歴史は様々だ。
それを彩る事件には、えてして複数の結果が存在するものである。
第二次世界大戦が起こらなかったり、ライト兄弟が飛行機を発明できなかったり。
さて、ここに一つの世界がある。
それは、世界を震撼させたあるクーデターの起こった世界だ。
･･･
･･･
･･･
時の流れにアナザーストーリー
コハクの君
「本当にいくのかい？」
「ボクにできることはこれくらいだから･･･」
ロン毛の男と一人の銀髪の少年が話している。
その少年は年は１２、３才ほどで、その瞳はミラージュタイプのゴーグルに覆われ見ることができない。
ぼさぼさの銀髪で、そのしなやかな体に、白い全身を覆う形のバトルスーツを着込み、分厚いブーツをはいて、さらにその上に漆黒のコートを着ている。
少年の名はテンカワ・コハクと言った。
「しかし、ユリカ君に会わなくて言いのかい？」
ロン毛の男―アカツキ・ナガレが少年に問いかける。
「うん、母さんになんていって会えばいいかわからなかったし、それに、ボクもあまり時間は残ってないからさ･･･、･･･あっても別れが悲しくなるだけだよ」
「しかしだねぇ･･･」
「ミスマルのおじいちゃんにはしっかり会ったし、後の事はしっかりお願いしてあるもん。それにそもそもテンカワ・コハクなんて人は元々居なかったんだからね。ここに居るのは『闇の王子様』の息子の『ＷＨＩＴＥ ＦＡＮＧ』だよ」
アカツキの言葉をコハクは途中でさえぎった。
「じゃあね、アカツキ、そろそろ行ってくるよ」
コハクは体を翻し、自分の乗艦『ユーチャリアス改』に乗り込もうとした。
そこでふと動きを止め、アカツキに体を向ける。
「そういえば、アカツキ！」
「なんだい！」
コハクはアカツキに微笑んだ。
「ありがとう、アカツキが父さんの親友でうれしかったよ」
アカツキはその言葉の中に引っかかるものを感じた。
「じゃあね！エリナにもよろしく！」
再び体を翻し、ユーチャリアス改に乗り込んだコハクに対して確認は取れなかった。
「さてと、そんじゃ行ってみようか！ツヴァイ！」
『アイアイサー』
『了解！』
『出発進行!!』
コハクの返事に答えたのは、ユーチャリアス改のメインコンピューター『オモイカネ・ツヴァイ』である。
白亜の船はたった一人の乗員の命令を受けて静かに動き出した。
･･･
･･･
･･･
『おもえば、火星の後継者の乱が終わってからたいへんだったなぁ』
コハクはブリッジのサブシートに座り込みながら述懐した。
『火星の後継者の乱』終了から数ヵ月後、彼の父テンカワ・アキトは死亡した。
元々、人体実験の影響でがたがたであった体を酷使した結果であった。
遺体は本人からの願いもあり、火葬の後に遺骨と遺髪、そして形見のヴァイザーとビデオメールが、ルリとユリカの元へと送られた。
ラピスはやはりアキト、さらにいうなればコハクのねがいで、記憶を操作され、エリナの元で元気にやっているらしい。
そして、コハクはというと、彼もまた『火星の後継者』による人体実験で、ぼろぼろであり、もはや余命も一年と少しあるかないかなのだ。
アキトもユリカの元へ行くよう言ったのだが、コハクはそれを拒否している。
むしろ、たたかって、ユリカやラピスに危害の及ばないようにしたいと願ったためだ。
さて、ここでコハクに関してのせつめ、ゴホゴホ！『解説』をしなくてはなるまい。
彼はれっきとしたテンカワ・アキトとミスマル・ユリカの息子である。
しかし、母親との面識はない。
なぜなら、それは彼が『火星の後継者』によって作られたＡ級ジャンパーマシンチャイルドだからである。
彼はアキトの精子と、ユリカの卵子に遺伝子改造を施して誕生したのだ。
また、その製造過程に大量のナノマシンが投与され、肉体年齢が引き上げらているが、実際はまだ九歳である。
そのため、アキトよりは幾分ましであるものの、五感が弱い。
なお、その左腕と左足は機械化されてしまっている。
『コハク！敵!!』
物思いに沈んだコハクを現実に引き戻したのはそんなエマージェンシーコールだった。
「数は？！」
『ヤンマ級５隻、バッタ約３００体、機動兵器多数！』
「応戦して！ボクもフェンリルで出る！」
『了解！』
格納庫で彼を待ち受けていたのは白い巨人だった。
俊敏そうなフォルムに、大出力のブースターを六機搭載している。
コハクの愛機『フェンリル』である。
『おはようマスター』
「おはよう、フェリス。よく眠れた？」
フェンリルに乗った彼を出迎えたのは、フェンリルのＡＩ『フェリス』だ。当然というか女性型だ。
『ばっちりです！』
性格はこのように明るい。
「よし、それじゃあ、いこっか」
『は〜い!!』
格納庫から飛び出した彼に二つの機影が従う、フェンリルから指示を受けて活動する無人兵器『フレスベルグ』だ。
人の形はなしておらず、怪鳥のように俊敏そうなフォルムを有している。
フレスベルグはコハクのＩＦＳからの指示で動く、マシンチャイルドならではの戦闘方法である。
ウインドウボールを形成すれば、数十機を操れるのだが、いかんせんフェンリル単体では無理な話である。
まずはフレスベルグがブースターを吹かし、一気にバッタの群れの中へともぐりこみ、そのまま敵をかく乱する。
その間にコハクはフェンリルにむけてかかってきたステレンクーゲルとたたっている。
攻撃をかいくぐり一気に間合いを詰めてクローを振るう。
クローはコックピットのある部位を引き裂いた。
そのまま、背後から襲いかかろうとした敵に右腕からアンカーが発射される。
ディスティションフィールド（ＤＦ）でコーティングされたアンカーはステレンクーゲルの装甲を紙のように貫いた。
遠距離からレールガンで攻撃しようとした機体にはレールガンを先ほどアンカーで貫いた機体を盾にして防ぎ、ひるんだ隙に右手にＤＦを収束して投げつける。
ステレンクーゲルはたまらずにひしゃげた。
『マスター！ボーズ粒子の反応があります！大型の機影がジャンプしてきます！』
「了解！」
光の粒子が当たりに散らばる、そしてその中から白い艦が現れた。
「ナデシコＢか･･･」
コハクは複雑な表情を作った。乗っているのはたぶんあの人だろう。
『こちら、連合宇宙軍所属ナデシコＢ提督、テンカワ・ユリカです！『火星の後継者』ならびに連続コロニー爆破犯『ＷＨＩＴＥ ＦＡＮＧ』！速やかに投降しなさい！』
ナデシコＢから響いてきた声はコハクの予想通り彼の母、（旧姓）ミスマル・ユリカのものであった。
ちなみに『ＷＨＩＴＥ ＦＡＮＧ』とは、コハクのテロリストとしての名前である。
「かんべんしてよ･･･」
思わずぼやく、彼の母の勘のよさと運の良さには毎回逃げるのにすさまじい労力がかかるのだ。
『と、言うことだそうですので大人しく降伏してください』
フェンリルに『電子の妖精』ことホシノ・ルリから通信が入る。
コハクはいつものように返答する。当然というかサウンド・オンリーだ。さらに声も機械で変えている。
「そういうわけにも行かない、これはボクの仕事、そっちこそあきらめたら？、っていうかあきらめてよ。逃げるの大変なんだから･･･」
後半はぼやきとかしたコハクの言葉にルリは表情を変えることなく言葉をつむぐ。
『こちらもそういうわけにはいかないんですよ『ＷＨＩＴＥ ＦＡＮＧ』さん』
「まっ、あきらめてるけど･･･。とりあえず降伏する気のない『火星の後継者』残党の方々をのしてからということで」
手早く通信をきり、ブースターを吹かす。
ナデシコＢからも四機のエステバリスが飛び出した。
コハクは多分最終決戦時に六連と一緒に戦ったパイロット達だろうとあたりをつけた。（無論そのとおりなのだが）
そのままヤンマ級に肉薄しグラヴィティランチャーを発射する。
ヤンマ級はひしゃげるように破壊された。
もう一隻のほうは、ナデシコエステチームがつぶしている。
残る一隻はというと戦線を離脱しようとしているところであった。
「にがさない!!」
一気に加速をかける。目前にまで迫ってアンカーを射出、ブリッジが貫かれた。
漆黒の宇宙を爆炎が紅く染める。
「さて、」
後はナデシコに任せて逃げようとしたところであった。
生き残った一機のステレンクーゲルがナデシコに向って特攻をかけたのだ。
エステチームは離れすぎており、間に合わない。
「くそっ!!」
コハクは反射的にステレンクーゲルの前にフェンリルをたちはばらかせた。
ステレンクーゲルの一撃がフェンリルを貫いた。
両手を組み合わせ、ステレンクーゲルの頭部に思いっきり振り落とす。
グシャッ!!
鈍い音とともに頭部は思いっきりひしゃげた。
一息ついたコハクの顔をレッドアラートが照らす。
「どうした！？」
『ジャンプフィールド発生装置が故障しました！まもなくランダムジャンプに突入します!!』
「まっ、マジ！？」
『大マジですぅ!!』
そんな漫才を繰り広げている間に刻一刻とランダムジャンプの時間が迫ってくる。
コハクはふと思いつきユーチャリアス改に連絡をいれた。
「ツヴァイ、というわけでいってくるは」
『まっ、待ってくださいよマスター！！』
「待てそうにない。アカツキによろしいっといて」
『ええ、ちょっと･･･』
ジャンプフィールドが形成される。ランダムジャンプの開始だ。
「フェリス、どうなると思う？」
『さぁ、それはちょっとわかりませんね』
「できれば、父さんが一番楽しそうだった時代に言ってみたいなぁ」
『ナデシコＡですか?』
「そっ、とりあえずイメージしておこうか･･･」
コハクがそういったとたん彼らはジャンプした。
そして、その世界には出現することはなかったのである。
キャラ座談会
（出席者） カラクリ亜戯斗（Ａ） テンカワ・コハク（Ｋ） フェリス（Ｆ）
Ａ･･･うしっ、プロローグ完了
Ｋ･･･ボクは一体どこいっちゃったの？
Ｆ･･･マスター、何か題名で大体想像付くでしょう？
Ｋ･･･そういえばそうか
Ａ･･･まっ、そういうこったな、がんばってくれよ。
ＫＦ･･･はーい！
Ａ･･･と、ここでキャラ解説を、
テンカワ・コハク
性別 男
年齢 ９才（肉体年齢１２，３才）
備考 テンカワ・アキトとミスマル・ユリカの息子。『火星の後継者』によって作られたＡ級ジャンパーマシンチャイルド。
父よりは軽い症状ながら五感を患っている（強い刺激なら感じられる）
その左腕、左足は義手、義足である。武器も仕込んである。
（動力源は、小型相転移エンジンらしいという噂もある）
ちなみに余命一年位であるらしい。
銀髪でぼさぼさの髪を肩の辺りまで伸ばしている。
すさまじい知り合いが居るらしい。
フェリス
性別 女
年齢 ２０歳くらいに見える
備考 フェンリルのＡＩ
ちょっと天然はいってる。
紫の髪を背まで伸ばし、緑色の瞳をした美女。
機体解説
フェンリル･･･並みのエステより一回り大きい。全身にスラスターを搭載した高機動戦闘用。
小型相転移エンジンを３基搭載している。またＤＦ発生装置を三箇所に搭載。三重のＤＦを展開できる。
武装･･･ＤＦコーティングアンカー×１
グラヴィティランチャー×１
クロー×２
フレスベルグ･･･その形状ははっきしいって戦闘機。
大半の攻撃はＤＦをまとった体当たり攻撃。
そのエネルギーはフェンリルからの重力波ビームにて供給される。
武装･･･機銃×２
（アタッチメントにより様々なオプションパーツの装着が可能）
Ｋ･･･すごい機体だね（汗）
Ａ･･･ふっ、まだまだ序の口よぉ！楽しみにしておれ！わっはっは
Ｆ･･･（不安だなぁ）
管理人の感想
カラクリ亜戯斗さんからの投稿です。
う〜ん、プロローグを見る限り・・・シリアスっぽいですが。
どうにもコハク君が軽いですよねぇ（苦笑）