サモンナデシコ

 

 

 

 

第十二話 絶望の先へと 〜 Lone Knight 〜 前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ローウェン砦守備隊の人達の埋葬が終わり。

 あたし達はシャムロックさんの提案により、トライドラの領主にローウェン砦での事を報告する事になった。

 傷は完治しても、体力まで戻っていないシャムロックさんの事が心配だったのだ。

 こういう責任感の強い人は、自分の身を省みずに動こうとするから。

 

「じゃ、俺はファナンに行って、ファミィさんにローウェン砦の事を報告してくるよ」

 

「うん、お願いねー」

 

 しゅたっ、と右腕を上げてあたし達に挨拶をした後。

 アキトは物凄い速度で走り出した。

 ・・・そう、まさに風のように。

 

 ―――背中の荷物に、必死に掴まるハサハちゃんを乗せたまま。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハサハちゃん?

 

 

「って、何でハサハちゃんを背負ってるのよ、アンタは!!」

 

「ああああ!!

 ズルイ!! ハサハちゃん!!

 ・・・私も荷物に隠れておけばよかった」

 

「・・・いくらアキトでも気付くって、それは」

 

 アメルの言葉に、それを聞いていた全員が突っ込んだ。

 どうやら、荷物に腰掛けていたハサハちゃんを、そのまま背負ってしまったらしい。

 あの男の力を考えると、本当に気が付かなかったのだろう。

 戦闘中と料理中は、信じられないほど鋭敏な感覚をしているくせに、私生活ではとことん鈍い男だし。

 ・・・マジボケが得意技だしね。

 

 

 

 

 

 でも、荷物に必死に掴まりながら、あたしに向かって右手を振る余裕がよくあったね、ハサハちゃん?

 

 

 

 

 


 

 

 

 アキトをファナンに向かわせたのには、二つの訳があった。

 一つ目は、単独で素早くファナンに行ける人物。

 二つ目は、アキトの武器の調達だった。

 

 そう、アキトの専用武器(?)である、あのお玉が前回の戦闘で壊れてしまったのだ。

 悲しそうに、折れ曲がったお玉を見るアキトの姿は・・・戦場跡では浮いていた、もう思いっきり。

 アメルとかカイナの恋に歪んだ視線には、その姿も格好良く見えるらしいけど。

 ・・・とりあえず、私としては理解不能だわ。

 

 あたしは遠ざかる砂煙(多分、アキトの移動のせい)を見送りながら、その時の事を思い出していた。

 

 

 

 

「このお玉はさ、ウリバタケさんって人が、俺の誕生日プレゼントとして作ってくれたんだ。

 調理セット一式をね、戦艦の外部装甲を加工してさ」

 

「・・・・・・・・・・・・・なんか、よく分かんない単語が混じってたけど。

 つまり、思い出の品な訳ね?」

 

「ああ、包丁の切れ味なんか最高なんだよ。

 肉も筋も骨も、まるでバターに焼けたナイフを押し当てるように・・・こうスパスパと」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱ、危ないヤツだわ、コイツ。

 微笑ながら自慢の包丁の切れ味を語るアキトに、何か寒いものを感じるあたしだった。

 

「で、シャムロックの奴が不貞寝してるのは何故だ?」

 

 突然、フォルテがあたし達の会話に乱入してきた。

 その台詞に驚いて、シャムロックさんが寝かされている場所を見ると、力無く横たわっている。

 ・・・ハサハちゃんとミニスが興味深そうに、落ち込んでいるシャムロックさんを観察していた。

 

「実は俺に自分の剣を貸してくれたんですよ。

 どうせ自分は暫く戦えないから、って。

 で、そこの大岩で試し斬りをしたら・・・折れちゃって」

 

 アキトが指差した先には、見事に切断された大岩と、半ばで折れた剣先が落ちていた。

 どうやら、アキトの剣圧と大岩の硬度に競り負けたらしい。

 

 その光景を見て、絶句するあたしとフォルテ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・んなもんで試し斬りするのは、テメーだけだ。

 いいか、普通の剣の強度はな、あのお玉みたいに非常識なモノじゃないんだぞ。

 それにシャムロックの剣っていえば、アイツの家の家宝だったぞ、確か」

 

「ええええええええ!!」

 

 フォルテの言葉に、さすがに驚くアキト

 そりゃあ、シャムロックさんも落ち込むっての。

 ・・・もしかすると、不貞寝をしながら泣いてるかもしんないなぁ。

 

 

 あ、シャムロックさんの顔を覗き込んだハサハちゃんが、凄く驚いてるや。

 

 

 で、結局、アキトに使える武器が無い事が分かった。

 ようやく立ち直ったシャムロックさんが言うには、トライドラにも自分の剣以上の硬度の剣は無いという事だった。

 なら素手で戦うだけだ、と気軽に言うアキトもアキトだが、それで納得できるものではない。

 港町であるファナンならば、扱いやすい手頃な武器が入荷されているかもしれない。

 もしなければ、モーリンの使う拳をガードする武具を買えば良いと、アドバイスをしておいた。

 

 等の理由により、アキトをファナンに向かわせる事に決まったのだ。

 

 

 

 

 でもその裏には、この鬼人と付き合う気持ちを見直す時間が欲しいという、皆の想いがあったのかもしれない。

 変らぬ態度の中にも、やはり皆には恐れの色は消せなかった。

 

 ―――そう、あたしもそうなのだ。

 

 

 


 

 

 

「さて、アキトの足なら今日中にはファナンに着くと思うし。

 今日の晩御飯は誰が作る?」

 

「あ、私が作ります」

 

「じゃあ、手伝います。

 姉様もどうですか?」

 

「そうね、私も手伝うわ」

 

 あたしの言葉を聞いて、アメルとカイナが名乗り出た。

 そして、カイナに誘われて、ケイナもその後に続く。

 アキトを送り出す時は寂しそうな顔をしていた二人だけど、今は普通の表情だ。

 楽しそうに献立を話しながら、調理の用意をする為に川辺に向かう三人を見送る。

 パッフェルさんとモーリンが後から付いて行ったから、護衛は大丈夫だろう。

 今日はここで野宿をして、明日の昼には三砦都市トライドラ入りだ。

 あたし達は、このトライドラでアキトの到着を待つ。

 

 何となくだらけた雰囲気の中、あたしは隣に座っているネスを見た。

 ネスはアキトが残していった、例のお玉を真剣な表情で見ている。

 

「・・・どうしたの、何か面白い発見でもあった?」

 

「ああ、見た事もない文字が刻まれているんだが、これが製作者の名前かもな」

 

 ネスが示した、お玉の柄の部分には『ウリバタケ作』と刻まれていた。

 文字の意味は分からないけど、多分製作者の名前だろうと思う。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こんな非常識な調理器具を作る職人の顔を、是非見てみたいもんだ。

 

 その時、あたしの脳裏に一つのアイデアが閃いた。

 あたし達召喚師は、実は特定の器具に召喚術を用いて、色々なモノを召喚できるのだ。

 それは、ある時は新しい召喚術であったり、武器や防具であったり、アイテムなども召喚される。

 もちろん、ハズレもあったりするけどね。

 

 そう、あたしはアキトの持っていたこのお玉に、その召喚術を試そうと思いついた。

 

「ねぇ〜、ネス〜♪」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気色の悪い声を出すな。

 で、何を思いついた?」

 

 さすが、長年あたしの面倒をみてきただけあって、ここらへんの呼吸はバッチリだ。

 

「そのお玉にね、召喚術をかけてみない?」

 

「・・・アキトみたいな奴が、もう一人現れたたらどうするつもりだ?」

 

「あうっ!!」

 

 一瞬、あの男みたいのが二人になるのを想像して、あたしの動きは止まった。

 怖い、怖すぎる・・・冗談にもならない・・・このリィンバウムが崩壊しかねないわ。

 

 でも、好奇心は猫をも殺すのだ♪

 

 そして、猫と言えばミニスだった。

 いや、何とな〜くそんなイメージがあたしの中にあったから。

 渋るネスからお玉を取り上げ、ミニスの元に向かう。

 小言を言いながらも、ネスも興味があるのか、あたしの後を付いてきた。

 

 それにもしかすると、アキトに関する事が何か分かるかもしれないしね・・・

 

「ミニスゥ〜♪」

 

 木陰でウトウトとしていたミニスを見つけて、あたしは話しかける。

 

「ふぁ〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・何か拾い食いでもしたの、トリス?」

 

 寝ぼけ眼でこう言われた瞬間―――あたしの最後の良心は、ミニスを見捨てた。

 

「これ、アキトの例のお玉なんだけど〜

 獣のサモナイト石で、誓約の儀式をしてみない?」

 

「えっ、アキトの?

 ふ〜ん、面白そう!! やるやる!!」

 

 あたしからお玉を受け取り、嬉々として誓約の儀式を始めるミニス。

 パーティの中で、獣の召喚術が一番得意なのは彼女なのだ、失敗は無いと思う。

 

 ―――そして、術は完成した。

 

「出でよ!!」

 

 

 

     ドゴォォォォォォォォォォォォ!!

 

 

 

「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんん!!

 酷いやラピス〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・かなり、予想外のモノが召喚された。

 黒い獣の皮のようなモノを纏った子供が、大声で叫びながら爆走する。

 そう、一直線に辺りの木々をなぎ倒して。

 このまま放置しておくと、何処かの街に被害を及ぼしそうな勢いで。

 ソレはただ、ただ・・・走り続けていた。

 

「・・・・・・・・・・・・ミニス、強制送還」

 

「・・・・・・・・・・・うん」

 

 ネスの言葉に大人しく従うミニスだった。

 

 

 


 

 

 

「次、カイナお願い!!」

 

「はぁ、まあ別に良いですけど・・・」

 

 先ほどの騒ぎで、あたしの目論見は全員にバレた。

 食事の用意をしていたアメルとカイナも、急いで戻ってきたので、事情を説明する。

 結局、皆もアキトの事に興味があったのか・・・他の系統の召喚術も試す事になった。

 次に選ばれたカイナは、鬼の召喚術を操る鬼界の舞姫だ。

 

「出でよ!!」

 

 

 

 

     ドゴォォォォォォォォォォォォ!!

 

 

 

「わははははははははははは!!

 俺の名前はガイ!!

 そう、ガイ十三世と呼べぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・すっごく、予想外のモノが召喚された。

 もう、大抵の事には驚かないと思ってたあたしや、他の皆の動きが止まった。

 やたらと暑苦しい男性が、不思議な服装で、胸を張って立っている。

 それだけなのに、その圧倒的な声量と存在感は、あたし達に凄いプレッシャーを与えていた。

 自分自身を親指で指差す彼に、カイナが気を取り直して話しかける。

 

「あの・・・召喚師が召喚した存在には、召喚した本人が名前を決められるのですが」

 

「俺の名前はガイ!!

 ガイ十三世と呼べぇぇぇぇ!!」

 

 ・・・・・・・・・駄目だ、この人も駄目駄目だ。

 カイナが泣きそうな目で皆を見回した。

 全員が、その場で頷いた。

 

 結局、ガイ十三世さんは、どんな人かも分からず強制送還された。

 しかし、最初の子供は獣と関係があると分かるけど・・・あのガイ十三世さんの何処が、鬼と関係あるんだろう?

 

 

 


 

 

 

「・・・次、アメルお願い」

 

「・・・なんだか、もう止めておいたほうが良いと思うんですけど」

 

 複雑な表情のまま、アメルがあたしからお玉を受け取る。

 現在の所、アキトの謎は解明されるどころか深まるばかりだ。

 ・・・それとも、アキトやレナードさんの居た世界には、あんな存在が普通に歩いているのだろうか?

 

 あたしが同情の視線を向けると、レナードさんは必死に首を左右に振っていたけど。

 

 そして、アメルの誓約の儀式が始まった。

 アメルの行う誓約の儀式は、霊界のもの・・・さてさて、何が出てくるかな?

 

「出でよ!!」

 

 

 ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・ドロドロドロドロドロ・・・

 

 

 な、何だか最初の二つと大分雰囲気が違うなぁ・・・

 何故か生暖かい風が吹き、鈍い光と共にナニかが現れようとする。

 ソイツはまるで出番を待ち構えていたように、ゆっくりと姿を現した。

 

          ――――――ポロロン♪

 

「一歩、二歩、三歩〜

 散歩の時は連れてって〜

 駄目だよポチは犬だから・・・」

 

 悪寒が走る、何故か分からないけれど、目の前の見知らぬ楽器を鳴らす女性は危険だと、本能が叫ぶ!!

 長い黒髪で片目を隠した美女に、先程の男性を上回るプレッシャーをあたしは感じていた!!

 駄目だ!! これ以上この人に喋らせてはいけない!!

 必死にアメルに強制送還を頼もうとするが、身体が痺れて動けない!!

 

 その時、その女性とあたしの目が合った。

 

           ――――――ニヤリ

 

 獲物を見つけた狩人の笑みを前にして、あたしの意識は途絶えた。

 

 

 

 

 気が付くと、もう夕暮れ時を過ぎていた。

 身体中に残る倦怠感に呻きながら周囲を見る。

 ・・・一応、全員無事のようだ。

 

 今度の召喚は、確かに霊界にピッタリだった。

 問答無用で・・・あたし達も連れて行かれるかと思ったくらい。

 

「ネス〜、アメル〜、皆〜、生きてる?」

 

「・・・・・・・・・・・一応、な」

 

 返事を出来たのはネスだけだった。

 シャムロックさんは、未だ白目を剥いている。

 恐るべし、アキトの世界。

 

 あたし達は憐悲の眼差しで、レナードさんを見た。

 当の本人は、言い訳する気力もないみたいだけど。

 

 

 


 

 

 

「こ、ここまできたら意地よ!!

 ネス、お願いね!!」

 

「傷口を広げるだけのような気がするが・・・」

 

 疲れた口調でお玉を受け取り、機界の誓約の儀式を始めるネス。

 あの女性で懲りたのか、皆はネスを遠巻きにして警戒している・・・勿論あたしもだ。

 ネスの視線が怖いけど、あんな目にもう一度会うのは流石に勘弁して欲しい。

 全員から言い知れない視線を受けながら、ネスの儀式は終わった。

 

「出でよ!!」

 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 × 全員

 

 

 大きい・・・凄く大きな、変な形をした船が空に浮かんでいた。

 普通、船は海の上にしかないはずなのに、その船は空を飛んでいた。

 薄闇に包まれた空に、その船は自ら光り輝きながら飛んでいる。

 その余りに非常識な現実に、あたし達の動きは止まる。

 

「って、ありゃナデシコじゃねーか!!

 おい、ネス!!

 早く送り返せ、洒落になってないぞ!!」

 

 いち早く正気に戻ったレナードさんが、呆けているネスの肩を揺すって正気に戻す。

 レナードさんの視線と気迫に気圧されたのか、ネスはノロノロとした動作で強制送還を行った。

 やがて、闇の中にその白い空飛ぶ船は消えたのだった。

 

「やべーやべー、どのタイミングで呼び出したのか知らないが大事だぞ、こりゃ」

 

「レナードさん・・・あ、あれって何だったの?」

 

 一同を代表して、ルウが問いかける。

 あたしを含めて他の皆は、未だ空を見上げたままだったりした。

 

「お嬢ちゃん、世の中にはな・・・知らないでいた方が、幸せな事があるんだよ」

 

 レナードさんの声に含まれた恐怖に気が付き、全員がレナードさんを見る。

 その視線を受けても、レナードさんの頑なな態度は崩れなかった。

 

「そうなんだ・・・あんな不思議なモノが一杯飛んでるんだ、レナードさんの世界って。

 さすが、あのアキトや、暴走する子供や、馬鹿笑いの男性や、不思議な女性が居る世界だね。 

 ルウなら、一日も生きていける自信が無いよ・・・」

 

「アレ等を俺の世界の常識に当て嵌めるな!!!!!」

 

 

 


 

 

 

「ふふふ、ついにこれで最後ね・・・」

 

「ねぇトリスさん。

 止めておいた方が、いいんじゃないですかぁ?」

 

 トリを勤めるのはあたしだった。

 言い出しっぺな以上、最後のケジメはつけなければいけない。

 とゆーか、このまま逃げ出せばネスとか、アメルとか、カイナとか、ミニスがあたしを許さないだろう。

 あたしの心情としては、傷口に塩をすり込むような感じだ。

 

 悲壮な決意を見せるあたしに、周囲の仲間はわいわい囃し立てる。

 ・・・どうやら、既に他人事と割り切ってるらしい。

 唯一、あたしの身を案じてくれたのはパッフェルさんだけだった。

 

 あんた、善い人ね・・・暗殺者だけど・・・

 

 無のサモナイト石を左手に握り、諸悪の根源であるお玉を右手にし、あたしは泣いた。

 ついでに言えば、この場に居なくてもあたしに迷惑をかける、何処ぞの馬鹿を呪った。

 

「怪我をしないで下さいね。

 まだ、先日の仕返しが終わってないですから」

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・味方は・・・・・・・・・一人も居ないらしい。

 

 

「いいもん、いいもん!!

 どうせあたしなんて〜〜〜〜〜〜!!」

 

「いいから、さっさっとしろ!!」

 

「・・・ひゃい」

 

 魂の絶叫すら、封じられたのであった。

 

 ぶつぶつと不満を漏らしつつ、無のサモナイト石を使って誓約の儀式を始める。

 無・・・とはそのままの通り、属性が何も無いモノを召喚する。

 簡単に言えば、何が出てくるか一番予想しにくいのだ。

 予想っていても、このお玉の場合・・・・・・・あらゆる意味で『予想外』のモノしか出してないけど。

 

 あたしは皆の視線と、これから召喚されるモノに戦々恐々としながら、誓約の儀式を進める。

 もしかすると、今日があたしの命日かもしんない。

 

 ・・・・・・・・・・や〜い、はぐれ護衛獣になっちゃうね、アキト君♪

 

「おい、トリスの奴・・・随分と目が虚ろだぞ?」

 

「大丈夫、一応誓約の儀式自体は間違ってない」

 

 ネスとロッカの声を背中で聞きつつ、誓約の儀式は終わった。

 大きく息を吸い込み、最後の言葉を唱える。

 

「出でよ!!」

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・シ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ンンンン

 

 

 

 

 

「もしかして、失敗?」

 

 何も起こらないまま、十秒が過ぎた。

 周囲を見回しても、何も変化は無い。

 どうやら、無のサモナイト石では何も起らないみたいだ。

 

 緊張を解き、背後の皆を振り返ると・・・全員が空を指差していた。

 

「???」

 

 釣られてあたしも夜空を見上げる。

 ・・・何も見えない。

 いや、なんか落ちてくる?

 

 

      ゴスッ!!

 

 

 ソレはあたしの額に見事に命中した。

 皆、せめて声で注意してよ・・・・・・・・・・・・・

 

 そんな事を思いつつ、あたしの意識は闇に閉ざされた。

 

 

 

 

 

 次の日、あたしを気絶させたモノは、銀色をした剣の柄のような物だと聞いた。

 レナードさんが調べたところ、間違い無くアキト達の世界の物らしい。

 何故それが分かったかというと、二人の世界の言葉が刻まれていたから。

 

 ―――『D.F.S.』 と。

 

 この時、あたしはこの剣の柄をアキトが振るった時の威力を・・・まだ知らなかった。 

 

 

 

 

 

 

 

後書き

 

・・・何故か前編・後編です。

ゲーム内では一番短い話かもしれないのに、何故?(汗)

まあ、頑張って後編を早期にアップしようと思います。

それでは!!


コメント代理人 別人28号のコメント


ゲーム本編じゃホントに短い話ですよね〜

ユエルイベントを発生させなければ

「ユエルはどうした?」とフォントサイズ7でツっこみ入れたいとこですが

どうやら十二話が終った後、ファナンを舞台にアキトを主役にしたユエル外伝を書くらしいので

ここは静観する事にします




今回、DFSが登場しましたね

他の誓約に関しては・・・ほっときましょう

少なくとも誓約はリィンバウムに召喚された時点で完了するはずですから

召喚石はあるはずです、その気になればいつでも召喚できます


・・・召喚しないだろうなぁ




それにしても 何故 鬼属性の誓約はガイだったのでしょう?

私は『嫉妬の鬼』でも登場するかと思ってたのですが

それに 13世って・・・

いつか ガイ・セカンドになってましたが それからさらに数字が増えてます

一体 何があったのでしょう? それとも未来のガイの子孫なのでしょうか?

・・・濃い血筋だ






・・・え、シャム?

彼の不幸伝説はトライドラに入ってからです

後編を待ちましょう