機動戦艦ナデシコ 新たなる目覚め
  第三章 アテナ流『復讐』のススメ


 何で?何でこの人が今ここにいるの?
「あの〜貴方がパイロットなのですか?」
『そうだ。プロスに聞いていないのか?』
 どうして?あの人は死んだ筈。最後にジャンプして……
「そうなんですか?」
「そうなのです。いや〜貴方を雇って正解でしたな〜」
『世辞はいい。早く作戦を伝えろ』
「う〜ん…テンカワ、テンカワ…………」
 ダメ。もう我慢できない。
 私は素早くエステバリスのコクピットに通信を繋げます。
『何だ?』
「何故、貴方がここにいるのですかthe prince of darkness!」
 冷静のつもりでしたが全然ダメです。まさか、怒鳴っちゃうなんて。
「姉さん?」
「お姉ちゃん?」
 ルリとラピスが驚くのも無理ないよね。
『何者だ?』
 微かに殺気を向けられているのは理解出来た。気付いたのはプロスさんとゴート・ホーリーさんぐらいなものだろう。
「アテナ・グリフィス。サブオペレーター兼パイロット兼その他色々」
 簡潔に自己紹介します。
 とりあえず、一度怒鳴った事によって落ち着きました。
「貴方の事は後にします。とりあえずは目の前に敵を殲滅しましょう。
 敵の三割までは許可します。それ以上はナデシコの力を示す為に残して置いて下さい」
『それを俺にやれ、と?』
「出来ないとは言わせませんよ。例えその機体でも出来るでしょう?」
 私でも出来ますからね。
『……了解した。時間は?』
「十分後にこの地点で合流します。ではよろしくお願いします」
 通信を切って一息吐きます。皆さんが私に注目しているのは分かりますが、気にしない方針で行きましょう。
「姉さん……」
「お姉ちゃん……」
 無理。この二人を無視するのは神が許しても私が許さない。とは言え話す事が出来ないのも事実な訳で。
「ごめん。今は何も聞かないで」
「はい、分かりました」
「ん、りょーかいだよ」
「ありがと」
 二人に笑みを向けてから、私は席を立ち艦長に顔を向けます。
「ミスマル・ユリカさん」
「ん?なに?えっと」
「アテナ・グリフィスです」
「じゃあアテナちゃん。あ、私の事はユリカでいいよ」
「……ミスマル・ユリカさん」
「アテナちゃん?」
 今機嫌悪いのです。
「……まあいいや。それで、どうしたの?」
「念の為私はカリバーで待機しています。許可を」
「え?カリバー?」
 艦長なのに知らないのですか?
「私個人用のエステバリスです。艦長なら自分の艦の事ぐらい把握しておいて下さい」
「え、えっと、ごめんなさい」
「ねぇねぇ、何かアテナちゃん急に機嫌悪くなってないですか?」
「きっとあれね。さっきの男の人の所為だね」
 聞こえた声は全部無視します。
「それで、許可は?」
「あ、はい、許可しまーす」
 その言葉に軽く頭を下げて、ブリッジを出て行きます。
「あー!アキトアキトアキトアキトアキトアキトアキト!!」
 何を切っ掛けに思い出したか知りませんが、うるさいですね。早く格納庫に逃げましょう。


 結論から言えば私は必要ありませんでした。ま、当たり前の事ではあるんですよね。格納庫に着いたと同時に戦闘終了。
 私はブリッジに戻らないでここで彼を待つつもりでした。色々と内緒話をしたいですからね。でも、問題が発生しました。ブリッジ主要メンバーで彼をお出迎え。う〜ん、いいのかなこれで?
 妹達がここにいないのに気付いて、私はブリッジに戻る事に。
 彼と話したかったですけど、時間はありますし、彼の方から接触してくるでしょうしね。焦らずのんびり行きましょう。
「ただいまルリ、ラピス」
「おかえりなさい」
「おかえりお姉ちゃん!」
 二人に挨拶して席に着きます。
「戦闘後の処理終わってる?」
「いえ、まだです。なにせ初めてですから」
「めんどくさいの」
 膨れるラピスの頭に手を伸ばします。
「じゃあ手伝うから早く終わらせようか」
「良かったのかアテナ君?」
 あ、提督もいらっしゃったのですか。気配も感じられなかったです。
「何がです?」
「彼に用事があったのではないのかね?」
 ああ、それね。
「いいんです。どうせ同じ戦艦に乗っているんです。そのうち会えるでしょう」
 それに考えてみたら私から出向く必要も無いですし。
「ふむ」
「それに妹達が仕事しているのに怠ける訳にはいきませんからね」
 最初に怠けようとした事は忘れて、ここにいないブリッジメンバーを責めてみました。
「確かにそうだな」
 あら、流石は提督。分かりますか。ルリとラピスは分かっていない様で仲良く首を傾げているけど、説明しないで提督を相手にしましょう。それにしても二人の妖精は可愛いね。
「ちゃんと撮れてる?」
 誰にも見えないようにし、オモイカネと内緒話。
『勿論です。画質も最良です』
「後で私の秘密ファイルにね」
『私も見ていいのですよね?』
「ええ」
『あいあいさー』
 私は少女なんだけどね。まあいいや。とりあえずこれで大丈夫。
「特に艦長と副艦長です。学校を出ているのですよね。それも主席と次席で」
「うむ。その筈だと記憶している」
「一体何を習ったのでしょう?」
「さあのう」
『ミスマルの名前に手を抜いたのでは無いでしょうか?』
 オモイカネも言うわね。
「可能性はある。しかし、先程のを見た限りではなんとも」
「ですが、さっきのはあれ以外に対処法が無いのでは?」
 あら?ルリも参加?
「オモイカネもあれだけって言ってる」
 ラピスまでも?
「ふむ。まあ、艦長の実力はおいおい分かるだろう」
「そうですね。問題は副艦長ですね」
『彼に後ろ盾はありません。完全に実力の筈』
 副艦長のプロフィールと共にオモイカネの言葉。
「じゃあ何ででしょう?」
「何で?」
 まあ、この子達じゃこの辺が限界ね。
「君達にはまだ早いだろう」
「そうだね。ここで察しが良かったら、お姉ちゃんちょっと悲しいかな」
「ほう?アテナ君は分かっているのか」
 当たり前です。
「勿論です。なにせ『お姉ちゃん』ですから」
『アテナは物知り』
 それはちょっと違うかな。
「姉さんどういう事ですか?」
 ん?気になるんだ。
「簡単な事だよ。副艦長は艦長が好きだから、艦長の後ろにいつもいるの」
「ストーカー?」
 それは流石に酷いんじゃないかなラピス?
「でも、それで仕事しないのは違いませんか?」
「そうなんだけどね。本当戦艦らしくないよねここ」
 その方がいいんだけどね。
『民間だから?』
「さあのう」
 …………あ、もしかして。
「何か思い至るのがあるのか?」
「ええ、まあ、一応」
 ラピスをちらっと見ると、ばっちり目が合っちゃいました。
「あ!」
 ラピスも思い至ったのね。
「どうしたのですかラピス?」
「え、えっと、お姉ちゃん」
 しょうがないわね。
「この艦のスタッフの殆どはプロスさんが集めたんですよ」
「ふむ」
「それで、その時のモットーが『腕が一流ならその他は問わない』だそうで……」
『………………』
 痛い。沈黙が果てしなく痛い。
「それだな」
「でしょうね」
『ですね』
「あ、あはははは」
 これは笑うしかないよ〜
『それよりアテナ』
 ん?オモイカネ?
『いつまでやるのですか?』
 え?あ。
「ごめん。色々書きすぎたね。今消すから」
「どうしたのお姉ちゃん?」
「間違えて今の会話も報告書に書いてたの」
「え?姉さん会話しながらやっていたのですか?」
 そんなに驚く事?
「そうだよ」
「ほう」
「お姉ちゃん凄い」
「そうかな?」
 大した事してないじゃん。
「こんなの多重思考の応用みたいな感じじゃん」
『………………』
 あれ?
『アテナ。それが凄いのです』
 そうなの?
「なかなか稀有な能力だの」
 いえ、技術ですから。
「姉さん凄すぎです」
 ルリも出来ると思うよ?
「お姉ちゃん凄い」
 なんかラピスの目がキラキラしてるよ。
「それよりフクベ・ジンさん。とりあえず今は太平洋を横断しようとしているのですが、良かったのでしょうか?」
 目的地は知っているけど、それは内緒です。
「姉さんそんな事まで」
 いつまでもあそこにいる訳にはいかないでしょ。
「問題無い」
「そうですか。ならいいです」
『アテナ。艦長達戻ってくるみたいだよ』
 やっと?本当に自覚ないね。
「艦長達が戻ってきたら、君達は休憩に行って来なさい」
「いいんですか?」
「今迄働いていたんだ。文句は出まい」
 確かにそうですけど、殆ど雑談だったような。
「でも、提督は?」
「気にしなくてよい」
 そう言うならそうしましょう。
「オモイカネ。さっきの黒い人も来るの?」
 ラピス?
『黒い人、テンカワ・アキトさんですね。ええ、一緒にこっちに向ってますよ』
「ありがとう。
 フクベさん。お姉ちゃん連れて先に休憩行っちゃダメ?」
「ラピス?」
 ルリの呼び掛けにも応答無しですか。
「理由を聞こう」
「お姉ちゃんを盗られそう」
 はい?
「あ、それは分かります。と言う訳で提督。私からもお願いします」
 私を盗られそうって。
「ふっふふふ」
「姉さん?」
「お姉ちゃん?」
 不思議そうな顔をしている妹達と、優しそうな微笑を浮かべた提督を見ながら、私は少しの間この幸福感に身を浸す事にしました。
「ごめんね。急に笑いだして」
「それはいいのですが、理由を教えて頂けませんか?」
 ラピスもコクコクっと頷いているし。
「流石姉妹だなってね」
「え?」
「私も同じ事考えてたの。あの人にルリとラピスを盗られそうだなって」
 きょとんとした顔が二つ。あーもー、本当に可愛いな。
「私とラピスが?」
 オモイカネの動作確認をしながらルリに頷く。
「お姉ちゃんそれ酷い」
「そうです姉さん。なんでそんな事言うのですか」
 自分達はいいのですか。
「貴方達も同じ事言ったでしょ」
 苦笑しながら椅子から降りて二人に近付きます。
「大丈夫、安心して。貴方達をあんな人に盗られないようにお姉ちゃん二人を護るし、お姉ちゃんもあんな人なんかに盗られたりしないからね」
 二人をひしっと抱き締めて言ってあげました。
『あの、大変いいところですみませんが』
 何オモイカネ。邪魔しないでよ。
『もう来ますよ。艦長達』
 何?
「ブリッジを留守にしてすみません」
 くっ、なんてタイミングが悪い。
「おやおや?アテナちゃん達は何をしているのかな?」
 うるさいですハルカ・ミナトさん。
「姉妹の絆を再確認していただけです」
 そして、一番後ろにいた人を見付けました。
「ラピス…………」
 やっぱりあの人なんですね。誰にも気付かれない様に呟いたつもりでしょうけど、私には聞こえていますよ。
「さて、一応アテナさん達に自己紹介して頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
 拒否する理由が見当たりません。
「ホシノ・ルリ、メインオペレーターです」
「ラピス・ラズリ。火気管制とサブオペレーター」
 あれ?なんで二人が私を庇う様に前に出るの?
「ルリルリにラピラピどうしたの?」
「気にしないで下さい」
「なの」
 まったくもう。
「二人とも、大丈夫だから、ね?」
 二人に笑いかけてから、彼と対峙します。
「改めて初めまして。アテナ・グリフィス。サブオペレーター兼パイロット兼その他色々です。
 先程はご苦労様でした」
「テンカワ・アキト、パイロットだ。
 別に大した事はやっていない」
 でしょうね。
「ちょっとアキト!アテナちゃんとどういう関係なの?浮気なんかしたらユリカ怒っちゃうんだから!ぷんぷん!」
 何勝手な事言っているんでしょうねこのダメ艦長は。
「彼女とは初対面だ」
「えー?でも、アテナちゃんの方はアキトさんを知っているみたいですよ?」
 流石、天然スケコマシ。もうメグミ・レイナードさんを落としましたか。黒くなってそっちのレベルも上がったりしたのでしょうかね?
「私もその人とは初対面ですよ。ただ、少しばかりか彼の事を知っているだけです」
 本当は少しじゃなくって全部なんだけどね。
「それよりも艦長。彼女達に休憩を出してあげたまえ」
 いいタイミングです提督。
「はあ、それはいいのですけど、何ででしょう?」
「君達がいない間も仕事をしていたのだ。当たり前だろう?」
「あ、あははは、ごゆっくり〜」
 これが誤魔化し笑いね。
「姉さん行きましょう」
「行こうお姉ちゃん」
 あれれ?ちょっと二人とも?何で私を引きずって行くの?
『ドナドナ?』
 ああ、オモイカネの成長速度が速くって嬉しいな〜(涙)

 それにしても、
「良かったのかな?」
「何が?」
 いつもと違って今日は私が真ん中にいて、ラピスは左、ルリは右にいる状況で、私は二人を連れて(二人に連行されてとも言うかな?)三人で仲良く通路を歩いています。
「オペレーターが全員ブリッジを離れる事」
『あ』
「確かに私達がいなくても動いたり、戦ったり出来るけど、私達がいる時の半分位でしょう?皆分かっているのかな?」
 少なくても提督とプロスさんは理解していそうなんだけどね。反対にキノコと艦長は分かっていななそう。
「お姉ちゃんは気にしすぎだよ」
「そうかな?」
「そうです。それに提案したのも許可したのも向こうです。何かあったら向こうの所為ですよ」
 それはそうなんだけどね。
「でも、それでこの艦が落ちたら嫌じゃない?」
『………………(汗)』
 常に最悪の状況は認識しておかなきゃね。
「じゃあお姉ちゃんは戻るの?」
 いや、まさか。
「ううん。そんな事しないよ?」
『え?』
 まあ、驚くよね。
「それじゃあ姉さん。今迄のは?」
「ん?ただの現状認識」
 例の契約、プロスさんを黙らせるにはもうちょっとかな?
「いいのですか?戻らなくって」
「大丈夫じゃないかな?今の段階でそこまで躍起になってナデシコを落とそうなんて思わないと思うよ」
 それを聞いて安心した様な顔をするけど、ただの推論だよ?
 それより後ろの人は何やっているのでしょう?
「すまない」
「なんの用でしょうか?」
 即座に返事した事に少し驚いた様ですね。背中越しでもそれ位は分かります。それにしてもそれ位で気配を消したつもりでしょうか?
「え?」
「テンカワ・アキトさん?」
 ラピスとルリは十分驚かせたようですね。
 振り返って彼を見ると、二人の姿に随分と複雑そうな顔をしていますね。その二人に向ける視線は不快です。
「用事が無いなら行きますよ?」
「あ、ああ、すまない。アテナ・グリフィスだったよな。君と二人だけで少しばかりか話がしたい」
 そう言った瞬間ルリとラピスが私と彼の間に立ちました。
『姉さん(お姉ちゃん)は渡さない!』
 言われた彼は結構困惑気味ですね。いい気味です(邪笑)
「二人とも大丈夫だって」
『でも』
 まったく誰に似てこんな頑固になったのやら。
「何かされそうになったら思いっきり殴るから安心して。私は強いでしょ?」
「うん」
「そこまで言うなら」
 本当に可愛いんだから。
 交互に頭を撫でてあげて、最後に一言。
「先に食堂に行っててね」
『うん』
 二人が仲良く食堂に行くのを見届けてから、隣にいる黒い人が口を開きました。
「かなり仲がいいんだな」
「ルリのあんな顔は早いですか?」
「…………君は?」
 問い掛けは無視して、歩き出しました。
「お、おい」
「二人だけで内緒話したいのでしょう?それならこっちです」
 歩きながらプロスさんのコミニュケに連絡します。
『どうしましたか?』
「すみませんが少しの間会議室を貸して頂けますか?」
『一応使用目的を教えて頂けますか?』
 ん〜嘘を吐く必要は無いよね。
「テンカワ・アキトさんと話をする為です」
『おや?つまり内緒話ですか?』
「みたいです」
 話が早くて助かります。
『まあ、他ならないアテナさんの頼みですから許可しましょう』
「ありがとうございます」
『いえいえ、気にしないで下さい』
 きっと覗く気ですね。
「使い終わったら連絡しますね。それと」
『はい?』
「覗き見は出来ませんから、あしからず」
 それだけ言ってさっさと切りました。これ以上余計な詮索は面倒ですものね。
「いいのか?」
「あら?聞かれたいのですか?」
「…………」
 無意味な問いはあまり好きではありませんよ?
「君は頭がいいみたいだな」
「MCですからね。ルリだってそうじゃないですか」
「だがラピスは……」
 あのですね、
「幾らMCといえども教えられない事は憶えられませんよ?」
「……そうか」
 会話はこれっきり。会議室までお互いに口を開く事はありませんでした。


「それで、一体何を聞きたいのですか?」
 折角ですので雰囲気を出す為に部屋は暗くして、対面に座ってみました。とは言うもののお互いに見えている筈なので無意味なのですが。
「君は何者なんだ?」
 正直に言うのはつまらないよね?
「先程言いませんでしたか?」
「本質のところを聞きたい」
「そう言われましたら今の貴方は何て答えますか?」
「………………」
 沈黙ですか。
「思った通り過ぎますね。少しは芸を見せて下さい」
 空気が少し変わりましたね。
「怒りましたか?そういう所は変わらないのですね」
「何者だ?」
 悪ふざけもこれ位にしますか。
「その前に質問」
「…………何だ?」
「その体、この時代のものですよね?」
 どう見ても復讐鬼時代の体付きには見えないよね。
「……そうだ」
「その服とバイザーとその他諸々の装備品以外で何か一緒に跳んできた物はありますか?」
「ない」
 どういうことでしょう?
「嘘は吐いていないみたいですし」
「何故俺が嘘を吐いていないと?」
「私は貴方と同等か、もしくは貴方以上に貴方の事を知っている。ただそれだけの事です」
「何?」
 ちょっと外野は無視しましょう。
「でも、精神だけ跳んで来たなら話は早いのですが、いえ、それだけでも大したものですよね。経験豊富な彼だったからですかね?いや、それよりも何故精神だけなのに装備類も一緒に?精神故に彼を彼たらしめる物も一緒に跳んだ?
 でも、それならサレナも一緒じゃないのはおかしい。まだ見付かっていないだけでちゃんとこの時代に?」
「おい」
「それとも…………そうですね。彼女もオモイカネ級AIその可能性は無きにしも在らずってところね。その様な事確かに思っていた訳だし」
「おい!」
「え?あ、はい、なんでしょう?」
 いけないいけない。思わず考え込んじゃった。
「どういう事だ?」
「今のですか?ただ貴方のジャンプの理論を考えていただけです」
「理論を?」
 幾ら考えても答えが出る訳じゃないけどね。
「気にしないで。それよりもう一つ質問。貴方がここに来たのはついさっきの事ね?」
「ああ」
 やっぱりね。これは彼を知る者なら誰しもが分かる事でしょうね。彼ならあの結果を違うものにしたい筈。それなのに今の所『私』以外に変化が無いって事はそうなんじゃないかなって思っていたんです。
「それで、私の事でしたよね。ここまで考える時間はあった筈ですよね?貴方の推論聞かせて貰えませんか?」
 普通に言うのはつまらないですからね。
「…………俺と同じ位しか想像つかん」
 つまらない。
「……ある人の言葉を借りるなら、幾ら違う雰囲気を纏おうとも、頭の悪さは隠せない、みたいな?」
 瞬間凄い殺気を叩きつけられました。これには流石にビックリ。
「何者だ?」
 何度目かの問いは混ざりっ気無しの殺気と共に言われました。
「そうですね。少なくても『逆行者』では無いですよ。この体はこの時代の者です」
 でも、それ位じゃ驚くだけですよ?
「なら何故」
 少し殺気が抑えられましたね。
「ん〜ヒント。私の体には貴方と同じく、あ、今は同じだったですね。まあ、ともかく、『遺跡』のナノマシンが生息(?)しています」
「…………まさか」
 思い至った様ですね。
「イネスに聞いた事はあるが、『共振』か?」
 なんだ、自力じゃないんだ。
「その様ですね。私の場合は数ヶ月前でしたが、一ヶ月程強制睡眠を取らされまして、夢をいう形でこの戦争から貴方の最後までの歴史を各々の視点で、想いで見させられました」
「各々の視点と想い?」
「そうです。大半は貴方のでしたけどね」
「なるほど。だから俺と同等か俺以上な訳か」
 納得していただき感謝します。
「ですが、それに伴い色々な副作用がありました」
「副作用?」
「その視点になった人達全員の持っていた技術、知識、想いの継承と」
 一度言葉を切ってから反応を窺います。
「自身の記憶の損失」
 大分驚いたようですね。
「じゃあ、君は……」
「『私』としての記憶は無いに等しいです。変わりに色々の人の色々を継承して新しい『私』はいますけど。ちなみに土台は貴方ですよ?」
「俺が?」
「はい。言ったでしょう。大半が貴方だったって。だから貴方の影響を一番強く受けているのですよ?」
 何か少し考えている様ですね。
「だけど、あまり似ていないな」
「当たり前です。あくまでも一番強くであるだけです。貴方に色々な人の、あ、ちなみに木連側の人間もいますよ。まあ、つまり、貴方+その他色々の人=私なんです」
「そうか。だからラピスはここにいて、ルリちゃんもあんな顔をしているのか」
 まあ、そうなんですけど。
「それで、アテナちゃんは何故ナデシコに?」
 アテナ『ちゃん』?なんか寒気がしますね。
「アテナで結構です。
 それで、ナデシコに乗った訳ですが、私が知ってしまった未来と違うものにする為と、ルリに会う為」
 真っ直ぐに、バイザー越しに彼の目を睨みつけます。
「そして、貴方に対する復讐ですthe prince of darkness」
「どういう事だ?」
 殺気は無いものの目が大分険しいですね。
「どうもこうもありません。貴方は私の記憶が無い事に安堵したかもしれませんが、私が思い出せた記憶はあの研究所の人の事でした」
「それは……」
 今度は殺意と悲しみが混ざった様な顔をするのですね。
「貴方の知っている狭い世界で話をしないで下さい」
「何?」
「あそこの人達は……主任達は貴方が知っている研究者達と違って、良心的な人達でした」
「…………」
 声には出ませんが、驚いている様ですね。
「そんな、私に良くして下さった方達を、私は自身の手で殺してしまったのですよ!貴方の記憶の所為で!!」
「……!!」
 あの時の記憶が蘇ってきます。今でも時折夢で見るあの時と同じ、一切変わらない過去の記憶。
「これが八つ当たりだって分かっています!貴方に何の罪が無いのは理解しています!貴方と同じ目に遭えば私でもそうなってしまうと頭では分かっているんです!!
 でも、こうしないでいられない!こうしないと私は私を保てなくなってしまう!だから私は」
「もういい。もう分かったから」
 涙を流す事無く私は泣きました。流したくても流す涙が存在しない上に、悲しみも持続しないこの記憶は嫌いです。
「おまけに言いますが、貴方の所為で私は主任達の死に対して涙を流せない上に、悲しみも持続しないのです。悲しめて精々二、三分の事なのです」
「…………すまない」
「謝る必要はありません」
 そう。そんな必要は皆無に存在しない。
「それで俺の命を狙うのか?」
「まさか」
 さっきまでの雰囲気と一変して、鼻で笑い飛ばしました。
「それでは貴方と同じになってしまうではないですか」
「何?」
 私の雰囲気が変わった事に違和感を感じたのでしょうが、事この話題に関しては貴方の所為ですよ?
「私の復讐方法はわりとえぐいですよ?
 何も知らない貴方にルリとラピスを近づけて惹かれる様に仕向けつつ、彼女達は貴方では無く私の傍にいる様にする。ただそれだけの事です」
「……まさか、その為だけに」
「ふざけないで下さい」
 その言葉に対しては私は殺気をもって答えました。
「彼女達を利用する形になっただけでも私は私自身を殺したいのに、利用する為だけに近付いたとしたら私は今ここにこうして存在する事は無い筈です」
「……すまない。知らないとは言え君に対する侮辱だったな」
 私のはただの偽善の気がしますけどね。
「だけどそれも失敗。貴方がここにいるなんて想定の範囲外です」
「そうか。そいつは、まあ、残念だったな」
「貴方が言うと嫌味に聞こえます」
「すまない」
「気にする必要はありません」
 何故なら違う方法で貴方に復讐しますから(ニヤリ)
「それで、貴方はナデシコに乗った以上歴史の改変を行うのでしょう?」
「当たり前だ。あの歴史は酷すぎる」
 まあ、そう言うでしょうね。なにせ被害者なのでしから。
「そう。まあ、適当に頑張って下さい」
「……協力してくれないのか?」
 当たり前です。
「所詮私のは借り物の思い。本家本元がいるのでしたらその人にその道を譲ります。ただし、私は貴方の記憶を参考に行動しますけど」
「そうか」
「まあ、一人で全部やれって言うのも酷い話ではあるので、多少は協力します」
「本当か?」
 何でそこで疑うのですか。
「ええ。貴方一人で本当にどうしようもない時は言って下さい。もしかしたら協力します」
 あくまでも『もしかしたら』ですけどね。
「助かる」
 その言葉後で後悔するかもしれませんよ?
「ルリ達も待っている事だし、私はそろそろ行きますよ」
「……何故、この場所を借りるとわざわざプロスに言ったんだ?」
 私が外に出ようとした直前にその問いを掛けられました。それにしてもようやくそれを聞いてくださいましたか。
「その方が自然にブリッジの方全員に伝わるじゃないですか」
「……まさか!?」
 あら?思ったよりも気付くのが早いね。
「オモイカネの生中継、楽しみにしていますよ」
「…………君は俺が嫌いなのか?」
 そこにも気付いたのですか。でも、違いますよ。
「いいえ。そんな事ありませんよ?ただ」
 そこで振り向き、今の私が出来る極上の笑顔を浮かべて答えました。
「だいっ嫌いなだけです」
 そのまま振り返らずに食堂に向って駆け足。多分ルリ達の事だから食べないで待っているんだろうな。急がなきゃ。

「ごめん。お待たせ」
 食堂に着いてみれば案の定二人はまだ注文すらしていない状況でした。
「お姉ちゃん遅い」
「ごめんごめん」
 頬を膨らませているラピスを撫でて宥める。
「ルリもごめんね」
「いえ、姉さんが無事に来てくださっただけで十分です」
 無事にってどういう意味だろう?
「ありがと。じゃあ注文してこようか?」
「ラピスお姉ちゃんと一緒!」
 う〜ん、ラピスは私に依存しすぎな気がするよ。
「そうですね。私も姉さんと同じものにしたいと思います」
 ルリも?
「結構責任重大じゃない」
 やれやれ。どうしようかな?
 ピーピー
 ん?通信?プロスさんから?
「どうしました?」
『休憩中すみませんアテナさん。貴方だけでいいので戻ってきて頂けないでしょうか?』
 はあ。私的には全然構わない訳じゃないけど、構わない。けど、今後ろの妹達を見るのが怖いな。
「一応理由を聞かせて頂けますか?」
『問題発生、と言う事にして頂けませんか?』
 説明が面倒と?
「食べ物の持込って大丈夫でしたっけ?」
『ブリッジですか?特に禁止はしていませんが?』
 ふ〜ん、なら大丈夫かな?
「分かりました直ぐにとはいきませんが、なるべく早く行きます」
『すみませんがお願いします』
 さて、どうやって説得しようかな?
「と言う訳で私は行くけど、二人はどうする?」
「お姉ちゃん」
「………………」
 ラピスは一言で、ルリは無言で、私は不機嫌ですってアピールしていました。まあ、分からなくは無いんだけどね。
「一緒に行く?」
「ラピスお腹空いた」
「姉さんと食事」
 やっぱり手強いな。
「私が今からサンドウィッチ作るけどそれ持って一緒に行かない?」
『サンドウィッチ?』
 ダメかな?
『行く』
 自分で行っておいて何だけど、食べ物で釣られて欲しくは無かったな。

「お待たせしました」
 超特急で作ったサンドウィッチを持って、ご機嫌な二人を連れてブリッジに到着。
『待ってたよアテナちゃん!』
 はい?艦長と通信士?
「ちょっと待って下さい」
 一言断ってから、ルリとラピスを席まで連れて行ってサンドウィッチを渡します。
「それで何ですか?」
『さっきアキト(さん)と何話したの!?』
 あ、なるほど。これなら確かに説明が面倒ですね。黒い人はっと、困った顔していますね。これは利用するしかないですね。
「え、そ、それは」
 口に手を当てて軽く目を逸らします。勿論少し顔を赤くして。
『それは?』
 皆さん私に注目していますね。ちなみにこの様子は艦内全域に流していたり。
「わ、私の口からは…………」
 顔をもっと赤くして、声はどんどん小さくします。
『な!?』
 クスクスクス、確実に勘違いしたよね♪
「お、おい!何だその反応は!?」
「アキト!アテナちゃんに何を言ったの!?」
「アキトさん早くに言って下さい!」
 後はどうしようかな?
「待て!本当に俺は何も言っていない!」
 そんなに慌てたら折角の黒衣が台無しですよ?…………あ、今の所使えるかもしれないですね。
「だから「嘘だったのですか?」」
 彼の叫びにかぶせて、でもけして怒鳴らず、更なる問題発言をします。
「私に言って下さった言葉は嘘だったのですかアキト様?」
 顔を真っ赤にして、目には涙を溜めて、下から覗き込んで聞きます。おまけに様付け。勝ち決定です。
『なにーーーーーーーー!!!???」
 今のナデシコにおけるシンクロ率は99.99%かな?(勿論最後の0.01%は私)
 さて、ここからどうなるかな?
『殺す!!奴を殺すぞ!!!アテナちゃんを愛する同士よ!今立ち上がれ!!』
『うおおおおおおお!!!!!』
 人気者は辛いね。
「いやーー!!アキトを殺して私も死ぬ!!」
 あら、いい感じに壊れた?
「そんな…………アキトさんがロリコンだったなんて」
 それも真正のですよ。
「ルリ姉」
「何でしょうラピス?」
「社会的抹殺しよ」
「いい考えです。オモイカネも手伝って下さい」
『勿論』『任せて』『アテナの仇』
 怖いな。それとオモイカネ、私まだ生きてるよ?
「くっ!アテナ後で話がある!」
 あら?いつの間にそんな所に?でも、そんな事を言うと、
「そ、そんなアキト様。大勢の前でそんな事を……」
 火に油です♪
『うおおおおおお!!!!!奴を殺せ!!!!!』
『応!!!』
「ちっ!」
 彼がブリッジから出て行きました。そして私以外の人がそれを追い掛けていきました。
「なかなかの演技だのう」
「そうでもないですよ。全員騙せなかったんですから」
 一人お茶を啜っている提督の所まで行きます。
「お茶頂けますか?」
「構わんよ」
 サンドウィッチを食べながらお茶っていうのは合いませんね。
「それにしても君はどこに行っても人気者だな」
「不本意ではありますけどね。こういう時位ですよありがたいと思うのは」
 お互いに顔を見る事無く会話は続きます。
「それにしてもよく分かりましたね」
「君とはそれなりの付き合いだからのう」
 そうは言ってもまだ数ヶ月ですけどね。
「ラピスより短い筈ですよね」
「彼女はまだ幼いからのう」
 そこは肯定しますが、彼女はMC。多分気付いてはいると思う。でも、あえて乗って、この機に彼を亡き者にする気なんだろうな。
「で、彼は何者なのだね?」
「テンカワ・アキト、ナデシコ所属パイロット。それ以上でもそれ以下でもありませんよ」
「おや?あんな事をしておいてそれなのか?」
 そんなに意外ですか?
「何がそれなのかは判断付きかねますが、私はそれ以外に知りませんよ」
「the prince of darkness」
 しっかり憶えていますか。
「何の事ですか?」
「かっかっか!堂々と言い切りおるか、この小娘が」
 そこまで笑う事ですかね?
「私には良く分かりませんが?」
「『戦乙女』が何を言うか」
「それ、あまり好きじゃありません」
「諦めたまえ」
 大体なんで私が戦乙女なんでしょうね?
「はあ、パイロットになったのは失敗でしたかね」
「それだけで失敗と言うのはなかなか大物だのう」
 はあ、なんで提督は私だけだとこうなのでしょうね?
「まあ、いいですけど」
「何がかね?」
「気にしないで下さい。それよりも」
 残っているお茶を一気に飲み干します。
「いい加減出てきたら如何ですか、ムネ茸・キノコ副提督さん?」
 ブリッジの外まで聞こえる様に少し声を大きくして、呼びかけます。
「よくあたしがいるって分かったわね」
 入ってきたのは副提督一人だけでした。
「あれ?他の方はいないのですか?何人か軍の方がいたと記憶していますが?」
「皆アイツを追いかけているわよ」
 あれま。
「で、ムネタケ。一人でどうするつもりだ?」
「あら提督も知っていたのですか。でも、どうもしませんわよ。もともとこの任務を受けた後にミスマル提督に『絶対に失敗する』と保障されてしまったのよ。ならせめてその原因を知りたいと思うでしょ?だからあたしは今ここにいるのよ」
 それにしてもやっぱりこの人はある程度は優秀な軍人さんなんですね。
「それで、原因はそこの小娘?」
『その通りだ』
 あら?外部から通信?外を見ればクロッカスにパンジー、トビウメ?と言う事は。
「お久しぶりですミスマル・コウイチロウさん」
『うむ、元気そうだなアテナ君』
 ウィンドに出たミスマル父は相変わらずな髪と髭をしていました。
『ん?ブリッジは君達しかおらんのか?他の者はどうした?』
「鬼ごっこしています」
『鬼ごっこ?」
「はい。逃げる人は一人。鬼は残りの乗組員全員。捕まったらおそらく命は無い過酷の鬼ごっこです」
『ああ、なるほど。そういう事か』
 この人も私と会ってから変わりましたよね。
「ちなみに今の状況はオモイカネ?」
『何度か発見し、捕縛を試みたのですが、その度に撃破し包囲網を突破しています。こちらの被害状況は40%。相手の損耗率は60%ぐらいと推測します』
 あの体でよくやりますね。
「ありがと」
『いえ。では私はルリとラピスの元に戻ります』
「と言う訳です」
『ふむ。逃げている者もよくやるの。
 で、その者は君に何をしたのだ?』
「何故そう思うのですか?」
『簡単な事だよ。ですよねフクベ殿』
「そうだのう。彼女を、いや、彼女の周りの状況を知る者なら皆分かる筈だのう」
 まあ、実際そうだろうけど。
「乗組員全員を敵にするなんて事態はそうしないと起こらない。そう言いたいのですか?」
『ま、そういう事だよ』
「付け加えるとしたら、出向早々で、っといったところかのう」
 でしょうね。
『まあ、とりあえずその事は置いといてだ、ムネタケ君。一応成果を聞いておこうか』
「ミスマル提督の予想通り失敗しましたわ。
 それで、教えて欲しい事があるのですが、彼女は何者ですか?提督方と面識があるようですし」
『ムネタケ君。君は『戦乙女』を知っているかな?』
「はい。一応噂程度には知っていますが?」
 こんな人でも知っているんだ。この艦で知っている人ってどの位いるのかな?
『君の知っている事全部言ってみたまえ』
「はあ?まあ、いいですけど」
 それにしても上司にこの態度って大丈夫なんでしょうか?
「数ヶ月前にネルガルとエステバリス合同練習していた時に現れた凄腕のパイロット。純白のエステバリスを駆り、縦横無尽に駆け巡り、その強さは誰も寄せ付けずかつ優雅だった。パイロットは黒く長い髪と金色の瞳を持った……美…………少女…………………って、まさか!?」
 そのまさかなのです。
『そう、彼女が『戦乙女』だよ』
「正確に言うのであれば『聖剣を携えし戦乙女』だったかのう」
「だからそれを言うのは止めて下さい」
 私は戦乙女なんかじゃないし。
「少女とは聞いてたけど、まさかこんなだったなんて」
 どうせちっちゃいですよ。
「だから上層部は彼女を認めておらんのだよ」
『認めているのは実際に彼女を見た者か、我々のような極一部の者だけなのだよ」
「だから彼女がいるにも拘らず、あたしに命令がきたっと?」
『そういう事だ。
 すまないねアテナ君。色々と愚かなのだよ軍というのは』
「いえ、気にしていませんから」
 イレギュラーがないと世の中つまらないですからね。
「それでミスマル・コウイチロウさんは何しにいらっしゃったのですか?」
『上層部からの命令で仕方なくな。なんとかして貰えぬか?』
「ナデシコを拿捕出来ずに撤退を余儀ない状況を創ってくれって事でいいのですか?」
『うむ』
 そうは簡単に言いますがね。まあ、方法は無い訳じゃないけど。
「後ろの艦を利用していいですか?」
『クロッカスとパンジーをか?兵達が無事なら問題は無いが、どうするつもりだね?』
 彼の記憶通りにいきます。
「チューリップにやらせます」
『何?』
 この一言で理解してくれればいいのですが。
「ほう。確かにその方法なら上層部は文句を言うまい」
「でしょうね。でも問題が発生するのでは?」
『アテナ君から言い出したことだ。何か対策があるのだろう?』
 ゆ、優秀だ。まさか副提督までなんて。
「まあ、一応はありますけどね」
「流石だな」
『まったくだ。一体君はどれ程の事を予測して対策をたてているんだ?』
 その質問には微笑をもって答えました。正解は零。その時の状況に合わせて直ぐに対策を練っているだけです。そして、それを誰にも分からない様にするのが、私の考える策士です。
『では、今から兵達を避難させるから少し待っていてくれ』
「敵は私達の予定なんか待ってくれません。既に活動を始めているようですからお急ぎ下さい」
『了解した。それでは良い旅路を』
 ふう。さて、カリバーの準備しますかね。
「それではフクベ・ジン提督、ムネ茸・キノコ副提督、私はカリバーの準備にいきます。ブリッジよろしくお願いします」
「うむ」
「『戦乙女』の実力見せてもらうわよ」
「私その二つ名好きじゃないです」
 私はそれだけ告げると格納庫に向いました。
 それはそうと、皆さんまだ鬼ごっこしているんですかね?結構危ない状況だったりするんですけど。特に黒い人。もしかして忘れちゃったのですかね?


〈あとがき〉
 宣言通り何とか今月中に三章を仕上げる事が出来た蒼月です。
「何故か又ここにいるアテナです」
 すみません。本当はアキト君を呼ぼうと思ったのですが。
「思ったのですが?」
 まだ鬼ごっこを楽しんでいる様だったので仕方なく。
「そう。まあいいわ。
 それより聞きたい事あるんだけどいいかしら?」
 はいはい、私に答えられる事でしたらどうぞ。
「私の性格ってどうなっているの?なんか纏まりが無いと言うか、決まっていない感じがするんだけど?」
 一応はこうなっているつもりです。

 基本――クールでやるべき事はしっかりやる。必要に応じて二章の様に皆を和ませたりもする。但し、本当は演じているだけ。
 ルリとラピス――優しいお姉ちゃん。甘いのではなく優しい。成長に必要だと思えばひどい事もする(予定)
 アキト――複数。アテナの新しい子供じみた復讐方法。アキトの困る事なら基本的に何でもするつもり。人前ではアキトに告白され真っ赤になる純情少女。二人っきりの時は意地悪。

「一応設定はあったのね。敬語とかが混合なのは?」
 色々混ざっている結果それが喋りやすい、と。
「無茶苦茶ね。
 それと原作と性格に違いがある人達はなんなの?」
 一応アキト君がいた世界と違うっと言う事で、その辺も少し変えようかなっと。
「単にその人がこういう時にどうするか思い付かなかったって言えばいいのに」
 それが言えないのが大人なのです(泣)
「そんな言い訳はどうでもいいわ。
 で、次はどうするつもりなのかしら?」
 一応ビックバリア突破位までは書きたいかな〜と。ただこのままいくとキノコを残してしまいそうで困っているのですよ。本当なら追い出すつもりだったのが、何故か微妙に優秀な軍人さんになっていますし……そのまま使いますか?
「貴方の好きになさい。ただ私は反対はしないわよ。なかなか面白いし」
 よし、賛成票も得た事ですし使いますか。そうなるとあそこをああして、ここを…………
「何か彼が考え出したようなので、今回はこの辺で締めます。では、また次の話で。
 あ、アーサー。もう着くけど準備出来てる?うん、そう、ならいいわ。問題無しよ。
 あ、それでは又。
 何でもないから。アーサーは気にしなくて平気よ」

 

 

感想代理人プロフィール

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代理人の感想

要するに「大人の知能と能力を持った子供」なわけね、彼女。

言ってることは理不尽だし支離滅裂だし、大人っぽい/優しい振る舞いをエミュレートはできるけど、

それは理性や計算で行ってるだけであって、経験を積み重ねて出来た「自分」ではないという。

そのうち自分の感情をコントロールしきれずに自爆しそうだなぁ。

 

>何でそこで疑うのですか。

疑うよそりゃ(笑)。

やはりどうもこの少女Aは客観的に自分を見ることが出来ない模様。

言ってることも所々支離滅裂なら、自己矛盾にも気がついていないみたいだし・・・

自我が確立していない証拠だったりするのかな。