極東から飛び立った小さなナデシコ、ユキヤナギ。
その船の目指す先、西欧に一足早くたどり着いているものがいた。
無骨な砲身を右腕に、冷たい翼をその背にして……。
「…………西欧、か」
守りたいと願った者の下を飛び出し、少年は一人夜天の空を舞う……。
・ 西欧編・第二章 『飛翔』 刃金はただ敵を討つために ・
世界各地に点在する木星トカゲの母艦、チューリップ。
地球に降り注いだそれらの多くは、地上や海底に突き刺さり、時折活動してはバッタやジョロ、カトンボといった無人兵器を吐き出している。
だが、チューリップ自体に移動能力がないわけではない。
重力制御フィールドによる、鈍行といっても差し支えないゆっくりとした飛行で移動するチューリップ。
その鈍足は、その大きさとともに見るものに恐怖と威圧感を与えていた。
そして今日もまた、誰に気づかれるわけでもなく、一基のチューリップが軍事拠点を目指して侵攻していた。
目的は軍事拠点の破壊。
地球軍の戦力ではいまだ、チューリップに対して決定打に欠けている。
ネルガル重工が開発した外部装備型重力波砲・グラビティカノンは、チューリップを破壊するに十分な威力を持ちながら、その量産が追いついておらず、前線の将兵たちの手に届いていないのが現状だった。
そう、この西欧のように……。
このチューリップが狙っている軍事拠点もまた、グラビティカノンは装備していない。
このまま進めば、チューリップの勝利は揺るがないだろう。
だが、それを阻むものがいた。
月明かりのない夜の中で、なお黒い漆黒の閃光。
その閃光がチューリップ目がけて奔る。
突然の攻撃に対処が遅れ、閃光はチューリップに直撃する。
爆炎とともにチューリップの六枚の葉の一枚が千切れ飛んだ。
攻撃を受けたチューリップは残る葉を広げて戦闘態勢に入る。
その姿を、感情のこもらない目で見つめる人物がいた。
マキビ・ハリ。二週間前、ナデシコから姿を消し、軍では記録改竄の実行犯の容疑がかけられている少年。
右腕を鋼の砲身に変え、白銀の光で輝く鋼鉄の翼を持つその姿は、かつての彼の姿からは想像ではないほど変容していた。
「…………」
チューリップがジャンプフィールドを展開し、無人兵器を吐き出す様子を、感情の色が見えない目で見つめるハーリー。
飛翔し、自身にむかって接近してくるバッタを無視し、ハーリーは再びグラビティカノンを構える。
目標は……チューリップ。
「目標、捕捉……発射」
彼の言葉を引き金に、右腕の砲身から重力の砲弾が発射される。
砲弾は射線上のバッタをなぎ払い、一直線にチューリップにむかう。
だが、砲弾が命中したのは目標のチューリップではなく、その射線上に展開したカトンボの集団だった。
十数隻のカトンボが寄り集まり、ディストーションフィールドによってグラビティカノンの威力を半減させていた。
カトンボはすべて落ちたが、チューリップはディストーションフィールドに守られ、いまだ健在だ。
だがハーリーはそれを予想していたかのようになんの反応も示さず、砲身を下に下げる。
そして一言。
「イミディエットナイフ、展開(プレパレーション)」
次の瞬間、彼のまわりにバッタが殺到した。
先ほどの砲撃を逃れたバッタが、彼の体を押しつぶそうと体当たりしてきたのだ。
だが、それが失策であったことをバッタたちが気づくことはなかった。
なぜなら……。
「ブレード、フルスラスト」
バッタが殺到する一瞬前、ハーリーの体がすばやく舞う。
4……8……12……16……計32回の斬撃がわずか一瞬の間にバッタに刻まれる。
『パカッ』とでも聞こえそうなほど綺麗に寸断されたバッタは、バラバラにされた一瞬後、爆発した。
殺到した数十のバッタが一斉に爆発したことで、その空域に煙が立ち込める。
そこに吹く一陣の風が煙をどこかへ吹き飛ばしていく。
その中から現れたのは、四肢をブレードへと変えたハーリーだった。
四肢のブレードは淡い青白い光とともに、その姿を人の四肢へと変える。
「…………」
ハーリーの視線は動かない。じっと、チューリップを見つめている。
ふと、ハーリーの背中に異変が起こったことに気づく。
鋼鉄の翼が放つ白銀の光が小さくなっている。
今にも消えそうな白銀の光。だが不思議と落下の不安を感じない。
たとえるなら……そう、点火直前のロケットブースター。
そして、白銀の光は瞬(またた)いた。
ドン! という大きな音ともに、ハーリーの姿がその場から消える。
気がつけば、彼はすでにチューリップに肉薄していた。
わずか一瞬の交差。
今この場を誰かが見ていても、なにが起こったのか理解できた者は、おそらくいなかっただろう。
いつの間にはハーリーとチューリップの立ち位置が逆転していた。
お互いに背をむけ、相手の顔を見ようとしない。もっとも、チューリップに顔など最初からないが。
ハーリーの左手が下がる。その手はいつの間にか、紅い光の剣(つるぎ)に姿を変えていた。
それにあわせたかのように、チューリップが上下にずれる。その断面は包丁に切られたスイカのようにスッパリ斬られていた。
もちろんチューリップは野菜でも果物でも……というか植物ではない。機械だ。
当然、斬られれば……爆発する。
今までで一番大きな爆発音とともに、大きな火の玉になってチューリップが轟沈する。
「…………」
だがやはり、ハーリーの表情に変化はない。
ただ無表情に、落ちていくチューリップの破片を見つめている。
ふと、なにかを見つけたようにハーリーはある方角をむく。
その後ろ頭を、ようやく昇ってきた日の光が照らしている。
「南西64キロ……敵性移動体……1……2……3……、大きさから見てチューリップ三基……」
まるで頭の中に浮かんだ言葉をそのまま口に出しているかのようにつぶやくと、ハーリーの背中にある鋼鉄の翼が再び白銀に輝く。
そのままハーリーは、見ていた方角へと飛び去った……。
ハーリーのつぶやき通り、新たなチューリップが三つ、西欧の上空を移動していた。
一つでも十分な威圧感のあるチューリップが三つもそろうと、もう開いた口がふさがらないといった感じだ。
このチューリップたちの狙いも、先ほどのチューリップと同じ軍事拠点だった。
だが、今度のチューリップにはさらにもう一つ、べつの標的があった。
それは、進路上に存在する人口密集地。つまり、町だ。
チューリップはその町を敵性勢力拠点と認識。バッタを射出する。
だがその町は軍とはなんの関係もない、普通の民間人が暮らす町だった。
しかしチューリップは軍と民間人の区別ができるほど高度な判断能力など持ってはいなかった。
チューリップから見れば、軍も民間人も『倒すべき敵』でしかないのだ。
だが、チューリップ接近の報告を受けた軍は傍観を決め込んだ。
「本気ですか!? 町の住民を見殺しにしろと言うのですか!!」
その決定を知った基地の前線部隊隊長の一人、オオサキ・シュンは上官の下に怒鳴り込んだ。
先も言ったように、あの町は軍とはなんの関係もない、ただ民間人が静かに暮らしている場所だ。
他の軍人に比べて比較的まともな思考をもっているシュンには、その決定は承服できるものではなかった。
だが……その上司は違った。すでにその頭には、己の保身しかない。
「フン! 仕方が無いだろうが。今はこの戦線の維持だけで精一杯だろうが? もしこれが木星蜥蜴の陽動作戦だった場合、誰が責任を取るんだね?」
確かにその司令がいう可能性はあるだろう。それを警戒することは決して悪いことではない。
だが、その言葉の裏に隠れる計算が防衛のためのものではないことを、シュンはすでに見抜いていた。
この男は怖いのだ。民間人を救助に向かい、多大な犠牲を出したときに自分が責任を取らなければならないということを、この男は恐れていた。
それがわかるシュンは、心の中の苛立ちをグッ……と我慢し、それでもなお上司に食らいつく。
「では、自分達だけでも出撃して民間人の救助をさせて下さい!!」
「許可は出来んな。今は戦力の分散を許す事は出来ん」
「しかし!!」
いい争いをしている間に時間だけが過ぎていく。それがさらにシュンに焦りを募らせる。
そのとき、その間に入るように通信兵から報告が入る。
それも、あまりに絶望的な報告が。
「敵チューリップ3つが町をレーダー視界内に捉えました……。このままでは進路上の町は完全に破壊されます」
「……どう、なさるのですか?」
報告を聞き、シュンが上司に聞く。
「敵が来るのだからな。今以上戦線を退く事は許されん……。我が部隊の総力をもっての戦闘になるだろうな」
そんなことはわかりきったことだ。
そしてその前に存在する町は、守ってくれるものもなく敵によって完全に破壊され、逃げ遅れた住民はそのほとんどが死に絶えるだろう。
なにより、自分たちは今まで一度もチューリップを破壊できたことはないのだ。
連合軍の切り札、グラビティカノンもこの基地には配備されていない。
勝率0%。少し考えれば誰にでもわかるような絶望的な状況の中で、それでもシュンは動いた。
民間人を救うことこそ軍人の仕事。それが彼の信じる信念であるがゆえに。
シュンは、先行偵察に行くことを進言し、部屋を出た。上司もまた、そんな彼を止めようとはしなかった。
そして、これが彼らの明暗を分けたことを、この場の誰もがまだ知らずにいた……。
シュンは、志願制で募った兵士を集め、町へと急行した。
その戦力は……。
エステバリスが五機。
エステバリスのエネルギー供給用のトラックが三台。
司令部を兼ねた指揮用の装甲車が一台。
戦車が二十台。
歩兵を積んだトラックが十台。
弾薬、医薬品、食料などの補給物資を積んだトラックが五台。
チューリップを相手にするには無謀以外の何者でもない数だった。
死亡率90%以上の特攻軍。
それでも、住民を助けるには誰かがやらなければいけないことだ。
集まった志願兵は隊長のシュンと、副隊長のタカバ・カズシの部下たちだった。
『どうせ死ぬなら少しでも軍人らしく』を合言葉に。
という建前はともかく、このシュンとカズシという男は部隊内でも慕われているようだ。
だが、そんな彼らの目にこれから映るのは、地獄と呼ぶしかない場所なのだ……。
町に到着したシュンたちを待っていたのは、予想通り、住民からの怨嗟の声だった。
「もっと早く来てくれれば!! お母さんは死ななかったのに!!」
「お父さんを返してよ!!」
「何が連合軍だ!! 肝心な時には助けてくれないくせに!!」
「私の家を、家族を返せ!!」
もう何度も聞いてきた言葉。覚悟しているとはいえ、辛い。
怨嗟の声が聞こえるたびに、シュンの胸に痛みが走る。
彼とて彼らと同じだ。家族を護れず、失った人間の一人なのだから。
だが、その痛みに啼いている暇はない。今は一人でも多くの住民を救出しなければならない。
そのとき、シュンの視界の端に一人の女性が映った。
見れば女性は、燃え上がり今にも崩れそうな家に飛び込もうとしているではないか。
シュンは慌ててその女性、サラ・ファー・ハーテッドを止めた。
「なにをしている! 危ないぞ!!」
「離して!! 中にお父様とお母様が!!」
シュンに押さえられ、それでもなお家に飛び込もうと、サラは暴れる。
「中に入れば君も死ぬぞ!!」
「そんなことは関係ない!! お父様!! お母様!!」
シュンの制止も聞かず、女性は中へ飛び込もうとする。
そんな二人の前に、町に到着したハーリーが降り立った。
「お……お前、は……?」
突然現れたハーリーにシュンは困惑を隠せない。
―――誰だ……? いやそれ以前に、背中から生えている翼、ホンモノか?
シュンの頭の中でいろいろな思考が飛んでいく。
だがそんなことはお構いなしに、ハーリーはシュンに声をかける。
「……中に、誰かいるのか?」
逆行者で、二度目の歴史を経験しているハーリーにとって、この二人は顔見知りであるはずだが、その二人を前にしても、ハーリーの表情に感情の色は見えない。
その質問を聞いたサラが思い出したようにまた暴れだす。
「そ、そうよ! 中にお父様たちが!!」
「ま、まて!!」
再び飛び込もうとするサラを必死に止めにはいるシュン。
「わかった」
一言そういうと、ハーリーは燃え盛る家の中へと飛び込んでいった。
「お、おい!?」
シュンは慌てて止めようとするが、サラがいるために間に合わず、ハーリーの姿は炎の中に消える。
だがそれから間もなく、炎に包まれた家は倒壊し始めた。
ハーリーも、サラの両親もまだ家の中にいながら……。
「いやぁあああ!! お父様!! お母様!!」
「ちっ、ここは危険だ! さがって!!」
錯乱し、家に飛び込もうとするサラを捕まえながら、シュンは家から距離をとる。
遅かったのか……。シュンの頭にそんな考えがよぎる。
だが突然、倒壊していく家の屋根から一条の漆黒の閃光が立ち昇った。
「なっ!?」
驚きに目を見開くシュン。その先には、サラの両親と思われる大人二人を抱えたハーリーが、こちらにむかって降下してくるのが見えた。
ハーリーはシュンたちのそばに下りると、そのまま二人を地面に寝かせた。
サラはすぐさまハーリーの元に駆け寄っていく。
「お父様!! お母様!!」
「ご両親は、この二人で間違いないな?」
「は、はい……」
一応確認を、といった感じでハーリーはサラに質問する。
「一応生きてはいるようだが、あとで病院のほうで精密検査をしてもらうといい」
「はい。あの……ありがとうございます」
涙を浮かべ、礼を言うサラ。
だがハーリーは特に返答を返すでもなく、別の場所へと歩き去る。
「あ、おい!」
目の前の光景に呆けていたシュンは、慌ててハーリーの後を追う。
「お前……いや、君はいったい何者だ?」
「…………」
シュンの質問に、ハーリーは答えない。
その目が見つめていたのは、倒壊した家からなにかを掘り起こそうとする男性の姿だった。
まだ燃え移ってはいないが、火の手はすぐそばまで迫っている。
ハーリーはシュンを無視して男性のそばに駆け寄った。
「くそっ、待ってろ! 今助けるからな……!!」
男性はテコを使って瓦礫を退かそうとしていた。下を見ると、小さな赤ん坊を抱えた女性がとり残されていた。
「どいて」
にべもなく男性にそういうと、ハーリーは男性を突き飛ばした。
「わっ! てめぇ!! なにしやが……っ!!」
突然自分を突き飛ばしたハーリーを怒鳴りつけようとした男性が目にしたのは、信じがたい光景だった。
今までどんなに頑張っても持ち上がらなかった瓦礫が、まるでなにか見えない膜にでもさえぎられる様に浮かんでいたのだから。
「早く連れ出せ、長くは持たない」
「お、おう!」
ハーリーに言われて男性は慌てて女性を連れ出す。
女性は足を骨折していたが、赤ん坊には怪我はないようだった。
「無事か?」
「あぁ、あぁ……二人とも生きてる……。あんた……すまねぇ……」
女性を抱きかかえた男性は泣きながらハーリーに礼を言う。
しかし、やはりハーリーはなにも返事を返さず、次の場所へと移動してしまう。
「むこうに軍が用意した治療所と避難用のトラックがあります。とりあえずそちらへ……」
シュンは男性にそういい、再びハーリーの後を追った。
その後のハーリーの行動は同じだった。
いまだ家の中にとり残されている人や、それを助けようとしている人の救助を行い、そして去っていく。
救助された人の中には息絶えた人も少なからずいたが、それでもかまわずハーリーは外へと連れ出した。
その光景を一部始終見ていたシュンは驚くばかりだった。
ハーリーが救助に入る場所に制限はなかった。
そこがすでに全焼していようが倒壊していようがかまわず入り、中の人を救出する。
人間業ではない。
「君は……いったい……」
先ほど返事をもらえなかった問いを、もう一度投げかけるシュン。
しかし今度は返事が返ってきた。
「……アレと同じものだ」
そういうハーリーの視線の先には、上空を警戒中のエステバリスの姿があった。
「アレと同じ……ただの『兵器』だ」
「……は?」
いま、彼はなんと言った?
兵器? 誰が? 自分が? そんな馬鹿な……。
シュンの困惑をよそに、ハーリーは救助活動を進めていく。
そのかいあって、予想以上に救助活動は早く進んだ。
避難所は蜂の巣をつついたような賑わいだったが、どこか、助かったという安堵感があった。
だが、そんな空気を上空で警戒中だったエステバリスの一報が粉々に砕いた。
「隊長、来ました! チューリップ三基! 無人兵器を射出してこちらにむけて接近中!!」
避難所全体が緊迫した空気に包まれる。
シュンは即座に命令を下した。
「住民を連れて撤退する! エスバリス隊はトレーラーの護衛! 一発も通すなよ!!」
「「「《《了解!!》》」」」
エステバリスや戦車、周囲にいる部下たちから返事が返る。
そのときふと、シュンはハーリーの姿がないことに気がついた。
「彼は……?」
ハーリーを探そうと歩き出すシュンだったが、その足を一本の通信が止めた。
《た、隊長!!》
「どうした?」
《ちゅ、チューリップ、撃沈!!》
「なっ!?」
予想外の報告を肯定するように、大きな爆発音が避難所まで届く。
その音を聞きながらシュンは、なぜか自分を兵器といったハーリーの顔を思い出していた……。
救助を終えたハーリーは、誰にも告げることなくその場を離れた。
その足で、20キロ先のチューリップを目指す。
チューリップはすでに無人兵器を射出しており、その数は約800にも昇った。
だが、ハーリーの表情に恐怖はない。
前の戦闘と同じように右腕をグラビティカノンの砲身に変え、狙いを定める。
「発射」
その言葉を引き金にして、グラビティカノンが火を噴いた。
重力の閃光が射線上の無人兵器をなぎ払い、空に火の玉の天の川が生まれる。
だがさすがに前の戦いとは数が違う。
グラビティカノンの射線上を避け、バッタたちはハーリーにむかって一直線に飛来する。
「イミディエットナイフ、展開(プレパレーション)」
再び四肢がブレードに変化し、ハーリーは飛来するバッタを迎え撃つ。
両者の距離がゼロになり、各地で火の玉が次々に燃え上がる。
しかし、いかんせん数が多かった。
いくらハーリーが一騎当千の実力を持つとはいえ、実際に千倍の敵数を相手にするとなると時間がかかる。
そこでハーリーは、即座に戦法を変えた。
再び四肢のブレードを人の四肢に戻し、今度は右腕を鋼の砲身に変える。
そして、彼の頭の中にある六つの戦闘技能(バトルスキル)の一つが展開する。
海神・ポセイドンの槍と同じ名を持つ、重力の槍。
「第一戦闘技能(ファーストバトルスキル)『トライデント』」
あの日、オモイカネの電脳空間で見せた、三本の重力波。
その漆黒の光が、こちらに群がる無人兵器を広範囲にわたって一掃する。
その攻撃を防ごうとチューリップの盾になったカトンボが、身代わりになって次々と沈んでいく。
だが、そのかいあってチューリップは無傷だった。
再びチューリップのボソン反応が増大する。援軍を呼んだのだろう。
しかしそれも、ハーリーには予測の範疇だった。
頭の中で持ち上がる、二つ目の撃鉄。
第二の戦闘技能が展開した。
「第二戦闘技能(セカンドバトルスキル)『ブリューナク』」
引き金の言葉(トリガーボイス)によって重力の砲撃が三度、咆哮する。
三つの弾丸は一列に並び、巨大な槍となってチューリップ目がけて飛ぶ。
しかしチューリップは三つ。しかも横並びで間隔もそれなりに開いている。このままでは全部のチューリップは落とせない。
だが、ここで槍に変化が起こった。
一条だった光が、突如、五条に分裂したのだ。
『ブリューナク』、ケルト神話の神、太陽神・ルーが持つ槍と同じ名を冠したその技は、確かに神話と同じ能力を有していた。
五つに分かれた閃光は、正確に三つのチューリップに命中。
その名が意味する『貫くもの』を体現するように、チューリップを貫通した。
撃ち抜かれ、轟沈する三基のチューリップ。援軍の無人兵器もその爆発に巻き込まれ、誘爆していく。
ハーリーはただ、その光景を無感情に見つめていた……。
チューリップ撃沈の報を聞いた避難所に、歓声はなかった。
なにが起こったのかまったくわからず、誰もがただ呆然としている。
そんな中、真っ先に意識が戻ったのは部隊副隊長のタカバ・カズシだった。
「っ! せ、戦況を報告しろ!!」
その声に弾かれるように意識を戻したエステバリスのパイロットたちは、次々に現状を報告してくる。
《て、敵チューリップは完全に沈黙! 増援もありません!!》
《付近一帯に無人兵器の反応なし!》
《我が方の被害はゼロ! 軽微損傷の機体さえありません!!》
報告を聞きながら、シュンは避難所の周囲を歩きまわっていた。
もしかしたら、彼がチューリップを破壊したのでは?
先ほど『チューリップ撃沈』の報を聞いたときに感じた予感がぬぐいきれず、シュンはあたりを探し続ける。
すると、チューリップの侵攻していた方角から何かが飛んでくるのが見えた。
あれは……?
シュンが目を凝らして空を見る。
ゆっくりとこちらに向かっている黒い点。それは紛れもなく、鋼の翼を羽ばたかせるハーリーだった。
ハーリーがシュンの近くに着陸すると、シュンはすぐにそばへと駆け寄った。
「君……ひょっとしてチューリップを撃破したのは……」
シュンの言葉に無言でうなずくハーリー。
なんでもない、ただ当たり前のことをしただけ。
そう告げているようなハーリーの目に、シュンは恐怖より悲痛を感じた。
自分よりもずっと年下の……まだ10にも満たないような少年が、戦うことが当たり前と考えていることに。
なぜそんな風に考える? なにがこの少年にそうさせる? その背中の翼が理由なのか?
シュンの頭にさまざまな考えが浮かんでは消えていく。
そんなシュンのことなどお構いなしに、ハーリーはその場を去ろうとする。
それに気づいたシュンは慌ててハーリーを呼び止める。
「ま、待ってくれ!」
シュンの呼びかけに、ハーリーは足を止めて振り返る。
「なに?」
「あ、いや……」
とっさに呼び止めただけだったので、特に質問のような言葉を考えていなかったシュンは、なにを言おうか言葉に迷った。
そして、出てきた言葉は、
「民間人救助の協力に感謝する。でも、どうして協力してくれたんだ?」
という質問だった。
とっさに出た、本当にどうということのない質問だったが、その質問にハーリーの表情が変わった。
そこに浮かんでいた感情は……未練。
「……なんで、かな? とくに親しい人がいたわけでもないし、この土地に思い出があるわけでもない。
でも……そうすると気がまぎれた」
「…………」
年不相応な表情をするハーリーに、質問をしたシュンのほうが言葉につまった。
「……もう、戻れるわけでもないのに……」
「……、君は……」
なにかを言わないといけない。直感でシュンはそう思った。
だが、再びシュンが口を開こうとしたそのとき、キャンプのほうからカズシが大声を上げながらこっちにむかって来た。
「隊長ぉ!!」
「カズシ……?」
その慌てようにシュンは眉をひそめる。
「ハァ……ハァ……。さ、探しましたよ、隊長」
「あぁすまんな。で、なにかあったのか?」
とりあえずハーリーの件を頭の隅においておくことにしたシュンは、カズシの話を聞くことにした。
「き、基地が……うちの基地が……」
「基地? 基地がどうかしたのか?」
「基地が……陥落しました」
カズシの報告に、シュンは目を見開いた。
「なんだと!? どういうことだ!?」
「それが、どうもこっちのチューリップ三基は囮だったらしくて、俺たちが出た十分ほど後に上空から降下してきたチューリップ二基によって基地は強襲されました。
現在は通信もつながりません。おそらく……」
「全滅……か!」
シュンは悔しげに拳を握り締める。彼らが基地にいたからといってどうにかできる問題でもないが、それでもやるせない気持ちに変わりはなかった。
「チューリップ二基は基地にまだいるのか?」
「それが、基地との連絡が取れない上に、今持ってきているレーダーじゃ基地は範囲外なもんで、現在基地がどうなっているかは……」
「そうか……」
「チューリップ二基の内一基だけだ」
「「えっ?」」
シュンとカズシの会話に突然、ハーリーが参加した。
「ここから北北西82キロ先に、大型チューリップの反応が一基ある。あなたたちの基地はそこにあるのだろう?」
「あ、あぁ……たしかにその通りだが……」
なんなんだ、この子供は? とでも言いたげな顔をするカズシ。だが対照的にシュンは神妙な顔つきでハーリーを見ている。
「で、もう一基のチューリップは?」
「隊長?」
「……もう一基は基地から東南東12キロのところを現在も移動中。大きさは基地に残ったチューリップより小さい。進軍用の機動力重視型のようだ」
「わかった」
「た、隊長。こんな子供のいうことを真に受けるんですか?」
「たしかに相手がただの子供なら、ただの戯言と聞き流すがな」
「……? こいつは違う、と?」
「あぁ」
どういうことだ? と首をかしげるカズシをよそに、シュンはハーリーと向き合っていた。
今この場において、おそらくハーリーは一番信用できる情報を持つだろう。そうシュンは考えていた。
なぜ? と問われれば『勘』と答える。
特別な理由なんてない。ただなんとなく、信用できる気がしたのだ。
この悲しい瞳(め)をした『機械仕掛けの少年』が。
―――やれやれ、俺もヤキがまわったかな?
心の中でそんなことを思い、苦笑するシュン。
「……もし、お前がこの基地を奪還するとしたら、どうやる?」
「潰す」
シュンの質問に、ハーリーはにべもなくそう言った。
「おそらく自分たちが基地攻略を行う際のアドバイス感覚で聞いているのだと思うけど、仮定する戦力に差がありすぎるし、こちらには守るべき『背中』がない。
だから、その問いに出す結論は一つで、結果は二つ。
潰すか、潰されるか」
ハーリーの返答に、シュンは言葉をつまらせる。
―――自分の身さえ、守る気がないというのか……。
不意に背筋を走る悪寒を強引に押し込めて、シュンは話を続ける。
「なら、君に一つ頼みたいことがある」
「頼み?」
「基地奪還に協力してほしい」
「隊長!?」
シュンの言葉にカズシは驚きを隠せなかった。
たとえどんな能力があっても相手は子供。とても戦力になるとは思えない。
そのうえ、こちらはエステバリスがわずか五機しかないのだ。
そんな貧弱な戦力で、どうやって基地を奪還するというのだ……。
「かまわないが、一つ条件がある」
「なんだ?」
驚くカズシをよそに、二人の話し合いは進んでいく。
「そちらが戦闘に参加する必要はない。こちらだけで片付ける」
「しかし……」
「エステバリス五機では民間人の護衛だけで手一杯だろう? なにより、ポンコツエステが戦場にいても足手まといにこそなれ、増援にはならない」
「貴様ぁっ! 何様のつもりだ!」
ハーリーのあんまりな物言いに、カズシが憤慨する。
「事実を述べたまでだ。パイロットも人間だ、無駄に命を散らす必要はないだろう」
「ふん、『自分だけならなんとでもなる』ってか? お前みたいなガキになにができる!」
「…………」
皮肉げに笑うカズシに言い返すでもなく、ハーリーはカズシに背をむけた。
そして……メリメリメリ……と生理的嫌悪を感じさせる音を立てながら、鋼の翼が皮膚を突き破る。
「なっ!?」
その異常な光景に、カズシは目を見開いた。一度翼を見たことのあるシュンも、翼の出現の仕方に驚いている。
「……なにができるか? そんなこと一つしかない」
驚きで硬直しているカズシに振り返ることなく、ハーリーは独り言のようにつぶやく。
「敵を……破壊することだけだ」
そう言い、ハーリーは空へと飛び立っていった。
ハーリーが飛び立った後、取り残されたカズシとシュンは呆然とその場に立ち尽くしていた。
「……隊長、あいつは何者なんです?」
「わからん……」
シュンの言葉にカズシは眉をひそめる。
珍しい。シュンが誰ともわからないような人間、しかも子供に基地奪還の協力を頼むなんて。
カズシはそう思っていた。
「……ただ」
「ただ?」
「ただ……あいつはどこか信用してもいい気がした」
「…………」
「あるいは……あいつの目が、俺にそう思わせたのかもしれない」
そう……自分をただの兵器と言い捨てておきながら、どこか人間でいたいと思っているかのような、そんな寂しそうな目が……。
シュンたちの元を飛び立ったハーリーは、まっすぐに基地へとむかわず別の進路をとっていた。
しばらく飛行を続けた後、内部に搭載しているレーダーがその進路上にある機影を捉えた。
機影は間違いなく……チューリップだった。
大きさとしては大・中・小の小。かつてナデシコが一度だけ遭遇した、触手を持つチューリップだ。
小型チューリップは機動力や長距離レーダーなど単体戦闘力が高い分、一度に出現させられる無人兵器の数が極端に少ない。
ハーリーは高速でチューリップに接近すると、右腕を砲身に変える。
「時間が惜しい。さっさと沈め」
ハーリーの存在に気がついたチューリップが触手で応戦してくるが、かつて空戦フレームのエステバリスでさえ回避できた触手がより速く、小さいハーリーを捉えることなどできるはずがなかった。
チューリップに肉薄したハーリーはそのままグラビティカノンを連射。
轟音を鳴り響かせて、漆黒の閃光がチューリップのボディに突き刺さる。
装甲を突き破られ、チューリップは炎を纏い轟沈していく。
そんなチューリップに見向きもせず、ハーリーは次の場所へとむかって飛翔する。
むかうのはもちろん最初の目的地、シュンたちの基地だった。
基地の真上に突き刺さるその姿はあまりにも巨大で、ハーリーがこれまで戦ってきたチューリップの中で、間違いなく最大級の大きさを誇るものだった。
ナデシコの数倍にもなりそうなその巨体はわずかにかたむいており、なんとなくピサの斜塔のようにも見える。
そしてその巨大なチューリップはレーダーの能力も桁違いだった。
二十数キロ先にいるハーリーの存在を感知し、すぐさま迎撃体制に入った。
ワラワラと射出されてくる無人兵器の群れ。その中にはヤンマ級の大型戦艦の姿もあった。
ハーリーがチューリップまで15キロの距離まで接近すると、無人兵器たちが一斉に攻撃を開始した。
最初にハーリーがぶつかったのは敵の第一次防衛線、バッタの防衛ラインだった。
無数のミサイルがハーリーめがけて飛来し、火の玉がそこら中に花畑を広げる。
その火の中から飛び出すひとつの影。鋼の翼を羽ばたかせるハーリーだ。
しかしその姿はこれまで見せたものとは少し違った。
左手をイミディエットナイフ、右腕をエステバリスのラピッドライフルに似せて、両足はブラックサレナのブースターのように変化させている。
スピードを衰えさせず……いや、さらに加速して敵陣に突っ込んでいくハーリー。
その姿はどこかアマテラスに突入するブラックサレナを思わせた。
敵陣に突入したハーリーに、360度すべてからバッタたちが襲いかかる。その反応速度は彼の経験した二度の歴史の中でも例を見ない早さだった。
それでもハーリーの表情に動揺の色はない。
無感情の表情のまま、周囲に殺到するバッタを切り払い、撃ち落していく。
―――大型な分、数が多いな。
状況を頭の中で分析し、ハーリーは肉体の一部を変化させた。
背中に装備された十二門のハッチが一斉に開いていく。
「フェザー、射出」
ハーリーの言葉を合図に、無数の羽がバッタめがけて飛んでいく。
次の瞬間、ハーリーの周囲に無数の火の玉が生まれた。
その火の中へハーリーは迷わず飛び込んでいく。
ジリジリとハーリーの皮膚が炎に焼かれていくが、その顔に苦悶の色は見えない。
やがて、ボフッ、とまるで雲から飛び出したような音の後、炎の壁からハーリーが姿を見せた。
それと同時にバッタの包囲網も突破していたハーリーは、そのまま次の第二次防衛線・カドンボの守る防衛ラインに突入する。
レーザーがまるで豪雨のように激しく降り注ぐ中でも、ハーリーの速度はまったく落ちない。このまま行けばカトンボの張り巡らせるディストーションフィールドに衝突することになる。
だがそれもハーリーはすでに承知済みなのか、再び両腕を新たな武器へと変化させようと、右手と左手を握り合わせて前に突き出した。
そして、両腕はそのまま武器へと変貌する。イミディエットナイフより大きめな、ハーリーの体ほどの長さがあるブレードだ。
そのままハーリーはフィールドにぶつかった。ブレードが青い電気を走らせながら、その口を開いていく。
するとフィールドが突如、消失した。
フィールド・ランサー。ウリバタケ・セイヤが考案した、フィールドを中和することのできる対ディストーションフィールド用の装備だった。
内部に入ったハーリーはすかさずブレードを解除、グラビティカノンを造りだし、カトンボの腹めがけて放つ。
貫通し、火を噴きながらカトンボが爆発する。
その衝撃は周囲にいたカトンボのフィールドを半減させ、爆炎は一瞬ハーリーの姿をレーダーから消失させる。
突然、爆炎の中から漆黒の閃光が何本も走る。ハーリーだ。
フィールドの弱くなったカトンボはグラビティカノンに耐え切れず、次々にカトンボが落ちていく。
そしてそれは更なる連鎖を引き起こし、ものの数分でカトンボの防衛ラインには大きな穴が開いた。
そしてその穴を通ってハーリーはさらに前進する。
だが、この先に待つのは最終防衛線。ヤンマ級が十何隻も待ち構えている。
しかも、今まで抜いてきた防衛線も敵を全滅させたわけではなく、チューリップが健在なら増援もありえる。
危険な状況は、依然として変わりなかった。
それでもハーリーは前進をやめない。
その全身は、これまでの戦闘を物語るようにあちこちが黒く煤(すす)汚れ、所々皮膚が抉れて内部の機械が丸見えになっている。
―――ヤンマ級は、あまり時間をかけるわけにはいかない……。
ハーリーは右腕を砲身に変えたまま、左腕をブレード状に変化させる。
だがそれはイミディエットナイフではない。フィールド・ランサーでもない。
あれは……。
グラビティカノンとブレードを携え、ハーリーはヤンマ級めがけて突撃した。
ヤンマ級最大の武器は、ナデシコにも搭載されているグラビティブラスト。命中はもちろん、かすりもすれば命はない。
ヤンマ級に煌く重力の光。だがそれより早くハーリーのグラビティカノンが吼えた。
射程は短いが、速射性が高いのがグラビティカノンの強みだ。
グラビティブラスト発射寸前のヤンマは一瞬、フィールドを解除する。そこにハーリーのグラビティカノンが命中した。
チャージしていたエネルギーも合わさって、これまでで一番大きな爆発を見せるヤンマ。
その爆発はフィールドを突き破り、周囲のヤンマ級も巻き込んでいく。
だが一隻、爆発に巻き込まれる前にグラビティブラストを放ったヤンマがいた。
一直線にハーリーにむかっていくグラビティブラスト。回避するには近すぎる距離。
しかし……。
グラビティブラストを放ったヤンマが爆発に巻き込まれて沈んでいく。
だがその後ろを、高速で飛翔するものがいた。
ハーリーだ。その手には紅に染まった光の剣を携えている。
あの時、ハーリーはとっさに左手のブレード・DFSを発動。グラビティブラストを切り裂いていた。
そのままDFSを振り上げ、唐竹割りのようにチューリップを真っ二つに切り裂く。
チューリップの大爆発は下で潰されていた基地跡をえぐり、大きなクレーターを作り出した。
そして十数分後、増援を得る手を失った残敵の掃討が終了した。
「敵、殲滅を確認。……少し派手にやりすぎたか?」
爆発の中に消えた基地を見ながら、ハーリーはポツリとつぶやく。
しかし、基地に生命反応はなかったし、あの爆発で誰かが死んだということはないはず……とハーリーは判断し、シュンたちの部隊に無線を繋いだ。
「……オオサキ・シュン部隊長、聞こえているか?」
《っ!? 誰だ?》
「基地を占拠したチューリップ、及び無人兵器の掃討を完了した。生存者は……残念だが」
《君か……? そう、か……生存者なし、か》
『チューリップ破壊』の言葉を聞いてシュンはようやく相手がハーリーだということに気づいたようだ。生存者なしという言葉に心なしか声の力が下がる。
その後も基地の状況や周囲の敵反応など、様々な情報をやり取りするシュンとハーリー。
やがて話も架橋に入ったころだった。
《……それで、君はこれからどうする気だ?》
唐突に、シュンがハーリーにたずねる。
「……そんなこと、決まっている」
ハーリーは太陽の少し右側の方角を見ながらシュンに返事を返す。どうやら新たなチューリップを見つけたようだ。
「無人兵器を破壊する」
《…………》
「新しい敵を見つけた。ここで失礼させてもらう」
《……最後に一つ、いいか?》
「……? なに?」
《君の名は?》
シュンの問いにハーリーは言葉をつまらせる。
そしてしばらくした後……。
「……兵器に名前なんて、必要ないだろ?」
そう言い、シュンとの通信を終えた。
―――兵器……か。
心の隅でポツリとつぶやくハーリー。その言葉は、何より今のハーリーの心情を代弁しているような気がした……。
かつて彼は力に憧れた。
だがこの力は、はたして彼が憧れた力だったのだろうか。
手放すことのできない力で彼は戦い続ける。
その果てに、守りたかった者たちの明日があると信じて……。
・ 第七回・あとがき座談会 ・
AKI「第六回の改変を経て、やってきました第七回・あとがき座談会です」
ルリ「今回はハーリーくんがメインですね」
アキト「おまけに苦手なクセに戦闘シーンが結構多い」
ジュン「多いだけだけどな」
AKI「ジュ〜ン〜」
ジュン「本当のことだろう」
AKI「あぐ……。事実なだけに反論が……」
ルリ「それにしてもハーリーくん、強いですね……」
アキト「さすがにこれは……、また読者の皆様から『強すぎじゃないか?』って叩かれるぞ」
AKI「うぅ……わかってはいるんだよ。ハーリーが強すぎなのは」
ジュン「ならなぜ直さないんだ?」
AKI「それは……」
三人「それは?」
AKI「それは秘密です」
三人「おい!!」
AKI「冗談はさておき……。実際ハーリーが強い理由と言うか……そういう書き方をした理由はある」
ルリ「ふむふむ。で、どんな理由なんですか?」
AKI「ないしょ」
アキト「おい……」
AKI「だってネタバレになるじゃないか」
ジュン「ネタバレ……ねぇ……。まぁ、そういうことにしておいてやるか」
AKI「……どうも。さて、そろそろいつもの質問コーナーの時間だけど……」
アキト「それじゃ俺が」
AKI「どぞ」
アキト「ハーリーくんの戦闘技能の名前って全部武器の名前なのか?」
AKI「ん? まぁそうだな。今のところ出ているのは……、
第一戦闘技能(ファーストバトルスキル)・『トライデント』。
第二戦闘技能(セカンドバトルスキル)・『ブリューナク』。
この二つか」
ルリ「あれ? 前の第二は『ゲイボルグ』じゃなかったですか?」
AKI「うん、まぁ……。そうだったんだけどね。
資料読んでて思ったんだけど、ゲイボルグって先端からショットガンみたいに30もの矢じりが飛び出すらしいんだよね。
グラビティカノンでそれをやると、なんか変な感じになるし……ということで、本来第五戦闘技能(フィフスバトルスキル)にあったブリューナクを第二に持ってきたってわけ」
アキト「なるほど。で、残りは?」
AKI「作中も書いたけど、残りはあと四つ。名前は……」
ジュン「名前は?」
AKI「作中に書くからナイショ」
アキト「そりゃそうか」
AKI「さて、そろそろキリもいいことだし……今回はアキト、よろしく」
アキト「俺か!? なんか緊張するなぁ……。
シュン隊長の基地にむかうユキヤナギは途中の基地でアリサちゃんと合流する。
そのまま基地にむかった俺たちだが、到着してみれば基地はすでになく、シュン隊長たちの要請もあって民間人を安全な場所に輸送することに。
そのとき、輸送するユキヤナギにチューリップが襲いかかる。激しい戦闘の最中、上空から飛来したのは……。
次回、機動戦艦ナデシコ 〜 時の流れに 〜 三旗竜 西欧編・第三章 [『再会』 届かぬ声]
なお、題名のサブタイトルは微妙に変更される可能性があるけどそこは作者の不手際だと思ってくれ」
AKI「余計なお世話だ! ……と言いたいのに微妙に否定しきれない……」
ルリ「バカ」
代理人の感想・追伸
むう。主な変更はハーリー君の戦闘シーンですね。
しかし本気で人外だ・・・まぁ、皇家の樹でも持っていると思えば大した事はないか(ぉ
実際、アキトならブラックサレナでこの程度の戦闘力は持ってますから割と今更のような気はしないでもありませんし。
ブローディアレベルの技術をダウンサイジングして詰め込んだと思えばそれほど違和感は・・・・
まぁありますけどそれはそれで(爆)。