輝ける未来を
第六話
ナデシコは現在ネルガルの月ドックにいた。
では何故こんなところに居るかというと、ビックバリアをぶち破ったさいにエンジンに異常が見られたので
現在調整中であるのであった。
所変わってナデシコ内テンカワ家の部屋
今アキトは歩んできた人生において最大級の問題に直面していた。
何故なら目の前には二種類の朝食がある。それとそれぞれの料理人もいる。
「あなた、早く食べないと冷めるよ。」
と言って琥珀が薦める料理を見る。とりあえずご飯がある、やけに水っぽいのが・・・・
だが、これはまだ見て何かが判別できるであった。その隣にある物、
それは、紫色をした謎の液体だった。(爆)
「・・・・琥珀、これは何?」
「えーーーと、たぶん味噌汁・・・だと思う。」
「味噌汁は、紫色なんかしていない!!」
「まったくその通りですね。」
「・・・・ルリちゃんも人のことは言えないよ。」
ルリが出した朝食には、まずサンドイッチがある。別に何の変哲も無いただのサンドイッチだ。
問題はその隣にある鮮血のように鮮やかに赤く染まった液体の入っているコップだ。(爆)
「・・・・これ、何?」
「紅茶です・・・たぶん。」
「紅茶がこんな鮮やかな色をしているか!!」
「それは、さて置いて・・・」
「置くな!!!」
「早く食べてください、じゃないと美味しくなくなります。」
「そうそう、早く食べて。」
「・・・・これを食べろと言うのか?」
「「もちろん(です)。」」
食べたら死ぬ・・・・彼の中の本能がそう告げている。
だが、ここで食べないと後が怖い。
まさに崖っぷちである。
アキトは部屋の隅に居る両親にアイコンタクトで助けを求めようと試みた。
『父さん、母さん助けて!』
『アキト諦めて覚悟を決めろ。』
『大丈夫よ。ちゃんと骨は拾ってあげるから。』
両親にも見捨てられ、追い詰められたアキトは最後の手段として神に救いを求めた。
そして神はそんな彼に救いの手を差し伸べた。
ピンポー――ン
「(よかった、助かった。)ちょっと御免、誰か来たみたいだ。」
アキトは逃げるように玄関に向かった。
「はーーい。誰ですか?」
「あっ、アキトさん。メグミですけどちょっといいですか。」
「何?」
「久しぶりにスタミナドリンクを作ってみたんですけど飲んでくれませんか。」
そう言って持っていた言い様の無い色のした液体を差し出した。
「・・・・・・・」
アキトは石化した。
どうやら神様は悪魔と手を組んだようだ。
「・・・・アキトさん?」
メグミが動かなくなったアキトを不思議に思い手を振ってみるが反応が無い。
どうやらただの屍に成った様だ。
「「アキトさん(あなた)冷めますよ」」
なかなか戻ってこないアキトに対し苛立ちを感じた二人が部屋からやってくる。
「「「さあ、早く食べて(飲んで)下さい。」」」
これで前後を塞がれ身動きが取れなくなった。
『くっ、俺の人生もここまでか。』
覚悟を決めたアキト。今まで歩んできた記憶が走馬灯のように流れていく。
だが、神にも見捨てられた彼だが、まだあいつが残っていた。
「・・・・何をしているんだ?」
玄関で騒いでいる四人を怪訝な顔をして明がそう尋ねた。
「こんなところで騒いだら近所迷惑になるぞ。」
「だって私がせっかく朝食を作ったのに食べてくれないんですよ。」
琥珀が『朝食』と言った瞬間、明が過敏に反応した。
「・・・・今朝食を作ったって言った?」
「(こく、こく)」
頷いた瞬間、気が飛んでいきそうだったが何とか正気を保った。
「それで、ルリちゃんとメグミさんはどうしてここにいるんだ?」
「私もアキトさんに朝食を・・・・」
「私はスタミナドリンクを飲んでもらをうと思って・・・・」
「・・・・なるほど。それでこの騒ぎか。」
納得したのか何度も頷き、思案し始める。
『さてどうした物か・・・・あんな物食べたらアキトさんなら間違い無く死ぬな。
かと言って捨てるわけにもいかないし・・・・食べるしかないのか、俺が。』
そう決心するとまず手始めにメグミの持つドリンクを取った。
「メグミさんこれは俺が飲んでも良いかな?」
「えっ、それは良いですけど。」
返事を聞くと躊躇せずに一気に飲み干した。
口の中が甘かったり、苦かったり、辛かったり、しょっぱかったりして、気が飛びそうだったが
またもその強靭な精神力でたえた。
「どうでした?」
「・・・・何とも言いがたい味だったが、あえて言うならば個性的かな。」
それだけ言うと空になった容器を返した。
「で、用事はこれだけ?」
「あっ、はいありがとうございました。それでは失礼します。」
そう言い残すと彼女は去っていった。
「・・・・大丈夫か明?」
一度飲んだことがあるアキトにはどれほど恐ろしいものか解っているので心配そうに尋ねてくる。
「何とか生きてます。それより二人の作った朝食はどこですか?」
「それならちゃぶ台の上に・・・・」
そう聞くと三人を押しのけてその場所に向かった。
「どうするともりだ明?・・・・まさか!?」
「そのまさかです。」
「やめるんだ、死ぬぞ!!!」
アキトの制止を聞かずに目の前にあるものを恐ろしい速さで飲みこんでいく。
その威力(味)は先ほどの物と比べ様の無いほど絶大な破壊力だった。
これを普通の人が食べたら間違いなく食中毒で死ぬだろう。
そして全て食べた後、彼はその場に崩れ落ちた。
「明ーーーーーー」
駆け寄り生死を確かめる。顔色は悪かったが確かに生きていた。
「すまない。俺が不甲斐無いばかりにこんな酷い目に・・・・」
「いいんです。アキトさんを守るのも俺の仕事の内ですから・・・・それよりも話があるんです。」
「何だ?」
「ナデシコの修理が思ったより長くかかり予定日時までに間に合いません。」
「わかった。そのことなら俺達でやっておくから少し休め。」
「わかりました。お言葉に甘えて少し休ませてもらいます。」
そう言い残すと彼は意識を手放した。
明を医務室に連れて行った後、アキト達は会議を開いた。
「間に合わないとは・・・・困ったな。」
アキト達の考えとしてはナデシコがある程度近づいた時点でウイルスを送り
脱出した人たちを回収する予定だったが肝心のナデシコが間に合わないのなら意味が無い。
「オモイカネに聞いたところ故障箇所の残りは出航してからでも直せる箇所ばかりだそうです。」
「でも、出航を早めてもらう理由が無い。」
「だったら理由を作ればいいじゃないか。」
「例えばどんな?」
「テロリストの中に潜伏させておいた仲間からたれこみがあったとか。」
「それ、無理がありすぎるよ父さん。」
「だったら、こんなのはどうかしら。」
先行きを見守っていたアヤカが口を出した。
「アキトのサレナ、確か明君が『今までのものより三割増の出力が出せるエンジンが出来たから取り付けます。』
って言っていたからその実験を理由に一足先に向かって蜥蜴を倒すの。」
「・・・・いつの間にそんなもの作ったんだあいつ」
「そのことはおいおい彼に聞くとして、どうする、やってみる?」
「・・・・わかったよ、それでいこう。」
「プロスには私たちから言っておく。」
「よしこれで後は明の許可があれば「了承」・・・・え?」
皆が声がした方向に一斉に振り向いた先には明が立っていた。
「明!もう大丈夫なのか?」
「ふっ、生半可な鍛え方はしてませんよ。」
歯を光らせて不敵に笑ってみたりする。ちなみに先ほどの出来事からまだ一時間もたっていない。
「さあ、速く準備をしてください。」
「わかった。」
そう言い残し部屋を出ていくアキトを見送った後シズマはプロスに連絡をとる。
「プロス、ちょっといいか?」
「何ですかシズマさん。」
「今からアキトが機体のテストの為に一足先にサツキミドリに向うことになり、艦長の許可も得たんだ。
一応その報告しようと思ってな。」
「はあ、しかし・・・・・」
「言いたいことは判る。なに、アキトがいなくても艦長がいるだろ。」
「わかりました許可しましょう。」
「すまんな。」
その言葉を最後に通信を切った。
「これで準備は出来ました。後はアキトさんの腕の見せ所ですね。」
ナデシコ内格納庫
「アキト、準備は出来たか?」
コミュニケを使いそう尋ねるウリバタケに頷くことで返事をする。
「よっしゃ、なら言って来い!!」
「テンカワアキト、サレナ行きます。」
重力カタパルトから射出されると同時に一気に加速させる。
「なっ、前よりも速くなってる。これならいける。」
この時アキトは間に合うことを確信していた。
だが事態はもはや風雲急を告げていることに彼らはまだ気づいていなかった。
後書き
初めて読んでくれた方、はじめまして。今まで読んでくれてた方お久しぶりです。akiraです。
修学旅行やら学年末などで書き上げるのに時間がかかってしまいました。・・・・・ごめんなさい。
で、今回の話最後はちょっぴしシリアスっぽくきめてみたんですがどうでしたか?
良かった点、悪かった点、何でもかまいません。感想をいただけたら嬉しいです。
それでは、また次回お会いできるよう頑張ります。
代理人の感想
・・・・・・・マシンチャイルドってのはみんな味覚障害なんかい(爆)。