輝ける未来を
第八話

前回、未来変革組織『ストレリチア』を結成したアキト達御一行は、

未来を変えるために何か策を巡らせて・・・・・いるわけでもなく、

サツキミドリの中にある公園で皆でのんきにお茶をすすり、まったりしていた。

「こうやって、のんびりとお茶がすすれるのが一番の幸せって、昔

 誰かが言っていたけど、本当だな―――(ズズ―――)」

「本当に、そうですね―――(ズズ―――)」

「何か、和菓子でもあれば言うこと無いんだけどな―――(ズズ―――)」

「こんなこともあろうかと、実は羊羹を持ってきていたりするんです。」

と言うと明は背負っていた鞄から羊羹一本と人数分の皿を取り出し、

羊羹を人数分に切って皿に盛り爪楊枝を添えて皆に手渡す。

「一流の物では無いですが、どうぞ。」

皆は渡された羊羹を一切れ口に入れる。味のほうは上品な甘さで

ほんのりと柚子の香りがするすばらしい物だった。

「(もぐもぐ)・・・・・美味しい。」

「うん、絶品だよ、これは。」

ラピスと北夜は、羊羹の味にたいそう満足したのか出された物を綺麗に食べ、

お代わりを要求する。

「お代わりはまだあるから。アキトさんと琥珀ちゃんはどう?」

「ああ、ラピス達と同じさ。十分美味しいとしか言いようが無いな。」

「私も同じです。これ、どこのメーカーの物なんですか?」

「いや、これは市販の物じゃなくて手作りなんだ・・・・・俺の。」

そう言うと少し照れた笑みを浮かべ、人差し指で頬をかく。

それとは逆にアキト達は皆驚きの余りに沈黙する。

「・・・・・本当に明が作ったのか?」

「ええ、昔一時期ほど和菓子屋にお世話になっていたことがあるんですよ。

 その時に羊羹を含め何種類か作り方を教わったんです。で、つい最近

 久しぶりに作ってみようと思ったわけなんですが・・・・・でもよかった

 腕は落ちてないみたいだな。」

「・・・・・本当に何でも出来るな、おまえ。」

「そんなことありませんよ、俺にだって苦手な物ぐらいあります。」

「例えば?」

「中華や和食に比べて、洋食の味が少し落ちるところです。」

「それって、ホウメイさんと同じレベルの物が出来ると言う事ですね。」

「それだけ出来れば十分じゃないか!」

そう、明は和食と中華の腕前だとあのホウメイさんを凌ぐほどの腕前の持ち主なのだ。

なんせ、ホウメイさんが一口明の料理を試食した時、速攻で弟子入りを志願したぐらいだから。

「他に、他に何か無いのか?」

ちょぴり額に青筋をたてて迫ってくるアキトに少し畏怖を感じながら、必死に苦手なことを

思い出そうとする。が、こういう時に限ってなかなか見つからない物なのだ。

「え−−と、え−−と・・・・・・そうです!!」

「どうした、何か見つけたのか!」

「はい、それはもうとっておきのが見つかりました。」

「へーー、明さんにも苦手なものがあったんだ。」

「はい、実は女性との付き合い方が苦手なんです。」

ちなみに明もテンカワ家の男として生まれてしまったために無意識、無自覚に

女性を魅了して虜にしてしまう恐ろしい体質、通称『テンカワフェロモン』

に加えて『テンカワスマイル』の継承者であるのだ。

「実家の右隣に住んでいた同じ年の幼馴染は幼い時から俺を何処かに閉じ込めては、いきなり

『あーちゃん、新婚さんごっこをしよう。もちろん夜のお仕事も(ハート)』と言って、服を脱ぎだすし、

 又ある時は左隣に住んでいた年上のお姉さんに、同じように俺を何処かに閉じ込めて、

『明君、私と一緒にならない。それはとっても気持ちの良いことなのよ。』と言い、俺の服を 

 ひんむごうとするし、学校に行けば毎日女子との追いかけっこしないといけなかったんです。

 しかも、学年上がるたびに増えていくし、その数は小学校卒業までには一クラスの半分まで膨れ上がった

 んですよ。」

ため息をつきながらこの台詞を言う明をモテナイ男達が聞いていたらさぞかし嫉妬の炎を、いや業火を燃やしたに違いないだろう。

それほどまでに明の悩みは贅沢なのだ。普通の男ならばこう言った状況がくれば、喜ばしいと素直に思うだろう。

もちろん明も男であるのだし、自分のことを好きになってくれる女性がいるというのは嬉しく思う。

だが、彼女達の愛情表現は明の気持ちを無視した、言わば押し付けの愛情であり、とうてい受け入れることができる物ではなかった。

「そんな事があって、トラウマと言うのでしょうか、女性と話す時何時も少し身構えてしまうんです。」

アキトと北夜は何処か遠い所を見て話をする明の手を取り、

『お前の気持ちはよくわかる』と言った視線で明を見つめる。

何故ならこの二人は、明と同じ状況に何度も陥っているからだ。(爆)

「・・・・明、まともな女性が見つかると良いな。」

「明君、めげずに頑張っていこう。協力は惜しまないつもりだから。」

「アキトさん、北夜さん・・・・・ありがとうございます。(涙)」

涙を滝のように流しながらお礼を言う明。これを見ていた琥珀は後に

『明さんが泣いていると言うか本気(マジ)泣きしている所なんて始めて見ました』

と語ったそうな。

しかし、そんな美しい(?)友情をアキト達がしていた時、激しい揺れと爆音が襲った。

「何が起ったんだ!?」

「「「「と言うか、木蓮の襲撃しか考えられない(よ、だろう、でしょう)。」

動揺するアキトに皆が語尾は違うけど同時に同じ突込みをいれる。

そしてその言葉どうり、数秒後にアキト達の頭上をバッタ達が市街地の中心に向って飛んでいった。

「アキトさんは、サレナで迎撃に出て下さい。琥珀ちゃんとラピスちゃんは避難して、

 北夜さんは、たぶん帰還命令が出るでしょうから、先ほどの件、よろしくお願いします。」

「明は、どうするの?」

「俺は、アキトさんが来るまであいつ等の足止めをしときます。」

と言うと先ほどの鞄から普通の小太刀よりやや長めのものを二本取り出し、ベルトで背中に固定する。

「・・・・・なあ、今どこからそれを取り出した?」

「鞄からですけど?」

「しかし、どう見てもその鞄より小太刀のほうが長そうに見えるぞ」

アキトの意見に他の人達も一斉に頷く。

それもそのはず、明の鞄は全長40cm程度だが、小太刀のほうはそれをさらに10cm以上上回っている

にもかかわらず、すっぽり入っていて、しかも、さっきは羊羹やお皿まで取り出したのだから不思議なことこの上ない。

「この鞄は、未来から駄目な少年を助けに来た自称猫型ロボットがお腹につけていた物と同じです。」

「「「「何だ(何)、それ?」」」」

「分らないのなら、後でオモイカネでも何でも良いから活用して調べてください。

 それよりも、そろそろ作戦を開始しましょう。」

その言葉に皆無言で頷き、それぞれの目的の場所に向っていった。





明は街中を駆け抜けながら襲ってきたバッタどもを切り捨てる作業を繰り返している途中に

今まさに襲われて様としている親子を見つけた。その距離およそ50mあり、普通に走っていては間に合わない。

そのことを瞬時に理解した明は自分の中に眠る力、『神気』を一瞬で練り上げ解放した。その瞬間明の全身が

美しい紫金色に包まれる。そこからの明は到底人の出せる速さで駆け、距離を一気に詰めバッタを蹴り飛ばした。

蹴り飛ばされたバッタ空に綺麗な弧を描きビルに突撃した後、沈黙した。そのことを確認すると、襲われていた

親子のほうに振り向く。

「大丈夫ですか、何処か怪我していませんか?」

一瞬のことに呆けていたが、少女は明の無事を確認する呼びかけに正気に戻る。

「あっ、はい。ありがとうございました・・・・・痛」

礼を言い立とうとしたが、足を挫いたのか痛みが走る。

明は屈み、患部に手をあてて具合を確認する。

「どうやら捻挫のようですね。すみません、少し目を瞑ってください。」

「えっ、どうしてですか?」

「まあ、気にしないで下さい。ああ、お母さんもすみませんが。」

その言葉に親子は少し戸惑ったものの、従って目を瞑る。それを確認すると患部に手から『神気』を送り、

10秒くらいした後患部から手を離す。

「もう良いですよ。もう痛まないはずですがどうですか?」

その言葉通り、立ちあがっても痛みは無かった。

「本当、ぜんぜん痛まない・・・・・ありがとうございました。」

「当たり前のことをしたまでです。それよりも速く避難・・・・・」

言葉を言い終わる前に気配をした方角に上着の中に仕込んであった暗器の飛針を放つ。それは真っ直ぐに飛び、

ちょうどビルの影から出てきたバッタの頭部に突き刺さり、そのバッタは動かなくなった。しかし、気配は

自分達の周りに少なくとも20以上存在が確認できる。どうやら囲まれてしまったようだ。

「(残り9本か、さてどうしたものか)」

自分だけなら確実に生き残れる。しかし後ろに居る親子も一緒となるとこの装備では心もとない。

いっそうのこと『戦神』となって全てを消し去ろうかと言った考えが浮かびかけた時、新しく五つほど

気配が加わる。敵の増援かと思われたが、気配の数が減っていくのを感じて自分達の援軍だと悟った。

「どうやら味方の援軍が来たみたいですね。」

「「本当ですか!!!」」

「ええ、直ぐに来ると思いますが・・・・・」

再び気配のした方向に投げる。今度も見事に敵に突き刺さった。

「それまで、こいつらと戯れておきましょうか。」

援軍が到着したのは、彼が最後の飛針を投げ終えた後だった。






エステバリスのパイロット、スバルリョーコ、アマノヒカル、マキイズミ、イツキカザマは今日のことを後に

『自分が生きてきた内であれほど驚いたことは無かった』と後に語った。

出撃命令が出て、宇宙に出て見たものは、圧倒的な数でこちらにやってくる蜥蜴の集団だった。その数は500を

下らないと思われた。この状況下において逃げ出しても誰も文句は言わないだろう。だが彼女達は逃げることなく

1機でも中に侵入するのを防ぐために戦い続けた。が、その圧倒的な数の前に押され皆死を覚悟した時、後方から

現れた漆黒の機体が戦況を逆転さした。漆黒の機体、ブラックサレナの圧倒的な力とアキトの腕により集団は全て

宇宙に咲く花と化す。その後、サレナの後に続き中に入り町を破壊する奴らをしらみつぶしにしていく。その途中に

鋭利な刃物で切られた残骸を多く見つけた。四人が不思議に思っていたとき前方に約40機に囲まれた中に三つ

生命反応を見つけ、急いで救助に向った。その場で彼女達は取り残された人の内片手に刃物を持った男が残された

最後の1機を飛び道具を使って沈黙さてたのを目撃する。証拠は無い、ただ直感で先ほどの残骸は彼の仕業だと悟った。

「明、大丈夫だったか。」

サレナからアキトが飛び降り明の元に行く。ちなみにアキトのパイロットスーツはあのゴッツイのでは無く、琥珀が設計した

新しいGキャンセラーが取りつけられたことにより必要が無くなり、バイザーに黒マントの状況だった。

「アキトさん、援軍助かりました。正直言ってきつかったんですよ。さっき投げたのが最後の一本でしたから。」

「別に礼を言わなくても言いよ。・・・・・なあ、途中に有ったあの残骸は・・・・・」

「俺が切ったものです。何か問題が有りましたか?」

「いや、相変わらず人間離れしているよな。お前は。」

アキトの一言に苦笑する。ただ、どこか寂しそうな光が瞳の中に混じっていることに誰も気がついていなかった。

「あの、守っていただいてありがとうございました。本当になんとお礼を言って良いのか」

そう言い親子そろって頭を下げる。

「別に、人を助けるのは当たり前のことですから。お気になさらず」

「しかし・・・・・・」

「あの・・・・・名前教えてくれませんか?」

「天河 明。それが俺の名前」

「天河さん、その・・・・・又お会いできますか?」

頬を少し赤く染めながら上目ずかいでそう聞いてくる。それを見て熱でもあるのかなと場違いなことを思いつつ、

「・・・・・縁があれば何処かで会うことも有るでしょう。」

と答える。後に言葉通りに二人は再開することになるがそれはまた別のお話。

「その時声をかけても良いですか?」

「構いません。」

そう返事を聞くととても嬉しそうに微笑む。彼女が明がこの世界に来て虜にした最初の人物になった。

その後、その親子は父親からの迎いが来てもう一度礼を言った後去っていった。結局名前を聞かなかったが、

明は『守れた』と言う満足感で一杯だった。

「なあ、明」

「何ですか?」

「お前さ、いい加減戻らなくちゃ行けなくないか?」

「・・・・・はっ!!!!!」

確かに襲撃のことはナデシコにも伝わっているだろう。きっと今ごろ血眼になって探しているに違いない。

「・・・・・プロスさん怒っていなければ良いな。」

「・・・・・・・・・(汗)」

全身から冷や汗が滝のように流れ出てくる。

その後はアキトに任せ急いで帰ったものの、きっちりプロスに絞られた明だった。






後書き

エステバリスの三人娘登場・・・・・・でも台詞が無い(汗)

しかも見せ場も無い(大汗)・・・・・・ごめんなさい。

・・・・・まあ、人生には居直りが大切だとどこぞの人も言っていたようないないような。

と言う訳で次回はいきなりぶっ飛ばして火星のお話でも書こうかと思っています(思っているだけ)。

それではまだ次回にお会いしましょう。

・・・・・これって、後書きになるのかな?

 

 

代理人の感想

苦手な事がないって・・・・・小説の主人公には余り向かないタイプですな(苦笑)。

まぁ、主人公かどうかは微妙ですが。