機動戦艦ナデシコ



遺失文明乱入?



第三話

「うっ・・ん・。」

ナデシコ艦内のとある一室。
そこでイツキが目を覚ました。

「あっ起きたかい、イツキちゃん。」

「あっ、おはようございますアキトさん。
 ところで何をやっていらっしゃるのですか?」

「見てわからないかい?料理だよ、料理。
 朝飯を作っているんだ。」

「アキトさんの作ったご飯ですか?!食べるのは久しぶりです。」

「もうちょっとで出来るから、着替えたらケインとキャナルちゃんを起こして、
 連れてきてくれないかい?2人ともまだ寝てるだろうから。」

「わかりました。すぐに連れてきますね。」

そういうとイツキは素早く着替えを済ませ、
隣のケイン達の部屋の前に向かった。

「ケインさん、キャナルさん。朝ですよ起きて下さい。
アキトさんが朝御飯作って待ってますよー。」

ドアをノックしながら声をあげる。
しばらくしてドアが開き、
中からパジャマ姿のキャナルが目をこすりながら出てきた。

「おはようございますキャナルさん。」

「うーん・・おはようイツキ。」

「アキトさんに頼まれて起こしにきました。
 朝御飯もうすぐできますよ。」

「ああ、ありがとう。ケイン起こして着替えたら、
 そっちに行くからってアキトに言っといてくれないかしら?」

「わかりました。伝えておきますね。」

「うん、お願いね。」

会話をしたあとイツキは部屋に戻って、
アキトにキャナルからの言付けを伝えた。

「ふーん・・わかった。それじゃあ2人が来るまでに仕上げるとするかな。
 イツキちゃん手伝ってくれないかい?」

「あっ、はい。何をすればいいんですか。」

「それじゃあ出来た料理を皿に盛ってテーブルに並べていってくれないかな。」

「わかりました。」



しばらくしてアキト達の部屋のドアが開き、
黒のズボンに白いシャツを着たケインと
水色のフレアスカートに白いセーターを着たキャナルが入ってきた。

「アキト、イツキおはようさん。」

「おはようアキト。」

「おはようございますケインさん。」

「おはようケイン、キャナルちゃん。
 朝飯、もう出来てるぞ。さまないうちに食べよう。」




「さてご飯も食べた事だし、
 ホウメイさんの所に行こうかキャナルちゃん。」

「そうねお仕事しに行かないとね。」

「その間俺は何をしとこうかね・・」

「なんなら食堂に手伝いに来るか?。」

「それもいいわね。ケイン食材(もの)を切るの好きでしょ。」

「それもいいな。よし俺も行くとするか。」

「イツキちゃんもどうだい?」

「よろしいんですか?」

「かまわないよ。ホウメイさんも手伝うことに文句はいわないと思うし。」

「それならご一緒させてもらいますわ。」

「それじゃあ行こうか。」




アキト達が食堂に向かっていってしばらくした後、
アキトの部屋の前に人影が現れた。

「アキトー、アキトー、お話しようよ。」

ドアを叩きながら声を張り上げているのは天真爛漫艦長ミスマルユリカである。

「ここを開けてよーアキトー。」

しばらくそうやっていたが、反応がない事に気が付くと
合鍵を取り出してドアを開けようとした。
しかし何度合鍵を使ってもドアは開かなかった。

「ええぇー!何で?どうして開かないの?」

これはオモイカネの仕業である。
いや、正確にはオモイカネに頼んだキャナルの仕業である。
キャナルはオモイカネに、ある程度自分達の目的を話した。
そしてオモイカネに協力してもらっているのだ。
ルリですらアキト達の部屋を覗く事は出来ないのである。



一方その頃食堂

「パイロット兼コックのテンカワ・アキトです。よろしく。」

「パイロット兼コックのキャナル・ボルフィードです。よろしくー。」

「パイロットのケイン・ブルーリバーだ。」

「イツキ・カザマです。パイロットですけどお手伝いにきました。」

アキト達はホウメイとホウメイガールズに挨拶した。

「あんた達がプロスさんの言っていた人たちだね。
 でも確か2人って聞いていたけど?」

「ケインとイツキちゃんは手伝いに来たんですよ。」

「なんだい、そういうことかい。
 手伝ってくれるなら歓迎だよ。
 それであんた達は何が出来るんだい。」

「俺はだいたいの料理は出来るが、得意なのは中華だな。」

「私もだいたいは出来るけど、得意なのは洋菓子とかかな。」

「私は和食でしょうか。」

「俺は材料切る事しか出来ねえぞ。」

「ふーんそうかいわかったよ。
 それじゃああんた達には得意分野をやってもらうって事でいいかい。」

「「「はい。」」」

「いい返事だ。しっかり働いてもらうよ。」



場所変わってナデシコブリッジ

「今までナデシコの目的を知らせなかったのは、
 妨害者の目を欺くためです。」

「妨害者って?」

「我が神に逆らう愚か者どものことだ。」

「違います。ゴート君、少し黙っててくれませんか。」

「むう・・」

「ネルガルがわざわざ戦艦をつくったのにはわけがあります。」

「木星蜥蜴を倒すためじゃないの。」

「それもあります。しかし我々の目的は他にもあります。」

「我々の目的地は火星だ!」

「「「かっ火星!?」」」

「火星にあるネルガルの研究所の研究データ、
 研究所に勤めてた研究員を助けに行くついでに、
 火星に取り残された人々を助けにいくんですね。」

「・・・あのルリさん・・・どうしてそのことを・・」

「いえ、ただの推測だったのですが、
 図星だったんですか?」
 
「えー・・まあそういうわけですので・・我々は軍とは別行動いたします。」

「それではナデシコ、火星に向かって発進!」

「そうはいかない。」

発進しようとした矢先、ブリッジに数人の兵士が入ってきた。

「あの強さを見た以上、この戦艦を火星に行かす訳にはいかんな。」

兵士の1人がそう言った。

「そんな人数で何が出来るというんです。」

「俺達だけだと思うか?すでに他の場所は占拠しているぞ。」

「その人が言っている事は本当です。」

言ってルリは艦内の各場所をモニターに映す。
そこには兵士に捕まったクルーの姿が映っていた。

「ほら来たみたいだぞ。」

「前方に連合軍の戦艦がいます。どうやら海中に隠れていた模様です。」

「通信、入ってます。」

「つないでください。」 


《ユゥゥゥゥリッッカァァァァァァァァ!!!!》


「お父様!!」

ブリッジを超音波兵器が襲った。(笑)

  これを予測していたルリは耳栓をしていたが、
それでもミスマル家最大奥義にはあまり役に立たず、
気絶するのをなんとか防いだというところだった。
当然そんなことを知らない他のブリッジにいたメンバーは、
白目をむいたり、あわを吐きながら気絶していた。
いや、よく見るとゴートだけは平然としている。
神の戦士に目覚めたためであろうか・・・・

このあと誰も止めることがなかったので、
ユリカはあっさりとマスターキーを抜いてしまった。

その後ユリカは復活したプロスとジュンと共に、
トビウメに交渉に向かい、他のクルーは食堂に軟禁されてしまった。



「さてと・・どうするアキト?」

キャナルが隣で料理しているアキトに問い掛けた。

「そうだな。そろそろ艦を取り戻すか。」

アキトは他のクルーのいるほうへ向かった。

「ゴートさん。」

「なんだ?テンカワ。」

「俺達これから艦を取り戻しに行くんで、
 制圧が終わるまで、
 クルーがここから出ないようにしといてくれませんか?」

「わかった。我が神に誓おう。」

「頼みましたよ。」

アキトはケイン達のいるところに戻った。

「さてとそれじゃいこうかケイン、キャナルちゃん。」

「ああ。」

「それじゃあ、どこから制圧する?」

「そうだな・・とりあえずはブリッジと格納庫だな。
 途中にいる連中は黙らせていくとしよう。」

「わかった。なら格納庫のほうは、俺とキャナルにまかせて、
   アキトはブリッジのほうと、他の所を頼む。
 そろそろチューリップも動き出すころだしな。」

「そうそうチューリップのほうは私達にまかせなさい。」

「わかった。ならまかせたよ。
 2人とも、あまり無茶な事はするなよ。」

「了ー解ー(^^)」

「んじゃ、まずは入り口にいる見張りを黙らせるか。」

言うとアキトは、気配を消して見張りに音もなく近ずき、
首筋に手刀を叩き込んで気絶させた。

「「「「おおぉぉぉぉぉ?!」」」」

それにきずいたクルー達が驚いてアキト達を見る。

「みんな、今から俺達が艦を取り戻しに行くから、
 それまでここでおとなしくしていてくれ。」

「なんだとっ!それなら俺もついていくぜ。
 敵にのっとられた艦を取り戻すっ!
 くうーっ!なんて燃えるシチュエーションだあ!」


「えいっ。」

ゴキッ!

「うるさい人ですね。」

「ルリちゃん。」

「この熱血馬鹿のことはほっておいて、
 気をつけてくださいねアキトさん。」

「あっああ・・わかったよ。」

アキトはブリッジ、ケイン達は格納庫へ向かった。
残されたクルーはというと、

「アキト君達、大丈夫かしら?」

「大丈夫ですよ。アキトさんなら。」

「ええ、アキトさん達は強いですから。」

「うむ。なにせ私が神の声を聞けるようになったのも、
 テンカワ達のおかげだからな。あの3人ならば大丈夫だろう。」

「前から気になってたんだけど、
 ルリルリとイツキちゃんって、
 いつアキト君と知り合ったの。」

「私は10ヶ月ほど前でしょうか。」

「私は昔一緒に住んでいました。」

「ええ!本当なのルリルリ?」

「はい。」

「ルリちゃんそこんとこもう少し詳しく・・・」

「ノーコメントです、メグミさん。」
 
「むうー・・」

こんな感じだったりする。



ケインサイド


ケインとキャナルは途中にいる連合軍の兵士達を、
倒しながら格納庫に向かって走っていた。

「この程度の奴ら相手ならサイブレードを使うまでもないな。」

ドガッ!

言いながら敵の懐に入って鳩尾に拳を叩き込むケイン。
それをまともに食らった敵は、3メートル程吹っ飛び、
そのまま動かなくなる。

「はあっ。」

ガスッ!

その身を屈めて足払いをかけ、
転んだ相手の腹に踵を落とすキャナル。

「まったくよね。銃を持ってる軍人のくせに、
 簡単に私達の接近を許すんだから。」

しれっと言うキャナル。
しかしアキトとの訓練で身体能力が
大幅に上がっているケイン達のスピードは、
そんじょそこらの軍人が反応できないほど早いのだ。

「それはそうとキャナル。」

「んっ、なにケイン?」

「その格好であまり蹴り技とか使うな、
 スカートの中丸見えだぞ。」

「スパッツはいているから大丈夫よ。
   そういえば今日はなんでマント着けてないの?」

「昨日着てた1つしかないから洗濯してんだよ。
 後であいつらに送ってもらわねえとな。」

「そうね。あの子達には他にも送ってもらうものがあるしね。」

緊張感まったくなしの会話をしながら、
格納庫に向かって爆走する2人。
こんな2人にやられる軍人達も不憫だが、
相手が悪かったと諦めてもらうしかない。



アキトサイド


アキトはオモイカネに敵の現在地を聞き、
ブリッジに向かう途中寄り道しながら敵を倒していった。
倒された兵士達はアキトの顔を見ていない。それどころか、
自分がいつ気絶させられたかも気が付いていないだろう。
本気で気配を殺したアキトに気付く者など、
北斗か枝織嬢、北辰クラスぐらいなものだろう。

「オモイカネ、残りの敵はどこにいる?」

《残るはブリッジにいる2人だけだよアキト。
 格納庫のほうもついさっきケイン達が制圧したし。》

「そうか。そういえばチューリップはまだ動き出していないのか?」

《うん。まだ動き出していないみたいだけど・・そろそろだと思うから
 クロッカスとパンジーにはウィルスを送っておいたよ。》

「すまないな。あと食堂にいるクルーに、あらかた制圧したから
 それぞれの持ち場に戻ってくれと伝えてくれないか?」

《オッケー。》

「あっあと、その辺に転がっている軍の奴らを縛って、
 格納庫にある適当な空きコンテナに放り込んでてくれって、
 伝えといてくれ。」

《わかった、わかった。》

「んじゃ頼んだよ。」

会話を終わらせブリッジに再び向かい始めるアキト。

「さて・・・ブリッジにいる奴らは、
 どうやって黙らそうかね・・・あの技はさっき試したし、
 かといってあまり強力な技を使ってもなあ・・・」

なんかいろいろ考えながら、疾走するアキト。
この様子だと、軍の奴ら相手に技を試しているらしい。



うーんどうしよっかなー・・・・っと、
もうブリッジに着いてしまったのか・・
しかたない、適当なので潰せばいいか。

「ちーっす。ナデシコクルーですけど・・」

「なっ!きさま何故ここにいる!」

「何故って、決まってるだろ。
 おまえ達を倒すためだよ。」

そういうとアキトは、軍人の目の前から消えた。

「なっどこに行った?」

「ここだ。」


ドガッ!

アキトは一瞬で敵の足元まで近ずき、
軍人が反応する前に敵の顎に下から突き上げるような掌底を放った。
敵は声も出さずにその場に崩れ落ちた。

パンッ!

仲間が倒されたのを見て、残った1人はアキトに向かって発砲した。
しかし既にアキトはそこにいなかった。

「くそっ。今度は何処に消え・」

男の言葉はそこまでだった。

「まったく・・おまえ達それでも軍人か?
 動きに無駄がありすぎるし、隙だらけだ。」

男の背後からあきれた声でアキトが言った。
よく見ると男の首を掴んで持ち上げている。
 
「まあ、そんなことはどうでもいい。
 とりあえずおまえ達にはしばらくの間寝てもらう。」

アキトは首を掴んだ手を離すと、男を蹴り上げ宙に浮かし、
落ちてきた所に掌底をあてた。
男は2メートルほど飛んで床に落ち、そのまま動かなくなった。

「さてと・・これで全員かたづけたな。
 後はこいつらを格納庫に運ぶだけだな。」

アキトは男2人を肩に担ぐと格納庫に向かった。




格納庫につくとなにやら騒がしかった。
見るとエステバリスの前に人だかりが出来ていた。 何事かと思い、近くにいた整備員に聞いてみた。

「一体なにがあったんですか?」

「どうもヤマダさんがエステに乗って艦長を連れてくるって言うんですよ。
 骨折ってるんだからやめろっと言っても聞かなくて・・」

ガイが?
まったく相変わらず騒がしい奴だな。
とりあえず黙らせるか・・・
そう考え人だかりに向かった瞬間、

ボキッ!

              バキッ!

なにやら凄い音が聞こえた。
人の山をかき分けて騒ぎの中心にたどり着いた俺が見たのは・・・


両足が物凄い方向に向いていて床に倒れているガイと、

頭を抱え困った表情をしているケイン、

そして・・・
妙にすっきりした表情でスカートの埃をはたいているキャナルちゃんだった。


「ケイン、何があったんだ。」

「おっアキト。・・いやな、ヤマダの奴が言う事を聞かなくてな、
 俺達も説得してたんだが全然聞かなくて、それで・・・
 キャナルがヤマダの両足を折った。」

ふむふむなるほど。って(汗)

「キャナルちゃん。いくら相手がガイだからって、
 少しやりすぎじゃないか?」

「あらアキト。大丈夫よ、だってヤマダって不死身なんでしょ。」

「いや・・・確かにそうかもしれないけど・・・」

いくらなんでも両足折るのはどうかなあ・・・

「ならいいじゃない。それはそうとどうして格納庫に来たのアキト?」

「いやね、ブリッジにいた奴らを片付けたんで、
 他の軍人達と一緒にコンテナに詰めて、
 エステで連合軍に渡しに行こうと来たんだけど。」

俺がそこまで言うと、突然警報が鳴り出した。

「ブリッジ!何が起こった!」

《前方の海中よりチューリップが浮上してきました。
 パンジーとクロッカスを吸い込もうとしています。》

「その2隻の乗員はどうなったんだい?ルリちゃん。」

《オモイカネが事前にウィルスを送って、
 脱出させたようです。(私は何も言ってないのに)。》

「そうか。ルリちゃん、俺達はこれからエステで出て、
 チューリップの注意を引き付ける。」

《わかりました。気を付けて下さいアキトさん。》

ルリちゃんとの会話を終わらせ、ケイン達のほうを向く。

「聞いたとうりだ。いくぞケイン、キャナルちゃん。」

「「了解!」」

そう言うと2人はソードブレイカーのほうへ向かった。
さて俺も出るとするか。

「アキトさん。」

その声に振り向くとイツキちゃんがいた。

「どうしたのイツキちゃん?」

「『どうしたの』じゃありませんよ。
 私もパイロットの一人ですよ。」

「わかったよ。それじゃいこうか。」

「はい。」

俺達が機体に乗り込もうとしたときには、
もう既に空戦への換装はすんでいた。

「それが俺達整備班の仕事だからな。」

さすがはセイヤさん。
これで某組織を設立してくれなければ、もっと言う事なしなんだけどな。
某組織と某同盟の聖戦に巻き込まれて、
どれだけ酷い目にあったことか・・・(泣)
 っとこんな事考えてる場合じゃなかった。
俺は漆黒に塗り直されたエステバリスに乗り込んだ。

「3人とも聞いてくれ。」

俺はソードブレイカーと、
イツキちゃんの機体――紫に塗装されたエステバリスに通信を送った。

「俺は先に、この軍人詰めのコンテナをトビウメに届けてくる。
 それまで2機で囮をしていてくれ。」

「わかりました。」

「余裕、余裕。」

「オッケー。」

「あっ、あとケイン、キャナルちゃん間違って落とすなよ。
 囮になるだけでいいからな。」

「わかってるって。」

「それじゃあ。テンカワ・アキト、出るぞ!」

「イツキ・カザマ、出ます。」

「ケイン、今日は私がメインでいいわね?」

「へいへい、どうぞご自由に。」

「それじゃあ。ソードブレイカー出るわよ。」

アキト、イツキ、キャナルの順でナデシコから発進していった。
その後アキト機はコンテナを持ってトビウメのほうへ飛んでいき、
イツキとキャナルはチューリップのほうへ向かった。

アキトがトビウメに向かう途中、
ユリカとプロスの乗ったヘリがナデシコに向かっていった。
アキトはヘリに通信を送った。

「ユリカさっさとナデシコに戻ってナデシコを起動させろ。」

「あっ、アキト。言われなくてもわかってるよ。
 それよりもまた私のために囮をしてくれるのね。もうユリカ感」

「それじゃあプロスさんよろしくお願いしますね。」

「はい、わかりました。テンカワさん達なら大丈夫でしょうが、お気を付けて。」

妄想モードに入っているユリカをほうって置いて、通信をきるアキト。


(ジュンがいなかったってことは、またユリカに置いてかれたのか。
 相変わらず影が薄いというべきか、不幸というべきか・・・
 まっ今回は前のような結末にはさせない。チハヤも助けてやるさ。
   それでおまえが幸せになれるかは知らないけどな。
 っていうか、むしろ俺と同じ苦しみを少しでも味わうがいい。ふふふ( ̄ー ̄))
 
っと、いろいろ考えているうちにトビウメの前まで来ていた。
すぐに、通信を送る。

「こちらナデシコ所属のテンカワ。トビウメ聞こえるか。」

呼びかけると、通信回線が開かれ映像が映し出された。

《こちらトビウメ艦長、ミスマルである。
 用件は何だねアキト君。」

「ナデシコを占拠した馬鹿どもを持ってきました。
 ここに浮かべておきますから、早く回収しないと沈んじゃいますんで、
 あしからず。それでは・・・」

通信を切ったあと、持ってきた軍人詰コンテナを海に落とす。
着水の衝撃で怪我するかもしれないが死ぬ事はないだろう。

コンテナを落としたあと、俺は機体をチューリップのほうへ向かった。
チューリップは触手を使ってキャナルちゃん達を落とそうとしているが、
余裕で避けられている。まあ2人の腕を考えれば当然だな。


「2人とも調子はどうだい。」

《ええ、良好ですよ。》

《当然じゃない。》

《おい、アキト。用事は済んだのか?》

「ああ。後はこいつの囮をするだけだ。  ユリカ達もそろそろナデシコに着いているだろうしな。」

《ねえ、それじゃあ2人にお願いがあるんだけど。》

《お願い?ですか。》

「いったいなんだいキャナルちゃん?」

《試したい武器があるから触手の注意を引き付けてほしいのよ。》

「何だそんなことか、かまわないよ。」
《私もかまいませんよ。》

《それじゃ、お願いね。》

アキトとイツキが、
チューリップの周りを飛び回って注意を引き付けにかかった。
  
「そういえばキャナル。試すって何を試すんだ?」

「サイシザースよ。
 サイブレードと加連粒子ファランクスは前の戦闘で試したでしょ。
 ロストウェポンをそうやすやすと使うわけにはいかないし、
 残る通常兵装は現時点ではサイシザースだけだもの。」

「確かにな。」

「まあそういうわけだから。」
「わかったよ。俺も気になるしな。」

「それじゃ。」

2リの会話が終了すると、
ソードブレイカーは、腰の後ろにマウントされていた
短い筒のようなものを手に取り、目の前で振り下ろした。
すると筒が伸び、ソードブレイカーと同じくらいの長さになった。

「はああっ!」

キャナルが気合を入れると、
棒の先端から青白く光る大きな鎌刃が現れた。
さしずめ光る大鎌といったところか。

「さあ、いくわよ。」

サイシザースを両手で構え触手の根元に加速するソードブレイカー。
そのまま加速の勢いを殺さずに次々と触手を切り払う。
チューリップの全ての触手はきれいに刈り取られた。

「けっこう切れ味がいいな。」

「そうね。サイブレードよりは威力は上ね。
 でもサイブレードとちがって両手使うからねえ。」

「そうだな。サイブレードのほうは片手で使えるからな。」

「まあ役に立たないよりかはましね。」

そこへナデシコから通信が入った。

《パイロットのみなさん。
 これからグラビティブラストを撃ちますので、
 射線上から退避してください。》

「だとよ。」

「わかったわよ。」



「ユリカさん。全パイロット射線上より退避しました。」

「それじゃあグラビティブラスト発射ぁー!」

「発射します。」

次の瞬間ナデシコから黒い光が放たれ、
チューリップはディストーションフィールドを
展開するまもなく四散した。

その後ナデシコは逃げるようにその場所を離れた。



一方取り残されたトビウメ艦内では、
ユリカに置いていかれて、幅涙を流していじけているジュンと、
なにやら物思いにふけっているコウイチロウがいた。

「ユリカー、僕のこと忘れていったんだね。(泣)」

(大きくなったなあアキト君。見違えたぞ。)


提督!提督!

「ん、なんだ?」

「いや、あのコンテナ回収しなくていいんですか?
 段々と沈んでいきますけど。」

「おおそうだった。コンテナを回収後、速やかにここを離れるぞ。」
 
「ナデシコを追わないので?」

「ああ。どのみち追いつけんよ。」


 

次回へ続く



後書き


ARX―7
どうも『枝織推進機関「Angel Blood」』
      の局長代行を勤めさせて頂いているARXー7です。


キャナル:なのにこのSSのヒロインはイツキなのよね。

ARX―7:うっ……そこを突かれると痛いのですが・・(ーー;)

キャナル:おまけに前の更新から一ヶ月もたってるし。

ARX―7:うっ、しかたないでしょう。テストとかがあったんだから。

キャナル:それだけじゃないでしょ。最近ずっとゲームばかりしていたくせに。

ARXー7:うっ・・だって『ゼノサーガ』があまりにも面白くて・・・
      それに友達に進められたDC版の『AIR』もなかなか良くて。

キャナル:初めてだったのよねあの手のゲームは。

ARXー7:ああ。まだ途中だけどストーリーがすごいね。

キャナル:でもそれとこれは別。これからいったいどうするつもり?

ARXー7:とりあえず枝織嬢には何らかの形で幸せになって頂きます。
      場合によってはもう一人のヒロインになってもらうかもしれません。

キャナル:それってアキトがイツキと枝織の2人とくっつく、ってこと?

ARXー7:まあそういうことになるね。

キャナル:それっていいのかしらね?

ARXー7何を言う!たった2人だぞ、アキトとくっつくのが。
      他のSSでは某同盟全員プラスαなんてのがあるんだぞ。
      それに比べれば2人は許容範囲内だろ。

キャナル:わかったわよ。でも枝織とくっつけた場合、北斗はどうするの?

ARXー7:そこなんだよね。悩みどころは。
      北斗を、北ちゃん化するかしないか。

キャナル:まあしっかり悩みなさい。

 

 

 

代理人の感想

複数の時点できっぱりと道は外れてるなぁ(笑)。

まぁ、歴史上には四桁の愛人囲ってた人もいるんだし、それに比べたらマシでしょうが(爆笑)。