「さて、二回目のときと違って、ガイは元気だしなぁ、どうしようか?」

「仕方ありませんよ、私が見張っておきます」

「結局、それしか方法はないのか」





ブロスとディアの正しいアキト君の育て方
 第六話 説得





「さてと、問題はジュンのほうか・・・」

「どうしてもナデシコに乗ってもらわないといけないんですか?」

「あいつもナデシコのクルーの一員だし・・・ユリカのサポートは、俺にはできないよ・・・」

「でも、ユリカさんに置き去りにされた時点であきらめませんか、普通?」

「ナデシコのクルーの選別基準知ってるか?性格はともかく腕は一流、

 普通の性格じゃ、ナデシコの副長には選ばれないさ」

「ジュンさんって、ユリカさんのおまけじゃなかったんですか?」

二回目よりさらにキツイ事いうな・・・

まあ、確かにそれもあるだろうが・・・

「さて、それはともかく、火星につくまでにあれを仕上げないとな、

 あとアイちゃんたちも穏便に乗艦してもらう方法も考えないといけないし・・・」

「・・・やっぱりアキトさんは変わってませんよ」

「二回目も同じタイミングで同じような事言われたよ、

 そのあとユリカが・・・」

「ア〜キ〜ト〜!!

 もう!!いくら知り合いだからって、ルリちゃんとばっかりお話して!!

 私もアキトとお話がしたい!!したい!!したい!!!」

「・・・といったんだよ(ひそひそ)」

「ユリカさんらしいですね(ひそひそ)」

「アキト〜〜〜!

 なに内緒話してるの?私も仲間に入れてよ〜〜〜(じたばたじたばた)」

天真爛漫・・・と二回目は思ったが・・・これは・・・

「艦長、ブリッジで暴れないでください」

「う!!ルリちゃん怖い。

 でもでも!!そう!!艦長命令です、私を仲間に入れなさい」

「拒否します」

「え〜〜〜ん!!

 ル、ルリちゃんが私を苛めるの、アキト〜〜〜〜!!」

なんか微妙に二回目と同じようなことが起こってるな。

「職権乱用するからだ」



『敵機確認』

「ありがとう、オモイカネ・・・艦長、第3防衛ラインに入りました。

 同時に敵機デルフィニウムを9機確認。

 後、10分後には交戦領域に入ります」

さっさと話を進めるか。

「ルリちゃん、ディストーションフィールドで防げる?」

「今のフィールドの出力では、完全には防げません」

今回もこっちを見てるな、ユリカの奴。

ま、急いで出てガイの負担を減らさないとな。

「ユリカ、俺が出る」

「うん、がんばってね?」

「ああ」

そういい残して俺はブリッジを出た。

たぶんガイはすでに出撃準備をしてるに違いない。

さてと、怪しまれない程度に急がないとな。



「え?」

「どうしたの?メグミちゃん?」

「い、いえ、テンカワ機、出撃します」

「もう?」

「はい」

「すばやいですなぁ、テンカワさん」

「しかしこれは少し異常じゃないか?」

「アキトは私の王子様だもん、これくらい・・・」

「艦長、作戦行動中は静かにしていてください」

「はい」





今回は早めに出撃できたのでまだ戦闘になっていない。

ここらで俺の力を見せておかないとな。

ガイの奴は「ガンガークロスオペレーション」をするとか言ってまだ出ていない・・・

先手必勝、ジュンと話す時間は長いほうがいいしな。

「テンカワ機、突撃する」

「え?ア、アキト!!」

ユリカの静止の声が聞こえるが無視する。

「おい、アキト!!俺の見せ場を取るんじゃねぇ」

というガイの声も聞こえたがこれも無視、

エネルギー供給フィールドのやや外に来た俺は、

ライフルのピンポイント射撃で3機を攻撃不能にした。

行動ではなく、攻撃というところがポイントだ、何の問題もなく動けるが攻撃だけは不可能

そうなった3機は一目散に逃げていった。

俺の射撃の腕に敵味方が戦慄する。

俺は一度エネルギー供給フィールドに戻りエネルギーを充電すると、

再びデルフィニウムを攻撃不能にする。

ドンドンドドドン!!

あっという間に一機になったデルフィニウムだがジュンはちゃんとやってきた。

「ユリカ!!今ならまだ間に合う!!」

〜中略〜

「・・・テンカワアキト!!

 正直に言おう、僕はお前が憎い。

 お前の一体何が、ユリカを魅了したんだ?

 特別なものなど何も持っていないお前が!!」

二回目と変わんないな、実は少し期待してたんだが・・・

「ほう、お前は俺が何を持っているのかわかるのか?

 少しの間同じ艦に乗っただけの、

 特に親しかったわけでもない奴にそんなこといわれる筋合いはない。

 俺の何がユリカを魅了したのかは俺にもわからん。

 だが知りたいのならナデシコに来い、一緒にいれば見えてくるものもあるんじゃないか?」

「だめだ、今ここを通したらユリカとナデシコには帰るところがなくなるんだ」

「その辺はネルガルがうまく立ち回るさ、

 時に士官学校次席殿、艦長の仕事で主なものを二つあげよ」

「?なんだこんなときに?」

「いいから答えろ」

「艦内の士気を維持することと戦闘指揮か?」

「違う、艦長の仕事で主なもの二つ、それは、

 あいつを殺せと命令することと、

 お前は死ねと命令することだ。」

「!!」

「お前はユリカの何を見てきたんだ?

 あいつにそんなことができると思うのか?

 俺にはユリカの荷物を全部背負ってあいつの前を歩くことはできる。

 だがあいつと一緒に荷物を分け合って並んで歩くことはできない。

 ユリカのナイト役はあいてるし、

 王子様だと思っていた人が実は悪い魔法使いが化けたもので、

 本物の王子様は今まで自分が乗っていた馬だった・・・なんてありがちだろう?

 なによりユリカのサポートをする人材のほうが不足してるんでね」

「僕にユリカのサポートをしろというのか!!」

「ああ」

「ふっ・・・お前の何がユリカを魅了したか、わかったような気がするな、

 だが、もう遅いんだ」

何、また時間切れか?

『第2防衛ライン進入、ミサイル発射を確認』

ち、御託を並べすぎたか。

「ジュン、すぐにあきらめるのがお前の悪い癖だ。

 もう少しユリカに見せる執念を他に生かせ!!」

そういいつつジュンの乗るデルフィニウムをナデシコに向けて蹴り落とす!!

その反動で、俺はナデシコから更に距離を広げてしまう。

「な、何をする!!」

「黙ってナデシコへ向かえ!!

 ジュン、仮にも副長ならナデシコのスペックぐらい覚えてるな!!

 さっきの話を思い出せ、今何をすべきか、

 副長の仕事は、艦長のできないことをやることだ!!」

・・・いざとなったら、ルリちゃんが何とかしてくれるだろうしな。





『ミサイル、後1分できます、テンカワ機の回収は不可能』

「アキトォ!!

 艦長命令です、なんとしてでもアキトを助けなさい!!」

ユリカさんがそういうと突然コミュニケが開きました。

「ユリカ、それじゃあ、艦が沈む、テンカワの奴もそれを望んでいるはずない。

 さっきの会話だって聞いてたんだろう!!」

「ジュン君は黙ってて、とにかくなんとしてでも助けなさい!!」

「ユリカ!!

 ・・・フクベ提督、プロスさん、ゴートさん

 現在の艦長には十分な状況判断能力が欠如しています。

 僕は副長として、ミスマル艦長の指揮権の一時凍結、

 および副長である僕への最高権限の移行を提案いたします」

「仕方あるまいの」

「経済的にみてもそれが最良でしょう」

「好きにすればいい」

「ミスマル艦長、提督以下二名の承認によりあなたの指揮権の一時凍結が決定いたしました。

 指揮権凍結中は謹慎扱いとなります、非常時ですのでお部屋へ・・・とは申しませんが、

 ブリッジの隅のなるべく邪魔にならない場所で静かにしていてください」

「ジュ、ジュン君?」

「艦長代理として命令、

 ホシノオペレーター、オモイカネの最低限のシステムと、

 エンジンとディストーションフィールド発生装置、

 この三つ以外のシステムをすべて停止したとして最も被害が少なく、

 第2防衛ラインを突破できる比率を割り出してくれ」

「は、はい」

「レイナード通信士、艦内に対ショック警報、およびいくつかのシステム停止を伝えてくれ」

「は、はい」

「副長、出ました、でもこれではGがかかりすぎます」

「なら・・・慣性制御システムを出力50パーセントで作動させてもう一度計算」

「はい」

ジュンさん、なんかかっこいいですね。

「出ました、これなら問題ありません」

「よし、ハルカ操舵手、そのデータを元に第2防衛ラインを突破する、

総員対ショック準備!!」



たったったった

どうやらやっとジュンさんがブリッジにたどり着いたようです、

ま、加速に伴うGと重力制御システムも止めたせいで半無重力状態であること考えたら合格かな?

「現在状況を報告」

「システムを停止したため詳しくはわかりませんが、

 計算では後15秒で第2防衛ラインを抜けるはずです」

ちょうど15秒後、ミサイルによるゆれは収まりました

「ハルカ操舵手、艦を停止、

 ホシノオペレーター、全システム復旧、

 艦の周囲の状況、および艦の被害状況を調査しろ。

 レイナード通信士、エステバリス隊に連絡、スクランブル発進の準備」

「「「はい」」」

「ジュン君!!

 もう第2防衛ライン抜けたんでしょ、だったらアキトを探さないと・・・」

「艦長、謹慎中は静かにお願いいたします、

 それに、学校で習ったでしょう、

 [戦うということは思いを継ぐということだ、死んでいったものや、戦線を離脱する者の

 遺志を継ぐことだ、だから死ぬことは易し、生きることは難し]って

 テンカワは最後までナデシコのことを心配していた、

 だからナデシコを沈めるわけには行かない。

 それに、もしナデシコが沈んだらテンカワだって助からないだろう?」

「副長、出ました。第2防衛ラインは無事突破したようです。

 それから艦の被害ですが、ディストーションフィールド発生装置の、

 いくつかのシステムにやや負荷がかかったようですが、

 許容範囲内です。

 またGによって数名の軽傷者が出たようですが、特に問題はありません」

「よし、ディストーションフィールド出力30パーセントに移行

 艦はこのままの高度を維持、テンカワ機の探索を行う。

 探索は艦の下のほうから行い、徐々に上へ

 艦と同高度に達したら微速上昇しながら引き続き探索、

 エステバリス隊へ連絡、緊急発進してテンカワ機の探索を行え。僕も出る。

 ミスマル艦長、現時刻を持ってあなたの指揮権の凍結を解除いたします、

 後は頼みます」

「・・・ジュン君。

 ・・・そ、それよりアキトは、ねぇ」

「テンカワ機・・・テンカワ機応答願います」

「メグちゃん・・・アキト、反応が・・・ない」

「艦長・・・残念ですが、あのミサイルとディストーションフィールドの板ばさみです。

 一流・・・いや連合軍のエースパイロットでも、生存は不可能ですよ」

「そんな・・・プロスさん」

「あれ?ルリちゃんは・・・アキト君が心配じゃないの?」

「はい、アキトさんはあの程度で死ぬ人じゃありませんから・・・

 それは・・・全く心配じゃない・・・とは言いませんけど・・・

 私は、アキトさんを信じてますから」

「・・・私も。私もアキトを信じてる!!

 それはルリちゃんにも負けないんだから!!」

「・・・それでこそ艦長です」

「へールリちゃんって強いんですね?」

「そんなことありませんよ、本当は泣きたいんです、でも・・・

 アキトさんが帰ってきたとき笑顔でこういいたいんです、

 お帰りなさい、アキトさんって」

「ただいま、ルリちゃん」

「!!ア、アキトさん、どこですか、」

『テンカワ機、ナデシコの更に上空で発見』

「なんですと!!」

 ・・・信じられない人ですな」

「ナデシコを待ちきれずに、上空へ逃げ出したって事?」

「そうですよミナトさん。

 エネルギー供給フィールドを突破して、先にミサイルの包囲網から脱出されてたんです。」

「よかった、アキト無事で・・・そうだ、どこか痛いところはない?」

「ああ、大丈夫だよ」

「そう、よかった。・・・そうだ、ヤマダさんとジュン君に連絡、アキトを回収してください」

「別に大丈夫だよ」

「だめ、艦長命令です、おとなしく回収されなさい」

というとユリカさんがブリッジを出ようとしています

「艦長、どちらへ?」

「アキトを迎えに言ってくる」

「困りますなぁ、作戦行動中には艦長と副長、どちらか一方はブリッジにいてもらわないと・・・」

「えぇ〜〜!ならならぁ、ルリちゃん、あなたを艦長代理に指名します、

 これは艦長命令です、拒否は認めません(ビシッ)。じゃ、そういうことで(ふにゃぁ)」

ユ、ユリカさん、雰囲気が変わりすぎです。

まあいいでしょう。ナデシコBおよびナデシコCの艦長の腕、見せてあげましょう。

「わかりました。艦長代理として命令。ディストーションフィールド解除、全速上昇」

「わかりました、ホシノ艦長殿(ビシッ)。

 なんてね、ははは」

ミナトさん、意外に乗り気ですね。





「テンカワ、すまない、僕がつまらない意地を張ったせいで・・・」

「いやいいよ、見たところナデシコも無事見たいだし、帰ってきてくれたみたいだし、

 俺の頼みを聞いてくれたんだ、感謝こそすれ怒る理由なんてないさ」

ジュン変わったな、目が違う・・・

後で、何があったのか、ルリちゃんにでも聞くか。

しかし・・・そうか、そうだよな。

みんな生きてるんだ、俺ががんばれば・・・

みんなを一回目とも二回目とも違う姿に持っていけるんだ、

そうしたら・・・みんなを重ねて見ずに済むかもしれない・・・

そうか、そうだよな・・・

「おいアキト、てめぇ俺の見せ場奪いやがって、お前が何してもいいがな、

 おめぇが何しても言いがな、俺よりかっこいい死に方だけはするな!!」

「はいはい、死にたくなんかないからな」





「お帰り、アキト」

「ユリカ、お前・・・ブリッジに艦長も副長もいなくていいのか?」

「大丈夫、ルリちゃんに代理を頼んでおいたから」

「代理ってな、お前・・・」

普通11歳の女の子に戦艦の艦長代理頼むか?

「ユリカ、何でよりにもよってルリちゃんなんだ?」

そうだよなジュン、普通はそう思うよな。

「ま、ルリちゃんなら問題ないだろ」

「アキト、ルリちゃんのこと信じてるんだね、

 私も信じてほしい、さっきの通信、あれじゃまるで私がアキトを回収する為に

 ナデシコを沈めようとするみたいじゃない」

「・・・その通りだろ?」

「うえ〜〜ん」

・・・ユリカよ、それは、ハーリー君の必殺技だぞ。

勝手に使っちゃいかん





第七話に続く





あとがき

というわけで「育て方」の第六話です

かねてからのお約束どおり「ジュン君説得イベント」です。

ジュン君は個人的にかなり好きなキャラなので活躍してもらいます。

しかし、艦長の主な仕事・・・

間違ってはいませんが・・・

まぁ、この台詞も最初から考えていた台詞ですし・・・

ちなみにこの話には「どうしても書きたかった会話その2」が含まれています。

さてどこでしょう。

しかし、これでアキト君が少し前向きになってくれる予定です。

なんか無理やりですが、方向修正ができました。

でも・・・ブロスとディアが全く出てきません。

ジュン君の説得には干渉しまくっているのですが、

すべて書くとややこしいことこの上なくなってしまいましたので、

省略させていただきました。

では、今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

代理人の感想

 

まぁルリヒロインですし、ユリカが虐待されてる(爆)のはしょうがないですが・・・いいたい事が一つだけ。

 

 

ジュンはなのね(爆笑)。