HappyBirthday For 『My Dearest』

3

「かぁんちょお〜」

とうとう我慢できなくなったハーリー君が可哀想になったので、私はハーリー君をひざ枕で寝かせました。
それにしてもハーリー君、あなたの寝言にはもう少し種類が無いの?

「そうそうルリちゃん、ラーメンの味はどうだった?」

ユリカさんが唐突に私の方を見て言いました。ユリカさんは、私がアキトさんからもらったレシピを参考に作っているようですが、料理下手のユリカさんが作るラーメンは、とてもあの味には及びません。
でも、いちおう感想を言った方がいいでしょう。

「前にハーリー君と行った時よりも良くなってますよ」

それを聞いたユリカさんは、驚いて言いました。

「ホントぉ!?ありがとルリちゃん!」

お礼を言われても困ります。私は思った通りに言ったんですから。
ただし、「前より良くなった」と言っただけで、「それでもあんまり美味しくない」と後には付け加えませんでしたけど。
でも、本当に言いたい事はそれではありません。ユリカさんが、私がラーメンを食べている間中私の顔を気にしていたのは、味がいいか悪いかの問題ではないはずです。
意を決して、私はユリカさんに言いました。

「ユリカさん」

「なぁに?ルリちゃん」

どんぶりを片付けていたユリカさんは、くるっとこっちを向きました。

「味の事は、そんなに気にしないで下さい。いくらレシピ通りに頑張って作っても、それは『アキトさんの作ったラーメンと同じ味のする、ユリカさんのラーメン』です。『アキトさんの作ったラーメン』にはなれません」

私がそう言うと、ユリカさんは少し寂しそうな顔をしました。
ユリカさんが気にしていたのは、自分か作ったラーメンがどこまでアキトさんのに近いかという事です。 私の顔を気にしていたのも、私に解るかどうかを気にしていたという事です。

「そっか・・・。やっぱそうだよね・・・。どんなに頑張って作っても、『アキトの作ったラーメン』じゃあないよね・・・」

ユリカさんは、まるで『しこり』を吐き出すように言いました。
確かにそうです。「もう一度食べたい」と思いますけど、それはあくまで『アキトさんが作ったラーメン』です。
頑張って同じ味にしようとするユリカさんの気持ちは解りますが、いくら頑張っても『アキトさんの作ったラーメン』にはなれません。
でも、私にアキトさんのラーメンを食べさせようとしてくれるユリカさんの気持ちが、嬉しいです。

「私は大丈夫ですよ。確かに食べられないのは寂しいですけど、でも、私ももう子どもじゃありません。いつかもう一度合って食べさせてもらうまで、我慢できますよ」

そう言うと、ユリカさんは少し救われたような顔をして言いました。

「そっか・・・、そうだよね、ルリちゃんもう子どもじゃないもんね。我慢できるよね・・・。ごめんね」

何に対する「ごめんね」なのかは解りませんが、ユリカさんが少し楽になったように見えたので、これ以上深く突っ込むのはやめます。
ハーリー君が寝返りを打とうとするので、少し立ち上がって寝返りを打たせて、また足の上に頭を乗せます。
ユリカさんは、割り箸もお冷やも片付け終わったようです。
何だか静かになってしまいました。
私のせいでユリカさんが無口になってしまったように思えたので、私は慌てて話題を繕いました。

「でも、今日は本当にありがとうございました。私は今日がアキトさんの誕生日だってこと、すっかり忘れていたので」

我ながら、下手な繕いです。
するとユリカさんは、笑いながら、そして少し寂しそうな顔で、ブリッジから見える空を見上げました。

「ルリちゃんはどう思う?」

唐突にユリカさんが言いました。

「えっ?何がですか?」

いきなり聞かれた私は、すこし慌てて言いました。

「アキトはさ、今日がアキトの誕生日だって気づいてるかなぁ?」

ユリカさんが私の方を見て言いました。

「さあ、どうでしょう」

私は言いました。
そして、もう一言付け加えました。
昔の私なら、決して付け加えなんてしなかったはずなのに。

「でも、きっとアキトさんのことだから、忘れてるんじゃないですか?」

そう言うと、ユリカさんが嬉しそうな顔をしました。

「そうだよねぇ。アキト、そういう事に全然気づかないもん」

そう言って、ユリカさんはまた空を見上げました。

「だから、私たちがお祝いしてあげなきゃね」

ふと、ユリカさんの顔を見ました。
今にも泣き出しそうな、それでいて強そうな笑顔で、ユリカさんは空を見上げていました。
そんなユリカさんを見ていたら、何だか自然に言葉が出て来ました。

「ユリカさん、アキトさんは今何処で何をしているんでしょうね?」

言った途端、私は「しまった」と思いました。
今、ユリカさんが何を想っているかを考えたら、私は傷口に塩を塗るような真似をしてしまったのです。
でも、予想に反してユリカさんは、楽しそうな顔で私を見ました。

「そんなこと解らないよ、ルリちゃん。でもね・・・」

ユリカさんは再び空を見上げて続けました。

「でもね、アキトのことだから、きっと何処かでラーメン作りながら元気にやってると思うよ」

ユリカさんは嬉しそうに言いました。

「私はチャーハンだと思いますよ」

珍しく、ボケてみました。

「あははははっ。そうかもね」

ユリカさんが笑って言いました。

「でも、ユリカさん・・・」

私はユリカさんに聞きました。

「どうしてアキトさんは元気だって思うんですか?」

するとユリカさんは私の顔を見て、満面の笑みで嬉しそうに言いました。

「だって、アキトだもん」

その言葉には、何の根拠もありません。  非科学的です。
でも、私もそう思います。 根拠が無くても、非科学的でも。

「そうですね。アキトさんですから」

私も空を見て言いました。

ユリカさんが私を見て、驚いたように言いました。

「ルリちゃん、何か嬉しそうだね」

・・・そうかもしれません。

END


解説

どうもこんばんは、Duo−R(でゅおあーる)といいます。
「HappyBirthday For 『My Dearest』」、どうでしたでしょうか?

・・・・・などと話している私は、実はこの話の作者ではありません(笑)。
作者に「自分で説明するのも嫌だから代わりにやって」と言われたのでやってます。
(だから『後書き』じゃなくて『解説』なのね・・・・)
この話の作者『アドリブ』は私のHP「Aboutでいこう!!!」 で一つのコーナー(しかも現在ほとんどメイン)を担当する友人です。

「じゃあなんでそのコーナーに載せなかったのか? 」
「そもそも何で他人が投稿してるんだ?」

等の疑問を持たれた方、つっこみスルドイですねえ・・・・・・・・・。
ということで、その辺の経緯などを・・・・


実際、 この小説はそのコーナーに載せていました。
この小説は、私が初めての身内の死(祖母)で落ち込んでいるときに、見舞い代わりにアドリブが書いてくれたものなんですが、 読んでみるとかなり良い出来で、「これはもっとナデシコのファンが集まる所に置くべきだなあ」と素直に思ったんです。

で、暫く後掲載した時にうちの掲示板での感想にも、読んでくれた方からそのような意見が出て、「これは考えなくては!」と思い、アドリブに相談すると

「それなら君にまかせるから、君が良いと思うサイトに投稿してくれ」

ということだったので、《ちなみにアドリブは、ドリキャスネットユーザーで、しかもネットができる時間が限られているので自分では探せない》 どこかいいサイトは無いかと探す内に、このサイトを見つけ、Benさんの連載にはまってしまい(笑)、「よし!ここしかないべ!!!」と思い(笑)、Benさんにメールでコンタクトを取り、お許しを頂き現在に至るわけです。

さて、 説明を終えたところで改めて、どうでしたでしょうか?


「面白くも何とも無いわい!!!」という方、作者に代わってゴメンナサイ(笑)!

「まあまあ良かった」という方、是非本人にメールや掲示板で知らせてやってください。
本人非常に他人の評価を気にしてるので喜びます(笑)

「とっても良かった。他にもなんか無いの?」という方!
是非是非、我がHP「Aboutでいこう!!!」までご来場を!!!(笑)
ナデシコのSSは他にはありませんが、彼の『いろんな』作品が置いてあります!!!

「こんなにクソ長い解説読ませておいて結局やりたい事は自分のHPの宣伝かい!」
というツッコミの声が聞こえなくもありませんが、気にしないでおきます。(笑)


掲載してくださったBenさん、読んでくださった方々、作者に代わりお礼申し上げます!!!
では、失礼!!!

Duo-R(HP http://i.am/duo-r/)

作者「アドリブ」へのメールはこちら

 

      管理人の感想

      いや〜、どうも投稿有難う御座います!!

      感想メールからHPのアドレスまで全部記入されているので、Benも楽です(苦笑)

      ストーリーは文句無しですしね!!

      アキトの帰りを待つユリカとルリ・・・

      これもまた一つのカタチですね。

      綺麗で優しい雰囲気のSSです。

      Benも頑張ってこんなSSを書きたいですね。

      ・・・ドタバタは得意なんですけどね(汗)

 

      では、アドリブさん投稿有難うございました!!

 

 

     ナデシコのページに戻る