時の流れに another
ダブル第六話  『新兵器』は使えるのか?

 

 

 

 

 

「ハァ」

 

ブリッジクルーの誰かが今日何回目かの溜息をもらした。
不可抗力だったとはいえ、草壁を殺してしまったことで和平への道がかなり細くなったことも事実なのである。
残された手段は、木連を殲滅寸前まで追い込んだ後での対等な条件での和平交渉しかないのだ。
暗くなるなという方が無理なのかもしれない。

 

「アーく〜ん、暗いよ〜。」

 

落ち込んだ北斗は出てこない。
最近は毎日枝織(しおり)がブリッジ唯一の太陽となっていた。時々本当に光るのだが。
そんな中、発明(悪巧み)を計画、実行している面々が居た。
格納庫の主、ウリバタケが二人とレイナの三人だった。
世の中には〈三人よれば文殊の知恵〉なんて言葉もあるのだがMADな整備士が三人揃えば、
アキトに迷惑がかかるだけだった。

 

「完成したな、新型エステバリス」

 

ウリバタケ(未来ver.)が呟いた。
しかし、彼らにとって運が悪いことにそこにエリナ(未来ver.)とエリナ(過去ver.)が
レイナを食事に誘うために入ってきたのだ。

 

「あ〜〜、あんた達また公金使って何作ってんのよ〜」

 

エリナ(未来ver.)が叫ぶが誤解も甚だしい。『また』なのはウリバタケ(未来ver.)だけなのだ。
だから、ウリバタケ(未来ver.)も慣れたもので、

 

「な〜に、この2人に聞いたら以前アキトが大気圏に突入するなんて無茶をやらかしたらしいから
 大気圏に突入できるフレームを開発したのさ」

 

と、簡単に答えた。
新型フレームは大きさこそカスタムエステと大差なかったが、
重力波ビームの受信装置が丁度小学校などで使う三角定規のような形をしていたのだ。

 

「こいつは、変形式でな、変形するとシャトルのような形にになるんだ」

 

ウリバタケ(過去ver.)が補足説明をする。(形は………ウリバタケさんの声優さんを考え想像してください)

 

「でもね、姉さん。この機体の最大の問題点は、あまりの加速度にアサルトピットが耐えられないのよ」

 

中のパイロットが耐えられないのではない。
アサルトピット自体が耐えられないのだ。要するに、欠陥品なのである。

 

「そんな機体を作るなんて、レイナ、あんた何考えてんのよ」

 

エリナ(未来ver.)が突っ込みを入れた。
元の世界では既に結婚し、小さな幸せを掴んでいる妹が
ここではナデシコの女性陣の中で一人の男を巡った戦いの中にいる。
そんな妹を暖かく見守っていたかったが、仕事は別だった。

 

「姉さん、この機体有人機としては欠陥品だけど、
 シャトル形態に固定して無人機にすれば戦力として十分なはずです」

 

レイナが解決方法をもたらすが、エリナ(過去ver.)は

 

「アキトくんに相談してみて許可が出たら、ユーチャリスの生産工廠で生産していいわよ」

 

月周辺での戦闘で捕獲したジョロやバッタを量産するために急遽搭載したシステムを転用しようという考えだ。
この新兵器案は色を変えただけのジョロやバッタより見分けやすい、
というパイロット達の援護射撃を受けて認められ、量産化された。

 

TPA(無人兵器)−006ファルコン
         全長3m 全幅1m 全高0.8m
         ナデシコからの重力波ビームを得て行動する無人機
         スラスターが後方に集中する形状のためドッグファイトより一撃離脱を好む。
         オモイカネを経由してラピスが直接コントロールする。

 

現在、ユーチャリスの生産工廠で量産化され、常時100機程度が出撃を待っている。

 

 

そんなことがあって一時は活性化したF・ナデシコの艦内だったが食事が終われば、また暗くなっていた。
その中でも、ミスマル・ユリカの落ち込み方は艦内において尤もひどいものだった。
見るに見かねたテンカワ・ユリカ(便宜上)が彼女を連れだし、食堂で訳を聞き出した。

 

「どうしたの?私がいうのも何だけど、らしくないよ?」

 

「アキトがね、ナデシコのみんなに忌避されるかもしれない役をかって出てまで、
 私たちに和平の実行を決めさせたの。
 それなのに、それなのに今は…………」

 

後は言葉にならない。テンカワ夫人(便宜上)に抱きついて、泣き出してしまった。

 

「あれは、私が悪いの。私があのときグラヴィティブラストさえ撃たなければ………」

 

テンカワ夫人(便宜上)は自分も泣きたかったが、グッと堪える。
そんな2人の様子を食堂の外の廊下でアキトと舞歌が立ち聞きしていた。

 

「どうするの?アキトくん。また、悪役に徹して意識改革でもやる?」

 

「あの手は、もう使えませんよ。俺は曲がりなりにも艦長ですからね。それに、あんな思いはしたくないっすから」

 

あれはアキトにとっても、つらい手段だったのだ。しかも今のクルーは全員が全員アキトを信頼している。
パイロットとしても、艦長としても、勿論一人の人間としても。

 

「では、どうされるんです?アキトさん」

 

「どうするの?アキト」

 

「え?ルリちゃんにラピス。ブリッジを空けちゃあダメじゃないか?」

 

「大丈夫ですよ、ハーリーくんに任せてきましたから、彼にもそろそろ一人立ちしてもらわないと、いけませんから」

 

「あらあら、ルリちゃん、彼はまだ7歳なんでしょ?そんな彼に一人立ちなんて無理じゃないかしら」

 

タカバ=カズシの死後、ハーリーはいつの間にか彼女に懐いていた。

 

「舞歌さん、まさか彼と一緒にお風呂なんて入られてませんよねェ?」

 

「あら?なんで、時々入ってるけど、なんかあるの?」

 

「舞歌さん、ハーリーくんは見かけこそ7歳ですけど、
 私たちと同じようにジャンプしてきましたから精神年齢は13歳ですよ?」

 

「エッ、え〜〜〜〜〜」

 

舞歌が彼女らしからぬ叫び声をあげた。
しかし、当の舞歌は13歳の少年に裸を見られたショックでトリップしていた。
と、舞歌は1分で精神的復活を果たし彼女にとって今一番の悪を討ち滅ぼすため駆け出していった。

 

「嫁入り前の女性の裸を見るなんて何考えてるのよ〜」

 

ドガシッ

 

「僕は、何もしてないのにぃ〜」

 

吹き飛ぶハーリー。

 

「責任取ってよ」

 

半ば本気でハーリーに詰め寄る舞歌(27歳独身)いいのか、本当に。
ハーリーが18歳になるまで待ったら完全に行きお…(舞歌様の視線により書くのを断念)
しかし、このF・ナデシコに居る限り、自分と年齢の会う男性が居ないのも事実なのだ。
話が合う男性が居ないわけではないのだが、彼は倍率が艦内で最も高いのだ。
今の舞歌が一番多くの時間一緒にいる男性は勿論アキトである。
しかし、彼女が参戦することはこの宇宙空間を生身で遊泳することに等しかった。
だから彼女は、ほかの男性を探す必要があったわけだが、今回の事件である。

 

閑話休題、話をユリカの件に戻そう。

 

結局、舞歌の叫び声でユリカが食堂に外に出てきたので立ち聞きがばれてしまったアキト、ルリ、ラピス。
食堂に入って、アキトの料理を楽しんでいた。

 

「ユリカ、草壁のことは、もう気にするな。いつまでも過去の囚われては進歩がなくなるぞ?」

 

アキトはユリカ達を慰めるためにいうが、

 

「アキトさん、一番過去に囚われていたのは何処の誰でしたっけ?」

 

ルリの突っ込みに苦笑する。

 

「そりゃあね、ルリちゃん。俺にもそんなことがあったけど今はそんなこといってる場合じゃないだろ?」

 

アキトの励まし?が功を奏したのかとりあえず元気になるユリカ。

 

「「ありがとう、アキト。アキトはやっぱりユリカの王子様だね」」

 

アキトにステレオ音声で感謝するユリカ。
丁度、そんな風にアキトらが、一家団欒をしているときだった。

 

『メグ姉の、悩み事相談室の時間がやってきました〜。こんにちは〜メグミ=レイナードで〜す。
 さて、今日のゲストはなんとメグミ=レイナードさんです〜』

 

〔YOU GET TO BURNING〕をBGMに艦内ラジオが始まったのだ。

 

『こんにちは〜ゲストのメグミ=レイナードで〜す。』

 

全く同じに聞こえる声だが、ゲストの方が少し声が幼かった。
そうDJはメグミ(未来ver.)、ゲストはメグミ(過去ver.)なのだ。

 

『え〜と、まずは掲示板に書き込まれていた相談から。ペンネームR.Sさんからです。
 最近片思いの彼との会話が減ってきています。どうしたらいいのでしょうか。
 ということですが、どうしたらいいんでしょうかね、ゲストのメグミさん』

 

『え〜と、そうですね、もうキッパリ諦めるか何とかして会話する作戦を練るしかないんじゃないですかねェ』

 

『そうですよねェ。このほかにも同様の質問が多数の人から寄せられています。
 では、次の質問。H.Mさんからの書き込みは、
 最近不幸なんです。どうにかしてこの不幸を取り除くいい手段はないでしょうかというものです〜。
 これについてはどう思われますか?』

 

『こればっかりは、その人が持って生まれた素質みたいなものですから諦めて、
 受け入れるしかないんじゃないですか』

 

『そ、そうですね。今日寄せられている書き込みでご紹介できるのはこの2件だけです。
 皆さ〜ん、どんどん書き込んでくださいね〜
 では、今日の番組はこれで終わりで〜す。
 最後にH.Mさんからのリクエスト〔あなたの一番になりたい〕です。それでは皆さんまた明日』

 

フェードアウトするラジオ。
しかも何故か、〔あなたの一番になりたい〕を歌っているのはメグミ(未来ver.)だったりした。

 

「違うんだ〜。僕がリクエストしたのはルリさんの艦長就任記念の方なんだ〜」

 

ブリッジで留守番中のハーリーが叫んでいた。

 

ミナト(未来ver.)は久々に制服を着崩し、ツクモを誘惑してミナト(過去ver.)を焦らせてやろうか
ななどと考えていたのだが、彼女が焦らせたのは千沙だった。
そして、ここにミナト(未来ver.)と千沙の戦いが始まるように思われたが、
ミナト(未来ver.)があっさり引いたのだ。
しかもこのミナト(未来ver.)の攻撃な焦りを感じた千沙はこれまで以上にツクモにベッタリになったのだ。

 

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次回予告
落ち込むナデシコクルーと慰めるユーチャリスクルー
何とか回復を果たす彼らの前に新たな敵部隊の出現
新戦力の初めてのまともな戦闘
次回は、ギャグとシリアス

 

        

 

 

管理人の感想

 

 

紅い巨星さんからの投稿です!!

なんか、新兵器を作ったりラジオ番組をしたりと・・・

シリアスなんだか、ギャグなんだか、一概に決められないお話でしたね(笑)

それにしても、舞歌と一緒に入浴って・・・

ハーリー、お前って後先考えない奴だな、本当に(苦笑)

さて、次回ではナデシコクルーは立ち直るのでしょうか?

 

では、紅い巨星さん!! 投稿有難うございました!!

 

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