注1:このお話は『遺失文明乱入?』の外伝です。


注2:このお話には、某雪国のゲームのキャラが出てきます。


注3:キャラの性格が変わってる可能性があります。たぶん・・・


以上を踏まえた上でお読みください。












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アキト達が所属するトラブルコントラクター『ロスト』の本部。

その所在は、世間にはほとんど知られておらず、唯一わかっている事は、

日本のどこかにあるということだけ。

したがって、依頼等は全てネット上で行われる。

なお、ネットを使って本部の所在を調べ上げようとしたものは、

例外なく、キャナルウィルスの洗礼を受けることとなる。



このお話は、その所在が不明の『ロスト』本部に、

1通の手紙が来たことから始まる。

















機動戦艦ナデシコ



遺失文明乱入?



〜雪国での出会い?・前編〜









それは雪の季節にやってきた。





アキトはその日、1人の少女と共に、近くの商店街に買出しにいっていた。

先日、大きな仕事を終わらしたので、仲間に豪勢な食事をふるうためであった。




「先輩、今日はどんな食事を作ります?」




少女がかわいい笑みを浮かべながら、アキトに何を作るか聞いている。

それに対しアキトは、(無意識に)テンカワスマイルを発動させながら答えた。



「そうだね、みんな頑張ってくれたから、みんなの好物をたくさん作ろうかな。」




「そうですね。それがいいですよね。」




また、テンカワスマイルの犠牲者が出ると思われたが、

少女はなんともなく平然と言葉を返した。




「そういえば、 春霞ちゃんが『ロスト』に来てもう2週間かあ・・・早いものだね。」



「そうですね・・・両親に言われてここに来てから、半月もたったんですね・・・」




少女―――春霞がしみじみと呟く。

ここ2週間のことを思い出しているようである。




「にしても春霞ちゃんのご両親って、何者なんだろうね。

 いきなり本部に来て、【うちの娘をここで働かせてくれ】だもんなあ・・・」




「あの時は、びっくりしましたよ。

 両親と共に、外国を転々としていたら、いきなり日本に帰ってきて、

 【『ロスト』で働いて来い】ですよ。ほんと何者なんでしょうね?」




アキトの疑問に春霞も同意する。


ここで少しだけ、春霞について説明しよう。

蒼威 春霞(アオイ ハルカ) 17歳  159cm 胸の辺りまであるまっすぐで綺麗な白銀の髪。

ほんの少し、幼さが残る綺麗な顔立ち。

銀色の穏やかな瞳。小さな口。

10人中10人がかわいいと言うほどである。

おかげで事あるごとに告白されているが、

彼女はそれを全て断っている。なんでも他に好きな人がいるらしい。

ちなみに3サイズは、86・52・80である。




「まあ、この話はまた今度にしよう。とりあえず今は買出し、買出し。」



「そうですね。早く買出しを終わらせて、料理を作らないとね。」




これ以上考えても仕方がないのか、2人は考えるのをやめ、買出しに戻った。




この後、30分程で買出しは終わり、2人は本部に戻った。

ちなみにこの時買った食材等の量は軽トラック1台分であった。














その日の晩、『ロスト』のメンバーは飲んで、歌って、踊って、

そしてアキトと春霞の料理を食べまくった。


ほとんどのメンバーが騒いでいる中、

アキト・ケイン・キャナル・春霞の4人は離れた所で、

はしゃぐ仲間達を見ていた。




「それにしても皆さんよく食べますよね。」




仲間たちのその食欲に驚きを隠せない春霞。




「まあしかたないさ。

 ここんとこ仕事でみんな、まともな食事をしていなかったからね。」




アキトが苦笑しながら答える。

実際アキトの言うとおり、仕事が忙しくまともな食事は3日ぶりであった。




「それにアキトと春霞の作る料理は美味いからな。

 無理もないだろ。なっ、キャナル。」



「そうね。2人とも料理得意だもんね。

 ・・・あっ、そうだアキト、知らない人から手紙がきてたんだけど・・・」




唐突に、何かを思い出したようにキャナルが言う。




「手紙?珍しいな。ここの所在を知ってる人は少ないんだけどな。」



「私はまだ読んでないけど、読む?これなんだけど・・・」




そう言って服のポケットから封筒を出す。

アキトはそれを受け取ると、封筒を開け、中の手紙を読み始めた。




「えーっと・・・・

 【こんにちは、『ロスト』のみなさん。
 
  私はA.Mといいます。

  皆さんにお願いしたい事があって、この手紙を書きました。

  お願いしたい事とは、私の甥を助けてほしいんです。

  下に書かれている日に、次に書かれている場所でお待ちしております。・・・・】

 ・・・依頼なのかなあ、これは?」



「まあ多分そうでしょ。んでどうするの?受けるの?」



「そうだな、このA.Mって人の甥が困ってるみたいだし・・・受けようか。」



「わかったわ。そういえばいつ、何処で待ってるって?」




「えーっとね・・・日にちは明日、んで場所は住所が書かれてる。

 これによると、雪国だね。」




キャナルに問われて答えるアキト。




「明日かぁ・・・どうする?誰がいく?」



「あまり大人数でいくのも迷惑になるから・・・3人くらいかな。」




集まる場所が人の家みたいなので、少人数で行くことを決めるアキト。




「なら、行くのは私とアキト、それに春霞で決まりね。」




3人と聞き、出向くメンバーを即答するキャナル。

どうやらケインは留守番のようだ。

それについてケインは何も言わなかった。

どうやら最初ッから行く気はなかったらしい。

逆に驚いたのは、春霞であった。




「ええ!?わッ私ですか〜?」




まさか自分が選ばれるとは思わなかったのか、

かなりびっくりしていた。




「何もそんなにびっくりしなくてもいいでしょ。」




あまりの驚きように、少しあきれながら言うキャナル。




「でっ、でも私、ここに来てまだ日が浅いですし・・

 それに、まだ1度も依頼を受けたこともないし・・・」



「だからよ。今回は特に危険な事もないでしょうから、

 仕事になれるつもりで・・ね。」




キャナルの言う事もわかるので、少々ふて腐れながらも頷いた。




「・・・わかりましたよ。行けばいいんでしょ、行けば。」




その返事に満足したのか、微笑みながら立ち上がるキャナル。



「それじゃあ春霞、明日のお弁当よろしくね。」



「えッ私が作るんですか?」



「そうよ、期待してるからね。それじゃあ、おやすみ〜。」




言うだけ言って、自分の部屋に向かうキャナル。

あとに残ったのはアキトと春霞だけだった。

ケインはというと、他の仲間たちと飲んでいた。




「はあ・・・明日は忙しくなるなあ・・・」




予定外の仕事にため息をつく春霞。

そこへアキトが声をかける。




「まあまあ・・・そんなに忙しくないから。

 それに俺とキャナルだけで十分だと思うから、気楽に行こうよ。」



「はい・・・わかりました。」



「・・・・・」



「・・・・・」




会話が途切れてしまい気まずい雰囲気になる2人。

話す事がないなら、キャナルみたいにもう寝れば良いのではないか、

と思うかもしれないが、現在の時刻は8時。

寝るのは少々早い時間である。




「あのさ・・・」



「はい?」




沈黙に耐え切れなくなったアキトが声をかける。




「春霞ちゃんってさ、武道とかやってたの?」



「え?!」



「いやさ、春霞ちゃん結構強いだろ。

 『ロスト』の中でもだいたい6番目ぐらいに強いしさ。」



「あっ、はい。

 両親に自分の身は自分に護れるようにって、鍛えられたんです。」



「ふーん・・・やっぱり謎だね。君の両親は・・・」



「ふふ・・そうですね。私もそう思います。」




春霞が笑うと先ほどまで気まずかった雰囲気が、

穏やかなものになった

しばらく2人して笑っていたが、それも直に終わった。




「さてっと・・・まだ寝るにはちょっと早いけど・・・」




そういって立ち上がるアキト。

その場で軽く伸びをしたあと、春霞に顔を向ける。




「みんなにお酒を飲まされないうちに俺は部屋に帰るよ。」



「あっでは私も部屋に帰ります。」




アキトと同じように立ち上がって伸びをする春霞。




「それじゃあ、おやすみ春霞ちゃん。」



「おやすみなさい先輩。」




その後2人は自分たちの部屋に戻った。


なお、『ロスト』メンバーによる宴会は夜遅くまで続いたという。


























次の日

アキト達3人は電車を使い雪国へ向かった。

そして今、彼らは白銀の世界に立っていた。




「うーん・・・綺麗だねえ。」



「ほんと、綺麗ですね。雪景色を見るなんて何年ぶりだろう。」



「ちょっと寒いわね。早く行きましょう。」




アキト・春霞が雪景色に感動している中、

キャナルだけは寒いのか、2人を急かしていた。

しかし、キャナルの声が聞こえていないのか、

2人は周りの景色に見とれていた。




「2人とも景色に見とれてもいいけど、

そういうのは仕事が終わってからにしなさい。」




その声が聞こえたのかようやく2人は、目的地に向かって歩きはじめた。




「キャナルちゃん、ごめん、ごめん。」



「すみません、キャナル先輩。」
 



「いいから早く行きましょう。私寒いの苦手なのよ。」



両手で肩を抱きながら、2人を急かすキャナル。

それを見た2人は、無言で頷き、

手紙に書かれていた場所に向かった。



駅から歩く事、十数分。

アキト達は、表札に水瀬と書かれた家の前にいた。




「手紙に書かれていた場所はここね。」



「見たところ普通の家ですね。」



「とりあえず尋ねよう。」




アキトは、そういうと家のドアをノックした。

しばらく待っていると、ドアが開き、

中から薄い紫色の長い髪を三つ編みにした女性が出てきた。




「はい・・・あら、どなたですか?」




出て来た女性は、アキト達の姿を見ると軽く首をかしげて尋ねた。




「俺達は、トラブルコントラクター『ロスト』の者です。

 依頼でここに来てくれといわれたのですが・・・」




それを聞いた女性は微笑みながら答えた。
 



「あらあら、そうだったんですか。

 遠い所からご苦労様です。どうぞ上がってください。」




アキト達は、女性に招かれ、リビングに案内された。

その女性はというと、アキト達をリビングに案内したあと、

キッチンの方へ行ってしまった。



しばらくして先ほどの女性がトレーに何かを乗せて出て来た。




「寒かったでしょう。これでも召し上がってください。」




そういうと、テーブルの上に紅茶やコーヒー、お茶菓子を出す。




「すみません、いただきます。」



「「いただきます。」」




そう言ってアキト達は紅茶等をご馳走になった。

味はとてつもなく美味かったとだけ言っておこう。


一方、女性は紅茶にジャムを溶かしながら、アキト達に話し掛けた。




「そういえば自己紹介がまだでしたね。

 私は水瀬 秋子といいます。あの手紙を書いたのは私です。」




ソファに座りながら紹介をする女性――秋子さん。

秋子さんが自己紹介するのを見て、慌てて自己紹介をするアキト達。




「あっ、そうだったんですか。

 俺はテンカワアキトといいます。」



「私はキャナル・ボルフィードっていいます。」



「あッ私の名は蒼威 春霞といいます。」



「アキトさんにキャナルさんに春霞さんね。」




簡単に自己紹介を終わらすと、

アキトは依頼内容を聞いた。




「それで、依頼内容は何ですか?

 手紙には甥を助けてほしいと書いていましたが・・・」



「ええ、そのとおりです。」



「具体的にどうすればいいんですか?

 あと、何故助けて欲しいのかということも・・・・

 出来れば本人の口から・・・」




アキトの問いに、秋子さんは片手を頬に当て、

しばらく考えるそぶりをした後、答えた。




「・・・わかりました。

 確かに祐一さんにも話してもらったほうがいいですね。

 今呼んで来ますから少し待っていてください。」




そう言って秋子さんは、席を立ちリビングを出て2階に向かった。


2分ほどしてから、秋子さんはリビングに戻ってきた。

秋子さんの後ろには、

年の頃なら17、8歳の、中性的な顔立ちをした少年が立っていた。




「どうも・・・相沢祐一っていいます。よろしく。」



その少年――祐一はアキト達に向かって軽く礼をした。

アキト達は自分達も自己紹介しようとしたが出来なかった。




「祐・・・兄さん・・・なの?」




その震えた声に振り向くと、

春霞が両手を口にあてて驚いた顔をしていた。


問われた祐一は、春霞の顔をじっと見た。

少しして見覚えのある顔だと気付き、

春霞に声をかけた。




「春霞・・・なのか?」




それを聞いた瞬間、春霞は祐一に飛びついた。

祐一の胸に顔を埋め、しっかりと抱きついていた。




「祐兄さん!・・・会いたかった・・会いたかったよ・・・」




















ここからは祐一視点でお楽しみください。




「祐・・・兄さん・・・なの?」




その声の方を向くと、俺と同じ年くらいの女の子が、

両手を口にあてて驚いた顔をしていた。


祐兄さん?俺をそういう風に呼ぶのは1人しかいない。

けどあいつは今、外国にいるはずだしな。

俺は真偽を確かめるためその女の子を見た。


胸の辺りまであるまっすぐで綺麗な白銀の髪。

ほんの少し、幼さが残る綺麗な顔立ち。

銀の色をした穏やかな瞳。


ふむ・・・どうやら間違いないようだな。




「春霞・・・なのか?」




そう言った瞬間、春霞(ほぼ間違いないだろう)は俺に飛びついてきた。

俺は難なくとそれを受けた。

春霞はそれから、俺の胸に顔を埋め、しっかりと抱きついてきた。




「祐兄さん!・・・会いたかった・・会いたかったよ・・・」




春霞は胸に顔を埋めながら泣いていた。

俺はそんな春霞の頭をしばらく撫で続けた。


こいつに会うのも久しぶりだな・・・・

最後に会ったのは俺がこの町に来る前だったから、

もう2ヶ月以上会ってない事になる。


しばらくして落ち着いたのか、ようやく顔を上げる。

俺はその顔を見ながら、声をかけた。




「久しぶりだな春霞。元気にしてたか?」



「うん!祐兄さんも元気だった?」



「ああ元気だぞ。なんてったってあの親の息子だからな。」



「ふふふ・・・そうだね。」




微笑む春霞。俺はその笑顔に見とれていた。

なんていうか・・・前より1段とかわいくなったな。




「ゆ・・祐兄さん・・」




気付くと春霞が顔を真っ赤にしていた。

まっ、まさか・・・




「もしかして声に出していたか?」



「・・・うん。」




顔を真っ赤にしながら頷く春霞。

ぐはぁ

やってしまった・・・誰かこの癖をどうにかしてくれ〜・・




「だったらこれを食べてみます?」




秋子さんが手にオレンジ色の何かが詰まったビンを抱えていた。




「力いっぱい遠慮させていただきます!」



「そうですか・・・残念。」




危なかった・・・(汗)もう少しで地獄への第1歩を踏み出す所だった。

俺はまだ死に急ぐわけには行かないんだ。

春霞と添い遂げるまでは!




「祐兄さん・・・恥ずかしいよ・・・」




またしても顔を真っ赤にする春霞。




「もしかしてまた・・・・」



「声に出てたわよ〜」




緑色の髪をした女の子が楽しそうに言ってきた。

ぐはぁ!
またか!またなのか!

どうやらこの癖とは、一生付き合っていかないといけないようだ。




「まあいちゃつくのは後にしてもらって、

 とりあえず、自己紹介をさせてもらおうかしら。」




むっ、そういえば俺はまだ緑色の髪の少女と、

俺と同じくらいの男のことを知らなかったな。




「それじゃあ私から・・・

 私はキャナル・ボルフィード。『ロスト』に所属している17歳よ。」




ふむ・・・俺の1つ下、春霞と同い年か。

しかしなんで、メイドみたいな格好をしてるんだろう・・・?

確かにメイドは男の浪漫だが・・・




「次は俺だな。俺はテンカワ・アキト。
 キャナルちゃんと同じく『ロスト』に所属している。ちなみに18歳だ。」




こっちは俺と同い年か・・・なんか同い年とは思えない目をしてるな・・・

それになんだろう・・・何でか知らないけど俺と似てるような気がする。

こいつとなら直に親友になれそうだ。




「私も『ロスト』に所属してるんだよ、祐兄さん。」



「へー、そうなのか。」




抱きついたまま、顔をこちらに向けて、上目使いで言う春霞。

やっぱり、かわいい・・・かわいすぎる。




「それで。・・2人の関係は?相沢祐一君?」




緑色の髪の女の子――キャナルが聞いてくる。

俺達の関係か・・・・・・




「祐一でいいよ。それで俺たちの関係だが、春霞は俺の妹だよ。キャナルさん。」



「私も呼び捨てでいいわよ。それよりほんとなの、春霞?」



「あっ、はいそのとおりです。」




春霞は俺に抱きついたまま答える。

・・・抱きつくのをやめろとは言わないが・・・・

その・・・胸が当たるんだよ。




「あら?確か祐一さんは1人っ子のはずじゃなかったですか?

 それに苗字も違いますし。」




「秋子さんが知らないのも当然ですね。春霞は義理の妹だからな。」



「「「義理の妹?」」」




アキトとキャナルと秋子さんが首をかしげる。

春霞はというと、相変わらず俺に抱きついたままであった。




「ああ。春霞は俺の両親が、5年前にある事情で引き取った子だ。」



「ある事情って?」




キャナルが聞いてくる。

俺は言うべきどうか考えていた。


くい くい


少し考えていると春霞が服を引っ張ってきた。

見ると春霞が無言で頷いていた。

どうやら言ってもいいらしい。




「5年前、春霞の両親が事故死してな。

 身寄りのなかった春霞を、春霞の両親と親友だった俺の親が、引き取ったんだよ。」



「・・・・そうだったの、ごめなさい。嫌な事を聞いたわね。」



「いえ気にしないで下さい。両親の事は残念でしたけど、

 おかげで・・・祐兄さんと会う事が出来ましたから。




頬を染めながら言う春霞。

くっ、その姿は反則的なかわいさだぞ。




「君たちの関係はだいたいわかった。

 それじゃあそろそろ教えてくれないか?

 なぜ助けて欲しいのか、その理由を含めて・・・」



「ええ、わかりました。・・・・」










俺はこの町に来てからの事を全て話した。

7年前のこの町の事、ここで出会った女の子達の事、

その女の子達がそれぞれ、様々な傷を持っていたことなど・・・・




「ふむふむ、なるほどそれで祐一は彼女達を救ったと?」



「俺が救えたかどうかなんてわかりませんよ。

 ただ、俺は自分なりに彼女達にできることをしただけだ。」




実際俺は今でも信じられない。

7年間意識不明だったあゆが、意識を取り戻した事、

事故で入院した秋子さんが回復した事、

不治の病だった栞の病気が治った事、

狐だった真琴が人間になれた事、

瀕死の重体だった舞が回復した事、

他にもいろいろなことがあった。




「でもその結果、彼女達は救われたんでしょう?」



「まあ、そうなんだけどな。」




そうそこまではよかった。

ただ、全てが終わった後が大変だった。




「で、なんで助けて欲しいってことになるわけ?」



「それは私から話します。」



「・・・頼みます、秋子さん。」




俺は理由の説明を秋子さんに頼んだ。

秋子さんはキャナル達に説明を始めた。




「祐一さんが救った8人の女の子は、みんな祐一さんのことが好きなんですよ。

 皆、われ先にと祐一さんに告白してました。祐一さんはそれを受けてないみたいでしたが・・・」



「ええ、そのとおりです。」



「それでも彼女達は諦めませんでした。それだけならよかったんですが、

 彼女達は事あるごとに祐一さんに奢らせていたんです。

 イチゴサンデー、タイヤキ、バニラアイス、牛丼、肉まん・・・

 他にもいろいろと・・・」







「なんていうか・・・凄まじいな。」



「そっ、そうね(なんかアキトみたいね)。」



「ええ、このままでは金銭的にも精神的にも祐一さんが参ってしまうので、

 あなた達に依頼したというわけです。」




そうこのままだと、一週間もしないうちに、

俺の財布は空っぽになり、精神も参ってしまうだろう。




「よくわかりました、俺達に任せてください。

 (なんか昔の俺を見るようでほっとけないんだよな)」



「というわけで、私たちはこれからどうするかを決めるから。

 祐一、あなたは部屋に戻ってて頂戴。

 あっ、春霞。つもる話しもあるだろうから、あなたも祐一の部屋に行ってていいわ。」



「えっ、いいんですか?」




春霞が瞳を輝かせながら問う。




「ええ。ここは私とアキトで十分だから、

 久しぶりに恋人らしく、いちゃついてきなさい。」




その言葉に春霞と俺は驚愕した。

俺達が付き合っていることは言っていないのに。




「言わなくてもあなた達の態度でまる分かりよ。

 あんだけ目の前で、2人だけの空間を形成されたら誰だって気付くわよ。」




「祐兄さん・・恥ずかしいよ・・」



「奇遇だな春霞、俺もだ。」




まさかもろばれだったとはな。

そんなにいちゃついてたか?




「「「いちゃついていた。」」」




ぐはぁ

どうやら声に出ていたらしい。

秋子さん、アキト、キャナルの3人に言われ、

俺は撃沈した。




「はいはい、早く行った行った。

 春霞、早く連れて行きなさい。」



「あっ、はい。先輩ありがとうございます。」




俺は春霞に引きずられ、自分の部屋に戻った。


俺達はそれからいろいろ話し合った。

今までどうしていたか?両親は今どうしているか?など、

たわいもない話をしつづけた。

俺は久々に会ったかわいい妹でもあり、

恋人でもある春霞とのひと時を楽しんだ。

しばらく話していると、不意にお腹が鳴った。

そういえばもうそろそろ昼だな。




「祐兄さん、お腹すいたの?」



「ああ、どうやらそうらしい。」




「そうらしいって自分の事でしょ、もう。
 そうだお弁当作ってきたんだけど食べる?」




何!春霞の作ってきた弁当だと、

これは頂かなければ罰が当たるな。




「頂こうかな。」



「うんちょっと待ってて、今出すから。」




かわいく微笑みながら、持ってきた手荷物から、

弁当箱を取り出す。

その弁当の上には1つの手紙が乗っていた。




「あれ?なんだろうこの手紙?」



「さあ、とりあえず読んでみるか?」



「うん。」




俺と春霞はその手紙を読んだ。

そこにはこう書かれていた。

”私とアキトの分の弁当も食べさせてあげなさい。

 私たちは他のものを食べるから。


 P.S あまりいちゃつき過ぎないように♪”




「むう〜・・キャナル先輩、始めから祐兄さんがここにいるって知ってたんですね。」




頬を膨らませながら呟く。

そんな姿もかわいいと思う俺であった。




「まっ、いいじゃないか。こうやって2人で過ごせるんだし。」




そう。なぜ知っていたのかは気になるが、

そんなことはどうでもよかった。

おかげで春霞と再開出来たのだから。




「祐兄さん・・・また恥ずかしい事言ってる。」



「また口に出してたか?」



「うん・・・はっきりと・・・」



「ははは、まあいいじゃないか。

 春霞に会えて嬉しいのは本当なんだから。

 春霞は嬉しくないのか?」



「・・・・そんなわけないじゃない・・・・」



相変わらず顔を真っ赤にしながら、小さく呟いた。

うーん、かわいいやつ。


























一方、その頃


「まったく世話が焼ける2人ね。」



「本当ですね。」




なにやら愚痴ってるキャナルと秋子さん。




「もしかして2人とも、祐一と春霞ちゃんの事知ってたのかい?」




どうも2人の様子がおかしいので、聞いてみる事にしたアキト。




「ええ知ってたわよ。私に掛かればその程度の情報、すぐにわかるわよ。」



「私は、姉さんから聞いていましたで・・・」



「なるほど、納得だ。」



「さて、祐一さんの事ですけど・・・」




続きを言おうとして、キャナルに待ったをかけられる。




「言わなくてもわかるわ。私たちの所で預かって欲しいんでしょ。」



「お願いできますか?」



「もとより、そのつもりだったからね。いいでしょ、アキト?」



「ああ、俺はかまわないよ。」




アキトも異存はなかった。




「それでは、2人が降りてくるまで、

 自家製のジャムでもどうですか?」




そういうと、キッチンから様々なジャムの瓶を出す秋子さん。

2人は豊富なジャムに驚きを隠せないでいた。




「うわぁ・・・凄いですねこれ全部自家製ですか?」



「ええ、趣味みたいな物でして。」



「それじゃあ、いたただきます。」




2人はたくさんあるジャムを1つずつ見ていって、

どれから食べようか考えていた。


しばらくしてある1つのジャムの瓶の前で立ち止まった。

その瓶の色は鮮やかなオレンジ色だった。




「よし、これにしよう。色も綺麗だし。何で作られているか興味あるしな。」



「それじゃあ、私もこれにするわ。」



「ジャムだけでは、なんですのでこれにつけてどうぞ。」




そういうと秋子さんはトーストを2人に渡した。

いつのまに作ったんだろう?

2人はそれを受け取ると、

ジャムを塗りつけ、そしてかじった。



パクッ×2



う!(なっ何だこの味は?!まずいわけでもなければ美味しいわけでもない。

   みっ味覚がおかしくなるような感覚・・・おまけにジャムなのに甘くない!?

   わからん・・・未知の味が口内で暴れる!?

   ・・・いっ、いかん意識が遠のく・・・しっかりしろ!テンカワアキト。

   今は仕事中だ!気絶してる暇はないんだぞ!)




「あら、美味しい。そん所そこらの物よりよっぽど美味しいじゃない。」




同じ物を食べたのに2人の反応は、180度違っていた。

アキトは必死で気絶しないように、全力を尽くしていた。

キャナルはというと、とても美味しそうにトーストをかじっていた。



「秋子さん、これの作り方教えていただけませんか?

 とっても気に入りました。」



挙句に作り方まで聞いていた。よっぽどこのジャムが気に入ったようである。

秋子さんは、少し困った顔で答えた。




「すみません。これの作り方は秘密なんです。

 でもこの味を出すヒントぐらいは、教えてもいいですよ。」




本当はヒントすら教えないのだが、

久しぶりにこの味が、わかってくれる人に出会ったので、

気分がいいようである。




「ありがとうございます。

 ヒントだけでも十分です。」



「ではこっちに来てください。

 ヒントを教えますので。」




2人はキッチンの中に入っていった。




「わぁ〜・・・凄いですね。こんなものを使うなんて・・・」



「・・・ええ・・・ちょっと自慢なんですよ。・・・・それでこれを・・・・」







2人がキッチンに入ってから、だいたい5分。

2人は笑顔でキッチンから出てきた。




「ほんと、ありがとうございます。秋子さん」



「いえ、私も楽しかったですから。」




その時の2人の笑顔は、見ればほとんどの男性が落ちるほど、眩しかった。

ただし、笑顔の理由にジャムが、関係していなければの話だが。
 








「くっ・・・・俺は、・・・・負けん!・・・」



アキトは、今だ謎ジャムに対抗していた。















後編に続きます。