終わり無き旅



第1話　「旅路の始まり 前編」　








ビー！ビー！ビー！

警報が鳴り響く。

（・・・俺はまだ何もしていないが）

黒尽くめの格好をした男が周りを警戒しながら通路を走る。

目指すはドッグ。

白亜の戦艦と、それを守護する漆黒の巨神が待ち受けるその場所へ。






〜一時間前〜

「どうしたのアキト？元気がない。寂しそう」

アキト、と呼ばれた全身を黒で統一した男が振り向く。

顔はバイザーで隠れていてよくは見えないが、二十台の男のようだ。

「ラピス。俺とのリンクを切るつもりはないか？」

そのセリフを言ったとたん、ラピスは体をびくんと振るわせ

アキトに懇願する。

「何かいけないことした？なんでもする。駄目なところがあったら直すから。

　だからお願い、私を捨てないでアキト！」

「・・・・」

ラピスはすべてをアキトに依存している。生きることすらも。

そしてそのアキトもラピスがいなければ生きて行くことができない。

だが、アキトの寿命は残りわずかだった。

アキトを失ったラピスがどうなるのか。

自惚れかもしれないが、最悪の状況だけは避けたかった。

そのためには、自分の元から離れなければならない。

アキトはラピスには幸せに生きてほしかった。

自分の分まで。

「どうしても・・・駄目か？」

「わたしはアキトの目、アキトの耳、アキトの手、アキトの・・・。アキトは

　私が必要無くなったの？嫌いになったの？」

「そんなことないよラピス。おまえのことを嫌いになるはずないじゃないか」

「うん・・・」

今までにも何度かしてきた会話。

いつもならこれで終わり。

だが・・・この日のアキトの決意は、今までとは違うものだった。







「すう・・・すう・・・」

「やれやれ、やっと寝たか」

あれから三十分。もともと遅い時間だったので、ラピスが眠りにつくのにさほど時間はかからなかった。

アキトは、エリナ達に宛てた手紙をテーブルに置くとラピスの寝室を出た。

「さよなら、ラピス。幸せになれよ」

（アカツキやエリナにこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。

　後は・・・俺が消えるだけでいい・・・・・。

　それですべてが終わる）

アキトは、己の復讐をこれで終わらせるつもりだった。

ユーチャリスとブラックサレナを強奪しみんなの前から消えるつもりなのだ。

血に汚れた肉体とともに。











〜同時刻　某所〜

ミズキ・タチバナは困っていた。

ついさっきまで、上司と喧嘩した腹いせにネルガル本社のメインコンピューターを

ハッキングして機密ファイルを盗み出し、後はどこかへ高飛びする予定だった。

そう、あくまで予定。

ほとんど勢いだけでやったようなものなので、逃げる手段を確保していなかったのだ。

全身を黒い軽戦闘服で包んではいるが、かなり不安がある。

このまま逃げても確実につかまる。

ネルガルシークレットサービスの恐ろしさは自分がよくわかっている。

自分もそこの所属だったのだから。





「何かないかな〜・・・役に立ちそうなデータ」

無駄だとは感じつつも盗ったデータをさっきから眺めている。

後数十分もすればシークレットサービスが動くだろう。

そうなったらアウトだ。

「お？・・・・・・これは」

そこに現れたのはある戦艦の航行記録。

最新の日付は今日だ。

「・・・行くっきゃ無いわね」







〜再び現在〜

「いったいどこのどいつだ？こんな騒ぎを起こしたのは」

穏便に事を済ますつもりだったがこうなっては仕方がない。

多少無理してでもユーチャリスで行くしかない。







「・・・ドッグへ向かっている？」

さっきから見事に急所を決められ、昏倒している人を何人も見かけた。

おまけに、セキュリティーまで外されている。

誰がやったかはわからないが、見事な手際だとアキトですら思ったほどだ。

しかし感心している暇はない。

誰かがユーチャリスを狙っているのだ。

自分とラピス以外に動かせるとは思っていないが、万が一ということもある。

「急ぐか・・・」










ユーチャリスに入ったアキトを迎えたのは見知った顔だった。

「誰かと思ったら・・・ミズキ・・・」

「ふふっ、久しぶりねアキト。元気・・・ってあんたに聞く言葉じゃないわ　ね。私は・・・見てのとおりよ」

ミズキの体には無数の銃痕が残っており、ミズキは、自身の体から出た血の海に体を横たわらせていた。

「とりあえず、ここを脱出する。手当てはそれからだ」

「酷いわね・・・、仮にもあんたにエステの操縦を教えた教官よ？」

と、苦笑するがその声に否定は含まれていなかった。

「事情は後で聞こう。エニア！」

『はいマスター』

「ジャンプフィールド展開。ジャンプするぞ」

『了解』



ネルガルシークレットサービスがドックにたどり着いたとき、すでに其処にユーチャリスの姿はなかった。

後書き

藍染児：
どうも〜。藍染児です。
あいぞめじ、ではありません。あいせんじです。
一話目ですが・・・・短っ！
もちっと長くすりゃよかった・・・・。
でもこの先長いから、無理はしないでおこう。
早速オリキャラのミズキが出てきてますが、イメージはずばり

ゴキブリ一号！！！！！

もちろんゴキブリ二号は劇場版アキトです。
まっくろくろすけです、ええ。
アキトが黒いのはミズキのせいです。
ブラックサレナが黒いのもミズキのせいです。
リョ―コが髪を元に戻したのもきっとミズキのせい、かも。
ユーチャリスが白いのはミズキのせいじゃないからです。

誤字脱字用法間違いなど、ご指摘お願いします。

代理人の感想

ミズキさん・・・・・いきなりだが言わせて欲しい。

なんて行き当たりばったりなひとなんだ(^^;！

なんか（ある意味）黒アキトが黒くなった元凶っぽいし・・・。

なにより利害や打算、理性ではなく、本能と感情で動く諜報員・・・・・・・素敵だ（爆）。

・・・・・・・っつーかよく今まで生きて来れたな、この世界で（汗）。