……オマエザキドッグから出航して数日後。

「やっぱこれでは使えそうにないですね〜」

格納庫内でカイトが残念そうに目の前のフレームを見つめながら言う。

「……だな。ちっ!せっかく改造してやったってーのに」

「攻撃力は良いんですが、それを支えるだけの剛健性がないって……はっきり言って駄作ですよ」

ウリバタケは無念そうに言うが、カイトはジト目で見ながら突っ込みを入れる。

「……はっきり言いやがるな」

「これぐらい言わなきゃ、セイヤさんはまだ攻撃力上げるつもりだったんじゃないんですか?」

「……まぁ、な」

カイトの詰問にも悪びれる様子もなく飄々と答える。

「ハァ……ま、いいですけど。剛健性を高めることはもう無理みたいですし」

その機体の両肩を見つつ言う。そこにはまるで扇風機のようなものがついていた。

「しかし……なんでこんな使用空間が限定されすぎるような武器をつけたんですか?」

「それを使いこなせるからエースパイロットと言うんだ。……ま、使いこなせや」

ポンっとカイトの頭に手を置きながら答える。

「……まあ、良いですけど……バッタ程度ならコイツの世話になることはありませんし」

ココン、とそのフレームを叩きながら言うカイト。

「まあな。コイツはまだ未完成だし、持ってきておいてなんだが、使わないのが一番いいしな」

 

機動戦艦ナデシコ異伝
双頭の獣

第9話 『海中決戦』

 

それから更に数日後。

それまでは特に問題もなく、ナデシコBはチューリップの海域近くまで到着していた。

パイロット達は海底調査を行う為、各自のエステバリスへとスタンバイが完了している。

「カイト機、スタンバイOK」

「こっちもOKよ〜ん」

「OK、OK、猫灰だらけー……アハ、アハハハハ………」

”了解。エステバリス隊、発進してください“

各自のスタンバイの完了を確認したメグミから、発進指令が出される。

そしてナデシコより三機のエステが発進していく。

ちなみにカイト、ヒカルが陸戦フレームで海底調査。イズミは空戦フレームで念の為にナデシコの護衛に当たっている。

「さて、と。チューリップが未だに生きているなら、そろそろお出迎えがあってもおかしくない筈だけど」

”カイト君、ドンピシャ!チューリップよりボソン反応増大!……敵襲よ!“

カイトが何気なく呟いた瞬間、ミナトより報告が入り、ブリッジにも警報が鳴り響き出す。

そして前方にかすかに見えていたチューリップの前方が開き、『次元跳躍門』…ボソンジャンプの出口が展開される。

その中から襲来してくる木星トカゲ達。

五十……百……無限に出てくるのかと思わせるほど雲霞の如くその数を増やしていく。

相手もこちらの機体同様、汎用性を高めたバッタやジョロのため、海中では機動力は高くはない。しかし、その数があまりにも多すぎる。

「くっ!…分かってはいたけど、ワイヤードフィフストが使えないっていうのはキツイな……」

両手に構えたラピッドライフルの乱射で確実に数を減らしながらも、ついつい愚痴が入る。

 

「こいつら、なんで何時でも何処でも集団なのよーっ!」

「ディストーションフィールドで防御。対空砲は牽制程度でいいです」

「了解!」

ルリの指示と共に、対空砲が無作為に放たれる。だが、数の多さが災いし流れ弾に当たる敵機の数も多い。

そのまま当たるに任せて防戦に徹しながら敵機を撃破していくナデシコとエステバリス隊。

 

しかし、その善戦も、敵の切り札投入によって崩れ始めてきた。

ガゥン!

「ちぃ!……新型か!?」

動きが制限される水中戦でも直接の被弾が未だ無かったカイトに初めて当てた相手は今まで見た事のない魚型の大型メカだった。

魚……おそらくシーラカンスを模しているのであろうそれは、完全に水中戦使用であることが一目で判断できる。

その全身はシーラカンスが生きた化石と呼ばれていることにちなんだのか、化石の様にゴツゴツした厚い鱗の装甲で覆われている。

「コイツは僕が引き付けます!ヒカルさんは出来ればでいいですから援護を!」

「分かった!……て言いたい所だけど、ゴメン!手が離せそうにない!」

そう言う通り、ヒカルをはじめ、イズミもナデシコも自分の身を守るだけで精一杯で、とてもカイトの援護をできる状態ではなかった。

 

「どうせなら、正々堂々タイマンでも出来んもんかね……」

あまりの劣勢についついカイトの口からも愚痴が飛び出る。

何故なら前面からは『魚』。地面を除く全方位からバッタの機関砲が援護射撃をしてくる為だ。……まあ、機関砲自体はフィールドで完全に無効化できるが、衝撃まではキャンセルできない。それで一瞬でも脚が止まろう物なら、ミサイルの雨が降ってくる状態になっている。

そんな極限状態でも、なんとか持たしているのは、カイトの技量なのだろうが……

「……しっかし、効くのが槍だけってのはどうにかならないかな……?」

その言葉通り、ライフルの斉射ぐらいでは装甲に傷がつくのがやっと。ナイフでは近づき過ぎて危険。フィールドナックルなぞ撃とうとした瞬間にハチの巣だ。…そんな訳で実質使えそうなのはフィールドランサーぐらいしかない。

かと言っても、近距離戦をしている訳だから何時『魚』の攻撃にさらされるか解らない。

実際、あの初撃以降、一瞬フィールドを集中することによって威力を軽減しているとはいえ、その後も幾つか直撃を貰っている。

そして、その度に前回の戦闘でも鎌首をもたげかけたあの『感覚』が何度も襲ってくる。

(いいかげんにしろ……!おまえをソコから出すつもりはない……!)

そう言い聞かせても、その『感覚』は収まる気配はない。そして『中』と『外』。二重の衝撃がカイトをたえず襲う。

「クッ!」

その『中』からの衝撃のせいで手元が狂うのか、じわじわとだが、確実に追い詰められていく。

 

「……せめてもう一機、エステバリスがいれば……」

あまりの劣勢に、ルリの口からもそう言った愚痴が漏れてしまう。

「え?この反応って……?」

オペレータをしていたユキナが遠くから近づいて来る反応を発見する。

オモイカネがその反応の検索結果を示した瞬間、ユキナの顔が喜びに輝いた。

「ルリ!新たに機影一!援軍だよ!」

「援軍……?」

”待たせたなっ!“

「リョーコさん!」

そう、いきなりウィンドが開いて大写しになった人物。それはスバル・リョーコだった。

”艦長……じゃなかった前艦長から連絡があってさ、ナデシコと聞いちゃあ来ないわけにはいかないだろ!
これより戦線に参加するぜ!“

「解りました。リョーコさんはこのままナデシコ付近の敵を撃破してください。少しでも海中の敵をおびき寄せます」

”了解!“

そのままデッドウェイトとなったエステバリス用長距離航行ユニットを取り外し、付近にいた無人機を薙ぎ払う。

その後はイズミと連携し、ナデシコ付近の敵を順調に殲滅していく。

そんな二人の連携に危機感を覚えたのだろう。海中にいた予備戦力が次々と浮上していく。

 

……だが、海中ではそんな上空の戦況とは違い今だ苦戦中であった。

ヒカルの方はバッタが足止めをしていると言った感じで、苦戦といってもさほど苦しくはない。

問題はカイトの方だ。

『魚』が学習したのか、フィールドランサーの間合いには出来るだけ入ろうとはせずミサイルでじわじわとカイトの疲労を溜めていく戦法に切り替えたのだ。

しかもカイトが飛び込もうとしてもその気配を感じれば護衛のバッタが捨て身で体当たりを決行し、足止めをされる。

結果、カイトは『魚』の攻撃をかわしながらまず護衛のバッタを倒していかなければならない。

だがカイトも普通の人間。『中』からの衝撃のせいで、元々完全な体調ではない所にこの疲労策。

今正確に操縦できていること自体が驚異といえる。

……それでもほとんどの装甲にダメージを受け、もう死に体と言っても良い状態だ。

 

「リョーコさん、イズミさん、ヒカルさん、なんとかカイトさんのサポートはできませんか!?」

そんなカイトの様子を見、普段の冷静さがない必死な口調でルリが問う。だが……

”すまん!“

”こっちも無理“

”こっちが欲しいくらいだよ〜“

三人娘も目の前の敵の排除で手が離せず、サポートどころの話ではない。

”!! しまったっ!“

不注意からかミサイルを左肩にくらい、付け根から左腕がもげる。

「カイト!」

その様子を見たユキナから悲鳴が漏れる。

 

「ちぃっ!…このままじゃやられる、か……

……セイヤさん!駄目元でもいいです!あのフレーム、行けますか!?」

”……まだ不完全だが、そいつよりはマシだ!…だが、そんな状態で戻れるのか?“

その言葉通り、カイトが操る陸戦フレームは全体的にガタがきており、ナデシコに帰還できるとは思えなかった。

「それについては秘策があります!…ルリちゃん!このフレーム、ぶっ壊してもいい?」

”それで、確実に生きて戻れるんですね?“

どんな気休めも要らないといった口調で問う。

「……ああ、決まれば確実に戻れる」

カイトは自信をもって断言する。

”なら、止める理由はありません。実行して下さい“

「よし!セイヤさん、アレの射出をお願いします!水中で換装します!

リョーコさん達はなんとか雑魚共をフレームに近づけない様にお願いできますか?」

「無理でもやらなきゃここで御陀仏だろうが!お前はそんな事考えずにその秘策とやらを成功させろ!」

「そうそう!」

「ここは私達に任せな」

”こっちも射出準備はできた!いつでも行けるぞ!“

「なら……オペレーション、スタート」

薄く笑いながら、カイトが宣言する。

「…セイヤさん、このポイントへ射出してください」

そうして示した場所は、カイトの後方約10Mだった。

”……わかった!信用しているからな!“

本心でいうなら、そんな近くに出すというのは、自殺行為だと思うが、カイトを信用し、何も問わずに射出する。

到達まで、水の抵抗もいれて、約10秒。

「さてと。ここからは一人舞台だな」

乾いていた唇を舐めて湿らせ、気合を入れなおす。

だが、カイトのしようとすることが解ったのか『中』の衝撃が尚一層暴れ狂う。

(力を貸すつもりがないなら黙ってろ!失敗できないのは解ってるだろうがっ!)

そのカイトの一喝が効いたのか、衝撃はおとなしくなる。

「フレームって奴は、自爆覚悟なら、こういう使い方もあるんだよ!」

裂帛の気合と共に、残った右腕で胴体を守り、ブースタを全開でふかし、特攻をかけ出す。

「なに!?」

「待て!」

『カイト(さん)!?』

その様子を見ていた全員から戸惑いや絶叫があがる。

そんな声にも待ったく気にせず、ブースタのリミッターすら解除し、更にスピードを上げる。

『魚』と護衛はそんなカイトを嘲笑うかの様に前方に放てるミサイルを全て放ち、回避行動すら取れない様にしてきた。

それが幸いしたのだろう。カイトは初めから回避など考えていなかった為、当たった数が約2/3まで減っていた。
とはいえ、それでのエステバリスを破壊するには十分過ぎる量だ。

だが、腕にのみフィールドを張っているのだろう。
肩アーマーや両足は破壊されていくが、胴体部は原型を留めている。

原型すら残っていないと思ったのだろう。それを見た『魚』は慌てて回避運動に入り、バッタが進路を妨げようとする。だが……

「遅い!沈め!!」

それよりも早くカイトが肉薄する。

そして……

カッ!!

 

『カイト(さん)!』

ドゴォォォォォォンンンン………

悲鳴すら遮って爆発音が鳴り響く。

「くっ!!」

自爆したということが信じられないのだろう。慌ててルリは周囲を索敵するが、土煙が上がり何も察知できない。

”ルリ!呆けてるな!ボスはカイトがカタをつけた!今しかチャンスは無いんだ!!“

そんなルリをリョーコが叱咤する。

「……そうですね。掃討戦に移って下さい……」

まだ元気は出ないが、命令を下す。だが……

ピピッ

「!? そんなっ……!?」

オモイカネが知らせた報告は信じられなかった。いや、信じたくなかった。

土煙の中から『魚』が現れたのだ。全身に傷を負っているが、動力部はまだ動いている。

 

 

 

「チクショウ!カイトの弔い合戦だ!!」

リョーコが叫び声と共に『魚』に突っ込もうとする。が、『魚』とバッタが出すミサイルの弾幕で近づく事すらできない。

「なら!」

「これならどうだ!」

叫びと共に、ライフルと180mカノン砲を放つ。だが、これはバッタが自ら盾となり、全て防いでいる。

そして『魚』からの反撃で近付く事すら出来なくなっていく……

「くそっ!俺達には弔う事すらできないのか!?」

コクピットの中で憤る。口にこそ出してはいないが、みんな同じ思いだ。

ザザッ……誰を弔うんですか?……」

唐突に真っ黒な通信ウィンドが開き、そう問いかける。

「はあ?カイトに決まってるだろうが!」

不甲斐ない自分を罵る様にウィンドに怒鳴り散らす。

「なら、必…要ないですよ…ザザ

「? お前、誰だ?」

今更気付いたかの様に発せられたその言葉に触発されたかの様に、ゆっくりとウィンドに画像が映っていく。

「おっ、やっと同調した」

そして、そのウィンドに映った人物は……

『カイト(さん)!』

そう、映った相手はカイトだった。そして、いまだに留まっていた土煙の中から現れる青い機体。

「……よし。オール・グリーン。……いけるな」

新しい機体が現れた事により、近くにいたバッタが迎撃に向かってくる。

「……遅いな……」

だが、水中用に造られた気体と汎用性を高めた量産機。その性能差は謙虚だった。

腰に装備した折り畳み式のフィールドランサーを取り出し、一瞬で二機、返す太刀でもう三機を切り裂く。

「す、凄い……」

先程までの陸戦フレームではバッタ相手でも少々てこずっていたのが、一瞬で五機も潰したのだ。ユキナの驚きも尤もだ。

「……さて、コイツの機動性、試してみるか……」

呟きと共に一瞬土煙が上がる。

ガッ

その一瞬で間合いを詰めたのだろう。『魚』に一撃を加え、周囲に居たバッタも残らず薙ぎ払う。

「やっぱバランスが悪い。長時間は無理か……ヒカルさん、ナデシコに帰還して。
と言うか、水から出てください。……デカイのやりますんで」

だがその結果も納得できなかったのか、それとも先を見ているのか。カイトはいきなり奥の手を出す。

”おいカイト!……あれ、かますつもりか!?“

「……ええ、ついでにミサイルで駄目押しもします。
それと、リョーコさん達もこの空間には入らないで下さいね」

そう言ってカイトが表示した空間。それはカイトの現在地点より『魚』を経由して放射上に天に向かって伸びていた。

”馬鹿野郎!何が起こるか解らねぇんだぞ!ンな程度ですむか!
3人ともナデシコのフィールド内まで後退しろ!“

泡を食ったウリバタケが警告をする。

 

「無理だよ!今フィールドを解けばナデシコが落とされるよ!」

だがその警告もオペレータをしていたユキナによって否定される。

「……ウリバタケさん、『アレ』とは一体なんですか?」

今まで事態を静観していたルリが問う。

”……あの海戦フレームの両肩に付いているスクリューを廻して水流を起こす技、トルネード・スクリューだ“

「そんなので倒せるの?」

重々しく解説するウリバタケに質問をするユキナ。そんなユキナをちらりとみただけで話を続ける。

”その水流の威力は毎秒数万トン。
……5分も出し続けてたら確実に倒せるだろうが、3分程でフレームも崩壊する“

「……解りました。リョーコさん、イズミさん。ヒカルさんを回収しますので援護を。
回収後はお二人は水流に巻き込まれないようにナデシコの影へ。
それを確認後、カイトさんはそれを撃って下さい。
ただし、ミサイルでの追撃は要りません。……空中に上がればグラビティブラストを撃ち込みます」

ウリバタケの説明を聞いたルリが作戦を提示する。

『了解!』

 

作戦が決まった後の行動は早かった。

どうせ帰還するんだからとヒカルは残っていたミサイルを全て吐き出し、包囲網の一部を薄める。

そしてそこを突き、リョーコとイズミが穴をあける。

その穴に滑り込むようにヒカルが通過。

それを待ちかねたかの様にナデシコのフィールドを一部解除してヒカルを迎え入れる。

その解除して出来た穴に敵が入らないように二人が睨みをきかせる。

その間にヒカルが帰還。フィールドを張りなおし、同時に二人がナデシコの影に入る。

 

……準備は整った。

「カイト君!準備は整ったわ!何時でもいけるわよ!」

”……了解。ではいきます!“

メグミの通信に短く答え、今までやっていた掃討を中断する。

その掃討は機動力が先程と桁違いだからこそ出来る芸当なのだろう。
『魚』本体には足止め程度の攻撃を加えるだけで付近のバッタの掃討をしていただけだ。
……おそらく、『魚』を倒す手段は決まっているのだからそれを邪魔する危険性を少しでも排除する為だろう。

 

そしてカイトの海戦フレームは海底の岩盤の上に降り立ち、ローラーダッシュの代りに付いているアンカーと背中に付いているスタビライザーを岩盤に打ち込み、機体を固定する。

そして両肩のスクリューを保護しているカバーを開き、スクリューを露呈させる。

”巻き込まれそうになったら絶対に逃げろよ!……食らえば確実に落ちるからな!“

カイトがトルネード・スクリューのモーションに入ったのを確認し、もう一度ウリバタケが警告する。

「分かってるって!」

「心配無用」

対する二人は軽く答えるが、目は真剣だ。

「方向……照準……OK。……沈め!」

裂帛の気合と共に、両肩のスクリューが高速で回転する。すると二本の渦ができ、それが衝突、反発の末に融合。
一つの大きな渦となり、渦付近の敵をも呑み込み全てを押し流す。そしてその渦は上空へと伸びていった。

 

「……これって……竜巻……?」

呆然とユキナが呟くがその通り。天をも貫く水竜巻は、上空に居た敵をも呑み込み、全てを押しつぶしていく。

”ルリちゃん、早く!こっちがもたない!“

「グラビティブラスト発射スタンバイ。目標は竜巻の中心地」

そのカイトの声にやるべきことを思い出したルリ達は、急いでチャージをはじめる。

 

両肩のモーターが過熱に耐え切れずに泡を上げ始める。

コックピット内に、危険状態を知らせるアラームが鳴り響く。

「後一分。……間に合うかな?」

まるで人事のように話すカイト。その間にも危険を表す表示が加速度的に増えていく。

 

「グラビティブラスト、スタンバイOK!」

「了解。グラビティブラスト発射!」

竜巻の中心の『魚』に向け、グラビティブラストを発射する。

 

ボンッ

どうやらトルネード・スクリューを発生させていたスクリューが焼き切れてしまったようだ。

海戦フレームは機体中から泡を吹き出し、仁王立ちのままシステムダウンした。

「敵……、全……消滅確……」

「あっちゃ〜、通信システムも落ちたか」

残りの計器も次々とシステムダウンして消えて行く。

そして 照明も全て落ち、コックピットは闇に包まれた……

 

――――格納庫に回収された海戦フレーム。

ボンッ

爆発ボルトが作動してハッチが吹き飛ばされた。ミサイルの雨の中での戦闘や水中換装はアサルトピット自体にも歪みを生じさせ、今まで内部から出られなかったのだ。

「すみません。またですね」

「まあな」

苦笑しながら言うカイトに、苦笑で返すウリバタケ。

「後の捜索はリョーコちゃん等がやるからお前はブリッジに来いって艦長からのお達しだ。
……絞られて来い」

「……解りました。行ってきます」

苦笑の色を更に濃くして言うウリバタケに更に濃くして言うカイト。

 

 

「カイトさん、何故すぐに応答しなかったんですか?」

カイトがブリッジに入ってくるなりルリが開口一番に問う。

「ええっと……それって海戦フレームに換装した時の事?」

「そうです」

考えながら言うカイトに端的に答えるルリ。

「あれか……
僕も驚いたよ。換装した瞬間にシステムフリーズ起こしたんだから。
……あの場で一から再起動しなおすのは流石に冷や汗ものだったよ」

その時を思い出しているのか、カイトの顔も優れない。

「それは……解りました。これは不問にします」

先程までの戦闘を思い出したのか、流石にこれ以上は問えない。

「そう言えば、調べに行った人達は?」

ちょうどカイトの問いに答えるかにようにウィンドが開く。

”艦長!チューリップを調べてみたけどよ、まだ開きっぱなしだぜ、あれ!“

”そうそう“

”今なら強襲できるかもね“

続けざまに報告をする3人娘。

「解りました。ミーティングを開くので一度戻ってきてください。

……それとリョーコさん、今まで通りルリで良いですよ」

”そっかぁ?ならそう呼ばせてもらうな!それじゃ一回戻るぜ!“

 

「これよりナデシコB、海底チューリップに突入します。
目標到達まであと10分、進入角度OK、ディストーションフィールド安定しています」

「了解、このまま進行して下さい」

ミーティングの結果、ナデシコB艦はチューリップを利用してボソンジャンプを決行することになった。

木星トカゲの発生ポイントを急襲して、直接これを叩こうというネルガルの判断であった。

「艦首、海底チューリップ内に入ります」

 

宇宙に浮かぶナデシコB。

「木星……?」

ユキナの呟き通り、目前には巨大な木星の姿。

ナデシコは木星付近にあるチューリップから出てきたのだ。

その前方には、木星の遺跡コロニーの姿が……。

 

 

 

 

 

 

 

カイト(以下K)「また尻切れトンボですか?」

やかましい。ここで切らなきゃ何処で切れと言うんだ?

K「最後まで一気に」

……それ、無茶……(汗)

K「……ですね(汗)」

……早く書きます(汗)

K「というわけでお知らせ」

これからオリメカが出た場合は最後に機体設定を付けておきます。
ちなみにこの作品に出てくるエステバリスは基本的にフィールドランサーを標準装備にしています。

K「ではイミティッドナイフは?」

アレも標準。
……そう言えばフィールドランサーにラピッドライフルの機能もついてるって聞いた気がするけど……

K「忘れたのならここだけの設定にしておけば良いんじゃないの?」

だな。

ちなみにもう一つ。フィールドナックルは別名アキト版ゲキガンフレア。
つまりフィールドを纏っての体当たりです。

今回はこれぐらいだな。
……というわけで、

K「それでは、また」

 

機体設定

艦用対空砲

ラピッドライフルを改造し、ナデシコに対空砲として取り付けたもの。
尚、一連装砲は訪問が三つ付いており、一つ一つが独立して動く。
グラビティブラスト以外に自衛手段を持たないナデシコに無理やり取り付けた。
重力波ブレード側面部に六連装×二、重力波推進装置にも同じく側面部に六連装×二、グラビティブラスト下方部に二連装×四、ブリッジ上部にも四連装×二の計40を装備している。
尚、この装置を改良した兵器が後の連合軍・宇宙軍の戦艦の対艦・対空砲として採用される。

カイト曰く、
『副砲すらついていない艦で単機で強行偵察なんて出来るか、せめて自衛手段を付けておけ!』
て事でカイトが設計、ウリバタケが製作し取り付けたアイテム(笑)

エステバリス用長距離航行ユニット

リョーコが途中で増援に来た時に付けていた大型バックパック。
内部にジェネレータを内蔵しており、重力波ビームを受けていなくても活動可能。
だが、この装置を取り付けたままでは重量が増加しすぎ機動力が犠牲となる為、重力波ビームの射程内では取り付けている意味が無い。

ちなみにリョーコ等があんなところにエステバリスで来れる筈無いということで付けたアイテム(笑)

海戦フレーム改

武装:折り畳み式フィールドランサー・腕内蔵式ハープンガン×二(16発)・トルネード・スクリュー・対艦魚雷4発

何処からか持って来た海戦フレームをウリバタケが攻撃力を特化させすぎた機体。カイトがなんとか防御力を高めようとしたが、焼け石に水で終わる。
尚、通常戦闘では十分持つだけの剛健性を持たせることは成功させている。
だが最大の兵器『
トルネード・スクリュー』を発動させると急激に合憲性が失われ、三分程度で機体が崩壊する。
もし、二分でトルネード・スクリューを停止したとしても機体全体にガタがきてその後の戦闘は行えない。

折り畳み式フィールドランサー

今回よりナデシコ所属エステバリスの装備しているフィールドランサーは表記が無い限り全てこの『折り畳み式フィールドランサー』の事を指す。
大別すると『刃・グリップ・柄』の三つの部分に分かれている。
収納時は折り畳まれて腰にマウントされ、取り外すと共に展開される。
尚、ラピッドライフルの機能も備えており、『刃』の部分には刃と射出口、『グリップ』には引き金とバッテリー(エステバリス自身からの供給も可能)、『柄』にはラピッドライフル自体の機能を内蔵させている。

 

 

管理人の感想

 

海中戦ですか〜

そう言えば、そんな局地的な戦闘は全然考えた事がなかったですね(苦笑)

それにしても、トルネードスクリューですか(笑)

まあ、水中ですからね。

 

最後にシーラカンス・・・・木連でも有名なのかな?

ダライアスを思い出した人が何人居る事やら(苦笑)