輝ける未来を
第二話
「ここは・・・」
アキトが目覚めて最初に見た景色は夕暮れだった
「そうだ、俺が最初に火星からボソンジャンプした場所だ。」
顔につけていたバイザーを外してもう一度空を見上げる
「見える。あれはやはり夢ではないようだな。」
一度大きく深呼吸してみる
「草木の匂いがするから嗅覚も戻っているな。」
草を一本千切り食べてみる
「・・・苦い(涙)。味覚も大丈夫みたいだな。」
一度起き上がろうと手の位置をずらした
ムニョ
(あっなんかやわらかくて気持ちいい感触が・・・)
ムニョ、ムニョ、ムニョ
「あんっ」
「えっ?」
どこか熱のこもった声のした方向に目を向けると、琥珀の蒸気した顔と彼女の胸を鷲掴みしている自分の右腕が見えた
「アキトさん、そんな・・・まだ私たちそういうことをするには早いような・・・」
(・・・・・・)
アキトの思考ただいま停止中
「でっ、でも、アキトさんとなら・・・」
再起動まで後十秒
「でも、私初めてなので・・・その、優しくしてください。」
後五秒
「・・・・(目を瞑る)」
後三秒
「・・・アキトさん?」
「うわああああああ・・・・!!!」
アキト再起動
「きゃっ」
鷲掴みしていた腕を放し大きく後ずさりする
「ごっ、ごめん琥珀ちゃん。決して悪気があってしたんじゃないんだ。その・・・そっ、そうこれは事故なんだ。起き上がろうとして腕をずらしたらそこにたまたま琥珀ちゃんの胸があって・・・その、気持ちよくてつい、ってなに言っているんだ俺。・・・とにかくごめん。」
ひたすら平謝りするアキト。今の彼の姿にはもう劇場版のクールでダークな姿はどこにも見当たらなかった
「気持ちよかったですか。」
「うん。大きすぎることもなく、かと言って小さすぎることもなく手にすっぽり収まる形の良い、それでまた弾力があって・・・ってなに言わせるんだよ!!!」
熱弁し始ろとは誰も言っていないような・・・
「・・・アキトさん。」
「何?」
急に改まった声で話し掛けてきたのでアキトも真剣な声で聞き返した
「アキトさんのせいでお嫁にいけない体になってしまいました。だから・・・」
「だっ、だから?」
「アキトさんが責任を持って私をもらってください。」
「・・・・・(沈黙)」
アキト撃沈
「それに、お母さんにも『必ず幸せにしてみます』って言ったんですから。言動に責任を持ってもらわないといけませんし・・・」
「だが・・・」
アキトは過去に戻っても誰かと付き合おうとは微塵も考えていなかった。もし誰かと付き合うと未来の、ユリカの二の舞になってしまうよう気がしてならなかった
沈黙したままのアキトに手を重ねた
「アキトさんは決して不幸を呼び寄せてなんかいません。」
「しかし・・」
「しかしじゃあありません。アキトさんは未来を変えるためにここにいるのでしょう?」
「もちろん。」
「だったらそんな後ろ向きな考えでは駄目です。ほら、もっと前向きに明るく生きましょう。ねっ?」
笑顔でそう言った
「・・俺に出来るかな?」
「人は出来ると思ったら何だって出来ます。要は気持ちの問題です。」
「・・うん」
アキトは自分の心が彼女の笑顔に癒されていくのを感じながらそう答えた
「それに、アキトさんが私をもらってくれたら戸籍を作るのも簡単ですし。」
「義妹じゃあ駄目かな(汗)」
必死に抵抗を試みる
「・・アキトさんは私と夫婦になるのがそんなに嫌なんですか?」
「えっ、嫌そう言うわけではないんだが。」
「そうですよね・・ユリカさんやルリちゃんのほうが私よりも魅力ありますよね。」
嗚咽を漏らしながらそう言った
「そんなこと無いよ。琥珀ちゃんのほうがよっぽどかわいいよ。」
「いいんです。そんな無理をしなくても。」
もはや聞く耳持たずの状態だ
(まずい、これでは俺は悪者ではないか)
女の子を泣かした時点で十分悪者のような気がするのだが・・
「ほんとだって。絶対琥珀ちゃんのほうがかわいいよ。」
「・・・なら、証拠見せてください。」
「しょっ、証拠?」
「キスしてください。そうしたら信じてあげます。」
目を瞑り準備をととのえる
(ここでキスをすると不倫になってしまうのかな?でも北辰に襲われたのは届を役所に出す前だから正式な夫婦ではなかったし、なによりこの時だとそれ以前の問題だから・・・大丈夫だよな・・・きっと。)
アキトの唇がそっと琥珀の唇に触れる
「貴方達ですか?私に会いたいともとめたのは」
アキトと琥珀はナデシコのあるサセボドックに来ていた。ちなみにあの後アキトが折れて二人は夫婦になることになった。さすがに黒ずくめでは怪しすぎ、琥珀も一着しか服を持っていないのでまず服の調達をし、琥珀の戸籍の偽造、この世界のアキトはどうなったかを調べていために、アキトはユリカとの再会の時間に遅れてしまい仕方が無くプロスさんを呼び出すことにした
「俺の名前は、テンカワアキト。こっちが妻の琥珀です。」
「妻の琥珀です。」
「テンカワさんと言うとまさか・・」
「昔ネルガルに務めていたテンカワ博士の息子です。」
「・・・それで、私に何の用事ですか?」
「俺と琥珀をナデシコに乗せてくれませんか。」
プロスの顔が驚愕で歪む
「テンカワさん貴方それをどこで・・・」
「ちょっとした風の噂で耳にしまして・・・。」
本当のことを言うつもりはなかったし言ったとしても信じてもらえそうに無いのであえて誤魔化すことに決めた
(あなた、もう少し美味い誤魔化し方は出来ないんですか?今のでは怪しさ大爆発ですよ)
(そんなこと言われても、俺嘘つくの苦手なんだよな・・・)
アイコンタクトで会話をする二人。琥珀は夫婦になってからアキトのことを『アキトさん』から『あなた』に変更した
「分かりました。ではこちらの契約書にサインを。」
((どうして今ので信じる!!!))
心の中で同時に突っ込んだ
「どうかしましたか?」
「「いえ、別に」」
「では、アキトさんはパイロットでいいですか。」
「ええ。それでいいです。」
「・・・おや、琥珀さんあなたはまさか・・・」
「はい。私はマシンチャイルドですよ。」
「なら、オペレーターをお願いできますか。」
「分かりました。」
「ならお二人のお給料はこのぐらいで。」
プロスさんに提示された金額はそこらの企業より遥かに高額だった。さすがは大企業と言ったところか
「それでは、艦内をご案内します。」
ヴィー、ヴィー、ヴィー
大きな振動の後そこら中の警報が鳴り始めた
「(思ったよりも速かったな)プロスさん格納庫まで案内願いますか?」
「分かりました。」
三人は格納庫に向け走り出した
一方ブリッチでは・・
「艦長が来ないとは・・・困りましたね。」
軍服を着込んだ髪の長い女性が頬に手を当てため息をついた
「どうしましますか、アオイ副提督?」
アオイキョウコ少佐。御年二十三歳で、ぴちぴち(死語)の新妻だ。そんな彼女に策士と名高いメグミレイナード通信士から質問が飛ぶ
「・・・どうしましょうか。」
おっとりとした声でそう答える
「・・・バカ?」
彼女の答えにぼそりとそう答えたのは五年後には『電子の妖精』と言われ爆発的人気誇るホシノルリその人だ。
「ねえルリルリ、艦長と副長はまだ来ないの?」
ルリに話し掛けてきたのはナデシコで某料理長と共に最後の良心と言われるハルカミナトである
「・・・今ブリッチに向かって爆進中です。後十秒ぐらいで到着します。」
・ ・・十秒後・・・
「私が艦長のミスマルユリカでーーす。ブイ。」
「僕が・・副長のアオイジュンです。よろしく・・お願いします。(ぜえぜえ)」
場が一斉に静まり返る
「やったねジュン君。みんなのハートをキャッチしたよ。」
「ユリカ・・・この雰囲気からどうしたらそんな答えが出るのか聞いてみたいんだけど。」
元気いっぱいのユリカに比べジュンは疲れきっていた
「それよりユリカ、早くマスターキーを挿して。」
「うん。」
ジュンから離れマスターキーを挿しに行くユリカに代わってキョウコが近づいて来た
「お疲れ様です。旦那様」
壁に寄りかかって呼吸を整えている夫のジュンにそうねぎらいの言葉をかける
「・・・本当に疲れたよ。ユリカの奴道も知らないのに先先進むんだから。」
愚痴をこぼすジュンにキョウコは苦笑した。
「艦長どうするかね?」
今まで黙っていたフクベ提督が始めて口を開いた
「そうですね、機動兵器を囮に出してその間にゲートを出ます。その後敵をグラヴィティーブラストで一掃します。」
「・・・艦長、パイロットのヤマダさん足を骨折して出撃できません。」
ルリの容赦無い突っ込みが入る
「えーーーー。」
「その事なら心配ありません。」
タイミング良くプロスが入ってきた
「どう言うことですかプロスさん?」
「先ほど新しいパイロットを雇いました。今その人が出撃しています。」
「ルリちゃん通信を繋げてくれる?」
(パイロット・・・まさか・・・)
「ルリちゃん?」
「あっ・・・すぐに繋げます。」
スクリーンに映されたのは一組の男女だった・・・
後書き
こんにちは、akiraです。
やりました、ついに二話の完成です。これも体から迸る熱き電波のおかげです
・・・ごめんなさい、ちょっと暴走していますね僕。
とにかくがんばって早めに三話を完成させます。
では、また次回にお会いしましょう。