時の流れに after story
『ダブル』とは関係ありません。
まさかこんなに早く現れるとは、何故と言った疑問が浮かびますがそんなことより早くアキトさんに連絡を入れなければ。
「アキトさん!あいつが、北辰が来ました!」
「ああ、分かっているよルリちゃん、奴は今、俺達の目の前にいる。それと、北辰の部下5人がブリッジに向かった。
レベルSでの戦闘を許可するってブリッジのクルー全員に伝えてくれ」
そう言うとアキトさんはコミュニケを閉じてしまいました。
私が伝えるまでもなく、コミュニケの伝言はブリッジに聞こえていました。
「レベルSですかぁ。私としてはそんなに力仕事はしたくないんですが」
プロスさんがそんなことをぼやいていますがやる気満々のようです。
「ねぇ、ルリルリィ。レベルSってなんなの?」
ミナトさんが声をひそめてそんなことを聞いてきました。
「レベルSとは、手加減無用のフルコンタクトってことです」
「それでプロスさんもゴートさんもやる気満々なんですね。でも、艦長まで似たような状態って言うのはどういうことなんです?」
「実はですね、サラさん。戦後、火星に引っ込んだアキトさん、北斗さんは自らの体術を武術として昇華させ、伝授していたんです」
「ということは?」
メグミさんは言葉少なに聞いてきます。
「艦長は北斗さんに師事して北斗流の柔を学びました。師範代にはなっていませんがそれなりの腕前ですよ」
「で、なんでルリルリは席を立つのかな?」
ミナトさんの声が少し震えています。私もまだまだ修行が足りませんね。
「私も習いましたから。それに私は師範代なんですよ。テンカワ流柔の。
ミナトさん、メグミさん、サラさん可能な限り被害が及ばないようにしますが隠れていて下さいね」
そう言い残すと、私は完全に席を立ちました。
「ハアアァァァ」
何度やっても似合いませんね私には。
そうは思いますが気合いを入れるためには仕方ありません。
ま、まさかルリルリまで?
ルリルリの体が銀色に光る気で覆われていったわ。
そんなルリルリの横にちょっと迷いながらも近づく艦長。
「さっすがだね、ルリちゃん。あっという間に昂気を纏うなんて」
「何をいってるんです?艦長、それより急がないと敵が来ちゃいますよ?」
こんな状況でよく落ち着いて話ができるわねこの2人は。
「ハアアァァァ」
私は黄金色に輝く昂気を纏った。
「皆さん!準備はよろしいですか?」
艦長として一応確認しないとね。
「いつでもこいってんだ」
「今回はおまかせしますよ、若い方々に」
「……任せる」
ジュン君、プロスさん、ゴートさんが答えを返してきた。
プロスさん、ゴートさんが戦わないとなると私たち3人で敵5人を叩きのめすの?
ま、やってみますか。
俺は格納庫で此奴と対峙していた。
「クックック、貴様テンカワ=アキトだな。部下が連れにいった妖精共々我らのラボにて栄光ある研究の礎となるがいい」
「フッ、そう簡単にルリちゃんを連れ出せると思っているのか?」
「ルリ?そのような名前の小娘は知らぬ」
そう北辰が言ったときだった。
バキィッッ
シャトル102号機のハッチが吹き飛んだのは。
そしてそこから
「アー君、おっひさー」
「し、枝織ちゃん!?」
途端に北辰があの残忍な蜥蜴のような笑みを浮かべた。
「枝織、何故おまえ、あの牢から出られた。……まあいい、それより命令だその男を捕らえろ!」
「その男って………アー君のこと?」
「そうだ!その男テンカワ=アキトは我々に必要な男だ。早く捕らえよ」
奴は確信に満ちた声でそう言うと踵を返そうとした。
しかし、枝織ちゃんの口から出た答えは奴の期待を裏切るものだった。
「ヤーダよ、アー君はここで枝織と遊ぶんだもん」
そんな枝織ちゃんの様子に一瞬、躊躇しつつも懐から何かを取り出し、口にくわえる北辰。
イイイイイイイィィィィィィィ
なんて音なんだ。しかし、この音は普通の人の可聴領域を外れているな。
と言うことは今頃ブリッジの皆も大変なことになってるだろうな。
俺は横で耳を押さえて座り込んでいるナオさんとアカツキを見やりながらそう考えた。
どうやらこれが枝織ちゃんと北斗を強制的に入れ替える笛らしい。まるで、犬笛だな。
しかし、枝織ちゃんの気配に変化がない。
北辰も気がついたようだ。
「何故だ。何故変わらん」
そんな北辰の隙をつくようにシャトルから二陣の風が吹いた。否、三姫ちゃんとサブロウタが連係攻撃を仕掛けたのだ。
吹き飛ぶ北辰。サブロウタは更に腕を上げたようだな。
「テンカワさん。ここは、俺と三姫で引き受けます。師匠はエステでコロニーの方を」
「任せるぞサブロウタ。それと師匠はやめてくれ」
俺とパイロット三人娘はコロニーに向かって出撃しようとした。
そんな俺の前に北辰が素早く立ち塞がった。
「試験体は試験体らしくしているがいい」
奴がそう呟いた。
「貴様!今、なんて言った?!」
怒りにキレかける俺を余所に奴が続けた。
「一夜にて天つ国まで伸びゆくは瓢のごとき宇宙の螺旋」
プチッ
………………………………………………………………………………………
お、終わらなかった。
よって、まだまだ続きます
最後の音はいったい何だったんでしょうか