終わり無き旅



第十四話「ちょっと早めの航海日誌」








で、結局何も起こりませんでした。







あ、申し遅れました。私、ナデシコオペレーターのホシノルリです。

現在ナデシコは月に向けて悠々と航海中。

連合軍とのいざこざも無いし木星蜥蜴も襲ってこないしこりゃ楽チンってことでナデシコの中はお気楽ムード。

悪いことじゃないですけど、前回もこんな雰囲気になった時痛い目見ましたからちょっと心配です。



総司令との交渉はどうなったかって?

ユリカさんが何かするまでも無く、脚本は既に用意されていたようです。

連合軍はあっさりとナデシコのビッグバリアの通行を許可。

ただし、その条件として新たな軍人さんを乗せること、ナデシコの連合軍への協力の二つを提示されました。

ユリカさんは前者は承諾、後者は拒否しました。

どうなるかと思っていたけど、あちらさんも大して期待はしていなかったようで・・・。

ナデシコの目的地は火星ですから当然ですね。

それから、大気圏突破中に高速シャトルでジュンさんが合流しました。ずいぶん無茶します。

何やら、手紙がどうとかよく分からないことを叫んだ後、泣きながら走って行っちゃましたが・・・・。

何だかいつかのハーリー君みたいですね。

・・・まあジュンさんですし、放っておけばいつも(ユリカさんの斜め後ろ)のポジションに戻っているでしょう。



それはさておき、月。

不思議な話です。

前回月は木星蜥蜴の勢力圏内だったはずです。

それが何故、月軌道に連合軍の防衛ラインが敷かれているのか。

そして火星。

『処刑場』と呼ばれていること以外、全く情報を入手することが出来ませんでした。

不自然なほどに情報が無いのです。

何か、裏があるようですがそれが何であるかは分かりませんでした。

何処かが少しずつ私の記憶と違っています。

地球の戦況、月の防衛ライン、謎に包まれた火星。




そして何より分からないのがアキトさん。

貴方は一体、何を考えているのですか?

ユリカさんのことは、もう忘れてしまったのですか?


そういえば、副整備班長のタチバナミズキさん。

彼女も、私の記憶の中にはありません。

一体、彼女は何者なのでしょう。

どうやらアキトさんの昔からの知り合いらしいのですが、いつ彼女と出会っていたのでしょう。

アキトさんに尋ねてもいつもはぐらかされてばかり。

ミズキさんからは何か嫌なものを感じます。もしかして私嫌われてますか?


謎、謎、謎。


分からないことだらけ。

こんな時、ハーリー君かサブロウタさんでも良いからいてくれませんかね。

ちょっと、不安です。




戦争は続く。

遺跡を巡って。

この戦争の果てに、アキトさん。貴方は一体何を見ているのですか?


某日 ホシノルリ










「ふう・・・・・・」

航海日誌って、こんなもので良いのでしょうか?

こんなもの誰が見るんでしょう。

アカツキさんですか?

ちょっと思い募って見られてはまずいことも書いてしまったので、このページはは厳重に処分致しましょう。

後で適当にダミーを用意しておけばOKです。

「ルリルリ、日誌書き終わった?」

「あ、ミナトさん。ええ、ちょうど終わりましたよ」

今回、ミナトさんは前回よりも早く私の事をルリルリと呼んでいます。

嫌じゃないですからいいですけど。

「そっか、じゃあお昼ご飯食べに行かない?」

「はい」

アキトさんのつくるご飯は、以前にも増して美味しくなってます。

それは嬉しいのですが、そのせいで女性のファンが増えて困っています。

前回はどこか子供のような所が母性本能をくすぐり多くの女性を惹きつけましたが、今回はどうやら

年齢不相応の落ち着いた雰囲気と何処か翳りのある表情が女性陣には受けているようです。

・・・・近いうちに対策を立てる必要がありますね。




「う〜ん、何食べよっか。ルリルリは何にするの?」

お昼時の食堂は思った以上に混んでいて、私とミナトさんは何とかカウンター席を確保しました。

「私はチキンライスにします」

「じゃあ、私は日替わり定食にしようっと。あ、アキトく〜ん!」

「こんにちわ。ミナトさん、ルリちゃん。注文ですか?」

「えっと、日替わり定食とチキンライス、一つづつね」

「分かりました」

アキトさんは注文を聞くと見事な手さばきで料理を作っていきます。

料理は全くの素人の私ですが、アキトさんの腕が一流ということは分かります。

だって、ホウメイさんにも何ら引けを取っていないのですから。

「にしてもあれよねぇ・・・」

「どうかしました、ミナトさん?」

「う〜ん、アキト君てさあ、パイロットなのよね」

「コックとの兼任ですけどね」

「う〜ん・・・・ぜんっぜん、見えないなあ」

当然です。

アキトさんの本職はコックなんですから。

今は、必要に迫られてパイロットをしているだけです。





・・・・・・・・これは、後でミナトさんに聞いたのですが・・・・・、この時ミナトさんは

『コック』のアキトさんが『パイロット』に見えないと言ったのではなく、

『パイロット』のアキトさんが『コック』に見えない、という意味で言ったのだそうです。

・・・・・・私の想像以上に、アキトさんの雰囲気と言うものは周囲に影響を与えているようです。

漆黒の機体を操り、多くの人々の命を奪ったアキトさんは、もうこちらでは関係無いと思っていたのに・・・。




「お待ちどうさまぁ!チキンライスと日替わり定食です」

「あ、ありがとサユリさん」

料理を持ってきたのはサユリさんでした。

・・・ちょっと残念です。

忙しいですから仕方ないですけど。

「そういえば、サユリさん・・・ウェイトレスじゃなくてコックですね・・・」

「どうしたのルリルリ。冷めちゃうよ」

まあコックでもウェイトレスでもあんまり変わらないですけどね。





「ホイコーロー二つとチンジャオロースーできたぞ!」

「醤油ラーメン三つ、チャーハン一つオーダー!」

「サユリ、チャーハン!」

「はいっ!」



・・・・・・・・なんか妙に息が合っていますね(怒)

これはサユリさんにも気をつけないと駄目でしょうか。

やはりあの計画を早急に遂行する必要がありますね。

オモイカネの情報によれば整備班の方々が何かよからぬ事を考えているようですから。

「ん〜、この煮付けがまた何とも」

・・・・・・・・・・じゅるっ。

ゴホンッ!ともかく、今はこのチキンライスを食べることが何よりの重要任務です。

「はむっ・・・・・・・おいしい♪」

さすがはアキトさんです。

柔らかい口あたりの中にほんの少しだけ効かせたスパイス、ジューシーさを失っていないチキン。

どれをとっても最高の出来、百点、いえ、二百点ぐらいあげちゃいます。








「ふう、ご馳走様です」

「ご馳走様ぁ。じゃあルリルリ、戻ろっか」

「そうですね」

もうすぐナデシコは月に着きます。

第一次防衛ライン、月軌道艦隊。

地球圏で最も激しい戦闘が繰り広げられている、最重要防衛拠点です。

第一次火星会戦から一年。

未だこの艦隊がこの地に止まりつづけているという事が、この艦隊の実力を物語っています。

グラビティブラストも、ディストーションフィールドも装備していないというのに。

もちろん真っ向から勝負しているわけではなく、無人兵器はともかくほとんどのチューリップを見逃してしまっています。

それでもやはり月という拠点を死守するのにはそれなりの意味があります。

中でも、月が陥とされた時の士気の低下は無視出来るものではないでしょう。

ただ、噂ではこの艦隊よりも凄いところがあるらしいのですが・・・。

そんな艦隊があるのなら何故前線に出さないのでしょう?

やっぱり噂は噂でしかないという事なのでしょうか・・・。









「ナデシコは何処に停泊するんですか?」

「ええ、ネルガルの所有するドッグに行ってもらいます。もう軍の方もお着きになっているらしいですから、はい」

プロスさんはメガネを中指で上げながらユリカさんに言います。

そういえば、新しく来る軍人さんとはどんな方達なんでしょう。

まさかキノコなんて事は無いですよね。

「プロスさん、その軍人さんッてぇ一体どんな人なんですか?」

メグミさんが丁度私が思ったことをプロスさんに聞きました。

「正確には人達、ですな」

「じゃあ、何人か来るんですか?」

「二人、乗艦することになっています。一人は監査役、もう一人はパイロットだそうです。

 それから、私どもの方で雇った三人のパイロットも月で合流することになりました。

 何でも新型フレームの欠陥が今になって発見され、急遽月製造ラインの方に向かったとか。

 軍の方々より数時間遅れることになりますから、暫くナデシコは月に停泊することになりますな」

監査役、という所でプロスさんはちょっと渋い顔になります。

自分が会計監査役なんですから当然といえば当然でしょうか?

それはともかく・・・

「その新しい軍のパイロットさんって、男の人なの?それとも女の人?」

これまた丁度私が思ったことを、今度はミナトさんが尋ねてくれました。

「女の方だそうです。月軌道艦隊の機動兵器部隊にいた方で、かなりの実力者だと聞いています」

女・・・・・・何か嫌な予感がします・・・。

でも、実力のある人を軍が手放すなど意外ですね。

もしかしてリョーコさん達のように人格に問題があったりするんでしょうか?

「じゃあ、プロスさんの雇った方は・・・・・やっぱり女性なんですか?」

「ええ。・・・・・・念のため言っておきますが決して意図的に女性を狙っているわけではありませんよ」

・・・プロスさん。それ、真面目に言ってますか?

「前方に月を確認。あと三十秒で引力圏内に到達します」

「了解!ディストーションフィールド停止。ドッグとの通信を開いてください」

さて、鬼が出るか蛇が出るか、最悪でもキノコさんのように百害あって一利無しのような方はやめてほしいです。












「ナデシコ艦長ミスマルユリカです」

「軍より監査役として派遣された、ジル・トリアンだ。よろしく」

「同じく軍より派遣されましたパイロットのカザマイツキです」

ナデシコがドッグに着くと、ブリッジクルーと各部署の主要メンバーのみドッグの応接室へと足を運びます。

・・・どうやら挨拶を聞く限りではまともそうな人達のようです。

ジルさんは浅黒い肌、茶水晶の瞳、ざっくばらんに切ってある黒髪と、全体の印象としては余り軍人さんに見えません。

身に纏う士官服もどこか取って付けたような・・・・ぎこちない印象を受けます。

対してイツキさんは色白の肌、紫がかった髪と瞳。ややきつめの印象を受けます。ちょっと固そうな人です。

なんだかイツキさんを見てウリバタケさんが興奮していますが、無視です。

「ところでアキトさん。さっきから気になっているのですがあのカザマイツキという人、何処かで見たことありませんか?」

「・・・俺も同じだ。・・・・・何処だったか・・・・」

隣にいるアキトさんも、彼女とどこで出会ったかは憶えていないようです。

確かにどこかで出会っていたと思うのですが・・・。

「ところで艦長」

「はい?なんですかイツキさん」

「他のパイロットは何処ですか?見当たらないようですが」

アキトさんが着ている制服は、生活班の物ですから当然黄色。

赤い制服が見当たらないので疑問に思ったのでしょう。

「ええっと・・・一人はナデシコがサセボドッグを出撃する時に負傷しまして、現在は臨時パイロットが一名です」

「臨時?使えるのですか?」

あのカザマイツキさんという方、なんだか高圧的な態度ですね。

「そりゃあもう!何たってアキトは私のおモガッ!」

「ははははは!こちらのテンカワアキトさんがコックと兼任して臨時パイロットをしています」

ユリカさんの態度に危険を感じ取ったのか、プロスさんユリカさんの口を無理矢理塞ぎました。

ナイス判断です、プロスさん。

「コック兼パイロットのテンカワアキトだ、よろしく」

アキトさんは一歩進み出て、イツキさんに握手を求めます。

イツキさんもそれに答えますが、どこか事務的な感じがします。

「こちらこそよろしく。さっそくですが、貴方の実力を見たいのでシミュレーションで私の相手をしてください」

「着任早々仕事か・・・生真面目だな」

「私は私が生き残る確率を少しでも増やしたいだけです。もちろん、ナデシコも含めて、ですが」

・・・アキトさん相手にずいぶんな言い草ですね。

「そうだな。分かった、相手になろう」











ナデシコに戻り、私はブリッジで早速とアキトさんとイツキさんの動向を見守ります。ストーカーじゃないですよ?

『テンカワさん、といいましたか。貴方、エステバリスの操縦経験は?』

シュミレーションルームに向かう通路で、イツキさんはアキトさんと話しながら歩いています。

『一応、それなりにある』

『そうですか、では念のため言っておきます。はっきり言って素人が居ても邪魔なだけです。戦闘では後方で

 黙っていてくれれば結構です』

『・・・そう言う判断は隊長がするものじゃないか?』

『その隊長はどこに?』

『残念だが、未だナデシコのパイロットは全員集まっていない。よって、隊長も決まっていない』

『あきれた。そんなんでよく月まで来れましたね』

ナデシコが急遽発進するということさえなければ、全員集まっていたのでしょうか?

『いいですか。いくらIFSで操作するといっても素人の貴方が戦闘に参加するなど無謀極まりないことです。

 ましてやあの火星に行くなど・・・こんな民間人の寄せ集めで一体何ができるというんです?』

『ずいぶんナデシコに対して否定的だな』

『当たり前です。このナデシコは本来軍によって管理されるべきものです。それが何を血迷ったか民間企業で私的に

 運用するなど・・・。この戦艦があれば、一体どれだけの人々が助かると思っているのですか?』

『同感だな』

『・・・・・・・私も軍人です。命令には従います。ですが死ぬつもりは毛頭ありません』

その言葉が終わると、丁度シミュレーションルームに着きました。

中に入って、早速シミュレーターの準備をしはじめます。

そして・・・・戦闘が始まりました。

と、そこで――――――――


ザザッ!!!


・・・・・?

画像が乱れ、数瞬後に途切れてしまいます。

これからが良いところなのに!

この間、ユリカさんが着物をアキトさんに見せると言って、格納庫に向かった時も、そのちょっと前からカメラとマイクが

突然の不調を訴えました。

もしかして整備班の怠慢ですか?もしそうなら、お仕置きですね(ニヤッ)

「ル、ルリルリ?」

ミナトさんが不安気な顔で恐る恐る声を掛けてきました。

一体何を恐れているのでしょう?

私は怒ってなどいませんよ?

ミナトさんが口を開けかけた時、ふと、私に降り注いでいたブリッジの明りが遮られます。

「やあホシノ君。何やら面白いものを見ていたみたいだね?」

覗き込むように私の後ろに立っていたのは、私の記憶に無い男性、軍より派遣された監査役のジルさんでした。

「・・・・・なにか用ですか?」

私はジルさんの方に向き直り、見上げます。

ジルさんの身長は結構高めの・・・・百八十近くあるでしょうか。

角度が急で首が痛いです。

「いや何。面白いものを見ていたなあ、と」

ジルさんはこれからのナデシコの指針についてプロスさんやユリカさんと会議があったはずですが・・・。

「会議は、どうなされたんですか」

「ははっ。つまらんから放ってきた。どうせ俺が意見したところで何も変わらんだろうし問題無いさ」

「・・・・・・・」

どうやら第一印象の軍人らしくないというのは大正解のようです。

「にしてもホシノ君。覗きはよくないなぁ、愛しの彼に嫌われちゃうぞ」

「誰が愛しの彼ですか」

「あれ、違うのかい。てっきり俺はあのコック兼パイロットの彼に思いを寄せているものだと・・・。

 おっかしいなぁ、今まで俺が外したことなんて無かったはずなのに・・・」

「貴方には関係の無いことです」

「おや、怒ったの?って事は正解、みたいだね」

「黙秘権を主張します」

「はははっ、うん、構わないよ。それで、あのパイロット君といっちゃんの戦いの続きは見られないの?」

いっちゃん・・・イツキさんのことでしょうか。

「今やってます。ですがカメラとマイクの調子が悪いみたいで・・・」

「そうかい。なら、直接シュミレーターの演算システムにリンクさせてみたら?」

「・・・・・あ」

そうでした。その手がありました。

でも、この人に言われてするのは何か癪です。

しかしそんなことを言っていてはせっかくのアキトさんの戦いが見られなくなってしまいます。

「・・・・・おかしいです」

「どうしたのルリルリ?」

「リンクできません」

マイクとカメラが壊れているならともかく、リンクまで切られているというのは考えにくいです。

明らかにこれは――――

「第三者による妨害工作のようだな。でもナデシコはオモイカネっていうコンピュータで管理されているんだろう?

 オペレーターの君以外にオモイカネに指示できる人間が居るのか?」

「ありえません。例外は艦長とネルガルの会長さんですが・・・」

「艦長は会議、会長はそもそも居ない。そしてこの二人には妨害する理由が無い、と。いきなり八方手詰まりかな」

ジルさんの言う通りです。

何だかこの人さっきから妙に鋭いですね。

ちょっと注意が必要でしょうか。




「あ、いえ・・・・・・・・・・・・・・でも、そんなはずは・・・・」

私はふとある人物のことを思いだします。

ユーチャリスで乗っていた筈の人物。

彼だか彼女だか知りませんが、あの人ならこんな芸当も出来るはず・・・・。

「心当たりでも?」

「・・・・・・いいえ」

あの人・・・・・ああ、代名詞で呼ぶのも面倒くさいです。ユーチャリスからとって仮にユウとしておきましょう。

とにかく、これは・・・・・ユウが、ナデシコに乗っている、という事を示しています。

「ま、いいか。覗きが無理なら直接見に行こう」

言うが早いかジルさんは出口に向かいます。

「初めから直接見に行けばよかったんじゃないですか?こんな回りくどいことしないで」

今までジルさんの影になって見えなかったメグミさんがジルさんに言います・・・というかいたんですねメグミさん。

「なあに、男のロマンって奴さ」


プシュッ


その言葉を残して・・・ジルさんは私達の視界から消えてしまいました。

・・・・・あの人凄いんだが凄くないんだかよく分かりません。

「はえ・・・・・・」

「ミナトさん?どうしました?お〜い、やっほ〜。もしも〜し?」

「どうしたのルリちゃん?」

「ミナトさんが帰ってきません」

「え?」

・・・・・・・まさかとは思いますがミナトさん。貴方ジルさんが可愛いなんて思ってないですよね。

ミナトさんが少し世間とはずれた美的感覚の持ち主だとは理解しているつもりですが、今のは完全に予想外です。

九十九さんはどうしたんですか・・・・って今言っても無駄ですけど。

「はぁ・・・・・」

「ミナトさ〜ん、いいかげん戻ってきてくださ〜い」

なんて言いながらちょっと小声の私。

失礼だとは思いますがアキトさんとのときのために参考にさせてもらいます。

さて、私もシミュレーションルームに向かいますか。

「あ、私も行くっ」



どうやら、本当にメグミさんはアキトさん狙いのようですね。









プシュッ

「・・・・・・・・・・先に行ったのではなかったのですか」

「だって俺道知らないもん」

ジルさんはブリッジを出たすぐのところに座り込んでいました。

一体何なのでしょうこの人は。間抜けです。

「コミニュケでマップを見られますよ」

「どれどれ・・・・・・・・おおっ!こりゃ便利」

メグミさんのアドバイスで、というかコミュニュケそのものは既に軍でも使用されているはずです。

使い方ぐらい知っているはずなのに、本当に分からない人です。

「まあ、綺麗なお嬢さん方の案内の方が華があるってもんさあ。さ、行こか」

「私、少女です」

「え、え・・・・」

久しぶりです。このセリフ。

それからメグミさん、照れないでください。






シミュレーションルームまで後少し、という所で目の前からイツキさんが歩いてきます。

どうやら終わってしまったようですね。

「ありゃ、もう終わったのか。結果はどうだったんだい?いっちゃん・・・・・って聞くまでもない様だけど」

イツキさんは、肩を震わせながら早歩きでこちらにきます。明らかにあれは怒っていますね。

目の前まで来た時、イツキさんは立ち止まり


ガンッ!


壁を拳で殴りました。

痛くないんですか、イツキさん?・・・痛いですよね。血が滲んでいます。

ですがイツキさんはそんなこと気にする様子も無く、むしろ溢れ出す感情を痛みでもって押さえつけるかのようです。

その気迫にメグミさんは少し引き気味です。

「どうしたんだいっちゃん。負けたのは残念だが何もそこまで・・・」

「・・・・・・・いいえ。勝負は私が勝ちました」



つまりそれはアキトさんが負けたということです。

それほどの実力をイツキさんが持っているのか、アキトさんが実力を隠したのか、どちらにしてもイツキさんの今の

状況が理解できません。いったいシュミレーションで何があったのでしょう。






「ですが・・・・・・ですがあんな屈辱的な『勝たされ方』をされたのは初めてです・・・・っ!!!!」

震える声。どうにもならない憤りが彼女の中で渦巻いているようです。

「な、何だか知らんがとにかく勝ったんだろう。ならそれで――――」

その言葉を続ける勇気は、ジルさんにはなかったのでしょう。

イツキさんはその紫水晶の瞳の貫くような視線でジルさんを圧倒します。

「よく・・・ありませんっ・・・!私にあんな侮辱をしたことはあとで必ず後悔させます。必ず・・・!!!」

イツキさんはメグミさんを強引に押しのけて、通りすぎてしまいます。

「何なんだありゃ?」

「「さあ」」

アキトさん。一体イツキさんに何したんですか?

新しいパイロットの人を怒らせたりして・・・・これから一緒に戦う仲間なのに。

何か・・・・・・アキトさんには意図するところがあるのでしょうか。








・・・・・・・・・・私としては不安要素が一つ減りましたから安心ですけどね。





後書き

藍染児:ついに登場カザマイツキ!
    性格が違う!?気にしないでください!
    設定違う!?目の錯覚です!
    アキトがイツキに何をしたかって!?震えて待て!
    ルリがそこはかとなく暴走している!?運命です!
    私が暴走してるかって!?暴走してます!
バキィ!
ミズキ:自覚してるのなら落ち着きなさい。
藍:いや・・・・ゴメンナサイ・・・・だからその足どけて・・・・。
ミ:まったく・・・・イツキがようやく出せたのが嬉しいのは分かるけど・・・。
藍:うんうん・・・メインヒロインの一人なのにねえ。長かったよ。
  イツキが出ることは最初から決まっていたけど、何を血迷ったかライラとかルイカとかウェンとか
  当初予定すらしていなかったキャラがこう・・・・ぽっ・・・とね。
ミ:あんたの計画性の無さと突発的な物事の考え方が伺える裏話ね。
  でもいきなり人間関係にヒビ入っているけど?
藍:何言ってるんだ!あっさり惚れたらつまらないじゃないか!
ミ:一理あるけど・・・それで?
藍:断言しようじゃないか!テンカワスマイル(希少価値高し)や料理や容姿で落とされるような女性キャラは
  この終わり無き旅ではメインヒロインたる資格などありはしない!!!
ミ:馬鹿が言いきった・・・・。
藍:・・・・・・後で覆すかもしんないけど。
ミ:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
藍:・・・・・あれ。どうしたのミズキ?頭鷲掴みにされると痛いんだけど?ぎりぎりって音が心臓に悪いよ?
  ん、どこ行くの?そっちにはあの部屋しか・・・・・・・って




  うぎゃああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ・・・・・(断末魔)!!!



ミ:さて・・・・・・腐れ作者の陰謀でイツキちゃんが活躍しそうね・・・。
  私もどうにかして登場の場をもぎ取らないと・・・。

 

 

代理人の感想

いや、まぁ、あっさり惚れたら詰まらないってのは分かりますが・・・・・。

某マクロスの主人公とメインオペレーター並の状況ですね、これは(汗)。

どうやって負けたかも気になりますが、むしろなんの意図があってそこまでやったのか・・・。

あるいはイツキのことを深く静かに逆恨みしてたとか!?

(別に彼が降ろされたのは彼女のせいじゃないですし)

 

 

テンカワスマイル(希少価値高し)や料理や容姿で落とされるような女性キャラ

 

つまり、料理がきっかけで落とされたルリはメインヒロインたりえないと(爆)?