「どうも、こんちわ」

「おう、よく来たな、カイト。ところで酒は抜けたか?」

「ええ、一晩寝たら、大体は抜けました」

昨日の祝会でカイトとメインクルーの挨拶が終わった後、そのまま酒宴に突入し、カイトは早々につぶされ、朝まで

医務室に放り込まれていたのだ。

「しかし、よく覚えていたな」

「そりゃ祝会で、『明日来い』って言ってたじゃないですか」

「まあな」

「ところでこんなところに呼んで何するんですか?」

「決まってんだろ……整備だよ」

 

機動戦艦ナデシコ異伝
双頭の獣


第2話貰った『居場所』

 

 

 

そう、ここはナデシコ格納庫。

昨日エステバリスを壊した罰として、整備を手伝わせようという腹だ。

「……しっかしなんでまたいきなり……」

アクチュエータ部をいじりながらも愚痴る。

「あたり前だろうが!エステバリスの稼動域も考えずにポンポンポンポン出力上げやがって!今ここにいるのも奇跡

みたいな物なんだぞ!」

「そんな事言われても……あれが初めてだったと思いますし……」

「ならコッチの指示に従え!!……そういやまだ聞いてなかったが、なんで指示無視して突っ込んでいったんだ?」

 

「なにかあの空間にいると−正確に言うとエステバリスに乗った瞬間からですが−なにかが思い出せそうな気がして

つい……」

「……そうか……だが死んじまったら元も子もないぞ…ってそこ!違う!こうだ!」

どうやら配線を間違えてくっつけていたようだ。

「あっ、すいません。…でもこういういじるのってなかなか面白いですね?」

「……そうか?なら明日からも手伝ってみるか?」

「え、いいんですか?」

顔を輝かせながらふりむくカイト。

「おう、なかなか筋もいいし、みっちりしこんでやるよ」

そうこうやりとりをしていると、パイロット連中が入ってきた。

「あれ?ウリピー、カイト君、ヤッホー!

なにしてんの〜?」

「おお、お前等か。昨日の戦闘があまりに目に余るもんだったから罰で整備だ!」

「そうみたいです…」

ちょっと困った顔で答えるカイト。

「罰で整備ってなんでまた…」

少し据わった目をしながらも答えるウリバタケ。

「少しは整備をする奴の気持ちってもんをわかってもらおうかって思ってな…

……いつも、いつも、いつもいつもいつも!俺のエステぶっ壊しやがってッ!!」

吼えるウリバタケに引きながらも答えるアキト。

「いや、それは仕方ないと思うけど……」

「そりゃ解ってら!!

俺が言いたいんは、コッチが無理だって言ってんのに渡らんでもいい橋を渡ってヒヤヒヤさせた事だ!!

……そう言うわけで、整備でもさせて反省させようと思ってな……

……なんならお前等もやるか?」

喉の奥で笑いながら皆を見渡す。ちなみに目は据わっている。

「い、いや……ああっそうだ!ホウメイさんに呼ばれてたんだ。早く行かなきゃ!」

「そうそう、僕もエリナ君に呼ばれていたんだ。いや〜すっかり忘れていたよ。」

『じゃ、そういうわけで』

なぜか、声をそろえて言うアキトとアカツキ。

そして、当社比3倍速で去っていった。

ちなみに三人娘はもういない。どうやらアキト達が気を引いているうちにさっさと逃げたようだ。

「……皆さん忙しいんですね〜」

それを聞き、信じられない物でも見るかのようにウリバタケはカイトを見る。

「……お前、本気で言ってるのか?」

「何がです?」

その顔には、一片の疑いもない。

「……いや、もういい…」

脱力して答える。

「そうですか?…ところでこれを僕が整備していますけど、また戦闘になったらどうするんですか?」

「あん?こいつは副長の機体だからな。もともと戦力に数えられていない」

「そうなんですか?」

「ああ、だから壊れるまでいじろうがかまわん」

ジュン、いと哀れなり。

「ウリバタケさんが横に着いててくれているんですから壊す事はないでしょ?」

「まあな。ところで俺の事は『セイヤ』でいい」

少し驚いた顔になったが、すぐに笑顔になり、

「はい!それじゃ『セイヤさん』って呼ばせてもらいます!」

「ああ」

 

…数十分後。アクチュエータ部の整備が終わり、休憩がてらに話し込んでいる。

「……そう言えば昨日ボソンジャンプとか極冠遺跡とか言っていましたけど、あれってなんなんですか?」

「あん?…ああ、そう言う事ならルリルリに聞け。俺よりよっぽど詳しく教えてくれる。」

「『ルリルリ』?」

「ああ、そっか、お前、知らないんだったな。ホシノ・ルリの事だ。ま、ニックネームみたいなもんだ」

「そうなんですか」

「ああ、ちょうど整備も一段落しているし、何なら今から行ってこい」

「え、いいんですか?」

「ああ、ついでだから色々聞いてこい」

「はい!それじゃまた明日来ます!」

それを聞くと驚き、カイトに顔を向ける。

「何?本気か?」

「え?冗談だったんですか?」

そう言い、落ち込み出すカイトに慌ててフォローを出す。

「いやな、さすがに本気にしているとは思わなかったからな……まあ良い、良い助手ができた。明日も今日と同じ時

間にこい。みっちりしこんでやる」

「はい!それじゃ失礼します」

そう言い走り去っていく。

「……ま、いいか。しこめばかなりの物になりそうだし。掘り出しモンだな」

そう呟き(つぶやき)ながら整備に戻っていく。

歩きながらコミニュケを開きルリを呼び出す。

“…はい、なんですか?”

「あっ、ごめん、ちょっとナデシコとかの事聞きたいんだけど、時間ある?」

“はい、だけど勤務時間内なのでブリッジに来てもらえます?”

遠くから『ルリちゃんまじめ〜』とか言う声や『ばか』とか言う呟きが聞こえたりもする。

「わかった。それじゃ、今からそっちに行くよ」

“はい”

「カイト、入ります」

律儀に入出の挨拶をするカイトに、

「そんな堅苦しい事なんてする事ないよ」

と笑顔で言うユリカ。

「えっ、そうなんですか?」

驚いて、周りを見渡すと皆、一様に頷いている。

「ところで、ナデシコの事が知りたいとの事なんですが、なにが知りたいんですか?」

落ち着いた声で、ルリが問う。

「とりあえず今までの、火星から跳んだという事までの概略を教えてくれませんか?」

「わかりました。少し長くなりますよ」

「あっ、ルリちゃんだけずる〜い!私もしゃべる!」

「なら、私も」

そう言いながら、さながら弁論大会のようになってきた。

そして、皆が順にナデシコのことを語り始めた。

地球から火星へ。そこであったこと、木星トカゲは実は木連といい、地球を追われた人類だったということ。そして、

争いの原因『遺跡』。

「地球やネルガル、木連はボソンジャンプのシステムとも言える、火星の遺跡を求めて取り合っていた。

そのおかげで俺達の家族や、たくさんの火星の人たちが消えていった。ここにいるユキナちゃんのお兄さん、白鳥

九十九さんもその1人だった」

「確か、ユキナちゃんが木連出身だから、木連の方ですよね?」

「ええ、白鳥さんは木連の人で、最初は地球に対して敵意を持っていたの。

でも、地球にも正義を愛する人たちがいるっていうことを知って、アキト君達と木連と地球の平和を目指そうと協力す

ることになったの。

そのおかげで双方話し合いの場を作ることが出来た。

けど、木連の中には和平に反対の人もいて、結局、その話し合いの場で撃たれて………」

「す、すみませんでした。話づらいことを聞いて」

ミナトは落ち込んだ顔をして目線を少し下げたが、

「けど、大丈夫よ。確かにあのときはすごく落ち込んじゃったけど、ユキナちゃんがお婿さんになってくれるっていっ

てくれたから」

「だって、ミナトさん。あんなに真面目にお兄ちゃんのことを好きになってくれたし。それは最初、木連の人が地球の

人を好きになるなんて不潔とか思ってたけど、すごく2人とも真面目だったし。けど、お兄ちゃんがあんな事になった

から。あたし決めたの。ミナトさんを守るって」

「ユキナちゃん、すごく優しいんだね」

微笑みながらユキナにいうと、顔を赤くしてユキナはカイトから視線を逸らした。

「……?(なにか、ヘンな事、言ったかな?)」

「でも、もうこれ以上周りの人が死んでいくことなんて、なくなるかも知れない。

遺跡を宇宙に彼方にとばして戦争が終わるかなんてオレにはわからない。

でも、オレたちは自分が守る大切なもののためにやったんだ」

「そう、アキトの言うとおり。この艦は私達が私達らしくいられる場所。だか、自分たちの思うようにしたいの」

ユリカが最後にまとめる。

「最初はナデシコを自爆させて遺跡ごと爆破しようって言ってましたけどね」

「そうだったっけ、ははっ」

メグミのつっこみにとぼけるユリカ。

「でも、ボソンジャンプするのにキスする必要って、ホントにあったのでしょうか?」

「それは………もぉ、ルリちゃんまで………」

「うふふっ、ルリちゃんはあんなことを言ってごまかしてるだけなの。

ホントは感謝してるはずよ。ナデシコに乗ってから今まで自分たちが勝ち取った思い出をなくさずにいられたんだから」

「私達らしくいられる場所……自分で勝ち取った思いで……か…」

「でも、キスまでしなくてもいいのに、ねえ?ルリちゃん」

少しうつむくルリ。

「あら、ルリルリにはちょっと早かったかしら?」

そう言い微笑む。それにつられて一同の表情も和らぐ。

だが、その思い出を共有してないカイトは少し疎外感を感じていた。

ポンとカイトの肩にアキトが手をおき、

「そう焦ることはないさ。世の中知らない方がいい過去だってあるんだしさ」

「ありがとうございます……でも、やっぱ少し寂しいっすね…」

そう言い、力なく笑う…

「カイト君……」

場に少し重い空気が流れ出してきた。

「いいじゃないですか」

「ちょっと!ルリルリ!?」

無情に言うルリを慌てて諌めようとするミナト。だが、それにかまわず、

「これから新しい思い出を作っていけばいいだけです」

その言葉に皆は顔を見合わせる。

ミナトは、ルリが自分で勝ち取った思い出をとても大切にしていると言っていた。

だから過去というものに対して何か秘めるものがあるんだろう………カイトは漠然と、そう思っていた。

「そう…そうだよね!これからも皆で楽しい思い出をいっぱい作っちゃいましょう!!」

元気にユリカが宣言する。それに慰められたのか、カイトも元気を取り戻し、微笑んでいる。

「そうですね。記憶もそのうち戻るでしょうし。今できる事をやりましょう」

「ああ、そうだな。地道に行くのが一番だろ」

そう言うアキトに笑いかけながら、

「ええ…あっ、そう言えばボソン・ジャンプについて知りたいんですが、一番詳しいのは誰ですか?もしかしてルリちゃん?」

そう問いかけるカイトに対し、

「いいえ、それならイネスさんですよ。なんでしたら呼びましょうか?」

「うん、頼めるかな?」

そう問いかけるカイトに「はい」とだけ返事をし、イネスに連絡を取るルリ。

「でも、いきなりどうしたんですか?いきなりそんな事聞いて」

そう問いかけるメグミにカイトは、

「ええ、アカツキさんに実験に誘われているんですが、その前に少しでも情報を得ておいたほうがよさそうですし

……なんか僕には危険はないって言っていましたけど……」

「ああ、そんなのウソウソ!!ネルガルがそんなの守るわけないわよ!!」

「ユキナちゃん、それはちょっと言いすぎよ。……まあ、さすがに殺すようなまねはしないと思うけど」

ミナトがフォローをしようとするが、あまりフォローになっていない。

それもそのはず、ネルガルの利権を守るためだけに一度ユキナを殺されかかっているのだ。そんな企業に良い感

情を持っているわけがない。

「……まあ、そう言う事もあるみたいですし、ボソン・ジャンプについて一度本格的に説明を受けてみようかと思いま

して」

『ザワッ』その瞬間ブリッジがざわめいた。

「そっ、それだけはやめたほうが良いよっ」

「そっ、そうだぞ!悪い事は言わない。やめとけ!」

慌てたようにユリカとアキトが止めに来る。

「……どう言う意味かしら?」

いつの間に現れたのか、イネスが二人の後ろに仁王立ちで問いかける。

「うわっ、イネスさん、いつのまに……」

「そんな事はどうでも良いわ。

それでは……説明しましょう!!」

『ザワワッ』先ほどよりも大きくブリッジが揺れる。

「ごめん、アキトに用事があったんだ!ね、アキト?」

「あっ、ああ、そういう訳でちょっと席をはずすよ!」

「わっ、私達も用があったのよね?ユキナちゃん」

「うっ、うん!それじゃ!シュタッ!」

残りも皆、前の二組のような事を言い、蜘蛛の子を散らすような勢いで逃げていく。

「?……ブリッジを空けて良いのかな?」

そう誰にとも付かずにつぶやくカイトに対してか、逃げ出したクルーに対してか、

「バカばっか……」

と呟くルリ。

「……まあ良いわ。それでは改めて、説明しましょう!!!」

その背後にはいつにまにかホワイトボードと教材らしき物が鎮座している。

「そもそもボソン・ジャンプとは…………

 

……………

………

………って聞いてるの?」

「………はっ、何してたんだろ?途中から意識が途切れたような……」

「大体20分ほど前から意識が朦朧(もうろう)としていましたよ。」

耳栓をし、オペレータ作業に徹していた(オモイカネと遊んでいた)ルリが澄ました様に言う。

「ルリちゃん、気付いていたなら起こしなさいよ。まったく」

そう責めるイネスに、

「私、オペレータですから」

と言い訳になっていない言い訳を返すルリ。

「意味がわからないわよ。……仕方ない。また、始めからやりなおしますか」

なぜか嬉しそうにまた準備を始める。

「うわわっ、いいですいいです!概要はわかりましたから!!」

またされたらかなわないと、慌てて止めに入るカイト。

「……そう?じゃ言ってみて」

「はっはい!ええっとつまりは、ボソン・ジャンプとは一般に言われるようなワープではなく、空間を移動すると共に時

間も移動し、結果、ワープと呼ばれる事に似た現象が起こるという事です。尚、それを行うには演算ユニットに信号

を送る事ができる変異ナノマシンを体内に持ち、正確にイメージを送れる人間とジャンプ・フィールドと呼ばれる力

場の二つが必要です。それを持たない人間はディストーション・フィールドに守られ、なおかつ出口となる地点にも

ジャンプ・フィールドが開いていないとどうなるかわかっていません。このどこに行くかわからないジャンプをランダム

ジャンプと呼んでいます」

「……まあ70点って所ね。補足するならボソン・ジャンプはまず、跳ばされる物体をレトロスペクト変換によりボース

粒子に変換され過去へと跳び、その後、目的地に高速移動をする。そして再変換されて通常空間に現れる。ちな

みになぜディストーション・フィールドが必要かというと、フィールドで守られている物体はそのままの形で移動させら

れる。まあ、パソコンで言うところの圧縮といっしょね。ちなみに変異ナノマシンを持っていない人間つまり有機物は

変換されるときか再変換のときに上手く戻らないみたいね。つまりさっきの例でいうと有機体はバグの塊みたいな物

ね。だから、バグと認識されないように圧縮され、データとならなくてはならない。そしてジャンプ体質とはバグではな

く、データとして認識されている。…まあ今はそう理解しておけば良いわ。そして………

………

…」

「イネスさん、イネスさん、カイトさんがそろそろ限界みたいですからそろそろ切り上げてくれませんか?」

そう言いルリが指し示す先には、貧血で倒れる寸前といった風体のカイトがいる。

「……ったく、まあ良いわ。久しぶりに思う存分説明できたし♪」

そう言うイネスの顔はすっきりと晴れ渡っている。

「それじゃ戻ってるからまた説明できそうだったら呼んで♪」

「はい(もう無いと思いますけど……)」

そう言いイネスは戻っていった。

「さてと、……艦長、終わりましたのでそろそろ戻って来て下さい」

“えっ、終わった?…アキト〜終わったって〜”

「…?テンカワさんもいるですか?」

“うん皆いるよ。ここ食堂だし”

「それじゃ氷を持ってきてくれませんか?あれの直撃を7時間ぶっ通しで聞かされカイトさんが灰になりかかっています」

“あっ……あははっ……わかった。超特急で行くね”

「わかりました」

そう言い、コミュニケをきる。

「さてと、……お〜い、やっほ〜、生きてるか〜い?」

そう言いながらカイトの目の前でパタパタと手を振ってみる。

しかし、カイトは反応せず何事かをぶつぶつと呟いている。

「?」

気になったルリはカイトの口に耳を近づけてみた。すると

「説明怖い……説明いやだ……」

この二つを延々繰り返しているだけだった。

「完璧にトラウマになってるわね……まあ、仕方ないか。序盤四時間半、補習2時間半を初めてでマンツーマンで聞

かされたんだもの。普通なるわよね……」

そんな独り言を呟いていると、

「ルリちゃんお待たせ!…って、うわっ完全に燃え尽きてるね」

そう言うユリカを先頭に皆が戻ってきた。

「はい。ところでアキトさん。あれ、持ってきてくれました?」

「うん。ところでこれ、どうするの?」

そう言いつつ袋に入れた氷を手渡す。

そしてカイトの首根っこを持ち、おもむろに背中に放り込む!

「ってルリちゃん!何してんの!?」

さすがに慌てたアキトがとめようとするが、

「気付けです」

とルリは気にもとめない。

「……ってつめて〜、寒い〜、うわ〜〜〜!!」

と転がりながらもなんとか背中から氷を取り出す事に成功する。

「いきなり何するんですか!!」

よっぽど冷たく、それが恐怖に変わっていたのか、涙目で訴える。

「自我の境界線がぼやけていたみたいなので、ショック療法です」

その視線もどこ吹く風と、飄々と答える。

そのとき、この場にいた者は例外無く思った。

『やっぱこの子を敵に回したら駄目だ』……と。

「……と、まあそれよりどうだ、カイト。少しはわかったか?」

無理やりにでも空気を変えようと思ったのか、強引にアキトが聞く。

「……ええ、皆さんがなぜ慌てて逃げたのかまでよく解りました……」

背中に影を背負いながらもなんとか答える。

変えようとした空気をまた戻され、絶句する。

「……まあまあカイト君も影なんて背負ってないで、イネスさんっていつもああだから。

それよりどうだった?ボソン・ジャンプについて解った?」

そこにすかさずミナトがフォローに入る。

それで漸く(ようやく)カイトも立ち直り出したのか、

「……ええ。とりあえずは。

……やっぱりデータ取りと言っても危険には違いないみたいですね。」

「じゃあネルガルの実験には参加しないんだ!!」

なぜか「キラキラ」とつぶやきながらカイトに迫るユキナ。

「うっ……まあ絶対に大丈夫だって言う保証みたいな物がなければやる気にはなりませんね」

ユキナの勢いに引きながらも答える。

「保証ってどんな事ですか?」

気になったのかルリが聞く。

「そうだな……イネスさんの太鼓判でももらえれば、話は別ですね」

そう言うカイトに疑惑の目を向け

「信用できるの?あの説明おばさん?」

とかなりの毒舌を吐くユキナ。

「ははは……まあ説明を受けた感じじゃ少なくとも科学のために人を犠牲にするってタイプじゃないみたいだし、そう言う意味じゃ信用できるよ」

と乾いた笑いを浮かべながらもなんとかフォローをする。

「そうそう、ナデシコにはそういう人を切り捨てるような人はいません!」

そう宣言をするユリカ。

「あの会長さんや会長秘書さんも?」

半眼で突っ込むユキナ。

「だからあの人たちは火星では敵に廻りました!」

(ヲイヲイ、良いのかよそんな事言って……)

心の中で突っ込む一同。

「オモイカネ、今の艦長の発言、削除しておいて」

一人フォローにまわっているルリ。

「艦長っていつもああなんですか?」

小声でアキトに聞くカイト。

「はは…まあいつもって程じゃないけどな……」

とフォローになっていないフォローを入れておくアキト。

「?…カイトさん顔色が悪いようですが、大丈夫ですか?」

そのルリの発言に皆がカイトの顔を見る。

「う〜ん、そう言えばちょっと疲れたかも」

そう言い、自分の額に手を当ててみる。

「それじゃちょっと見せてください。」

そう言い、近づいて来るメグミに少し慌てるカイト。

「?…ああ、大丈夫ですよ。私、準看の資格持っていますから」

それを聞き安心したのか診察を受ける。

「……どう?メグちゃん?」

そう不安げに聞くユリカに、笑顔で

「どうやらここまでの疲れが出てきたみたいですね。

ゆっくり寝れば明日には回復すると思いますよ」

その言葉に安堵し、

「それじゃもう部屋にかえって寝たほうが良いね。…ってルリちゃん、部屋ってまだ空いてたっけ?」

「空いてる部屋はもうありません。空いていた部屋は全てカキツバタからの救助者で埋まっています」

「そんな〜。それじゃ、どうしよう?」

そう言い、頭を抱えるユリカ。

「…それじゃ俺の部屋に来るか?」

それを見かねたのかアキトが聞く。

「良いんですか?お邪魔しちゃって」

「いいって、いいって。もともと二人部屋だし」

それを聞き咎めたのか、ルリが呟いている。

「おかしいな……なんでさっきテンカワさんの部屋が検出できなかったんだろ?

………艦長。何かいじりました?」

その言葉に頭に大粒の汗を浮かべながらユリカが聞く。

「な、何かってどんな事?」

「例えばテンカワさんの部屋を一人部屋として再登録したりとか」

そのピンポイントな回答に冷や汗を流し出す。

「そんな事になってるの?」

さすがに驚きながらユキナが聞く。

「はい、ここを正式にいじれる人はまず私に、艦長、副長、プロスペクターさん、アカツキさん、エリナさんぐらいで

す。後、不正でいじれそうな腕を持っている人はウリバタケさんぐらいですね」

この中でそんな操作をしそうな者といえば……

「艦長。さすがにそれはやりすぎだと思うわよ」

このミナトの一言に収束されている。

皆もやりすぎだと思っているのか、『ウンウン』と頷いている。

「だってせっかくのアキトとの愛の巣を……」

たじろぎながらもそう反論する。

「お前な、ユリカ。そりゃさすがに職権乱用だろ。そう言う事をやるなよな……」

「ふえ〜ん!アキトが怒った〜」

そう言い残し、ブリッジから逃げるユリカ。

「お子様か、あいつは。…そう言うわけでルリちゃん。カイトは俺の部屋に登録しといてくれ」

「はい、わかりました。そういうふうに登録しておきます」

そういい、早速手続きを済ましていく。

「それじゃ、俺はこのままカイトを部屋に連れていくから。部屋の位置、わからないだろ?」

「はい、お願いします。

それじゃ、皆さん、失礼します」

そう言い残し、連れ立ってブリッジを出る。

 

「……しかし、お前ももう少し言葉遣い、砕いた方が良いんじゃないか?

堅苦しくないか?そのしゃべり方」

部屋に行く途中、何気なくアキトが聞いてくる。

「そうですか?なんか気軽なんですよ。このしゃべり方。

…昔からこうなのかな?」

「まあ堅苦しくないならとやかく言う必要もないけどな

……まだ遠慮しているのかと思ってな……」

その呟きに感じ入ったのか

「ありがとうございます!でも、生まれつきみたいなんで。……少しは直した方が良いのかな?」

そうアキトに問う。

「まあ、良いじゃないか。もしかしたらそれが思い出すための鍵になるかもしれないしな」

そうこう言っているうちに部屋の前につく。

そこには部屋の扉に背を預け、足元を見ているユリカが居た。

「お前、何やってるんだ?こんな所で」

アキトが声をかけると、やっと気付いたのか顔を上げる。

「アキト……ごめんね…」

「……それって部屋の事か?」

「……うん」

「そんなの気にしていないから、お前も気にするな」

そう声をかけると、とたんに顔を輝かせ、

「うん!!」

と、返事を返す。

「ただし、ルリちゃんには謝っておけよ。迷惑かけたんだから」

そう釘をさしておく。

「わかってる!それじゃブリッジに戻るね!

カイト君もお休み!」

そう言い残し走り去っていく。

「……なんか、台風みたいな人ですね」

そうコメントを残すカイトに

「まあな。あいつは良くも悪くもマイペースだからな。

それよりここで立ち話もなんだか間抜けみたいだし、中に入るか」

そう言い残し、中に入っていく。

「……へえ、片付いていますね」

その言葉通り、部屋の中は整理整頓が行き届いている。

「なんだ、もっと汚れていると思ったのか?」

布団を出しながらも、笑って聞いてくる。

「ええ、一人部屋だって言っていましたし。

…あっ手伝います」

そう言いながらアキトのそばに行く。

「ああ、それじゃ掛布団を出してくれ。

…まあ一人部屋と言っても人が集まるからな。自然に掃除の回数が増えるんだよ」

そう言う会話をしているうちに寝床の準備が終わる。

「それじゃゆっくり休んでくれ。俺はこれから食堂に行くから。

あ、起きたらルリちゃんにカードキーを貰ってくれ。その頃にはできているはずだから」

「わかりました。色々ありがとうございます」

「なに、これからはいっしょの部屋なんだ。気楽に行こう」

「はい、それじゃおやすみなさい」

「ああ、おやすみ」

そう言い残し、アキトは出ていった。

そうしてカイトが布団に潜り目を閉じると急速に眠りの淵に落ちていく。

眠りに落ちる寸前、カイトはこれまでのことを考えていた。

記憶を失った自分。そのときに来ていたという黒い制服。

その自分に親切にしてくれ、名前まで与えてくれたナデシコの人達。

戦闘中に意識が途切れた事。そして、空間全てを把握できていた事。

全てに等しいだけの事を失った気もするが、それに負けないぐらいの物をこの二日で手に入れた気がする。

これからどうなるのか、記憶が戻るのかもわからないが、なるようになるだろうと思えるようになってきた。

 

そんな色々な思いを抱きながらの舞台は地球へ……

いったいこれからどう流れていくのだろう………

 

 

 

 

 

 

 

 

対談あとがき

 

しくしく………

カイト(以下K)「どうしたんです?」

前回のあとがきの「また来世」っての突っ込んで欲しかった誰も相手にしてくれない……

K「……放置プレイって奴じゃないですか?」

そうかも……

K「まあそれは置いといて……今回は早かったですね」

まあね

K「なんでこんなに早く?」

なんとなく。

K「じゃあ次は?」

……やっぱ月刊かかな?

K「待て。おい」

まあ気が向いたら書くって。最長でも月間ぐらいには次あげるつもり。

K「しかし今回ブリッジ主体だったのにジュンさんでてこなかったな。出番増やすんじゃなかったの?」

いや、台詞考えんのって面倒だったから今回ブリッジに居ない事にした。

K「は?」

だからローテーションであいつ遅番。だから居ない。

K「なるほど。……いいの?それで」

良いんじゃない?ジュンだし

K「そういう扱いかい……それにしても今回薄いね………手抜き?」

人聞きの悪いことを言うな。ただ単にここのパートじゃ書く事が少ないだけだ。

K「……本当に?」

あ〜っ、てめ〜疑ってやがるな!じゃあこれ見ろや!プロット表だ!!

K「フムフム……確かに。でもこれじゃ納得できるの僕ぐらいだよ」

じゃあメールにくれって書いてあったら送る!これでどうだ!!

K「いいけどかなりネタバレ含まれてるから来ると思う?」

うっ、来ないと思う。

K「まあ、来たら送るで良いんじゃないの?」

………そうだな。

K「ところでこの主題歌ってなんだ?」

そのままの意味。イメージとしてOPに『Forever Love』、EDに『Together』を考えている。

ホントは一話のあとがきで書きたかったんだが、忘れてた。

K「ヲイ、待て」

まあ、1話は主題歌無しっていうのも多いし、まあいいか。

K「…ホントに良いのか?」

いいんじゃない?

K「……まあいいか。後、今回のタイトルの意味は?」

ああ、「貰った『居場所』」か?そのまんま。お前、何もせんで新しい居場所貰ったじゃん。

初めは「新しい『居場所』」としようと思ったけど、1話の二番煎じだからやめた。

K「それでかい。…ところで話は変わるけど、カキツバタの奴等って乗ったっけ?」

たしか乗ったんじゃなかったっけ?

K「ナデシコプラスじゃ第弐船体は生き残ってアカツキ記念館なる所に陳列されてるって書いてあるぞ?」

じゃアカツキはともかくなんでエリナもナデシコに乗ってるんだ?

K「さあ?」

よし、じゃあここでの設定。カキツバタは沈んでクルーはナデシコに乗る。それで第弐船体はあとで回収した、と。

K「良いのか?そんな安易で?」

だって他の理由ってあるか?

K「まあそれはそうだけど……」

後、ナデシコの最大収容人数以上になっているだろうという事は気にしないことにしてください。

K「なんで?」

面倒だから。考え様と思えば考えれるけど。例えばナデシコは地球の脱出のときに旧クルーのうち半分がネルガル

のSSに捕まって半数しかいなかったとか、カキツバタの乗員のうち半分は脱出に間に合わずに死んだとか。

あ、ちょうど定員になったな。これで行こうか。

K「ダークって呼ばれるぞ。お前……」

まっさか〜、こんな事ぐらいでは呼ばれないよ。呼ばれたかったらチハヤぐらいのキャラ出さなきゃ(笑

K「でもあの方はダークじゃなくて外道だぞ。方向性違わんか?」

ま、良いんじゃないの?

K「それはそうと、今回でヒロイン決めるってメールに書いてたけど、あれはどうなったんだ?」

いや、あの後よく考えてみたらここじゃまだ顔見せぐらいだったんだよな。それで次に持ち越し。

K「いいのか?そんなあやふやで」

ま、仕方ないだろ。っていうかこの状態でいきなりくっつきだしたら怖いぞ。

K「まあ、たしかに……それじゃ今のヒロインって誰なんだ?」

まあ、そのために年齢下げたんだし、どうしようかと思ってる。ジュンに今以上に不幸になってもらっても良いし……

 

K「は?どういう意味?」

秘密。まあ、次回こそヒロイン決定って言うか、おぼろげながらわかると思う。

K「そうか。で、次回は?」

書いた通り、地球のナデシコ長屋編。まあ、またドタバタになると思うで安心しろ。

K「……できるのか?それ……」

さあ?いつものごとく予定は未定だから。

K「……もういい。突っ込む気力もない。それでは」

また次回

 

あとがき・正規

……というわけで、第2話です。

初めにお願いですが、できるだけ気を付けているんですが、僕の文章が一人よがりになったら指摘してください。

一人よがりの文は書いているほうはともかく、見るほうは不快だと思いますので。(実際そういう文を見たことがありま

す。)

後、解決方法(ここはこういうふうにしたら少しはましになる)等があれば教えてください。

ちなみにイネスさんのボソン・ジャンプの講義はナデシコプラスに載っていたボソン・ジャンプの理論を基に自己流

の解釈を加えた物です。寄って、僕の解釈が間違っている可能性がありますので、話半分に読み流してください。

特にパソコンに例えている話は完全にオリジナルです。

では、また。

 

 

代理人の感想

 

ダークと外道ってどう違うんだろう。

 

「ダーク」と呼ばれる人は大概「外道」の称号も同時に保持してるからなぁ(笑)。

ちなみに「鬼」とか「邪悪」というのはまた「外道」とは違うらしいですね。

本人たちが言ってたから確かです(爆)。

 

 

後ヒロインのことですけど・・・・名前が出てないだけで「彼女」とはっきり言ってません(笑)?