時の流れに another
ダブル第五話
木連旗艦艦隊を引き連れて、大型戦艦F・ナデシコが木連コロニーに到着したのだが、
木連側政治家に和平派は一人も居なかった。
彼らは、ナデシコに対して直接殲滅作戦を取ってきたのだ。
しかも、優人部隊は〈裏切り者〉の烙印を押され、ナデシコと共に攻撃目標とされていた。
尤も、今現在ナデシコクルーと優人部隊を戦場で見分ける方法は存在しないのだが。
「まったく、政治家がこんなに分からず屋達だとは思わなかったわ」
「舞歌さん、木連にも政治屋しか居ないようですね」
アキトと北斗の護衛で議会場に乗り込み、無事脱出してきた舞歌が呟いた。
自らが正義であり、地球が絶対の悪である。
勧善懲悪主義とでもいえばいいのだろうか、政治家は持論を曲げようとはしなかったのだ。
「やっぱり、クーデターしかないのかな」
ブリッジで未来を知るサブロウタが呟いた。
「帰りませんか?このまま此処に居ようにも、物資が底をついてしまいます。
今帰らないと帰れなくなっちゃいますよ?」
最近、発言が減っていたユリカ(過去ver.)が進言する。
「ぎりっぎりまで説得を続けよう」
艦長であるアキトが発言するが、
「私たちは此処で倒れるわけにはいかないわ。此処はいったん引きましょう?」
参謀の舞歌はユリカ(過去ver.)に同調した。
「アキトくん、このF・ナデシコでボソンジャンプはできないわよ。大きすぎるわ」
エリナ(未来ver.)の説明は端的である。
戦艦をジャンプさせるのはジャンパーに負担を掛ける。
しかもF・ナデシコは全長1500mもある大型艦
たとえA級ジャンパーが6人居たとしてもジャンプには命の危険が伴うだろう。
前回のようにジャンパー同士の電気的接触でもあれば別なのだろうが、
今のF・ナデシコでそんなことをすれば、どうなるのか、戦争になる。
文字通り戦争になるだろう。
「わかりました。ここは一旦帰ることにしましょう」
アキトの号令で後退のために反転するF・ナデシコ、後方にはアララギ艦隊が付き従っていた。
火星を経由して地球圏に帰還したナデシコ艦隊。
アララギ艦隊の面々は念入りに身辺調査がされ、暫定的な階級が与えられていた。
また、木連型戦艦の性能は思いの外低く、F・ナデシコの行動についてこれない可能性があったので、
月のネルガル工場にて、F・ナデシコ先頭の艦をナデシコBに交換、
しかしリアトリス級がアララギ少佐(暫定)に譲渡された。
地球大気圏に降下する3隻。
改装されたナデシコも曳航されたのだ。
そのまま極東方面基地指令であるミスマル=コウイチロウの元に出頭する。
「ユゥゥゥリィィクァァァァァァァァァァ?」
アキト、ユリカ、アカツキの5人がアキトを中心に左右対称に並んで部屋に入ったのだ。
コウイチロウは驚きの声をあげるだけですんでいたのだが、
将棋を指していたムネタケ作戦参謀長は腰を抜かしてしまっている。
2人のアカツキから交互に説明されて事情を理解したコウイチロウは
「そうか、木連も抗戦派が多いのか」
苦渋の声をもらした。
「ええ、戦争を終わらせるというのなら話は簡単ですが、それでは何の意味もありません。
この戦争はもともと地球側の一部に非があるのですから。
しかし、この戦争を和平という形で終わらせない限り悲しい歴史が繰り返されるだけなのも事実ですから」
二度と嫌だという表情で呟くアキトにユリカ(未来ver.)、アカツキ(未来ver.)は言葉を失ったが、
彼らとて、その思いは同じだった。
と、そこに
「ミスマル司令、月周辺に木連艦隊が出現、現在月に駐留している艦隊が交戦していますが、戦況は不利な模様です」
との報告が入った。
「今は戦うしかない。私も出撃しよう」
ミスマル=コウイチロウの発言にユリカ(過去ver.)が
「お父様、ナデシコの通常戦艦への改装が完了しています。旗艦として使ってください」
そう発言し、コウイチロウに受け入れられた。
アラビア半島上空で西欧方面軍艦隊と合流し大気圏を離脱する。
F・ナデシコを先頭に左翼に極東方面軍艦隊右翼に西欧方面軍艦隊が並び、
F・ナデシコの背後に臨時艦隊旗艦であるナデシコが居る。
艦隊が、月に到着したとき月の駐留艦隊はほぼ全滅、
ネルガル重工の試作月面フレームのエステバリスが散発的な戦いを繰り返していた。
敵、木連艦隊はほぼ無傷、呼びかけてみるが応答なし。それどころか一斉に攻撃を仕掛けてきた。
敵の砲撃が届く頃、その敵から通信が入る。
「私は、木連艦隊臨時司令のシンジョウである。草壁閣下の遺志を継ぎ、我々が平和をなすときまで戦い続ける」
宣戦布告。そんな発言だった。
仕掛けられれば応戦するしかない。しかし、木連側が機動兵器戦を挑むにはこの艦隊は相手が悪かった。
今回は、という感じで出撃したのは優人部隊だけだった。
彼らは出撃した後、艦隊の説得に当たる。
しかし、典型的な抗戦派で固められた艦隊に彼らの言葉を聞くものは居なかった。
優人部隊は前回の戦闘同様、撃沈させることなく戦闘力を奪うことのみに集中していた。
しかし、艦自体を利用した攻撃を仕掛けてくる彼らに対すると、どうしても撃沈せざるを得なくなってくる。
そして、そうなると優人部隊だけでは人数が足りない。アカツキ、リョーコらが援軍として発進した。
エステバリス隊の機動力は木連ゲキガンタイプの比ではない。あっという間にケリが付いてしまった。
「シンジョウ、どうする?ここで死ぬか?」
ブローディアでブリッジ前に乗り付けたアキトが黒ずくめの服にバイザーというあの頃の出で立ちで冷酷にいった。
「わ、わたしとて栄光ある木連の軍人なのだ。ここで死ぬわけにはいかない。
全ては新たなる秩序のため、ここは逃げるぞ」
逃げ出す木連艦隊。まさに小心者の極みだった。自分が不利になると逃げ出すとは。
なんとか、木連艦隊を退けたが今回の被害は甚大だった。
月に駐留していた4個師団が壊滅されたのだ。戦局が泥沼と化すと誰もが考えたが、舞歌が
「しょうがないわね、こうなれば木連艦隊を殲滅した上で対等条件の和平を申し込むしかないわね」
と、とても木連指揮官とは思えない発言をする。
「いいんですか?舞歌さん」
木連艦隊を殲滅するとなれば和平ができない方向に戦局が向かうことも考えられる。
「いいのよ、アキトくん。なるべく撃破しないように戦えば、後で和平に持ち込めるわ」
「それでいいのか?ナデシコクルーは2時間以内にどうするかを決め、ブリッジに報告に来てくれ」
艦内放送を流す。
今回は誰も悪役になることなく、ナデシコクルー全員の意志が決定した。
答えは意外に早く僅か30分で全クルーが残留の意志表示をした。
それを、極東方面軍と西欧方面軍が受け入れた。そして、アララギ少佐(暫定)がナデシコに移り発進する。
ハズだった、しかし舞歌の
「アララギくんは地球に残って防衛に当たってくれない?」
の一言で彼は地球防衛の任務に就くことになった。
3日掛けての補給が終わって、F・ナデシコ出港の日、極東方面軍と西欧方面軍、
それにアララギ艦隊の面々に見送られF・ナデシコは月基地を後にした。
「再び、火星極冠遺跡に向かってF・ナデシコ全速前進」
ものの数秒で全開速に達するF・ナデシコ。その速度は亜音速に達する。
そうなると最早いかなる現用兵器も追いつけなかった。
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次回予告
穏便な和平交渉を諦めざるを得なくなってしまったナデシコで彼らは何を思うのか
そんなに暗くなっている暇をもてるほどにナデシコは平和ではない。
整備班は何を作り出すのか
次回『新兵器』は使えるのか?をみんなで読もう
管理人の感想
紅い巨星さんからの投稿です!!
おお、シンジョウさんですよ(笑)
う〜ん、今では軍部では一番偉いのですかね?
でも、このダメダメ感では・・・それほど偉くないのかな?(笑)
さて、この後は死なない程度に木連軍を壊滅させる・・・それが一番難しいと思いますけどね。
では、紅い巨星さん!! 投稿有難うございました!!
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