POWER    第3話「出会いそして始まり」


―RURI―


「君の知っているテンカワ・アキトは死んだ」


拒絶


「君にこれを受け取って欲しい。

 彼が生きてた証だ」


別れ


「行くというなら追いかけるまでです。

 だってあの人は大切な人だから」


だけど諦めない。

大切な人を失うのはもう嫌だから。

そして火星でアキトさんを見つけました。

しかし


「もう君達と交わる事はない。俺の事は忘れて生きろ」


再度の拒絶

そしてまたアキトさんは逃げていく。

それを止めようとする私。

結果は……ユーチャリスのジャンプ制御部の故障。

原因を作ったのは私……

そしてユーチャリスはどこかへと消えていきました。

だけど私は諦めません。

私はアキトさんが好きだったから。

ユリカさんを好きなアキトさんが好きだったから。

3年前のあの頃へ戻りたかった。

アキトさんとユリカさん、そして私と3人で暮らしていたあの頃へ。

なんでもないような事で笑いあい、アキトさんが一生懸命自分の味を求めていたあの頃へ。

だから諦めませんでした。

その中でハーリー君が重傷を負ってしまいました。

弟同然であったハーリー君を失ってしまうかもしれませんでした。

そしてユーチャリスへ着くことを願いジャンプ。

もう一度アキトさんと会うことはできるのでしょうか?

ハーリー君は助かるのでしょうか?

全ては運命という物が決めるでしょうか?

「ルリちゃん……ルリちゃん」


いきなり声が聞こえました。

アキトさんの声です。


「ルリちゃん大丈夫か?」


私は大丈夫です。

アキトさん……アキトさん私は大丈夫です。

ぱっと目の前が開けました。

どうやら夢だったようです。

……それじゃあ……アキトさんの声も……幻だったんでしょうか?

しかし隣から聞こえてきた声はこれが現実だと教えてくれました。


「良かった……具合はどうだ?」


気づいたら私は泣きながらアキトさんに抱きついていました。




















―AKITO―


初めてじゃないだろうか?

この子――ホシノ・ルリがこんなに泣いているのは。





しばらく経ってどうやら落ち着いたようでなんとか泣くのをやめれたみたいだ。


「君は俺の知ってるホシノ・ルリかい?」


泣き止むのを見て俺は彼女にそう質問した。

まぁ確証はあったんだがな。


「えっ!あ……たぶんそうだと思います。

 ここはどこです?」


「ここはナデシコだよ」


「え!?」


ちょっと混乱させてしまったみたいだ。

まぁこんな言い方をすれば当たり前かもしれないけど。

とりあえず今の現状を話す事にした。


「今は2196年ここはナデシコAだよ。

 俺はランダムジャンプでこの時代で、君はその俺のジャンプを追ってここまでやってきた。

 とりあえず自分の体を見てみな?」


そういうとルリちゃんは自分の体をいろいろ触ってみた。

自分が前より小さくなっているのが、分かったのか鏡を覗き込みに行った。


「……驚きましたけど、本当なんですね」


「あぁ、本当の事だ。

 しかし、無茶をするものだ……イネスの作った物をテストもせず使うんだから」


「あの状況ではしかたなかったんです。

 ……えっ……待ってください……なぜ私がイネスさんの物を使ったと分かったんですか?」


やはりそう来たか。

俺は少し考えて彼の所に通信を送る事にした。


「ちょっと待って。

 オモイカネ、例の所に回線を繋いでくれ」


『了解』


「アキトさんどこに繋ぐんですか?」


「まぁ待ってな」


これを見たらルリちゃんは絶対驚くだろう。

彼がここに居るんだから。


『繋ぎました』


「ありがとうオモイカネ」


「それじゃあ俺は出てくから後はゆっくりと話した方がいい。

 ルリちゃんの事情は彼から全て聞いてるから」


「えっ!?アキトさ「艦長!!」


ルリちゃんが俺を呼ぼうとするが、彼の声がそれをさえぎる


プシュ!


ドアが開け俺は出て行く。

あの状況から生きてこれたんだ、彼と話をした方がいい。

俺はもう会いたいと思う人に会えないのだから。




















―SHINOBU―


目の前に大きな船がある。

俺が乗り込む宇宙戦艦である。

名前をナデシコという。

……しかし、変な形だな。

なぜなら俺が知ってる宇宙船艦というのはもっと流線形になってるものだから。


「これはカスガさんではないですか。

 船の外で呆けて何をしてらっしゃるんですか?」


「いややっぱり船の形が変だなぁって、お……もって……」


振り向きながらそう言ったのだが、そこにはプロスさんが居た。


「ははは、やはりそう思いますか。

 うちの会長が既存にないデザインの戦艦の方が目立つということで、こういう形になったんですよ」


確かにそういう考えもあるだろう。

ディストーションフィールドという敵方も使ってるらしい技術を取り入れ、大気圏突入が楽になったみたいだし。

それなら既存の戦艦と違う形で目立つ方を優先させるのも納得できる。

ただし、負けた時も目立ってしまうけど……

ネルガルとしてはナデシコが負ける事はないと踏んでるみたいだな。

なんにせよ頑張るしかないか。


「まだ出航まで時間がありますので艦内でも見学していて下さい。
 
 ほとんどの方がもう乗艦されてますので、格納庫とブリッチは優先的に行くようお願いします」


「わかりました。

 部屋行って荷物確認したら格納庫に行ってみます」


「それでは私は仕事がありますので、これで」


そう言ってプロスさんはどこかへと向かっていった。

それじゃあ俺も行くか。





しかし俺はこれから人生をひっくり返す様な出来事が起きるとは思ってもみなかった。

……少なくとも今は。




















―AKITO―


彼がルリちゃんと2人で話せるようにオモイカネに頼んだので、俺はこれからの準備に取り掛かる事にした。

それは、これから襲ってくる木連……いや木星蜥蜴襲来の準備を。

そして足をハンガーへと向け、歩き始めた。








ハンガーではなにやら騒がしい事態が起きていた。。

よく見てみると、そこでは前と同じ事を同じ奴がやっていた。


「レッツゴー、ゲキガンガァァァ!

 く〜やっぱ本物のロボットは違うぜ!」


「おいそこの奴誰だ。

 まだそのエステは整備中なんだぞ」


「俺はガイ、ダイゴウジ・ガイだ!」


「なんでそこにいるんだよ。

 さっさと降りて来い!」


このままではやばいな。

ガイの性格上確実に前と同じく足の骨を折ってしまう。

ふぅ……しかたない俺が止めるか。


「おい、どうした」


一応ここで何が起きたか知らないような振りをして出て行く。


「ん!あんた誰だ?」


「俺はテンカワ・アキト。

 エステバリス隊の隊長だ……でどうしたんだ?」


アカツキ達もそうだったが、自分が知ってる人に自分の名前を喋るのはどうも慣れない。


「あんたがあいつの上司になるんだな。

 あいつが整備中のエステに勝手に乗り込みやがってよ。

 あいつの上司ならなんとかしてくれねぇか」


やはりガイはガイか。

とりあえず足の骨折は回避させてやるか。


「そこから降りろ。

 降りなければしばらくエステには乗せないぞ」


ウリバタケさんから拡声器を借りて言う。

しかしガイの奴、声がでかいな。

こっちは拡声器使って聞こえるぐらいなのに、向こうは何も無しで届いてるぞ。


「お前は誰だぁ!

 ……さては俺の命を狙うキュアック星人だな!

 その手には乗るか!俺にはゲキガンガーが付いている!!」


あいつを説得するのも手が折れるな。


「俺はテンカワ・アキト。

 お前の上司だ!降りなければしばらくエステにお前を乗せない事ぐらいはできるぞ」


ちょっときつい言い方だけど、これぐらい言わないとあいつは降りてこないだろう。


「なにぃ!それは困る。

 今降りるから待っててくれぇ!」


やはりエステに乗れないのは嫌らしく、ガイは素直に降りてきた。


「やっと降りてきたか。

 名前はなんていうんだ?」


「俺はガイ!ダイゴウジ・ガイだ」


「おたく名前ヤマダ・ジロウってなってるぞ」


「違ーう、ヤマダ・ジロウは世を忍ぶ仮の名前。

 本当の名前……魂の名前はダイゴウジ・ガイだ」


『念の為あいつの戸籍チェックしてくれ』という名目でウリバタケさんに名前を調べてもらった。

本当の名前と混同したら困るからな。

それから無断にエステに乗った事でガイは説教を受けていた。

さすがのガイも自分が何をやっていたのか理解したので、素直に説教を聞いている。


「すいませーん。

 ここが格納庫ですか?」


1人の青年がいきなり格納庫へとやってきた。


「あぁそうだ。君は誰だい?」


「あっ!?俺はエステバリスのパイロットをやる事になったカスガ・シノブです。

 よろしくお願いします」


彼がカスガ・シノブか。


「俺はテンカワ・アキト。

 エステバリス隊の隊長を務める事になっている。

 こちらこそよろしく頼む」


「俺はウリバタケ・セイヤ。

 整備班の班長をやっている。

 エステでなんかあったらなんでも聞いてくれ」


「俺はダイゴウジ・ガイ!

 俺もゲキガンガーのパイロットだよろしく頼むな」


「そいつの本名はヤマダ・ジロウ。

 ゲキガンガーとはエステのことだ」


今いるメンバーの自己紹介をそれぞれした。

ガイが間違った事を言ってるので、それは俺が訂正した。


「えぇとこの人の本名がヤマダ・ジロウでダイゴウジ・ガイはペンネームみたいな物ですか?」


「違ーう、ヤマダ・ジロウは仮の……フガ……フガ」


とりあえずこいつが話すと話が進まないので、口をふさいで喋れないようにする。


「そう思ってくれて構わない。

 呼び名はどちらの名前を呼んでくれても構わない」


「分かりました」


自己紹介が終わり暫く4人で雑談を交わしていた。

そして10分ぐらいすぎたぐらいに


ビーーー!ビーーーー!!


突然警報が鳴り出した。 

木星蜥蜴が来た。

他の人は少し慌てていたが、未来を知る俺はそれをいち早く察知する。


「敵襲だ!」


そしてそれを声に出して皆を動かす。


「ウリバタケさん、エステは何機使えますか?」


「出航までまだ時間があったからな。2機使えるぞ!」


2機か……

本来なら俺一人でも問題ないが、イレギュラーが起こった時の為に多いことに越した事はないのだが。


「それなら俺とシノブが出る。

 ガイは先の罰だ。ここで待機していろ」


エステに乗れなくなったガイの愚痴を聞いてる暇はないので、言った後すぐに行動を起こした。




















―RURI―


艦内に響き渡るサイレン音。

このサイレンが全てがはじまったと私に告げる。

あの後ハーリー君から全てを聞き、アキトさんを助けると決意した。

あの時代へはもう戻れないのなら、せめてこちらの世界ではみんな幸せになってもらいたいから。

そして、今回は前と同じ作戦がとられた。

『海底ゲートを通り、背後から敵をグラビティブラストで殲滅する』

あらためてこれを聞いたときユリカさんの素晴らしが分かりました。

私も艦長をやっていましたが、この戦争でユリカさんの采配を見て育ったからできたものです。

だけどユリカさんは初陣で最適な選択を瞬時にできたのですから。


「囮機発進させてください」


凛と通る声でユリカさんが命令を下す。

……私とユリカさんを比べるなんてやめましょう。

私は私なんですから。


「エステバリス隊発進して下さい。

 作戦はナデシコが浮上するまでの囮をお願いします。

 時間は約10分です」

私はナデシコ浮上までの計算を素早くし、アキトさん達に通信を入れました。


「了解」


「了解しました」


知らない人です。

後で名前を調べましょう。

今はこの戦闘を切り抜ける事が先決ですから。

アキトさんがいるので楽勝だと思うのですけどね。










「グラビティブラスト撃てぇぇぇ!!」


ユリカさんの声と共にグラビティブラストを発射させました。

今回の戦闘は楽勝です。

前回と違いアキトさんの腕が格段に違いますし、知らない方もなかなかの腕でしたから。


……アキトさんこれから頑張りましょう。

これからのみんなの為に。




















修正版後書き


やばすぎる間違いを発見したので、副題と共に直して置きました。

一気に3つも修正してしまって申し訳ありませんでした。

 

 

管理人の感想

アイハラ・ヒカルさんの投稿です。

・・・さすがだ、不死身のお子様ハーリー君(笑)

ま、怪我自体は関係ないみたいですけどね、精神体だし(苦笑)

それにしても、オリキャラも登場してきました。

ついでに言えば、ルリが記憶を取り戻した時、何故にアキトと二人っきりだったのか?

 

 

更に言えば、アキト・・・何時からこっちに居たんだ、お前(爆)