時の流れに after story
『ダブル』とは関係ありません。
その日、俺はネルガル重工の秘密乾ドックにいた。
「勘弁してくれよ、あの中からたった一人を選ぶなんて俺には出来そうもないよ」
1週間も前のことだ。例の十数人が俺の前にやってきて、自分たちの中から一人を選べと言ったのだ。
でも、俺にそんなことは出来ない、そんな俺に手を貸してくれたのはやっぱりアカツキだった。
「やぁ、テンカワ君、君も大変だねぇ。条件を一つ呑んでくれるなら、この艦、自由に使ってくれていいよ」
胡散臭いことこの上ない。俺が渋っていると、
「何ね、条件と言ってもそんなに対したものじゃあないさ。ただこの艦に乗ることを希望した男性を数名
乗せてくれればいいだけだから」
クルーが男性だけに限られるのはラッキーだ。
今や戦争も終わり、ナデシコクルーも優人部隊の連中も再就職が決まったわけだが。
そして、アカツキが集めたのは……現状から逃げたがっている人間ばかりだった。
俺、タカスギ=サブロウタ、マキビ=ハリ、アカツキ=ナガレ、白鳥九十九、ウリバタケ=セイヤ、アオイ=ジュン。そして、ヤガミ=ナオ、ヤマダ=ジロウも居た。
ワンマンオペレーティングシステムの試験戦艦カキツバタ改で出港が決まっていた。
機動兵器も充分ある。整備もできる。
無欠の艦になる。
「カキツバタ改、発進」
かくして、俺達の逃亡の旅が始まる…………ハズだった。
「アキト、絶対に逃がさないんだから」
「アキトさん、絶対に逃がしません」
「アキト、逃げるんならリンクを切ってからね?」
「アーくん、私と北ちゃんから逃げるなんて無理だよ」
出港から僅か二日。女性陣が乗るナデシコ改に追いつかれたのだ。
「ハーリーくん、ジャンプで逃げるぞ、準備してくれ」
「ハイッ……………準備完了しました」
「総員、これよりカキツバタ改はジャンプするぞ」
俺がそう言ったときだった。
ズガガガガッッッ
「クッ!何が起きた?」
「テンカワさん、ジャンプフィールド発生装置に強襲アンカーが打ち込まれました……暴走状態です。解除不能」
タカスギからそんな報告が返ってきた。
まったく、ルリちゃんは何を考えて居るんだ?
「ま、まさか……またですか?」
ハーリー君は心配げだった。
「そのようだな。ルリちゃんカキツバタ改とナデシコ改のジャンプフィールドを同調させるんだ」
「解りました。……でも、今度は何処に跳ぶんでしょうね」
ルリちゃんは意外に冷静だった。
「また、あの時ならいいね、ルリちゃん」
その言葉でクルーの多くが思い浮かべた場所は何処だろうか。
ランダムジャンプが全員の意識を奪っていく。
それぞれの思いは彼らを何処にとばすのだろうか。
それは神(遺跡)のみぞ知ることだった。
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あとがきという名の戯言
『時の流れに』に数あるアフターもの