サモンナデシコ

 

 

 

 

第二話 聖女の横顔 〜 Divine Girl 〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何とか野盗団を壊滅させたあたし達は、王家から報酬を貰いホクホク顔だった。

 帰り道にあたしの行きつけの食堂で祝杯を挙げていると、見知った顔が店の中に現れた。

 

「よっ、楽しそうだなトリス、それにお仲間達」

 

「こんにちわ、改めて礼を言いにきたわ」

 

 例の野盗に捕まっていた、金髪で長身の男性と、長い黒髪の穏やかな笑顔を浮かべた美人のお姉さんだった。

 金髪の男性はあたしより年上だと思うけど、まるでやんちゃ坊主の様な印象を感じた。

 それと黒髪のお姉さんの服装が、ハサハと同じシルターンのものだと、あたしはこの時になって気付いた。

 

 金髪の男性の名前はフォルテ

 黒髪のお姉さんの名前はケイナと言った。

 

 その後、意気投合をしたあたし達は、お互いに無事に生き延びれた事を祝い。

 飲んで歌って、騒ぐだけ騒いで、一時的に間借りしているホテルへと帰っていった。

 だって、長年住んでいた部屋は取り上げられちゃったし、ネスの部屋に泊まるわけにもいかないしね。

 

 ちなみに、アキトの奴が大人しいな? と思ったら―――店の片隅で酔いつぶれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜、良い天気だな〜」

 

 背伸びをしながら気持ち良さそうに、そう述べるアキト

 その隣ではハサハも同じ様に、気持ち良さそうに背伸びをしていた。

 

「・・・大声を出さないでよ、頭に響くでしょ〜」

 

「うぁ、飲み過ぎた・・・」

 

 ダウンしているのは、調子に乗って飲み過ぎたあたしとフォルテ

 泊まったホテルのロビーの一角で、テーブルの上にダウンをしていた。

 

「まったく、自分の限界を弁えないから、二日酔いなんかになるんだ」

 

 朝の珈琲を飲みながらネスの一言。 

 

「懲りない男ね、あなたも」

 

 突っ伏しているフォルテの後頭部をペシペシと叩きながら、呆れているケイナだった。

 あたし達は昨日のうちに、お互いに「さん」付けはよそうと話をしていた。

 それは何故か?

 

「さてと、じゃ俺は旅に必要になりそうなモノを買ってくるよ。

 トリスとフォルテは身動きが取れないとして・・・ネスはどうする?」

 

「僕はこのお調子者二人の面倒を見ている。

 こと運搬能力に関しては、君の事を信用してるからな」

 

 アキトの質問にそんな返事をするネス

 ・・・つまり、運搬能力以外は信用していない、と?

 まあ、色々な意味で規格外の人だしね、このアキトは。

 

「じゃ、私もアキトに着いて行くわ。

 女性には女性の買い物があるしね」

 

「はぁ〜い、行ってらっしゃ〜い」

 

 そうして、ケイナとハサハを連れて、アキトはホテルの外へと出て行った。

 そんな三人を見送りながら、あたしはアキトが用意してくれていたジュースを飲む。

 よく冷えたそのジュースが、頭痛を訴える頭とムカムカとする胃に気持ち良い。

 

「しかし、聖女が住む村か・・・噂しか知らないが本当にそんな女性が居るのか?」

 

「だから確かめに行くんじゃない。

 ケイナさんの記憶喪失を治す手掛かりなんだからさ」

 

 昨日の話を思い出したのか、ネスが不機嫌な顔をしながらそんな事を呟く。

 そう、あたし達は昨日の宴会でケイナの身の上を知り、その治療が可能と思われる存在の話をした。

 レルム村に住むという聖女・・・彼女ならケイナの記憶喪失が治せるかも知れないと、フォルテは息巻いていた。

 そして、召喚師であるあたし達に、その聖女の力が本当かどうか見極める手伝いをして欲しいと頼んできたのだ。

 ・・・・確かに、その手の知識はあたし達の方が豊富だろう。

 次の目的も決まっていないので、あたしはそのフォルテの話に乗った。

 あたしが乗れば、あとの皆には反論をする余地は無く。

 そのまま、あたし達はフォルテとケイナを加えたパーティを作り上げたのだった。

 

「あ〜・・・太陽の光が目に染みるぜ〜」

 

「ちょっと、机を揺らさないでよフォルテ!!」

 

「・・・昼前には出発するからな、覚悟しておけよ二人共」

 

「「お、鬼・・・」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、その金髪の女の子に逃げられたんだ?」

 

「ええ、何だかアキトを見た瞬間、脱兎の如く逃げ出してたわ。

 余程恐い目にあったのかしら?」

 

「う〜ん、確かに恐怖を感じても仕方が無いかな」

 

 レルム村へと向かう途中、あたしは買い物中に起こった出来事についてケイナから聞いていた。

 ・・・やはりあの男、相変わらず周囲にお笑いとトラブルを巻き起こしていたらしい。

 商店街では武器を購入する事を勧めたそうだが、「俺にはコレがある!!」とお玉を見せ付けられたそうだ。

 ま、まあ確かにあの不思議なお玉?の実力は認めるけど。

 ケイナと商店街の主人は、困った顔でそんなアキトを見ていたと想像できる。

 

「そうそう、後は出店の主人と何やら話し込んでいたわね。

 どうやら、知り合いみたいな雰囲気だったけど」

 

「え、そうなの?」

 

 ケイナのその言葉に、あたしはアキトが以前にもこの世界に来ていた事を確信した。

 何故その事をあたしに隠しているのかは分からないけど、アキトの秘密の一端に触れたと、あたしは感じた。

 

 そんな事を考えながら、あたしは確実にレルム村へと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼を途中の山道で食べ(アキトのお手製弁当)、あたし達がレルム村に着いたのは午後3時位だった。

 到着したレルム村には、聖女の噂を聞きつけた人達で賑わっており、その人込みにあたし達は驚いた。

 こう言っては失礼だけど、こんな辺鄙な村には想像も出来ない光景だったのだ。

 勿論、その列に加わらなければ聖女に会える筈も無く・・・

 

「こら、横入りをするな!!」

 

「わっ、見付かったか」

 

 やるだろうと予想していた行動を、そのままを実行したフォルテが村の自警団とトラブルを起す。

 随分と好戦的な態度を取る赤毛の少年が、斧で威嚇をしながらフォルテを責める。

 そんな彼を、もう一人の自警団・・・(顔がソックリな双子さん?髪の色は黒だけど)が、慌てて抑えていた。

 

 ―――しかも

 

「君の言い分は最もだが、あまりに高圧的過ぎないか?

 そう喧嘩腰で命令されては、こちらも堪らないぞ」

 

「何だと!!

 こっちもお前達みたいな奴等ばかりを相手してて、ウンザリしてるんだよ!!」

 

 ネスまで参戦するし・・・・

 

 あ、アキトの奴どっかに逃げ出したな?

 ハサハと一緒に姿が見えないアキトを探して、周囲を見回しながらあたしはそんな事を考えていた。

 そんなあたしの背後では、ケイナがフォルテを叱っており、ネスはネスで不機嫌な顔で愚痴を漏らしていた。

 

 ・・・・逃げるんなら、あたしも連れて行けっての、アキトの奴!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜、宿が一杯で困っていたんですよ〜

 アグラさんの家に泊めて貰えて、本当に大助かりですぅ〜♪」

 

「・・・・・・・・・・・・頼むから何時もの口調に戻れ。

 傍から見ていると、頭の足りない娘にしか見えん」

 

 ・・・・・・・何時か泣かしてやるからね、ネス

 

 結局、その日は噂の聖女に会う事は不可能だったあたし達は、宿の事で困っていた。

 元々が小さな村なだけに、宿屋などは既に満室状態

 ただでさえ大人数のあたし達は、最早野宿しかないと諦めていた時・・・

 この目の前にいる、筋骨隆々のキコリのお爺さんに拾われたのだった。

 

「困った時はお互い様じゃからな。

 それに、夜露に濡れて風邪をひいてはたまらんじゃろ?」

 

「いやはや、全くですね」

 

 そう言いながら、アグラさんの家の台所を占領しているアキトが同意する。

 ・・・・アンタは料理が出来れば何処でもパラダイスなんでしょ?

 

 ニコニコと笑いながら例のお玉で鍋の中のシチューをかき回すアキトを、あたしは胡乱な目で見ていた。

 アキト・・・ちゃんと消毒してるでしょうね、そのお玉?

 事情を知る全員(ハサハは除く)が突き刺すような視線でアキトの持つお玉を睨みつける。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺、一応料理人の端くれだしさ、衛生面には気を使ってるよ?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・一応、信じてあげるわ」

 

 

 

 

 

 

 その日は旅の疲れもあり、シチューを食べ終えたあたしはハサハとケイナと一緒に、あてがわれた部屋に入っていった。

 明日はまたあの行列に並ばないといけないんだし、体力の回復を第一にしないとね・・・

 ハサハが森でアキトが女性に会っていたとか言ってたけど、殆ど夢の世界に旅立っていたあたしは聞いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして―――

 

 

 

 

 

 

 

「起きるんだ3人共!!」

 

 珍しい位に動揺した声で、あたし達の部屋に飛び込んでくるネス

 その大声と剣幕に驚きつつ、あたしとハサハとケイナが目を覚ます。

 乙女の部屋に入り込んできた事について、あたしが怒る前にネスは早口で非常事態を告げた!!

 

「避難勧告の鐘が村中に響いているぞ!!

 早く身支度を整えて逃げるんだ!!」

 

     バタン!!

 

 そう言い残して、ネスは部屋のドアを閉める。

 どうやら、あたし達に着替えを促しているみたいだ。

 

「な、何よそれ!!」

 

「・・・・・・・(ふるふる)」

 

 こんな事をネスが冗談で言うはずが無いと知るあたしは、直ぐに自分の着替えをしつつ、寝惚けているハサハの夜着を脱がす。

 非常事態を察したケイナは、既に何時もの服装に着替える準備をしており、あたしより先に着替えが終りそうだ。

 

 結局、夢現のハサハを二人で着替えさせ、アグラさんの家を飛び出した時・・・

 あたしの目の前には、燃え盛る村と、黒い鎧に身を包んだ3人の兵士がいた。

 

「何よ、アンタ達!!」

 

「・・・・」

 

 無言のまま、あたしの問い掛けに応えず剣を構える兵士

 その隙の無い構えから、あたしでは相手にならない・・・本物の戦闘訓練を受けた兵士だと推測できた。

 どうやら、状況は最悪らしい。

 

「・・・ケイナ、どれだけなら一度に相手に出来る?」

 

「私だけなら逃げながら3人は相手に出来るけど。

 トリスとハサハちゃんが一緒だと、ちょっと無理ね」

 

 小声で隣にいるケイナに尋ねても、打開策は見付からない。

 こういう時には、前線で戦う事が得意な戦士の有り難味が良く分かる。

 

 くっ!! ネスは何処に行ったのか分からないし・・・アキトとフォルテは何処に行ったのよ!!

 

 そんな事をあたしが考えた時―――

 

 

    ドゲシャァァァッァァァァァ!!

 

 

 空を飛んできた人型のモノが、目の前にいた3人の兵士を跳ね飛ばし・・・地面に深い溝を作って止まる。

 地面に倒れ伏す3人の兵士に驚きの目を向けつつ、あたし達は次に空から落ちてきたモノを見る。

 

 そのモノは、ギシギシと軋むような音をたてながら身を起すところだった。

 

「クッ、本当ニあれハ人間ナノカ?」

 

 軋むような音をたてながら立ち上がるそれは人間に似ているが、人間ではなかった。

 機械人形と呼ばれる、精巧なロボットだったのだ。

 しかも、軍事仕様!!

 

 更に最悪と言っていい存在の登場に、あたしの背中に冷たい汗が流れる。

 

 そして、次の瞬間―――

 

「・・・村の人間が逃げ出す間だけ、相手をしてやる。

 仲間を呼ぶのなら、早くしたほうがいいぞ」

 

 緊張感の無いその声の主は、燃え盛る村の一角から後に一人の少女を庇いつつ現れた。

 勿論、その人物が手に持っているお玉が、その正体を嫌でもあたしに教えてくれた。

 その姿に言い知れない安心感を抱く辺り、あたしも結構頼りにしてるみたいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何度モ偶然ガ重ナルト思ウナ!!」

 

 腕に仕込まれていた銃をアキトに向け、次々と撃ち出す機械人形!!

 直ぐ側で聞える破裂するような火薬の音に耳を抑えるあたしの目前で、アキトのお玉を持った右手が霞む?

 

    キンキィン!!    キィン!!

 

「・・・アメルちゃんが狙いの割に、手荒な攻撃をするもんだ。

 まあ、そのほうが俺としても―――」

 

 まるで大した事は無いように、目にも止まらぬ速さの銃弾を、それを凌駕する動きで弾き返すアキト・・・

 その悪夢の様な光景に動きを止めるあたし達、そして機械人形

 次の瞬間にはアキトはその身を、機械人形の目の前に運んでいた。

 

「貴様ハ一体何者ナノダ―――!!」

 

「―――良心の呵責を気にせずに、お前を吹き飛ばせるからな」

 

               ドゴッ!!

 

 次の瞬間、再び機械人形は焼け付く夜空を舞っていた。

 お玉を振り抜いた姿で、アキトは周囲を伺っていたけど、やがてその手を下ろした。

 その信じられない戦いに、あたしはもしかしたら未だ夢の世界に居るのかと思ってしまった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、アキトに導かれて、あたし達は合流地点に向かっていた。

 夜襲を掛けられた事に皆が気が付いた時、既にアキトはアグラさんと協力して村に避難勧告の鐘を鳴らしていたらしい。

 そのお陰でかなりの村人や旅人が逃げおおせたらしいけど、取り残された人も多いらしく。

 アキトは自警団の手伝いをしながら、村人の避難を手伝ってたそうだ。

 

 ・・・あたし達には、フォルテとネスが側に居るので大丈夫だと判断したらしいんだけど。

 

 あの二人も突然の避難勧告の鐘に驚いて、あたし達を起した後で外に出たらしいのよね。

 で、途中でアキトと出会って、アキトが急いでここに向かってきたらしい。

 うん、見事な判断じゃ、誉めてつかわすぞアキト!!

 

 一つ難を言えば、アキトの背後にいる栗色のロングヘアーをした、優しそうな雰囲気の美少女が気になるんだけどね。

 

「ネス!! フォルテ!!

 どうしたのその人?」

 

 合流地点にはネスとフォルテの他に、重傷を負った例の赤毛の少年と、その少年に肩を貸す双子の一人が居た。

 

「どうもこうも無いさ、この赤毛の・・・リューグって言うんだけどな。

 コイツがこの兵団の長に仕掛けて、返り討ちにあったんだよ。

 俺達もやばかったけど、アグラ爺さんが助けに入ってくれたお陰で、何とか逃げる事が出来たのさ」

 

 フォルテ自身、傷だらけな状態でそう教えてくれた。

 

「・・・どっちだ?」

 

 アグラさんが残ったと聞き、視線を鋭くさせながらそう尋ねるアキト

 この男のこんな鋭い声は初めて聞いたような気がする。

 

「・・・爺さんから伝言だ、アメルちゃんを、孫達を頼む、ってな。

 自分も死ぬ気は無いし、何よりこの兵団が敷いた包囲網を突破するにはお前さんの力が必要だとさ。

 随分と信頼されてるな、アキト」

 

 フォルテからアグラさんの伝言を聞き、少しだけ顔を顰めた後・・・

 アキトは重傷を負っているリューグを背に抱え、あたし達にこう告げた。

 

「村人も救える限りは救った・・・敵の目的も聞き出したが、現状ではどうしようもない事だった。

 ここはアグラさんの言葉に従って、この村を脱出するぞ!!」

 

 そう言って走り出すアキトに従い、あたし達も走り出す。

 突然の夜襲に、アグラさんの危機・・・あたしは、ただ状況に流されるしかなかった―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん・・・」

 

「何、ハサハちゃん?」

 

 行く手を遮る兵士達を、尽く叩き伏せるアキトに従い、あたし達は山の中に逃げ込んだ。

 ある程度追っ手を引き離した後、アキトは殿を務める為にあたし達から離れていった。

 ・・・実際、ネスやフォルテも満身創痍だったし、リューグを抱えているロッカ(双子の黒髪の人)にも余裕は無かった。

 アキトに頼りっぱなしの現状だけど、アイツが居なければあたし達は生き延びる事は出来なかったと思う。

 

 そして現在

 敵の気配を感じないあたし達は、息も絶え絶えなフォルテやネスの治療を兼ねて、小休憩をとっていた。

 一緒に逃げていた、アメルという名前の少女が、あの噂の聖女だと知ったのは、リューグの傷を召喚術を使わずに癒した時だった。

 驚くあたし達を前に、アメルは自分の自己紹介をしてくれたのだ。

 

「お兄ちゃんの姿が、全然見えないよ?」

 

 そう言えば、アキトと別れてからかなりの時間が経つ・・・

 

「アキトがそう簡単に倒されるとは思わないけど・・・確かに遅いわね」

 

「私・・・探しに行きます!!

 もしかしたら、怪我をされて動けないかもしれませんから!!」

 

 怪我人の手当てをしていたアメルが、そう言って走り出す!!

 一瞬、何が起こったのか分からなかったあたし達だけど、直ぐに事態に気が付き制止の声をあげる!!

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ、アメル!!」

 

「馬鹿!! 君だけが追いかけても無駄だ!!」

 

 怪我をして咄嗟に動けない男性陣を置いて、あたしはアメルを追い掛けた。

 ネスがあたしを引きとめようと大声をあげたけど、アキトとアメルが心配だったので無視をした。

 それに後からハサハちゃんも追い掛けてきてるけど、止めても言う事は聞きそうにない。

 何よりここでアメルが捕まれば、アグラさんが我が身を犠牲にしてまで逃がしてくれた意味が全て無くなってしまう!!

 

 あたしはただそれだけを考えて、必死に暗闇に閉ざされた山道を走り抜けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっと見付けたアキトは無事な姿で立っていた。

 ただ、その周りを囲む兵士達が20人ほど。

 ・・・そして、その周りに倒れている兵士もまた、20人に及んでいた。

 

「アメル、無茶しないでよ!!」

 

 ちょっとした丘の上にある木立に隠れて、アキトの戦いを心配そうに見ているアメルをあたしは見付けた。

 どうやら、流石に戦闘では足手纏いになると分かっていたらしく、大人しく身を隠していたみたい。

 

「あ、御免なさい、でもアキトさんが心配だったんです。

 あの人は村が襲われた時から、私を守ってくれてましたから」

 

 ま、女性を見捨てる事はしない性格よね、アイツってば。

 トラブルに首を突っ込むのも、困ってる人を見捨てて置けないからだろうし。

 ・・・全く、難儀な性格よね。

 

 遅れて来たハサハちゃんの面倒を見ながら、あたしはそんなアキトの戦いを見ていた。

 相変わらず、のらりくらりと兵士の攻撃を避け、お玉の一撃で確実に相手を気絶させている。

 う〜ん、訓練された兵士でも余裕なのか・・・何処まで強いんだろう、アキトって。

 

 

 

 

 

 

 

「おい!! 例の聖女が丘の上に居るぞ!!」

 

「くっ!! 見付かった!!」

 

 正面に居るアキトには適わないと見たのか、大きく左右に分かれてあたし達の元に向かう兵士達!!

 アキトは背後に居るあたし達を見て、慌てて駆け戻ろうとするけど・・・敵もそうはさせじと必死に向かっていく!!

 アキトを足止めされた以上、あたし達は圧倒的に不利だった!!

 

        ヒュン!!

 

「ぐあ!!」

 

「二人共!! 早くこっちに!!」

 

 丘を登ろうとした兵士の足に、弓矢が突き刺さっていた。

 そして、その弓を射った人物はケイナだった。

 どうやら、あたし達の事を心配して、追い掛けてきてくれたみたい。

 加勢の登場に、一瞬だけ怯んだ敵の隙をついて、アキトがあたし達の側まで走り寄ってくる。

 

 そして、合流したあたし達を囲む様に、ジリジリと兵士達が包囲網を狭めていく。 

 流石に一斉に襲い掛かれては、アキト本人だけなら問題は無いかもしれないけど、あたし達までは・・・

 

「・・・アグラ爺さんの手助けを兼ねて、目立った動きをしたのが仇になったかな」

 

 周囲を取り囲む兵士達を見て、ポツリとそう呟くアキト

 あたし達は助けにきたつもりでも・・・アキトからすれば、あたし達は足手纏いだった。

 自分の迂闊さに、思わず唇を噛み締める。

 

 もっと早くアメルを説得して、この場を離れていればこんなピンチに陥らなかったのに!!

 

「・・・お姉ちゃん、大丈夫?」

 

「大丈夫、大丈夫だよハサハちゃん」

 

 無理矢理笑顔を作り、心配そうに下から覗き込んでくるハサハちゃんに笑いかける。

 何か、何か手は無いのだろうか?

 ―――とにかく、この包囲網を脱出しなければ!!

 

「アキト、あたしが召喚術を使って牽制をするから、そこを突いて脱出するわよ!!」

 

「・・・無理っぽいな、流石に全員を守りながらこの包囲網を抜けるのは不可能だよ。

 トリスが召喚術の一撃で、複数の兵士を倒す事が出来れば別だけど。

 それより、衝撃に備えろ!!」

 

 

 

    ゴァァァッッッアアアアア!!!

 

 

 

 アキトがそう叫んだ瞬間、その左腕が青い炎・・・いや、蒼銀に包まれる?

 

「ア、アキト、それって何?」

 

「アキトさん、腕が燃えてますよ!!」

 

 ケイナとアメルのその声を聞き、軽く笑った後。

 アキトはその蒼銀に輝く腕を大地に振り下ろした。

 

 

   

 ドゴァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!

 

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「な、何が起こってるの!!」

 

 足元から襲い掛かる凄い衝撃に抗えず、そのまま座り込むあたし達!!

 その間にも、アキトが放った一撃により、目の前では信じられない光景が広がっていた・・・

 蒼銀の光の筋が幾つも大地に走り、内側から押し上げるように光を大きくしていく!!

 

「ぐわぁぁぁぁぁ!!」

 

「地面が裂けるぞ、逃げろ!!」

 

「おい!! 気絶させられた奴が落ちないように上に運べ!!」

 

 地面が部分的に隆起し、一部は陥没を起こし、その周りに固まっていた兵士達を飲み込んでいく。

 やがて、身体に伝わる振動も収まり、あたしが目にしたものは・・・

 先程の光景から予想も出来ない現実だった。

 

 瞬間的な破壊だった為か、それともこの土地の地盤がかなりしっかりしている為か、とにかく裂けた大地が再び閉じる様子は無かった。

 ただただ、痛みにうめく兵士達の声だけが、あたしの耳に聞えてくる。

 上級ランクの召喚術なら可能な光景かもしれないけれど、この破壊を行なったのはどう見ても一人の人間。

 そして魔力が働いたのをあたしは感じなかった以上、これは召喚術ではなかった。

 

「・・・さて、今のうちに逃げるか。

 どうやら、手助けをしなくても全員裂け目から抜け出る事が可能みたいだ」

 

「う、うん、そうだね」

 

 茫然自失としているあたし達を従え、森に入るアキトに手を出そうとする兵士は・・・誰もいなかった。

 ただ、その姿を畏怖を込めた目で見送るだけだったから。

 

 

 

 

 

代理人の感想

後書きがない・・・・本文を書くだけで力尽きたかな(爆)?

 

それはともかくとして、

衛生に気を使うなら

そもそもお玉を武器にするな

と思った人手を上げて(笑)。