時の流れに another
ダブル外伝
さらなる悲(喜)劇
な〜んにもない宇宙空間に大型戦艦F・ナデシコが航跡を描きながら航行していた。
はたから見ればゆっくり航行しているように見えるのだが、実はマッハ2の高速度だった。
「前方2時方向と10時方向にボソン反応。距離120km」
当直のユーチャリスクルーであるメグミ(未来ver.)がのんびりと報告する。
「質量推定。小型機動兵器クラス」
ラピスの報告はいつも用件のみだ。
「楽勝だな。俺が独りで行くぞ、アキト」
北斗がブリッジを出ようとしたときだ。
「機動兵器、両方から同時に通信が入りました。繋ぎます」
ルリが報告し、ブリッジに通信ウインドゥが開いた。
………………ブリッジにいた多くの人間の顎がはずれた音が響いたような気がした。
そこにいたのは、片方は黒いマントに、バイザー……あの頃のテンカワ=アキトそのものだったし、
もう片方は、アキトとほぼ同じ年齢の女性と、16歳当時のホシノ=ルリだったのだ。
未だ再起動を果たさないユーチャリスクルーを尻目に舞歌が2つのウインドゥに尋ねた。
「え〜と、一応こちらから言うけど、私たちは連合宇宙軍第13独立機動艦隊旗艦F・ナデシコ。
私は参謀の東舞歌です。
あなた方の名前を聞かせてもらえるかしら?」
「テンカワ=アキコって言います」
「テンカワ=ルリです。
ボソンジャンプの事故が起きてしまったみたいなんですが着艦許可をいただけますか?」
「……テンカワ=アキトだ。一つ、聞きたい。ここは何処だ?」
よくよく見れば誰にでもわかることだった。
ジャンプアウトしてきた機動兵器はその両方がブラックサレナだったのだ。
ほぼ全員がフリーズしたブリッジでいち早く再起動を果たしたのは、皮肉にもアキトとルリだった。
「わかった。今、格納庫の進入口を開けるから、とっとと入ってくれ」
アキトは艦長として言った。
「分かりました。行きますよ、アキ…コさん」
「……分かった。感謝はしておこう。」
F・ナデシコ艦内に進入する2機のブラックサレナ。
レイナやウリバタケが驚いているがここは敢えて目をつぶろう。
かろうじて意識を保っていたウリバタケ(未来ver.)が「ブリッジは?」と聞かれて位置を教えようとしたが、
焦っていたのか
「ナデシコと同じだ」
と答えてしまった。しかし、当然ながら3人はブリッジに到着した。
3人はブリッジにはいるが、そこで固まってしまった。
アキコは何度も目をこすりながらルリに尋ねた
「ねぇ、ルリちゃん。リョーコちゃんやユリカが二人ずついるように見えるんだけど、気のせいかな?」
確かにルリに尋ねたはずだったが答えは別の所からもたらされた。
「何を言っている。お前だって、そんな姿をしているがテンカワ=アキトだろう?
だとすればこの場にテンカワ=アキトが3人居るんだぞ?」
答えたのは二人の横で未だ黒ずくめの格好をしているテンカワ=アキトだった。
「しかも、お前が乗っている機体から見て、火星の後継者との戦いを終えた後からのジャンプ事故で
ここにきたんだろう?
あそこにいる奴は俺達がナデシコに乗っていたときの姿とさほど変わりない。
火星の後継者との戦いのことは言わない方がいいだろう」
ブリッジ内部を観察してもたらした答えがそれだったのだが、彼らは見落としていたのだ。
ブリッジでルリの隣にラピスが座っていたのを。
「当艦艦長のテンカワ=アキトです。さて、3人はそれぞれ何処から来たのか教えてもらえるかな?
服装やルリちゃんから察するに火星の後継者との戦闘終了後といった所かな?」
「な、何故お前はあの戦いを知っているんだ?」
アキコがあまりの事態に女言葉を使うのを忘れた。
そして、このアキコの問いに答えたのはメインオペレーターのホシノ=ルリだった。
「私たちはジャンプ事故で飛んで戻ってきたんです。
その時、何故か分かりませんが体がナデシコ時代に戻っていたんです。
さて、そちらの二人のアキトさんは、ラピスのリンクがなくて平気なんですか?」
「私の場合は、感覚器官の治療中の事故でこうなってしまったのよ。
それでルリちゃんと旅に出たんだけど、火星の後継者の残党に追われてね、
ジャンプしたらここにいたというわけ」
「俺の場合は北辰との戦いが終わって、ユーチャリスでジャンプしたらここにいた。
ラピスとのリンクは切れていないが五感は戻った」
この言葉に対して
「じゃあラピスは何処にいるんだ?」
アキトとアキコの声が見事なハーモニーをした。
「ああ、火星極冠遺跡にいるようだ、迎えに行って来る」
アキト(黒)がブリッジを出ていこうとしたときだった。
「そうやってまたどこかに逃げるつもりなんですか?」
今度はルリのハーモニーだった。
「ミナトさん、進路変更。目標、火星極冠遺跡。F・ナデシコ相転移エンジン出力臨界へ」
アキトが艦長らしく指示を出す。
ここから火星までは通常のナデシコなら1週間はかかる距離だったからアキト(黒)は独りで行こうとしたのだが、
F・ナデシコが全速で航行すれば加速減速の時間を考慮しても1時間あれば着いてしまう。
そして、亜光速航行に入るF・ナデシコ。
F・ナデシコが火星到着のために減速しようとしたときだった。
(アキトォ、火星の後継者達が攻めてきた)
ラピス(静)からのリンクなのだが届いた先は………艦長であるアキトだった。
「プッ、アハハハハハッ」
突然笑い出したアキト艦長にブリッジ中、アキコやアキト(黒)までもが怪訝そうに見つめていた。
「どうした?気でも違ったのか?」
アキト(黒)が尋ねてみると、
「いや、至って正気だがな。たった今、お前に入るはずのラピスのリンクが俺に入ったのさ」
「つまり、人違いならぬアキト違いって事か?そりゃあ笑えるな、アハハハハハッ」
アキト(黒)が笑い出したのをきっかけにブリッジが笑いに包まれた。
(わたし、そんなにドジじゃないもん)
ブリッジのラピスは拗ねていた。
そのころ火星ではラピスが独り木連軍を相手に奮戦していた。
(アキトが無視した〜(怒))
火星大気圏に突入したF・ナデシコを待っていたのはかつてないほどの大軍だった。
「俺がトップを取る。その直後にブラックサレナ。後の配置はいつも通り。
北斗は……枝織ちゃんはナデシコの防衛、頼むよ?」
「了解」
「わかったよ、アー君」
「今回の任務は孤立したユーチャリスの救出だ。そのためにはいかなる手段を使用してもよいことにする。」
「よっしゃぁ〜、行くぜ!野郎どもッ!!」
最後は今回のリーダーを仰せつかったリョーコ(青髪)が皆に気合いを入れたのだった。
出撃からわずか1分で戦闘に突入するF・ナデシコの面々。
ブローディアはブラックサレナと連携すると言うよりはブラックサレナを守っている。
「最終解除コード『マルス』」
見事にハーモニーを奏でる声だった。
「行くぜッ」
リョーコ(青髪)のかけ声の後に2人の声がハーモニーを奏でる。
「ダブルリョーコ奥義、レッドサイクロンッ」
戦場を駆ける一陣の竜巻。2機のリョーコ専用エステバリスが起こす竜巻が周囲の敵機を飲み込んでいった。
そして、彼女たちが通った後には見事ユーチャリスまでの道が形成されていたのだった。
ユーチャリスの目の前に駆けつけた2機のブラックサレナとブローディアに
ユーチャリスのラピスから音声のみの通信が入る。
「アキト、どれ?」
戦闘は4時間以上に及び、皆の顔に疲労の色が見え始めた。
そんなとき、後方でF・ナデシコの防衛に当たっていたはずの枝織のダリアが前線に上がってきた。
「枝織ちゃん、ダメじゃないか。ナデシコの防衛をしていなきゃ」
アキト(艦長)が呼びかけるが、
「枝織は下がった。ここからは俺の時間だ。一気に決めるぞ、アキト」
北斗はアキトの意思を確認することなく
「ダリア(ブローディア)、フルバースト……ハァッ」
フルバースト状態の2機がさらに蒼銀と朱金の輝きを纏った。
そしてそのまま敵の中を突っ切っていく。
それで戦闘が終わる、ハズだった。
ユーチャリスと合流したF・ナデシコの前のチューリップから7機の夜天光が現れたのだ。
「我が独りだとでも思ったか?未熟者なりテンカワ=アキト」
北辰の七重奏(出来ることなら聞きたくない)
両目が黒い北辰が見事に揃って言う。
しかし、北辰が現れたのに、ラピス達に怯えた様子は一切なかった。
ラピスにとって北辰とは『左目の赤い爬虫類のような男』なのである。
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あとがき
完全に外伝です。今回の話は全くの外伝なので続きはありません。(多分)
管理人の感想
紅い巨星さんからの投稿です!!
3人のアキト(苦笑)
うち、一人は女性化(爆笑)
そうか、イネスさんだな!! イネスさんしかいないだろう、犯人は!!
・・・で、逃げてきたんだアキコさん(笑)
まあ、これ以上人体実験をされちゃ堪らないよな(苦笑)
でも、ますます問答無用な戦隊になりつつ、あるな・・・このナデシコ部隊(汗)
では、紅い巨星さん!! 投稿有難うございました!!
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