷いた。



 「あの子 ― エステルちゃんの特殊な能力ちからで、秘術発生時に於ける余剰エネルギーを中和できた。

  そして、アキトへの”力の逆流”が無くなって、初めて『秘術』が完成したんだよ。尤も最初アキトは、

  エステルちゃんの能力を使う事に猛反対していたんだけどね」



  レオーネの言葉に、ナジーとグラチェスの表情が曇る。

 彼女に関してある程度知っているが故に・・・。



 「・・・・・・あの子の生い立ちを考えれば、当然なのかもしれません。その生い立ちの所為で、話せなくなってしまったのですから。

  アキトが彼女の心の声を聞く事ができるのが、唯一の救いですね」

 「そうじゃな、じゃがエステル自身がアキトの力になりたいと考えた。誰に命令される訳でもなく、自分自身の意志で」

 「・・・・うん、そうだよ。最初はアキトも抵抗したんだけど、最後は根負けしちゃってね。

  最近は、少しずつ笑顔を見せるようにもなってきたから」

 「幸せの定義は、人それぞれ・・・という事ですか」

 「そうじゃな、こればっかりは、周りがどうこう言っても仕方のない事じゃ」




 ・・・・・・・・・・・・・・キィィィーーーン




  3人の会話に一区切りついた頃、上空から微かな飛行音が聞こえてきた。
 数秒後、アキトが駆るリューブローディアが姿を現す。



 「お帰り、アキト。エステルちゃんもお疲れさま」



  ブローディアから降りてきたアキトに声を掛け、エステルの頭を撫でるレオーネ。

 エステルは気持ちよさそうに目を細めている。



 「決着はついたな、アキト」

 「・・・・ああ、二度と奴が再生できないように・・・な」



  ナジーはアキトの言葉を受け、今後の方針を話し出した。



 「さて、これからの事なんじゃが・・・。グラチェス、お主とその一族は、このまま西部大陸ウエスト・ガンズの守護に務めるのじゃ。」

 「はい、ナジー様」

 「そして、アキト達はアデュー達と合流してくれ。特にアキト、お主にはあ奴のお守りを頼みたい。

  まだまだ、危なっかしいからのう」

 「分かっています。頼まれましたから、あの人に」

 「・・・・そうじゃったな、では宜しく頼む。ワシには、まだまだしなければならん事があるのでな」



  そう言うと、ナジーはその場から淡い残光を残しかき消えた。



 「では、そろそろ私も失礼します。アキトもくれぐれも無理しないように」

 「ああ、分かっている無理はしないさ。」

 「レオーネさんとエステルさんも元気で」

 「ありがと! グラチェスさんもお元気で」

 「・・・・・・・・(コクン)」



  グラチェスとアキト達は短い別れの言葉を交わす。

 尤も話せないエステルは、首を縦に振り頷くとグラチェスに向かって小さく手を振った。




  グラチェスが視界から消えた後、アキト達はアデュー達が向かった街に向けて行動を開始するのだった・・・・・・・・・。














  些細な事からアキトと戦う事になったアデューとサルトビ。

 自分の強さを過信していたアデュー達は、アキトの強さを目に前にして・・・・・






次回:   覇王大系・AKITOLEGENDアキトレジェンド


第十話  「 〜 強さの意味(仮)〜 」










 後書き(という名の言い訳)


  どうも時の番人です。『アキトレジェンド』”第9話”をお送りします。更新の遅さについては、弁解のしようがありません(涙)


  さて、この第9話ではアデュー達とアキト達の場面がコロコロと変わる為、どうすれば上手く切り替えられるのか分からず、

 四苦八苦したのですが・・・・、結果はごらんの通りです・・・・(^^ゞ


  で、やっと次回からは、互いの作品の主人公が”クロス”します。書いている本人がいうのもなんですが、・・・・・時間が掛かりました。

 どのように交じっていくか、自分自身不安でもあり楽しみでもあるというのが現状です。尤もその為には

 更なる精進が必要になってきますけど・・・・ね。後、空白の2ヶ月は、要所要所で語っていきたいと思います。


  補足説明として、この話で氷系統の呪文の話しが出てきますが、基本は水系統です。

 しかし原作で、水系統の呪文を使いながら氷系が発動した事から、

 意志一つで切り替えができると判断し、同じ扱いとしました。




  最後に、此処まで読んで下さった方々、貴重なお時間を使って読んで頂けた事に感謝致します!!



  稚拙なSSで、読みにくい所があるかとは思いますが、よろしければ次回も読んでやってください。

 では、これにて失礼いたします。時の番人でした。


 

 

代理人の感想

前々からではありますが、やはり文章がこなれてませんね。

わざわざ「〜〜と言った」などと地の文で書いたり、「!」を多用したり、

間延びすることこの上ありません。

隆慶一郎の小説でも読むことをおすすめします。