輝ける未来を
第十四話
「・・・・又、夢の中か」

辺り一面は色とりどりの花で咲き乱れていた。一言で言うならばお花畑だ。

昨夜はいつも通りアキトの鍛錬をした後自室に戻り舞と少し話した後床についたまでは覚えている。

まさか何者かが自室に侵入して自分達に気付かれないようにして自分だけを拉致した挙句バーチャルルームに

連れてきたとは考えられない。と言うか考えたくない。もしそうであったら天河の剣士として失格だからだ。

「でも、これってどこかで見たことがあるような無いような・・・・」

「思い出せない?」

いつか聴いた声、決して忘れることの出来ない、もう聞くことの出来ない声がした方向に体ごと振り向く。

その先には、銀色の髪の美しい容姿の太陽と言うよりもむしろ月が似合う、そんな感じがする女性が立っていた。

「・・・・・命・・・・・なのか?」

「ええ、久しぶりね明斗。元気だった?」

「命」

おぼつかない足取りで、まるで夢遊病患者の様に彼女の前にまで移動する。

二人は見詰め合った後どちらからともなく抱き合う。二人の間に言葉は無い、いや言葉をかけることが無粋だった。

暫くお互いのぬくもりを感じ取った後、徐に明斗が口を開いた。

「・・・・・覚めなかったら良いのに」

「何、明斗?」

「・・・・・夢なら覚めなかったら良いのに。そうしたらずっとここで君と一緒に居られるのに」

「そうね、確かに覚めなければ私も貴方と一緒にここに居られることができる。

 でも、それは出来ない。覚めない夢は無い。そのことは貴方が一番知っている・・・・・そうでしょう?」

「わかってる・・・・・わかっているから余計にそう思えてくるんだ!!!」

明斗の心からの叫びの最後の方は嗚咽交じりだった。もはや恥とかは関係無い、今はひたすらに泣きたかった。

「あらあら、相変らず明斗は泣き虫なのね」

命はまるで母親が子供をあやすかのように優しく頭を撫でる。

「ねえ、明斗。私からお願いがあるんだけど聞いてくれない?」

「なに?」

「もう、私の・・・私達のことで苦しむのは止めて。私や皆が死んだのは貴方の所為じゃない、しかたのないことだったの。

 例え貴方がいたとしても、当時の貴方の力では私たちは救うことは出来なかった。だから、ね・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「それに、私達は死んでも誰一人貴方のことは恨んでなんかいないわ。むしろ貴方だけでも助かったことが嬉しいの。

 そう思えるほど私達は貴方のことを愛していたわ」

「俺だって、皆のことを愛していた。だからこそ助けられなかったことが余計に悔しいんだ!!!」

「今の貴方はあのころに比べて遥かに高くなった。そして貴方が自分にかけた封印をといた時さらに貴方は強くなる。

 だから封印をといて強くなりなさい、今度こそ貴方の愛した人達を守れるくらいに・・・・・」

話をしている内に彼女の体が段々透けてくのに明は気付いた。

「命!?嫌だ行かないでくれ!!!」

「ごめんね。私もこの世にいることはもう限界なの・・・・・ねえ、さよならを言う前にさっきのお願いの返事聞かせてくれない?」

「わかった、もう苦しまない。そして封印をとき強くなって見せる。今度こそ守れるように・・・・・約束する」

「ふふ、ありがとう。・・・さようなら、私の愛した最初で最後の人」

彼女は明の決意を聞くと微笑を最後に明の前から姿を消し去った。

そして明もどこかに引き寄せられる感じに身を任せ目を瞑った。







「艦長、遅いですね」

スクリーンから見える火星の風景、といっても赤い大地しか見えないがを見ながら

最近滅多に出番の無かった通信士のメグミ嬢がポツリとそう呟いた。

ちなみに現在ナデシコは火星にいた。前回の戦闘の後そのまま火星上空の敵を撃破し

グラビティーブラスト(重力制御は忘れずに)を放ち地表の敵は撃破していたので、

敵地のど真ん中でもこうしてのんびりしていられた。

「そう言えば確かに珍しいよね。艦長がミーティングに遅れるなんて」

「けっ、どうせ寝過ごしてるんだろ」

「リョーコ、いくらなんでもそれは無いよ。なんせあの艦長なんだよ?」

「・・・・・・・」

「旦那様、珍しいこともありますね」

「そうだね、ルリ君艦長と連絡取れる?」

「その必要はありません、艦長はこちらに向っています。人では考えられない速さで」

そう言うと指を三本たてた。

「三?何ですか?」

プロスの疑問に答えず、薬指を折る。

「に」

中指を折る。

「いち」

最後の人差し指を折り、そして・・・

「悪い、少し遅れた」

ルリが「ゼロ」と答えるのと同じに明がブリッジにかけこんできた。

「久しぶりに懐かしい夢を見て、なんかこう起きたくても起きられなかったと言うか起きたくなかったと言うか・・・

 そんな訳で、本当に申し分けない」

早口で喋り捲る明に皆唖然とした顔で見つめていた。

「あの艦長?」

「プロスさん申し訳ない。この通り謝るから説教だけは勘弁」

「本当、いったいどうしたんですか艦長?」

「はっ?どうしたって俺はいたっていつも通りだが?」

「「「「「「絶対嘘だ!!!!」」」」」

普段聞かれたことしか答えないほど寡黙な彼が自分から話をしているのを見てブリッジ内で一人を除き皆の声がハモった。

「明さ・・・・・明斗兄様!」

「「「「「・・・・・えっ?」」」」」

皆の視線が明から何時の間にかサブオペレーターの席から立ち上がり明に視線を向けていた琥珀に移った。

彼女の声には驚きと喜びが混じっていた。

「ああ、俺だ。久しぶりだな琥珀」

「はい、本当に・・・・2いや、3年ぶりです。何時こちらに?」

「ついさっき戻ってきた。いや、しかしいい女になったな。兄は嬉しいぞ」

「ええ、私がいい女になることは神話の時代から決まっていたことですから。今更手を出さなかったことを

 後悔しても遅いですからね。なんせ私はもう人妻なんですから」

盛り上がる二人を皆呆然とした顔で眺めていた。

「・・・・・なあ、琥珀。ちょっと良いか?」

「えっなに、あなた?」

「あれって、明だよな?」

「違います。あれは明さん兼明斗兄様です」

「・・・・・すまん、分かりやすく説明してくれ」

「そうですね、分かりやすく言えば明さんは明斗兄様のもう一つの人格だったんです」

「それって、艦長って二重人格だったの?」

「まあ、正確には違いますがそんなもんです。明斗兄様、兄様がこちらに出ていると言うことは、明さんはもしかして・・・・・」

「ああ、琥珀の思っている通りさ。だからこそここにいる琥珀以外の人たちが誰かが分かる」

明の、いや明斗の言った意味を正確に把握した琥珀は顔をうつむけた。

「まあそれはどこかに置いといて、いい加減ミーティングを始めようか。何せここは一応は敵の巣窟なんだからな」

今までの話は打ち切りとばかり強引に話を戻そうとする明斗。皆は一応言っていることは正しいので

しぶしぶミーティングの準備をする。

「これから三時間の間ナデシコはこの場で待機。四人娘は空戦フレームでネルガル研究所に偵察。

 アキトさんと琥珀、シズマさん、アヤカさん、アイちゃんと俺はユートピアコロニーに向かい生き残りの捜索および確保。

 ちなみにナデシコ防衛に一機も残さなかったのは現在敵は付近におらずここからコロニーまでは比較的近い。

 よって万が一の場合でもすぐに駆けつけることが出来る。これが理由。質問は?」

「納得できません!!!!」

明斗の意見に待ったをかけたのは、怒り露わで背後で炎が舞ってるルリだった。

「何処が?」

「どうしてアキトさんと琥珀さんが一緒に行動するんですか!!その行為は羊達の中に狼を入れるようなものです!!」

「・・・・・それの何処に問題があるんだ?」

「私のアキトさんが汚されてしまいます!!!」

妄想全開の彼女のこの問題発言が新たな闘争を引き起こした。

「ちょっとルリちゃん、それどう言う意味!!」

「言葉通りです。アキトさんは私の物ですから貴方の好きにはさせません」

「アキトさんは私の夫であるってこと、いい加減認めなさい!!」

「嫌です。そもそもどうして貴方なんかがアキトさんと結婚しているんですか!!納得できません!!!

 貴方なんかより私のほうがよっぽど付き合いが長いんですよ!!!今まで散々アプローチしてきたのに

 振り向いてもらうどころか、気付きもされなかったのに・・・・・やっと会えて今度こそ機会があると思っていたら

 ぱっとでの貴方なんかと結婚なんかしてるし・・・・・どうしてなんですか、アキトさん!!!!」

琥珀と言い争いをしていたのがいきなり話しを振られて答えに詰まるアキト。

まわりを見まわしてみるが皆黙って眺めているばかりだ。どうやら傍観することに決めたようだ。

「どうしてなんですか、アキトさん!!答えてください!!!」

「あの、いや、そのーーーーーー」

「そんなの簡単じゃない」

「何が簡単なんですか!!と言うか琥珀さんは黙ってください」

「いいえ、言わせてもらうわ。アキトさん、夫は世間一般で『つるぺた萌えーーー』と言われているような

 マニアックな趣味は持ち合わせていなかった。ただこれだけよ」

琥珀の一撃がルリの胸をおもいっきりえぐる。ダメージに換算するならば、99,999と言ったところか。

よろめきながらオペレーターの席に座り「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ」

と怪しげな言葉を連呼し始める。このまま行けばどこぞの少年が行った『永遠の世界』に行ってしまう勢いだ。

対してその姿を眺めている琥珀は勝ち誇った笑みを浮かべていた。

「・・・・・まあとりあえず、他に質問のある人は?」

その言葉に誰一人として答える者はいなかった・・・と言うか、言おうにも琥珀が発している「これ以上言う奴は殺るぞ」

と言った感じのオーラが室内を満たしているので、自分達は声を出しているつもりが実際には肺から空気のみ発していた。

「まあ、とりあえずはこの案で行くとする、皆解散」

この一言でこの場から離れられることに安堵のため息をつき皆自分の持ち場に帰っていった。






ナデシコを出て30分後、テンカワファミリー+2(明斗と舞)は一般のよりやや広い家、アキト達の家の目の前に立っていた。

ちなみにどうして皆がここにいるかと言うと、今回彼らの目的は避難民の救出ではなく我が家の大掃除にあった。

綺麗好きのアヤカにとって汚いままにしている我が家をほおって置くことができず前から明斗に申請していたのだ。

無論ここら一帯はスキャンしている。その結果人っ子一人いないことは確認されていたので問題ナッシングだ。

「本当、久しぶりの我が家だな」

「そうですね、シズマさん」

感慨深げにそう呟くシズマとアヤカ。まあ、二人にとっては約10年ぶりなのだから仕方が無いと言えば仕方の無いことか。

「ここがお兄ちゃんの家なんだ。おっきいんだね」

「そうさ、そしてこれからはアイちゃんの家になるんだよ」

「もちろん、私の部屋はあなたと一緒よね」

腕に抱きつきながらそう聞いてくる琥珀に対し頬を赤く染めそっぽを向きつつ「ああ、そうだな」と小さく答える。

その態度に満足したのかさらに強く抱きつく。胸が押しつぶされて形が変わるくらいに。

「しかし、チューリップが落ちたのに良く無事だったな」

「ここはコロニーの中心から離れてるし、チューリップ自体もコロニーを直撃せずに少しずれたところに落ちたみたいだし

 多分その所為でしょう。それより早く中に入りましょう」

今や琥珀は遺跡の中に入ってお宝を探そうとするトレジャーハンターの気分だった。

「じゃあ俺は用事があるのでこの場で失礼します」

「あら、明君・・・・・じゃなかったええっと」

「ははは、俺のことは今まで通り明で良いですよ。さすがに『あきと』が二人もいたら呼ぶ時に困りますしね」

「じゃあ明君、用事ってなに?」

「・・・・・墓参りですよ。もっとも墓は無いですけど」

「・・・・・そう。ねえ、私達も行ってもいい?」

「どうしてです、アヤカさん達には全く縁の無い人なんですよ?」

「だって明君は私達の家族なんですもの。家族の一人に縁のある人は家族全体にも縁があるのよ」

((((・・・・・そうか?))))

「家族・・・・・か・・・・・」

(私達は今日から家族ね、よろしく明斗!)

「そう、ですね。わかりました案内しますから付いて来て下さい」





途中でお供え用の花を買い歩くこと20分程度、コロニーから少し外れたところにある小さな丘に来ていた。

明はこの小さな丘で最も日当たりのいいところに花を添えると手を合わせ祈り始める。それに倣い付いて来たアキトたちも

手を会わせ明のみが知る者へ冥福を祈る。

「彼女は、命はこの場所が一番のお気に入りでした。朝はこの場所に洗濯物を干し、夜涼しくなったら今この場に無い

 木にハンモックを掛けのんびりと飽きることなく空に浮かぶ星たちを眺め続けていました」

明が語り出すこの場にいる誰も知らない過去を皆聞き入っていた。

「一度聞いてみたんです『毎日眺めていて、良く飽きないな』って、そしたら『だってこんなに綺麗なんだよ。飽きる方がおかしいよ』

 って答えたんですよ。その気持ち今ではわかるようになったけど、当時は変わっているとしか思えませんでした」

それから明は色々なことを話した。



彼女が何処で生まれたのか



自分と会うまでどのような暮らしをしてきたのか



彼女が好きだった物、嫌いだった物



彼女が引取って育てていた孤児達の名前



そんな皆が引き起こす日常のちょっとしたハプニング



決して裕福ではなかったがそれでも笑顔であふれていた、幸せだった生活



そして・・・・・・・終焉

「当時銀河系は二つの勢力に分かれていて、そしてここ火星は戦場の最前戦でした。1日に1万人以上の人が宇宙の塵となっていく

 ことがざらにありました。下級の兵達が無駄に死んでいくのに上の奴らは戦争を一向に止めようとしなかった。だから当時

 火星の最高司令官だった人と共に俺は地球に行き和平を進言しに行ったんです。だけど、それは少し遅かった。

 奴らは火星に敵主力が集まりつつあることを知ると、火星の人達を見殺しにして月面から200発以上の核を撃ち込んだんです」

「・・・・・酷い」

アヤカは口を押さえながら搾り出すようにそう言った。いやアヤカだけではない、聞いていたみながそう思っていたが

口に出さないだけであり、現にシズマとアキトは唇を噛みその非人道的な行為に怒りで手を震わせていた。

「その話を聞いてすぐにここへ帰ってきましたが、あったのは微かにここに家があったというぐらいでした。

 それから約半年をかけ火星中を探し続けましたが誰一人生きて会うどころか死体すら出てきませんでした」

「それで、その後はどうしたんだい?」

「その後単身本部に行き・・・・・この決断を下した奴らを殺してくれと言うまで散々嬲った後、殺しました。

 やがて正気に戻った時、怒り・悲しみ・憎悪・嫌悪など色々な感情に押しつぶされ、力を使い自分を2つに分け

 そいつに全てを押し付け俺は自分の力と共に心を閉ざしたんです」

こんな辛い過去を背負ったこの少年に一体何を言って慰めたら良いのか分からない。

そんな自分達の無力さをひしひしと感じつつただ黙って次の言葉を待つ。

「それでもって、今日になっていきなり明の奴が俺のところにやってきて『いつまで逃げているつもりだ?この軟弱者』

 って言ってきたんです。初対面の奴に軟弱者呼ばわりするなんて酷いと思いませんか?だからそう言い返してやったら

 『辛い現実に目をそらしたままいつまでも逃げている奴に軟弱者と言って何が悪い』って言うから頭に来てさ、

 後は二人で互いを罵り合ってたんです。で、そんなこと永遠にやってたらなんか自分のやっていたことがバカらしく思えて

 命の話を聞いて、帰らなきゃって思って後は再び力を使い明の記憶と力を吸収してこの世界に返ってきたんです」

明はつけていた眼鏡とコンタクトを外しアキト達の方へ振り向く。

「・・・・・両目とも、紫金色」

「これが本当の俺の姿なんです。そしてこれらはもう必要ない」

手に力をこめ眼鏡とコンタクトを粉砕する。

「さあもうそろそろ帰って、気合入れて家の掃除をしましょうか」

「「「「「おう!!!」」」」」

明の気合の篭った元気で明るい声につられて大きな声で返したことに思わず吹き出した。

そこにはもう先ほどの暗い雰囲気はいっそうされ明るい笑い声が支配していた。

明は思う。命に代えてもこの家族達の笑顔は失わさせない、今度こそは守ってみせると・・・・・






「命、もう君達のことで苦しまない。でも思い続けるのは良いよな?」





後書き

本当にお久しぶりです、へっぽこ作家のakiraです。

速いものでもう8月ですね、ああ・・・・・大学受験が迫ってくる(泣)

はっきり言って学力的に余り良くない私がこんな所でこんなことをしていて良いのだろうかとちょっぴり不安に思ってます。

まあ、そんなこんなで又暫くの間投降できなくなると思いますが、どうか見捨てないでください。

それではこれにて、さーーよーーならーーーー




 

代理人の感想

あ〜。

内容云々以前に文章がかなり気になります。

例によって気付いた所は修正してありますが、

てにをはの間違い、誤字脱字はかなりのもの。

冗談抜きで洗脳探偵翡翠レベルです。

 

てにをは以外でも文章の間違いも多く、例を上げるなら

 

>ちなみにどうして皆がここにいるかと言うと、今回彼らの目的は避難民の救出ではなく我が家の大掃除にあった。

 

「どうしてここにいるかというと」から繋がっているのに文末が「目的は大掃除にあった」では不自然です。

この場合、文末は「目的が大掃除にあったからである」とか

「目的は大掃除にあったのだった」等でなければいけません。

 

>今この場に無い木にハンモックを

「昔あった木はもうない」と言う意味で使っているのだと思いますがこれも間違いです。

「今はもうこの場にない」としなければいけません。

「今この場にない」だけだと現在の事についてのみ言及していますので

読み方によっては「未来においては存在する予定」というニュアンスにもなってしまいます。

勿論、普通は樹木に対して使うような表現でない事は言うまでもありません。

 

最後に言ってしまいますが、akiraさんは現国の教科書に載っているような、

「日本語として正しい」文章を読んで勉強する必要があるかと思われます。

頑張って下さい。