時の流れに another
ネルガル月面工場にて

 

 

 

 

 

ネルガル月面工場に音もなく着艇するナデシコとナデシコB。
クリムゾン側も木連側も先日の作戦の成功を信じきっていたのか、
作戦失敗の対応に追われているのか攻撃は一切受けなかった。
せめて、映像の一つも残っていればナデシコの戦闘映像として使えたのであろうが、
二隻のナデシコによって掛けられた強力なジャミングによって、
入手した映像はなにが映っているのか判らないほどの酷いものだった。

 

ナデシコB入港に際しては付近の警戒に細心の注意を払い、厳重な箝口令がしかれた。

 

戦艦建造ドッグ設計室にて
ユリカ、アカツキ、エリナ、ウリバタケが二人ずつと
アキト、ルリ、ラピス、レイナが新型戦艦の設計図を見ながら会話していた。

 

「全長1500m?正気なのか?しかも、なんだこの分離合体機能ってのは。この戦艦はゲキガンガーか?」

 

アキトが聞けば、

 

「そ、そんな訳ないじゃない。この戦艦は戦局に応じて分離合体するために造られているのよ」

 

エリナ(未来ver.)は一世一代の自分の作品をフォローするのに躍起になる。
形をよく見ればディストーションフィールド発生ブレードが横縦横になっている。

 

「分離状態は前から順にナデシコ、ユーチャリス、コスモスUとなってるよ。
 ナデシコ、ユーチャリスの2隻はこれまで通り選任オペレータによるオペレートが必要だけど、
 コスモスUは通常戦艦だから、オペレートも普通にできるようになってるんだ。
 あ、それとね、今回ナデシコBにこの戦艦用のオモイカネシステムも積んできたんだけど
 両方とも最後の出撃前にバックアップをとった奴だからルリ君もラピスちゃんも苦労が減ると思うよ?」

 

アカツキ(未来ver.)が説明すると、

 

「ナデシコ、コスモスの2隻は今の戦艦を改装すれば使えそうだね。
 真ん中のユーチャリスだっけ?この艦は、今ここで建造中のカキツバタを改装するしかないかな?」

 

アカツキ(過去ver.)が解決方法をもたらす。

 

「で?この大型戦艦の乗組員はどうするの?」

 

エリナ(未来ver.)は幾分冷静に言った。
と、アキトが設計室のドアを開けると三人娘×2が倒れ込んだ。

 

「アキトぉ、お前がさっきこの戦艦に対してもらした感想。
 俺に言わせればアキトにそれを言う資格なしってところだぜ」

 

リョーコ(青髪)が言うのに、

 

「なんで?」

 

と答える。

 

「う〜〜。俺はなぁ、以前ゲキガンガーみたいな機動兵器を見たことがあるんだよ」

 

「へ〜、俺も見てみたかったなぁ。どこで見たの?」

 

会話がかみ合っていない気がする。

 

「スペースコロニー『アマテラス』にいたときだ。
 その機動兵器は俺たちが追いかけると部品をはずしてな、それで一体何機が落とされたことか」

 

「へぇ〜、そんな酷いことする奴がいるんだ、許せないなぁ」

 

アキトの名誉のために言っておこう。彼は至極真面目に答えていた。
しかしというか当然のことだが事情を知る
ルリ、ラピス、エリナ(未来ver.)、アカツキ(未来ver.)、リョーコ(青髪)が溜息と共にもらした。

 

「アキトさん、私もその機体、見たことがあります。」

 

「アキト、私も見たことある」

 

「アキトくん、私は見たことないけど、よ〜く知ってるわよ」

 

「テンカワ君、僕はその機体に乗ったこともあるよ、ただその時のパイロットは僕じゃないけどね」

 

「ここまで言われりゃ、いい加減わかるだろ?テンカワ」

 

ここまで言われてもアキトの表情に変化は全く見られない。それどころか頭の上には『?』が乱舞していた。

 

「ヒントその二です。アキトさんその機体にはペアになった戦艦がいました。」

 

「アキト、戦艦と機動兵器、あわせて乗員はたったの2人だよ」

 

「ネルガル月面工場で建造されて整備もここで受けてたんだねェ」

 

「いい加減、分かっただろ?」

 

エリナ(未来ver.)は呆れて無言だった。

 

「あッ、もしかして俺?」

 

「その通り、だからテメェにゲキガンガーを言う資格はねェ」

 

「ハイハイ、それはもういいから、それよりこの大型戦艦の乗員はどうするのよ。
 いまさらスカウトしようにも人材を揃えてクリムゾンとの関係を洗っているうちに三ヶ月はかかるわよ」

 

エリナ(過去ver.)が発言するが、

 

「その点は問題ない。
 先頭のナデシコはこのままナデシコクルーが着任すればいい。
 2番艦ユーチャリスはナデシコBのクルーが入る。
 そして、3番艦コスモスUには優人部隊が入ればいい。
 彼らも、今の木連には帰れないだろうからな。それでいいか?」

 

再びアキトがドアを開けると
ユキナ(大)、ユキナ(小)、ジュン(大)、ジュン(暗)、ツクモ、サブロウタが倒れ込んできた。

 

「いいのか?俺たちは敵側の人間だぞ?」

 

「かまわない、同じ目的に向けて動く同志、それは即ち味方ってことさ」

 

不安そうに言うツクモにアキトは義侠心に呼びかけるように言う。

 

「テンカワさん、木連側の機動兵器どうするんです?ダリア以外は重力カタパルトに対応してませんよ?
 まさか、マニュアル発進てことはないですよね」

 

そう尋ねるサブロウタはいささか心配そうだった。

 

「いや、この際だ。優人部隊の人たちにもエステバリスを提供しよう。
 未来からきたリョーコ君たちにもこっちと同じカスタムタイプを用意して」

 

アカツキ(過去ver.)が大胆な発言をする。

 

「そこまでされてしまうと、我々は服を着替えなければならないな」

 

この件は直ちに舞歌殿に報告され

 

「面白そうだし、いいんじゃない?」

 

の一言で承認された。
翌々日ネルガル月面工場には採寸が終わり支給されたナデシコの制服に身を包んだ優人部隊がいた。
ちなみに、舞歌殿は艦長用の制服をチョイスし、
ユキナ(小)、月臣、秋山、ツクモの4人がブリッジクルー用のオレンジを、
北斗、千紗、三姫、京子、零夜、飛厘、百華、万葉ら女性軍団は当然のようにパイロット用の赤をチョイスした。
サブロウタはこの機会にナデシコBのクルーにつまり、ユーチャリスのクルーになろうとしたのだが、
三姫によってあえなく失敗した。
そして、彼はナデシコB時代同様にサブオペレーター兼パイロットになった。
しかし、数日後、舞歌が見た北斗は一般クルー用のオレンジを着ていた。

 

「あら、北斗殿。どうしたの?制服、パイロット用の赤を注文したんじゃなかったの?」

 

「枝織にしてやられた。ア、アキトと同じ色だそうだ」

 

少し頬を紅くしながらそう言う北斗。指摘していいのかどうか舞歌は迷っていた。

 

「でも、赤いのもあるんでしょ?」

 

「いや、全てこの色だ。まぁそんな長い間着ているつもりもないしな」

 

「そのことなんだけど、本星に残っている部下からの話なんだけど、この間のナデシコ攻撃隊。
 あれに北辰や山崎が乗っていたらしいわよ」

 

「何?あの外道が?つまり死んだということか?」

 

「そうなるわね」

 

「そうか、あの外道が俺やアキトに殺されるのでなく、
 ナデシコの砲撃に巻き込まれて死んだって言うのか、フッハハハハハハハッ」

 

「テンカワ君たちにも教えてあげた方がいいかしら?」

 

「そうだな、アキトやラピスなんかは特に嫌っていたようだから早く教えてやった方がいいだろうな」

 

この舞歌殿からの報告にラピスは周りの目も気にせず、アキトに抱きつき同盟の他の面々に睨まれたが、
今の彼女にとってそんなことは全く眼中になかった。
事情が分かっているルリは今回だけはみんなからの壁になることを決意すると共に、
この報酬をアキトにどうやって求めるかを考えていた。

 

基本骨格が完成していたユーチャリス(カキツバタ)が完成し、
大型戦艦が完成したのはナデシコが月面工場に入港してからわずか1ヶ月後だった。

 

この間、クルーは大忙しの日々を送っていたのだ。

 

ルリ、ラピス、ハーリーやウリバタケたちはカスタムエステの製作調節に。
木連側クルー(コスモスUクルー)はエステバリスの特訓に艦内使用運用の訓練に。

 

ナデシコはナデシコBと出会ったとき彼らは木星に向かっていたのだが、
これは北辰、草壁らによって考えられた罠だった。
ナデシコは目的地を失っていた訳だが、艦長会議の末、予定通り草壁に連絡を取り接触することになったのだ。

 

大型戦艦出航の日、メインブリッジであるナデシコのブリッジに集まった面々を前にエリナ(過去ver.)は

 

「この艦の名前をどうするのか、聞いておきたいわね。
 会長秘書の立場でいわせてもらえば、建造途中で消えてしまったカキツバタを正式名称にしたいんだけど」

 

と発言するが、間髪入れずにルリが

 

「それだけは絶対に誰がなんといおうとダメです」

 

却下する。

 

「なんでよ、せっかく名前が決まっていた艦が突然の事態で消えてしまったのよ?せめて名前くらい」

 

エリナ(過去ver.)は食い下がるが、

 

「ダメです。この艦は沈められる訳にはいきませんから」

 

この言葉にユーチャリスのクルーは苦笑するしかない。
エリナ(過去ver.)は苦笑するエリナ(未来ver.)とアカツキ(未来ver.)を見て事情を察し黙ってしまった。

 

「で?この戦艦の名称はどうするんだ?」

 

アキトが発言するが、満場一致でアキトに命名権が譲渡された。

 

「ん?俺が決めていいのか?そうだな………F・ナデシコなんてどうだ?」

 

「Fはどういう意味なの、アキト?」

 

ユリカ(未来ver.)が全員の疑問を代弁する

 

「FUTURE、未来という意味さ。
 みんなでつかむ未来。
 少数の人たちにとって都合のいい未来でなく全ての人たちが笑っていられるような未来を掴むための戦艦さ」

 

ユーチャリスのクルーは全員が感動し、なにも言えなかった。

 

「なあ、アカツキ。各戦艦の艦長はそれぞれがやるとしてF・ナデシコの艦長はどうするんだ?」

 

「この艦はこの時代の新生ネルガル重工が建造した第1号戦艦さ。
 だったら、会長がやるべきだと思うよ。実質的な会長がね」

 

当然の如く満場一致であった。
そして、決まると同時にブリッジのドアが開きプロス(未来ver.)が入ってきて、アキトに艦長服を渡した。
躊躇いながらも、袖を通すアキト。意外に、様になっていた。

 

「総員、持ち場に着いてくれ」

 

ユーチャリスクルーがメインに座り、ナデシコクルーがサブになる。
コスモスUクルーは予備として座っているが、舞歌だけが参謀として座っていた。

 

「大型戦艦、F・ナデシコ目的地は火星極冠遺跡……発進」

 

…………………………………………………………………………………………………………………………………
大型戦艦F・ナデシコ
全長1500m
相転移エンジン12基(各艦に4基ずつ)ディストーションフィールドを最高3枚展開することが可能。
ナデシコとコスモスUに搭載されている多連装グラヴィティブラストを
ユーチャリスが任意の位置に展開するリフレクターフィールドで反射させる
相転移エンジンをフルドライブさせた場合、その速度は亜音速に達する。
(艦内は重力制御で快適、らくちんです……ユキナ談)
全長がとてつもなくでかい艦であるが機動性はいい。
また、当然のことながら大気圏の突入離脱能力を有するとともに、後方の2隻は光学迷彩機能を駆使し、
ドッキング状態でも姿を隠すことが可能。

 

攻撃、防御、速度どれをとっても問答無用にデタラメな戦艦である。

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

紅い巨星さんからの投稿です!!

凄い艦隊の誕生だ(笑)

乗っているクルーの腕前も問答無用なのに、ナデシコ自体も問答無用だ(爆)

この艦隊に正面から戦いを挑む敵は居ないでしょうね〜

どう考えても、瞬殺されるのが目に見えているし(苦笑)

 

では、紅い巨星さん!! 投稿有難うございました!!

 

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