火星から帰還して早々、軍と共同戦線を張ることになったナデシコ。
最初に与えられた任務は北極にいる親善大使を救助せよというものだった。
「ホントは白熊なんですけどね……」
真実を知るものは呆れるこの任務。
しかし、そこに現れる憎しみと悲しみなど、誰にも予想はできなかった……。
・ 第九話 『奇跡の作戦「キスか?」』 現臨する鬼神 ・
〜 ジュン 〜
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「言った筈だぜ、坊ちゃん!! 良い旅を―――ってな!!」
重苦しい扉が開く音と同時に―――
《きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!》
凄まじい勢いで、脱出ポッドが打ち出された。
チハヤの長い悲鳴を引き連れながら……。
また……この夢か!
あれからもう何度見ただろう。
最近はめっきり見なくなったと思っていたのに……。
やはり俺はまだ、ヤツを、カエンを憎んでいた。
以前、テンカワが言っていた。
『復讐鬼の炎は一度燃えたら消えることはない。普段消えたように見えるのは小さくなっているだけだ』
その通りだ。
テンカワも俺も、その炎を理性という力で制御している。
だがここは夢の中。どうしても理性の力は弱くなる。
そして……俺はいつもこの夢を見る。
《チハヤ! 大丈夫かい!? 今すぐ、扉を開くから!!》
無理だ。そんなことをすればどうなるかわかっているから。
《駄目よ……扉が開くと同時に、私の身体も切断されるわ》
そう、その枷がある限り、この当時の俺の力ではどうすることもできない。
いまでこそ使える昂氣も、テンカワのようなA級ジャンパーの素質も。
なにももっていなかった。嫉妬しつつも、手にしようとしなかったから。
《くそっ! くそっ!! 何か方法があるはずだ!! 諦めたら駄目なんだよ!!》
そう、諦められるなら俺はこの時代には戻ってこなかった。
いまもまだ、諦めきれない……チハヤを!
だから、俺は今でもこうして夢に見る!
《ねえ、アオイさん……もう直ぐ大気圏よ。無駄な事はせずに、突入のショックに構えないと駄目》
言うな、言わないでくれ!!
《君が好きなんだ!!》
このときにようやくそのことに気がついた。
遅すぎるんだよ、馬鹿が……。
《だから諦めないでよ!!
一緒にナデシコに行くって約束したじゃないか!!
僕は頼り無い男だけど、精一杯君を守るから!!》
嘘をつけ。結局、守ることなんてできなかったくせに!!
そうだよ、俺は彼女を守れなかった。
彼女を失ってようやく自分の弱さに気がついて……。
手にした力をどう使えばいいか分からない日々を送った。
《……ズルイ、そんな事言われたら、覚悟が鈍るじゃない》
《まだ希望はあるはずだよ、そうさ何か手があるはずなんだ!!》
なにがあるというんだ。
望みつつも、求めもしなかったお前にどんな手が!!
《卑怯なのは承知で……言わせて貰いますね。
私は穢れているんです。
そして、弱い女なんです……そんな穢れている自分が、許せないんです》
《そんなことないよ!!》
《ありがとう、アオイさん。
私、最後の最後で夢を見れました。
幼い頃の夢……何も知らず、幸せだったあの頃の―――》
《夢じゃない!!
君は僕と一緒にこれからも生きるんだ!!
生きないと駄目だ!!
いや!! 生きてくれ!!!》
それを……本当に夢にしてしまったのはお前だろう……アオイ・ジュン。
《いくつも、貴方に残したい想いがありました。
伝えたい言葉も……沢山あります。
でも、やっぱりこれだけは伝えておきたい―――貴方が、すきで……》
そして、夢が終わりを迎える。
《チハヤ…………嘘だろ?
冗談……だよね?
ねえ!! そうなんだろ!!
返事をしてよ……。
チハヤァァァァァァ!!!!!》
俺の叫びが現実の俺を呼び覚ますことで……。
「チハヤァァァァァァ!!!!! っ!! ハァッ! ハァッ……ふぅ……」
自分の大声で、俺は目を覚ました。
全身が汗だくだ。
「……シャワーでも、浴びるか」
俺はダル気の残る体を引きずって備え付けのシャワールームへと入った。
火照った体に冷たいシャワーの水しぶきが当たり、熱が徐々に引いていく。
「……くっ!」
夢の内容は鮮明に覚えている。
それは夢などではなく、現実としての記憶をリプレイしたものに過ぎないから。
俺は知らず知らずに浴室のタイルを殴っていた。
今度は……絶対に助けてみせる。いっしょに生きてみせる!!
たとえ、なにが立ち塞がったとしても、それをすべて破壊して!!
「絶対に……っ!!」
ギリッ……と、奥歯がこすれる音がした。
俺の心の黒炎はいまもなお、燃え続けている……。
〜 ルリ 〜
どうも、おはようございます。ルリです。
現在ナデシコは太平洋上を航行中。なんでも、これから初任務の行き先を教えるそうなんですけど、なんだかユリカさんと副提督が言い争っています。
「確かにネルガルと軍は共同戦線を張っています!!
ですが理不尽な命令に、我々には拒否権が認められている筈です!!」
「一応はね」
「本艦クルーの総意に反する命令に対しては、このミスマル・ユリカ……艦長として拒否しますのでご了解下さい」
「戦うだけの手駒にはならない……って訳ね」
そういうと副提督は小さくため息をつき、そしてあの言葉を口にしました。
「……お生憎様、あなた達への命令は戦う事じゃないわ。敵の目をかいくぐって、救出作戦を成功させる事よ」
「「「「「救出作戦?」」」」」
予想外の言葉に主要クルーのほとんどが驚いています。
驚かないのは事実を知っている一部の人……アキトさんやわたし、ハーリーくんやラピス、ジュンさんですね……だけでした。
「木星蜥蜴の攻撃は無くても、地球の平和を守るというナデシコの目的は果たさないと駄目らしいけど……正直どうでもいいのよね〜」
な、なんか副提督、妙にやる気がありませんね。
こっちまでやる気が失せてきます。
「どうでもいいってこたぁないだろ?」
「上からの命令ですもの。まぁしょうがないわよね……。
さて、これが親善大使のいる、北極海域にある島、ウチャツラワトツスク島よ。
このポイントにとり残された、親善大使を救出するのが目的なの」
副提督はブリッジの床に表示された地図を見ながら説明していきます。
「質問〜!」
「なぁに、艦長?」
「どうしてこんな所に、大使はとり残されたのですか?」
ま、もっともな質問ですよね。
なにせ、親善大使は白熊ですから。
それにしても気だるげですね、副提督は。前回のような覇気がまるでありません。
「さぁ……好きなんでしょ? そこが」
「はぁ」
そんなアバウトな答えでいいんですか?
まぁ延々と意味のない説明をされるよりマシですけど。
「ま、とりあえず頑張ってね。こういう任務って割とその態度を試されるものだから」
副提督はそういうと扇をヒラヒラさせてブリッジを出て行きました。
わたしたちはその後姿を唖然としながら見送るのでした。
〜 アキト 〜
「テンカワくん、久しぶりにトレーニングしてみないかい?」
……とアカツキに誘われたのがついさっき。
いつの間にか休憩室で休憩していたリョーコちゃん、ヒカルちゃん、イズミさんと、シミュレータールームで模擬戦となった。
《もらったぜ、テンカワ!!》
「甘いよ、リョーコちゃん……そっちが本命か」
気配を読める俺には、遮蔽物は身を隠す意味であまり役に立たない。
というか、前回と同じ戦法だもんなぁ……。
《うっそ〜〜〜!? どうしてわかったの!!》
いや、まぁ一度は経験した戦法だしね。
その言葉を最後にヒカルちゃんのエステバリス・ネオが画面から消える。
あと二機。
サバイバル形式のはずなんだけど、なぜかみんな俺を目の敵にしている。
なぜ?
【そりゃアキト兄が強いからでしょ?】
【ブローディア・ゼロだもんね。アキト兄、容赦ない】
「悪いか?」
【うぅん。たまの憂さ晴らしだもん。別にいいよ】
【ただ、あんまりいじめすぎないようにね】
「いじめって……」
そこまでいたぶるつもりはないぞ?
《油断したなテンカワ!!》
《これならどう?》
リョーコちゃんとイズミさんが左右から同時に仕掛けてくる。
たしかに同時攻撃は有効な戦術の一つだ。
ただ、それは相手が並みの技量の場合だ。
俺は腰にマウントされていたもう一つのハンドカノンを取り出した。
《げっ!?》
《しまった……》
急旋回して回避しようとする二人に左右同時にハンドカノンを叩き込む。
正確にコックピットを打ち抜かれ、二機のエステバリス・ネオが爆発した。
しかし、エステバリス・ネオの仕上がりは上々のようだ。
ブローディアのリミッターはシミュレーターといえど、変わりはない。
それはシミュレーターのデータをブローディア・ゼロ本体からとっているからだ。
したがって、いまのブローディアのLVは03。ブラックサレナに相転移エンジンを搭載したものと同じレベルだ。
そのブローディアにエステバリス・ネオはしっかりとついてきた。まぁパイロットの技量ということもあるんだろうけど。
量産型でここまでやれるなら十分だろう。
『プレイヤー1 Win!!』
コンピューターの判定が下り……俺VSパイロット三人娘の戦いは終った。
「あー負けたまけた!! テンカワ、やっぱオメェ凄ぇよ!!」
シミュレーターを出るなりリョーコちゃんが叫んだ。
「むう……悔しいけど完敗ね」
「……しかも、まだまだ余裕があるみたいだし」
「あはは……」
まぁね。まだリミッターが三つもついているし。
……なんて言えるはずもなく、俺は空笑いするだけだった。
「しかし、なんだか前の戦闘よりブローディアのパワーがあがったように感じるわね」
わ、イズミさん鋭い。
【えっへん! この間の戦いが終わった後、リミッターが一つ外れたんだよ♪】
「リミッター? ブローディアってリミッターがついてんのか?」
【うん。全部で六つ、全部外れたら連合宇宙軍総がかりでも勝てないんじゃないかな?】
「ば、バケモノかよ……」
ブロスの説明を聞いたリョーコちゃんがあんぐりと口を開けて呆れる。
「まぁ、俺に操れれば、の話だけどね」
「たしかに、そこまでの能力を持っているならパイロットにもそれ相応の技量が求められるからね」
【そーいうこと】
「さて、それじゃあ僕とも模擬戦をしてもらおうかな」
頃合いを見計らってアカツキが話を切り出した。
「……止めた方がいいんじゃないの? アカツキ君。手も足も出せずに終ると惨めだよ〜」
「ま、男の意地だとでも思ってくれたまえ」
言った手前、いまさら取り消せないってか。
「へえへえ、勝手にしな。……俺達はどうする? イズミ」
「結果はわかっているわ。食堂にでも帰ってましょう」
「そうだな……じゃあまた後でな、テンカワ!!」
そういって三人はシミューレーションルームを出て行った。
実力の差がわかっているアカツキは三人の言葉に肩をすくめる。
「やれやれ、僕って期待されてないな。
まあ、実力の違いは歴然だからね。しょうがないんだろうけど。
じゃあ、早速やろうか。テンカワ君?」
アカツキ、目が本気だな。
テストパイロット時代から何度となく模擬戦の相手をしてきた俺は、アカツキにとってライバルと呼ぶに差し支えないのだろう。
本気には、本気で向かい合うのが礼儀というものだ。
「あぁ、はじめようか」
そして、俺VSアカツキの戦いが始まる……。
模擬戦がスタートするなり、アカツキの先制攻撃が襲ってきた。
「前より射撃速度が二秒早くなった。ずいぶん上達したみたいだな」
《エリナくんに怒られながらずっと続けていたからね。
それにしても、早めの先制攻撃だったのにやっぱり当たってはくれないね》
「あたりまえだ」
聞いているだけならのん気な会話だが、いまこの瞬間にも、アカツキのエステ・ネオとブローディアは高速で移動を続けていた。
さらにその中で飛び交うハンドカノンの砲火。
前回のように逃げるアカツキから一定の距離を保ち、俺が追撃をする。
違うのはその行動速度。
アカツキのヤツ、エステ・ネオに改良を施しているな……。恐らく、駆動部周りの。
「そういえばアカツキ、ガイに近接戦装甲を任せることに決まったけど、残りの二つはどうなった?」
《あぁ、高機動装甲と砲撃装甲のことかい?
高機動装甲はブラックサレナをより扱いやすくする方向で改良したものを使っている。
ただ、問題は砲撃装甲でね。エネルギーや砲弾の消費率をどうにか緩和しないと実戦ではあまり役にたちそうにない。
まぁ高機動装甲もGキャンセラーのほうで煮詰まっているらしくて製作は難航中だよ》
「そうか。……アカツキ、その砲撃装甲、少し大きめにして相転移エンジンを搭載したらどうだ?」
《相転移エンジンか……。たしか、ブローディアにも積んでいたんだったね》
「あぁ」
《一応、月面フレーム用に開発されていた小型エンジンの図面はあるけど……。
それでもエネルギーが持つかどうか……》
「……いったい、どんな武装を取り付けたんだ?」
その内容を聞いた俺は呆れてしまった。
背中からブラックサレナと同じグラビティカノン四門に、両肩に十六連装ミサイルポッド、両腕には二連装ハンドカノン、腰にはレールカノンが二門だそうだ。
たしかにエネルギーや弾薬をよく食いそうだ。
それだけの武装をつけたらサイズや重量だってばかにならないだろう?
「いっそ、装甲を諦めて乗り物にするか」
俺は冗談半分に言ってみる。
しかし、アカツキの反応は意外にも好評だった。
《なるほど。ガイア・ゼロのように戦闘機としても運用できるようにするのか。
たしかにそれなら無理に複雑な構造にする必要も無いね……。
よし、あとで連絡しておくよ》
アカツキは嬉しそうにうなずく。
この言葉が後から影響が現れてくるとは、さすがに俺もわからなかったが……。
《ところで、一つ質問していいかな?》
「なんだ?」
「君が以前言っていた『守りたい人』というのはひょっとして、このナデシコにいるのかな?」
「……だったら?」
《いやぁ、僕としてもぜひその女性(ひと)を知りたいね。ウリバタケさんたちが君のことをひどく羨ましがっていたからね》
あはは……。一応まだ発足はしてなくても、結構きわどいところだったんだな……。
《それに、君は鈍感な上に女性への接し方が下手、しかも女性側にはモテると来ている。
僕としても心配なわけだよ》
「……俺だって鈍いことは自覚している」
《自覚はしていてもわからない、か。始末が悪いといえばそこまでだけど……。
まぁそこが彼女たちから見ればいいのかもしれないね》
「そんなもんか」
《異性が異性に恋をする。それに理由は必要ないのさ。
僕が見たところ、艦長にメグミくん、リョーコくんにイネスさん……はまだちょっと微妙だけど。あとホウメイガールズだね。
ルリくんとラピスくんはなんだかハーリーくんに興味があるようだし》
なんか、前回と似たラインナップだったな。ルリちゃんの名前がなかったけど。
「はぁ……べつにモテたいわけじゃないのに」
《……テンカワくん、それはモテない男子に対する侮辱だよ?》
「わかっているんだけど……ね」
言わずにはいられないんだよ。
《とりあえず、なにか困ったことがあったら相談にきなよ。
僕らとしても女性達の独り占めは避けたいからね》
「あぁ、すまない。助かる。
……で、チェックメイトだ」
《っ! ……やれやれ、また僕の負けか》
「話に夢中になって機体の切り替えしがコンマ二秒遅くなったからな」
《よくそんなところまで見ているね。ま、とりあえず……自爆!》
チュドォォォン!!
自爆するエステ・ネオから咄嗟に後ろに飛び退き、DFSを扇状に展開する。
普通のディストーションフィールドより局部的にならこっちのほうが防御力は高い。
『プレイヤー1 Win!!』
判定は俺の勝利で終わった……。
〜 ジュン 〜
夢見が悪かったせいか、妙に身体がだるい。
イネスさんにも見てもらったが軽い熱がある程度で特に問題はないらしいんだが……。
しかし、訓練は怠らずに続けている。
二度とあんな思いをしなくてすむように。今度こそ彼女を助けるために。
白兵戦の訓練を終えて10分の小休止をいれた後、今度はシミュレーターで訓練を開始する。
イネスさんの話ではDFSのコピー試作一号が完成したという。
技量や性質上、俺かヤマダ、もしくはスバルにまわってくるそうだ。
もともとDFSはテンカワがブラックサレナでやった集束パンチの原理が元になっている。同じ技が使える俺と、機動はともかく発動だけならできるヤマダ、それに剣術をやっているというスバルもDFSの発現ができるだろう、とテンカワはいっていた。
俺はどちらかというと射撃のほうが向いているんだが……。
シミュレーターの仮想敵をチューリップ十基に設定する。無人兵器には制限をつけずに。
ブラックサレナの武器ではグラビティカノン三発とDFSだけがチューリップを破壊できる。
さすがにディストーションアタックでは無理だった。
勝利の鍵はDFSが俺に使えるかどうかとグラビティカノンのうまい運用方法だ。
3……2……1……。
「GO!」
俺はブラックサレナを敵陣へと突入させた。
……戦闘開始からすでに三十分が経過した。
DFSの発現とそのままでの機動戦には成功。
ただ、集束率が思うようにあがらないため現在、長さ80メートルで使用中だ。
残るチューリップは、あと一つ。
俺は無人機を蹴散らしながら一直線にチューリップを目指す。
これで……終わりだ!
―――本当に……そうかな?
「っ!?」
突然、誰かにささやかれた気がした。
どこかで聞いたような、でも思い出せないその声に、一瞬気をとられてしまう。
その隙をついたバッタがブラックサレナに体当たりをしてきた。
ちっ! 油断した!!
「このっ!」
左腕に装備したハンドカノンでバッタを迎撃しつつ、俺はDFSをチューリップにむかって振り上げた。
―――この力で、果たして足りるかな……?
っ! また!!
俺はささやく声に構わずDFSを振り下ろす。
ほとんど抵抗なくチューリップは裂け、爆散した。
戦闘を終え、シミュレーターから出てきた俺は、汗びっしょりになっていた。
それにしても、さっきの声はなんだったんだ……?
〜 ルリ 〜
こんにちは。こちらはブリッジのルリです。
どうやらメグミさんがアキトさんをヴァーチャルルームに誘ったようなんです。
けど、途中でアキトさんが通りすがりのジュンさんを見て不安そうな顔に変わりました。
その後、アキトさんはどうしても気になったのか、メグミさんとのデート……まぁアキトさんにその気はないでしょうけど……を断ってあとを追いかけたみたいです。
ジュンさんとは自販機コーナーの前で追いついたようです。
アキトさんは『なにかあったか?』と聞きますが、ジュンさんは『なんでもない』といって去っていきました。
ただ、アキトさんの表情から不安の色は消えませんでしたけど。
一方ブリッジではユリカさんがアキトさんとメグミさんの話を聞いてショックを受けているみたいです。
あ、エリナさん、そこで『しっかりしなさい』発言は追い討ちですよ。
あ〜ぁ、ユリカさんが固まってしまいました。
……ということがあって、さてそろそろお昼ですが。
「艦長……艦長……艦長!!」
「え!! あ、ルリちゃん。何?」
あ、ようやく帰ってきたみたいですね。さっきの言葉がよほど効いたみたいです。
「皆さんお昼に行きましたよ。艦長はどうします?」
「私は、いいよ……。ルリちゃんも行っておいでよ」
う〜ん、まだ引きずっていますね……。
まぁ、いまはそっとしてあげましょう。
わたしは昼食をとりに行くことにしました。
オペレーターはハーリーくんとラピスがいますからね。
ところが……。
突然ナデシコを襲う衝撃。
ユリカさんは手すりにつかまりながら身体を支えていました。
わたしはつかまるものがなくてシリモチをつきましたけど。
「状況は!?」
「敵の偵察部隊と思われる少数の部隊に発見されました。
じきに本体が押し寄せてくるものと思われます」
「……グラビティブラスト発射用意! 目標、敵偵察部隊!」
「了解。グラビティブラスト、発射します」
こうして前回とは少し状況が違いますがグラビティブラストは発射されました。
これでこの任務がさらにややこしくなりますね。
まったく……。
「フィールドを張りつつ後退!!」
「あと十分後に敵の攻撃範囲を抜けます」
「どこまで逃げるの〜!?」
とりあえず作戦の変更が必要と判断したナデシコはいったん後退。氷山の中へと身を隠しました。
「まさか、敵が偵察部隊を出していたなんてね。
少なくともこれで作戦の変更は余儀なくされたわけだけど……どうするの? 艦長」
「……正直なところ、こうも視界が悪い状況で、しかも相手が偵察部隊まで出しているとなると、もう一方のルートを通ったとして気づかれないということはないと思います。
そこで逆にこちらから打って出てみようと思います」
「本気!? 敵の規模だってわからないのよ?」
「木星トカゲがよほどこの場所を重要視していない限り、チューリップの配置は、あって一つか二つ。
こちらにはグラビティブラストにグラビティカノン、そしてブローディア・ゼロのDFSがあります。チューリップの破壊は十分に可能です。
ナデシコは当初の予定通り西側を進みます。ただし、敵に見つかることを想定してなるべく高度を高くして。
エステバリス隊はナデシコを護衛しつつ敵機を撃破してください」
ユリカさんの迫力に反対したエリナさんもたじろいでいます。
なんだか……妙に迫力がありますね。
「それでは、作戦を開始します!」
〜 アキト 〜
ユリカの作戦によってナデシコは敵陣を強行突破することになった。
俺達エステバリス隊もすでに発進している。
リョーコちゃんたちはこの間受領したエステバリス・ネオを、ガイはテストタイプ二号機を使用している。
ガイの二号機に装備された追加装甲『ユーフォルビア』は、近接戦闘を主眼に置いて設計されている。
シミュレーターで確認もしたが、今のガイの技量ならこのユーフォルビアを十分乗りこなすことができる。
あとはこの戦闘でどれぐらいの実力を発揮できるかだけど……。
ユリカがとった作戦は前回、前々回とは違うものだった。
今回は俺の心が暴走することも、ユリカが落ち込むこともなかった。
ただ……。
俺には一つ気がかりなことがあった。
メグミちゃんに誘われたときにすれ違ったジュンが見せたあの目だ。
俺はあの目に復讐鬼の持つ黒い炎を見た気がした。いつものジュンならあれほど露骨な目はしないだろう。
事実、ジュンは今日調子が悪いらしい。
なにか精神的に追い詰められていなければいいが………。
戦闘が開始された。
厄介なことに待ち伏せされた。
前方と後方にチューリップが一基ずつ。どうやら氷の下に隠れていたらしい。
エステバリス隊はチューリップの破壊が可能なブローディアとブラックサレナを中心に二部隊に分けられた。
俺のチームにガイとアカツキ。
ジュンのチームにリョーコちゃん、ヒカルちゃん、イズミさんの三人がはいった。
ハンドカノンで次々とバッタを打ち落としていくアカツキ。
戦艦のフィールドなどお構いなしにフィールドを集束した拳で敵艦を殴り飛ばすガイ。
俺達は順調にチューリップへと迫っていた。
しかし、ここで予想外の報が飛び込んできた。
《おいジュン! 大丈夫か!?》
《ぐっ……なぜだ……どうして……?!》
もう一つの部隊の要であるジュンの様子がおかしい。
敵陣のど真ん中で止まったかと思うとそのまま無防備な状態になったのだ。
リョーコちゃんたちが慌ててフォローするがカバーしきれず、一体のバッタが放ったミサイルがブラックサレナに直撃した。
《《《《《ジュン(くん)!!》》》》》
そのまま氷の上に落下していくブラックサレナ。
幸い爆発はしなかったが、気を失ったのかピクリとも動かない。
やっぱり、ジュンの状態は万全じゃなかったのか!!
「ガイ! アカツキ!」
俺は急いで二人に通信を繋いだ。
《なんだい?》
《どうした、アキト!!》
「俺は一人でチューリップを破壊する! 二人はリョーコちゃんたちの援護を!!」
《大丈夫なのか?》
「心配いらない。あのままじゃリョーコちゃんたちのほうがヤバイ」
《どうやらテンカワくんの言うとおりにしたほうがよさそうだね》
ジュンのブラックサレナが抜けたことであの三人はトドメの一撃を失ってしまった。
せめて、俺が到着するまで粘ってもらわないと。
だが、俺たちがその異常に気がついたのは俺が一つ目のチューリップの破壊に成功した直後だった。
《だぁまぁれぇえええええ!!!!》
〜 ジュン 〜
ユリカの作戦が採用され、俺は第二部隊の要を任されることになった。
正直体調に不安が残るが、そうも言っていられないだろう。
俺はリョーコ、ヒカル、イズミの三人を率いてナデシコの前方にいるチューリップの撃破に向かった。
だが……。
敵の抵抗が予想以上に激しい。テンカワたちに比べて進行速度は半分程度しか出せていなかった。
くそっ……。
心の中にもどかしさがこみ上げてくる。
俺にもっと力があれば、テンカワのような力が……!
―――無理だな。
っ!? また……あの声か!
―――てめぇがテンカワ・アキトの力を手にできるはずはねぇさ。
なぜなら、てめぇは俺に勝てねぇからさ。
なんだとっ!? 誰が貴様みたいな得体の知れないやつに!!
―――おいおい、冷たいヤツだな。俺の声を忘れちまったのかい?
なに……っ!!
俺の背筋をなにか冷たいものが走り抜けていく。
いるはずがない……。
「ぐっ……なぜだ……どうして……?!」
こんな場所に、しかも俺の目の前に!
……カエン!!
―――よぉ、覚えていたかいお坊ちゃん。上出来だ。
誰が……忘れるものか!!
あの怒りを!! 貴様への憎しみを!! チハヤを奪われた悲しみを!!
―――そうだよなぁ。お前の女を大気圏の炎で消し炭も残らないようにしたのは俺だからなぁ。そんなことより手がお留守だぜ。
なにっ!?
次の瞬間、ガンッ! という音と共に強い衝撃が襲う。
バッタ……しまった!
バッタの攻撃を受けてブラックサレナは不時着してしまった。
「くっ……」
―――あぁーあ、情けねぇ。そんな腕で俺を殺そうってか? ムリムリ、そんな腕じゃ千年経っても俺は殺せねぇよ。
ふざけるなよ……。お前は必ず俺が殺す、殺してやる!!
―――だがてめぇは地べたにはいつくばる敗者だ。敗者に何かを得る資格はねぇ。
だまれ……。
―――そうだな、いっそもう一度あの女を殺してみるか? もう一度目の前で殺されたらお前、どんな顔をするだろうな?
だまれ!
―――……ふん、口だけじゃなにも守れやしねぇよ。すべて奪われるだけだ。
だまれぇ!!
―――なんならもう一度、この歴史でも経験してみるか? あの女を殺した灼熱の地獄をよぉ!!
「だぁまぁれぇえええ!!!!」
〜 ルリ 〜
なんなんですか……あれは。
突然通信からジュンさんの叫び声が聞こえたかと思うと、いきなり浮上するブラックサレナ。
リョーコさんたちが声をかけようとした瞬間、ブラックサレナは敵にむかって突進していきました。
ブラックサレナの出せる限界の速度で、周囲のバッタたちに無差別にハンドカノンを叩き込んでいきます。
《ガァアアアア!!!!》
ウィンドウに表示されるジュンさんの顔は、まさに『鬼神』のごとく、怒りと憎悪によって歪んでいました。
通信士席ではメグミさんが恐怖に震えていて、すでに声も出せないようです。
バッタを蹴散らし、戦艦には命知らずな突撃で穴を開け、そこにハンドカノンを叩き込みました。
エステバリス隊の皆さんはその荒々しい戦いぶりをただ呆然と見つめているしかありませんでした。
いまのジュンさんに近づけばこっちまで撃ち落されるかもしれない。
そんな思いがきっと頭の中にあったんだと思います。
《よくも、よくもよくもぉおおお!!!》
えっ? ジュンさん……どこかを見ている?
なにも存在しないはずの虚空。ですがジュンさんは確かに、『そこ』を睨みつけていました。
《殺す! 殺してやる!! カエェエエエエン!!!》
っ!!
その言葉を聞いたとき、わたしとラピスは顔を見合わせました。
「ラピス、たしかカエンというのは……」
「うん、アキトの話にあったジュンが好きだった人が死ぬ原因を作ったヤツの名前……だよね?」
そのことを確認し終えたわたしたちはすぐに秘匿回線でアキトさんと通信を繋ぎました。
「アキトさん」
《ルリちゃんか……》
通信に出たアキトさんは悲しそうな顔をしていました。
「アキトさん、ジュンさんは……」
《あぁ……、どうしてこうなったのか理由はわからないが、この状態、まず間違いない。
……いまのジュンは、カエンの亡霊を見ている》
「止められないの?」
《ラピスか……。
いまのジュンは言葉では止まらないだろう。言葉で止められるのはただ一人……》
「カタオカ・チハヤさん、ですか……」
《…………》
それじゃあ、どうやってジュンさんを止めるんですか?
やっぱり、力ずく、しかないんでしょうか……。
わたしたちが彼を止める作戦を考えている間にも、ジュンさんは最後に残ったチューリップの撃破にむかっていました。
その手に、白い刃を携えて。
《くったばぁれぇえええ!!》
全長200メートルはあろうかというDFSの刃がチューリップに振り下ろされ、バラバラに砕け散ってしまいました。
誰もがジュンさんの変貌とその戦いぶりに言葉を発せずにいました。
それは……わたしやラピスもまた、例に漏れませんでした。
鬼神のごときジュンさんの力の矛先が、次はどこに向かうのか。誰もがそこに注目し、警戒していました。
《……チ……ハ……ヤ……》
えっ?
突然通信から聞こえてきたのは……たしかに、ジュンさんの声。
《……ゴメ……ン……》
かすれ声の中で確かに聞こえた贖罪の言葉に、誰もが目を見開いていました。
先ほどまでの戦いを見ていたからこそ、その驚きも人一倍大きく感じます。
そして……力尽きたかのようにブラックサレナはその活動を停止し、そのままブローディアに受け止められました。
《……ユリカ、ブラックサレナを回収した。ナデシコに帰還したいんだが》
「ちょ、ちょっと待ちなさい! そんな危険人物を中に入れるつもり!?」
アキトさんの言葉にエリナさんが反対します。
それは、あの光景を見た誰もが思うだろう、当たり前の感情から来る言葉でした。
あの光景を見て、恐怖を抱かない人が、果たしてどれだけいるでしょう……。
《だが……、そうなってしまった理由は、誰も知らないじゃないか》
アキトさんのつぶやきに、みんなハッと顔を上げました。
《ジュンがなぜあそこまで暴走したのか、その原因が何か、誰か知っているか?
大事なものを奪われる悲しみ、奪ったものへの憎しみ。それはそうなったとき、誰でも思うことなんじゃないのか?
気が狂いそうになるほどの憎しみを覚えて、道を間違えてしまうことだってある。
それでも必死に元のように立ち直ろうとする人に、手を差し伸べることは、受け入れてやることはいけないことなのか!?》
アキトさん……。
アキトさんの言葉に、エリナさんをはじめとする皆さんは、辛そうに口をつぐみました。
「……エリナさん、ジュンくんは危険人物なんかじゃありませんよ」
次に言葉を発したのはユリカさんでした。
「だって……ジュンくん、泣いているもの」
えっ……?
わたしたちはユリカさんの言葉を聞いてジュンさんのウィンドウに目をむけました。
そこには、気を失い、眠っているジュンさんの姿と、その顔にできていた涙の跡がありました。
「人を傷つけることを喜ぶ人があんな涙を流すなんて絶対にないですから。
だから、ジュンくんは危険人物なんかじゃありません」
静かに、ですがハッキリと、ユリカさんはそう断言しました。
《……そうだな》
その言葉といっしょに、リョーコさんたちのウィンドウが一斉に開きました。
《俺には難しいことはよくわかんねぇけど、いまのこいつを見ていると、なんとなく憎めねぇよ》
《だよねぇ。なんか、悲しそうに見えるもん》
《……この地球に溢れるのは混沌とした闇。歳若きものはその若さゆえに闇にはまり、道を失う……彼もまた、その一人か……》
《い、イズミ……》
《イズミちゃんがマジ言ってる……》
た、たしかにちょっと怖いですね……。でも、言いたいことはわかります。
「ん〜まぁ、次起きたときにちゃんと話を聞かせてもらって、それから判断してもいいんじゃない?」
ちょうどいいところで話に加わったのはミナトさんでした。
「…………」
メグミさんはなにか考え込んでいる様子です。
《僕はどちらでもいいんだけどね。たしかにこんな顔を見せられたら後味が悪そうだね》
《だよなぁ。仲間が悪く言われるのはいやだからな》
アカツキさんとヤマダさんも同じくジュンさんの弁護に回りました。
「……あぁー! もう、わかったわよ!!」
とうとうエリナさんが折れました。
その後、ジュンさんは医務室へと直行。
イネスさんの話では、ジュンさんが運び込まれたときには40度以上の熱があり、その影響でナノマシンが機能不全を起こした。それが今回の暴走のきっかけになったのでは、とのことでした。
そして、それから六時間後。
ナデシコは無事に親善大使の白熊を回収することができました。
ジュンさんに関しては皆さん、変わらない目で見るつもりのようです。
こうして、北極でのナデシコの任務は終わりました。
次は南の島ですか……。
内に眠る『復讐』という名の鬼を目覚めさせたジュン。
その鬼を現臨させ、眠りに就いたジュンは今なにを思うのか。
次の目的地は南国の地、テニシアン島。
ナデシコの戦いはまだまた続く……。
・ 第二回・あとがき座談会 ・
AKI「『第二回・あとがき座談会』、司会進行の作者AKIです」
ルリ「前回に引き続き登場のホシノ・ルリです」
ラピス「同じく、ラピス・ラズリだよ」
ハーリー「マキビ・ハリです。それにしても今回はずいぶん荒れましたね」
ラピス「『アオイ・ジュン 大暴走の巻』だね」
AKI「原作でアキトが暴走したのも似たような理由だったしね。まぁ大まかに、だけど」
ルリ「まぁそれは横においておくとして……、今回はどうするんですか?」
AKI「はい?」
ハーリー「あとがきで何をするか、決めてないんですか?」
ラピス「前は質問コーナーだったけど……」
AKI「今回も同じだよ。と、いうわけで質問のある人」
ラピス「じゃ、今回はわたし」
AKI「はい、ラピスちゃん」
ラピス「木星からの介入とかプロローグ付近で書いておいてその兆候がほとんど見られないんだけど」
AKI「ガハッ!!」
ハーリー「ら、ラピス!!」
ラピス「えっ? なんかまずいこと言った?」
AKI「『三旗竜』のネタばらしになるような質問はNG」
ラピス「だめなの?」
AKI「うん。さすがにそれをやったらまずいでしょ……」
ルリ「そうですね。戦闘描写の苦手なAKIさんが話の中身までばらしたら誰も読んでくれなくなりますからね」
AKI「ルリちゃん、フォローになってない……」
ラピス「ちぇっ。じゃ、もうひとつの質問」
AKI「はいよ」
ラピス「『三旗竜』を書く上で気をつけていることは?」
AKI「ん? そうだな……大まかに言うとひとつだけ」
ルリ「それは?」
AKI「『読者が読みやすいように作る』」
ハーリー「読みやすいように……って、たとえば?」
AKI「誤字・脱字の類は100%排除が当然。出たらそれは恥。とはいえ、AKIも三話に一回ぐらい誤字が出るけど。
あとは行間をわざと空けてる。まぁこっちは人によって読みやすい形が違うからAKIの基準なんだけど」
ハーリー「行間を空けるって、ひょっとして字が固まっているとゴチャゴチャして読みづらいとか?」
AKI「うん。AKIは乱視持ちなのだよ」
ルリ「大変ですね」
AKI「そうなんだよね……。ま、そういうわけで未熟な作品だからせめて『読み手が読みやすいように』を最低条件として心がけている」
ラピス「ふぅん……。とりあえずわかった」
AKI「それじゃキリもいいし、今回も次回予告を……。二番手、ラピスちゃん!!」
ラピス「りょーかい。
北極での仕事を終えて、今度は南の島テニシアン島にやってきたナデシコ。
落下したチューリップの調査というお題目の元バカンスを楽しむクルーたち。
わたしもハーリーとバカンスをエンジョイしちゃうもんね♪
次回、機動戦艦ナデシコ 〜 時の流れに 〜 三旗竜 第十話 [『「女らしく」があぶない』 つかの間の平和]
さってと、どんな水着にしよっかな〜?♪」
ルリ「ちょっ、ラピス! 抜け駆けはナシですよ!?」
ハーリー「あ、あはは……。以上、あとがき座談会でした」
AKI「あ! 俺のセリフ!!」
代理人の感想
うーん。やっぱり重い話になりましたね。
アキトがそうであったように、これはジュンが乗り越えなければならない過去なのでしょうが・・・さて。
後、ジュンは三人娘を名字で呼んでませんでしたっけ?
いや、私もいまいち記憶が定かではないのですが・・・。