第八話
満天の月夜に、うたが流れる。
高く、高く、高く、高く。
低く、低く、低く、低く。
果ての見えない砂浜に。
打ち来る波の観客に。
皓き月へと、うたが流れる。
歓喜と讃美に相応しい、美に愛でられしシ者のうた。未だ見ぬ君へと、渚を流る。
残酷な、テーゼをのせて。
そしてうたは、歩みはじめる。
運命の、車輪を瞼に描きつつ・・・・・・
触れ合いは、はじまり
「・・・・・・はい、後の人から集めて下さい。」
担当教師の言葉を待たず、爆発する教室内。
「・・・おい、どうだった?」
「・・・・・・聞くな、ボケ。」
そこかしこで、自己予想を問う声が上がりまくる。
そう、今日は期末テストの最終日。後はもお、夏休みに向けて一直線である。これでやかましくならなかったら、それこそ不気味と言う物である。
「きりーつ!礼!ちゃくせーき!」
毎度御馴染み委員長、洞木ヒカリの良く通る声が響き渡る。即座に話し声がやみ、その場の全員が立ち上がって礼をする。一糸乱れぬその動きは、かなり条件反射も入っているに相違ない。
「・・・ね〜ね〜シンジィ!どっか寄ってかない?」
「・・・碇君。綺麗な食器がある店、見つけたの・・・一緒に、買いに行きましょう。」
そして挨拶が終るやいないや、とある生徒の席にすっ飛んで来た美少女が二人。
「・・・・・・あ〜によ、ファースト?シンジは、あたしと遊びに行くのよ!優等生は寄り道しないで、とっとと帰りなさいよッ!!」
癖の無い、艶やかな栗色の髪を紅いリボンでポニーテールにした勝ち気な美少女、惣流・アスカ・ラングレーはびしぃっ!とゆ〜効果音付きでもう一人の美少女の横顔に人指し指を突き付け。
「・・・碇君。私・・・その・・・お料理、始めたいの。でも、何が入り用か解らない・・・だから・・・あの・・・(ぽっ)」
蒼銀の髪をシャギーの入ったショートにした普段は物静かな美少女、綾波レイはそんなライバルを存在丸ごと無視して、自分の想い人に一生懸命語りかけていた。
「・・・え、え〜っと・・・」
そして外見ではほぼ文句の付けようの無い美少女二人が想ってやまない少年、碇シンジは例によって例の如く、犯罪的に芸無しな反応を見せていた。これで良く、二人とも愛想を尽かさないものだと大抵の人間は思うのだが・・・それは、この子供達の事を良く知らないからに他ならない。
「・・・・・・平和だねぇ〜。」
ほとんど風物詩と化している友人一人+同級生二人をやや遠巻きにして、メガネにそばかすの少年・相田ケンスケは机に左手なんぞ突きながら呟いた。ちなみに右手はポケットの中で、隠しカメラのシャッターを忙しく操作してたりもする。何しろ最近は、今まで注文が来るなど思いもしなかった被写体への要望がてんこ盛りなのだ。多少アンニュイになってよ〜がサードインパクトが起ころうが、決定的瞬間は是が非でも押えなければならないのである。
(それにしてもまあ、毎日毎日良く飽きないよ。碇の奴もそうだけど・・・綾波も惣流も、良くこんなので満足してられるよな。)
声には出さずに呟いて、ケンスケは思わず苦笑した。満足してないから、暇さえあればアプローチしてるんじゃないか。それこそ、これを見ないと学校に来た気がしないくらい頻繁に。
そこまで考えて、ケンスケはふとあの事を思い出した。好奇心のままに行動して、二重三重に絞られ切ったあの事件を。
「・・・今が、幸せなのかもしれないな。あいつには・・・」
そこでケンスケは意識するとも無く、委員ちょの姿を捜して視線をさまよわせる。あの時自分達を容赦無く絞りまくった一人であり、悪事の片棒担がせた親友に、恐らくは特別な感情を抱いている、そばかすにお下げの少女。
「・・・いない、か・・・今日も、トウジのとこなんだろうな。」
二回ほど前の、避難の後辺りからだろうか。やたらと面倒だった面会手続きが、急に簡単になったのは。
その事をヒカリは「身内とみなされた」からだと思っているようだったが、ケンスケの意見は違っていた。そもそもトウジの肉親ですら中々会えなかったのに、言っちゃ悪いが部外者の委員ちょにまで、何だって面会が一気に開放されたのか?
何か複雑な事情があるのはまず間違いないが、それがなんであるかは見当も付かない。解るのは、トウジが入院してから間断無くやって来た一連の「避難」の後、自分の父親の口が段違いに堅くなったと言う事だけだ。
何か、とんでもない事が起こりつつある。
そんな事を考えていると、太平楽なラブ米も何だか不吉に思えて来て・・・ケンスケは、思わず頭を振った。
「大丈夫・・・世界の終わりが来たって、あいつらはあのままさ。・・・きっと・・・」
「・・・ほらも〜!シンジっ行くわよっ!!」
「・・・碇君。お願い、一緒に来て・・・」
「・・・あああああ、ふふふふふたりとも、ちょちょちょっと落ち着いて・・・!」
ケンスケが洩らした呟きは、他ならぬ名物トライアングルの喚き声に掻き消され、誰の耳にも届かなかった。
だがケンスケにはそれが、立ちこめる暗雲を払ってくれるのがこの三人である事を表わしているような気がした。我ながら、馬鹿馬鹿しいとは思いつつ・・・・・・
終焉の、はじまり
「・・・・・・なあ、委員ちょ。センセ、どないしとる?」
茜色に染まる病室で。
何時も通り言葉少なに花瓶の花を替え終えたヒカリの背中に、元エヴァンゲリオン参号機パイロット、鈴原トウジはやや唐突とも思える言葉を投げ掛けた。
「・・・・・・うん・・・・・・元気、よ。」
「・・・・・・さよか。」
言葉を選んだ末の平凡な返答に、トウジは素っ気無い反応を返す。
だがその中に、どれほどの重みがあるのだろう。ヒカリは、その半分も汲めていない自分が悔しかった。察していても何もしてやれない、自分のちっぽけさがどうしようもなく恨めしい。
「・・・・・・なあ、委員ちょ。」
「・・・・・・なに?」
「・・・・・・・・・いや、何でもあらへん。」
「・・・・・・・・・そう・・・・・・・・・」
まただ。
せっかくの会話のきっかけ。ずっと自失していたトウジが、やっとの事で示した外界への興味。
なのに、自分はまた何も出来ない。
だから。
だから、ヒカリは言った。
ありったけの勇気を微笑みに変えて、想いの全てをさり気なさに乗せて。
「・・・・・・ね、鈴原・・・・・・今度さ、碇君も連れて来よッか?」
そして終焉は、はじまり
「だーかーらー!!何であの柄にしなかったかって聞いてんのよっ!?」
「・・・あのお皿、碇君が見てたから・・・」
「だ〜も〜ッ!!シンジはあれだけ見てた訳じゃないでしょお!?大体、アンタが使うもんなんだから、アンタの趣味で決めりゃあい〜じゃないのよっ!」
「・・・私・・・碇君と一緒がいい・・・(ぽっ)」
レイが住む、取り壊し寸前のマンモス団地への道すがら。
アスカはレイと、激しい舌戦を繰り広げていた。もっともこれを舌戦と呼べるか否かには、議論の余地が多分にあるが。
そして8mほど遅れて、紙袋の山がゆっくりと歩いていた。
「・・・ホントにもう・・・何でずっと、おんなじ事であれだけ騒げるんだよ。」
ほとんど視界ゼロの割には足取りに危なげのない紙袋山の芯、シンジは誰にも聞こえないように一人ごちた。万が一にも先を行く姦しい同居人の耳にでも入ったら、後が怖いから。
『マァマァ、頭脳体。アレハあすかチャンナリノ《コミュニケェション》ナノヨ。可愛イジャナイノ。』
その代わりと言う訳でもないだろうが・・・もはや聞きなれた、澄んだ女性の《声》がシンジの脳裏に響き渡る。その余りの呑気さに、シンジは無駄と知りつつ文句の一つも言ってやった。
(それはそうかもしれないけどさ・・・だからって、こんな道の真ん中でやんなくたっていいじゃないか。近所迷惑だよ。)
『ナ〜ニ言ッテンノヨ頭脳体。半径500m以内ニ、私達以外ノ知的生命体ハイナイワヨ。幾ラあすかチャンノ声ガ大キクテモ、ソコマデ届カナイワ。』
(・・・・・・う・・・・・・)
案の定、具体的数値付きの《声》の反論に、何も言えなくなるシンジである。
この《声》が聞こえるようになって結構な日数が過ぎているのだが、シンジは未だに持て余し気味であった。まぁ確かに、考えてる事がほぼ筒抜けではやり込めようがない。もっともシンジ生来の気弱さが、それに拍車どころかガスタービンをかけている事もまた、事実ではあったが。
「あのねぇぇぇぇぇぇっ!!あの柄はウチにある奴じゃないって、さっきから言ってるでしょーーーーーーっ!?」
「・・・でも・・・碇君は、この皿を見てたわ。」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!!!何遍同じこと言わせんのよ、このバカファースト!!」
(・・・あ。まず・・・)
シンジと《声》が、観客のいない漫才を誰にも解らないように披露している間に、アスカの臨界が迫って来たようだ。シンジは仲裁に入る為、競歩程度に足を速める。間に入っても無駄、という説もあるにはあるのだが、放っておくとどんな大破局が訪れるか解ったもんではない。世の中、やらないよりマシとゆーものは確かに存在するのである。
『・・・ア、ソウソウ頭脳体。』
(なに?これから大変なんだから、手短に言ってよ。)
文字通り思い出したような口調の《声》に、シンジはぶっきらぼうに思念を返す。《声》がこう切り出す時は、9割方が役に立たない無責任発言である。怒ったような感じになっても、致し方ないところではあろう。
『ジャア手短ニ言ウケド、あすかチャン達ノ前マデ出タ方ガイイワ。17秒以内ニネ。』
(・・・それ、どういう事さ?)
訝しげに問い返しつつ、シンジは更に足を速めた。《声》のこの言い方は、何時もの太平楽さとは少し違う。
『ソレハネ・・・』
《声》が何か言いかけ、シンジが一触即発な美少女二人に追い付き、レイのマンションが視界に収まり切らなくなった瞬間。
どごぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!
マンションが、唐突に爆発した。シンジ達に向かって。
「「なっっ!?」」
期せずして、ユニゾンで驚いてしまうシンジとアスカ。レイも声こそ出さなかったが、目を真ん丸にして驚いている事を表現していた。もっとも、誰も見てはいなかったが。
『・・・れいチャンノまんしょんガアンナ感ジデ壊レソ〜ダカラ、瓦礫避ケニナッタ方ガイインジャナイカト思ッタノヨ。多分、当タッタラ痛イデショーシ。』
「アスカ!」
「うん!」
例によって、事態に関らずのんびりと言葉を継ぐ《声》を待たず。
シンジとアスカはすぐに、行動を開始した。シンジの紙袋をすばやく受け取ったアスカは、背中を使ってレイをシンジの影へと押しやる。両手が空いたシンジは間髪入れずに振り返り、左手をまるで盾のように中空へと掲げた。
『ぷろてくしょん・しゃったー!!』
《声》が叫ぶと同時に、かざした左手から陽炎のような空間圧力波動が展開する。それは砲弾のように降り来る瓦礫を無造作に退け、粉塵と共に押し寄せる煙を左右に押しのけた。さながら、海を割った始者のごとく。
「・・・あれ?ATフィールドじゃない・・・?」
だが、シンジは伝説の人物ではなかった。予想していた光景と異なる現象に、思わず間の抜けた台詞を洩らしてしまう。もっとも彼にとっては幸いなことに、爆音の余波と瓦礫の砕ける音にかき消され、その呟きは後ろにいる同級生二人には届かなかったが。
『エエ。ATふぃーるどダト、生キ埋メニナル可能性ガアッタカラコッチヲ使ッタノヨ。別ニ私達ダケナラアンナ瓦礫ノ一ツヤ二ツ、元ニ戻レバソレデおしまいナンダケド・・・れいチャンヤあすかチャンガコンナ近クニイタラ、チョットマズイダロ〜シネェ。』
(・・・うん・・・それは確かに、そうなんだけど・・・)
生き埋めどころか、当たれば即死間違いなしの瓦礫を排除しつつ、《声》は呑気極まりない口調でシンジの疑問に答えた。答えられたシンジはというと、一応相槌は打ったものの、どこか釈然としない感じであった。
『・・・ナ〜ニヨ、頭脳体?ナンカ、問題デモアルノ?』
(いや、問題ってわけじゃないんだけどさ・・・なんかどんどん、後戻りできない身体になってる気がして・・・)
『ナ〜ンダ、ソンナコトォ。別ニイ〜ジャナイノ、コレ位出来タッテ。世ノ中、自動車食ベチャウ人間ダッテイルノヨォ?ソレニ比ベタラ、コンナ程度ハ大シタ芸ジャナイワ。ダカラ、気ニシナイ気ニシナイ。』
(・・・・・・問題の観点が全然違うよ・・・・・・)
それなりに深刻な悩みに死ぬほどズレまくった答えを返されて、シンジは深々と嘆息した。前々から思っていたことではあったが、《声》の感性には想像を絶するものがある。だが、そのとんちんかんな受け答えでシンジの心が軽くなっていることもまた、事実であった。
『ソレハソレトシテ、頭脳体。ソロソロぷろてくしょん・しゃったー、解除シテモイ〜ンジャナイ?ヒト段落ツイタミタイヨ。』
(あ・・・うん。そうだね。)
もう何も降って来なくなった辺りを見回し、シンジは腕を降ろす。途端に遠巻きにたゆたっていた煙が押し寄せ、シンジ達は派手にむせ返った。
「げほっ!げほっ!げほがほっ!!」
「ごほっ、ごほっ、ごほっ・・・」
「・・・けほけほけほけほ・・・」
一通りの咳で煙の粒子を喉から追い出すと、アスカは八つ当たり気味にシンジに食って掛かった。
「くぉらバカシンジッ!!ど〜せ守るんだったら、最後までメンドー見なさいよっ!あたしの美貌が煤けたりしたら、アンタ責任取ってくれるんでしょうね!?」
「あ、その、えと、ご、ごめん。」
「ごめんじゃない!責任取ってくれるの!?くれないの!?」
シンジの胸元に指を突きつけ、アスカはくっつかんばかりににじり寄る。端から聞くと誤解を招きそ〜な発言ではあるが・・・その白皙の頬がうっすらと上気しているところをみると、解っててやってるらしい。
『アラアラ。あすかチャンテバ、意外トセッカチネェ。《責任取ッテ》ハ、女ノ子ノ最終兵器ナノニ・・・』
(・・・・・・そんな問題じゃないよぉ・・・・・・)
迫りまくるアスカにたじたじとなりながら、シンジは情けない台詞を呟く。このところのアスカは、一度言い出したら満足する答えが出るまで、決して諦めたりしないのだ。出会った頃は、すぐに興味を失ったというのに。
が、今回は場合が場合であった。シンジにとっては、好都合なことに。
「・・・そ、そ、そんな事より!いったい何が起こったんだろう!?警報とか、無かったよね?ね!?」
「そういえば・・・・・・」
よ〜やっとその事に気付いたシンジが、早口に捲くし立てる。声が裏返っちゃったりしてるので誤魔化そうという魂胆はバレバレなのだが、確かに今はそれどころではない。
『アァ、ソノ事ォ?ダッタラ、サッキみさいる撃ッテ来タ奴ガ、モウスグ視認デキルワヨ。』
「・・・・・・えぇっ!?」
のんびりと重大情報を告げる《声》に、シンジは思わず声を上げる。傍から見れば突然なその行動に、アスカの視線がシンジに向けられようとした刹那。
《それ》は現れた。収まらぬ爆炎を突き抜けて。
チタンブラックに輝く潜水艦のような胴体に、鳥類を彷彿とさせる逆関節の足が1対。その斜め前方には、3本指のマニピュレーターが左右対称にくっついている。煙を纏わせた、たくさんの突起物はセンサーか、はたまた銃口か。
もっとも突起物の正体が、何であっても関係は無かった。《それ》は明らかに、戦うために作られた存在であろうから。
その事を本能的に察知したシンジは、半ば無意識にアスカ達を庇う位置に入る。がしかし、煙を纏った鋼鉄の破壊者は、その横を滑るように通り抜けていった。風圧で、もう一度煙をシンジ達に押しつけながら。
「・・・うぷッ!?」
「んごほごほごほッ!!」
「・・・けほん、けほん、けほん・・・!」
再びむせ返るシンジ達三人。煙の大波が去り、上げた両腕を恐る恐る降ろして見ると・・・煤けるにい〜だけ煤けまくった、他2名の間抜けな顔が視界に飛び込んで来た。思わず、吹き出しかける約2名とひたすらきょとんとする約1名。
「・・・って、笑ってる場合じゃないのよっ!!シンジッ、追いかけるわよっ!」
今度は自力で事態を思い出したアスカが、泥ならぬ煙しぶきを浴びせて逃げた、謎のマシンをびしいっ!と指差す。彼女のファンが見れば惚れ直すこと間違い無しの凛々しさではあったが・・・残念ながら惚れ直してほしい男の子は、極めつけのニブチンであった。
「え?追いかけるって・・・・・・どうやって?」
「・・・アンタ、バカぁ!?アンタなら、追いつくなんてワケ無いでしょッ!」
「え〜?無理だよそんなの・・・・・・あんな、100km以上出てる奴に、追いつけるワケ無いじゃないかあ。」
「何バカな事言ってんのよッ!?エヴァの最高速度は、300km/hを軽く越えるのよ!ましてやアンタ、空飛べるんでしょお!?アンタの《力》なんて、こ〜ゆ〜時にしか役に立たないんだから、しゃんとしなさいよ!!」
「あ、う、うん。解った。そういうことだね?」
「・・・まったく・・・」
相変わらずの察しの悪さに、アスカは深々と嘆息する。全く何だってこんな奴に、このあたしが・・・・・・
「・・・えッと、それじゃあちょっと下がってて。危ないから・・・」
そんなアスカの様子に気付くこともなく、シンジは無造作に声をかける。まるでこれから花火かヨーヨーでも披露するかのような気軽さだが・・・アスカは知っていた。レイも知っていた。
これから起こる、《奇跡》の真実を・・・・・・!
(・・・・・・さあ、やるよ。)
『了解。次元改変機構、始動。N次空間接続、開始。』
神話の、はじまり
軽く目を閉じたシンジの周りに、風が吹く。莫大なエネルギーを持つ、台風での動きそのままに。
時に、西暦2015年。
『第壱、第弐空間励起機構、圧力正常。動力干渉、0.72491351。』
戦いと日常が混在する時代に。
台風の目と化した少年の身体が、輝いていく。遠くからそれを見つめる赫と蒼に、黄金色を宿らせて。
常夏の島と化した日本に、一人の少年が在った。
『新設機構調整、全テ完了。頭脳体、いめーじヲ。』
極々平凡な中学生であった彼に、ある日使者が訪れた。
《声》を受け、少年は念じる。かつて自分が乗っていた・・・人類最後の希望と呼ぶには、あまりにも怪異なその姿を。
運命の使者は名乗る。『エヴァンゲリオン初号機』と。
そして、《声》が叫ぶ。凛々しく力強く、雄々しく気高く。
『臨戦体制移行!』
それはかつて汎用人型決戦兵器と呼ばれていた、無敵の守護神。
アスカは、見た。レイも、見た。
巨大な黄金に包まれし、青紫の巨神の生誕を・・・・・・!
これは自らの存在を賭け生きた、少年少女達の神話の叙述である
『初号機活動形態、開始!』
新人類エヴァンゲリオンif《激突編》 其の八
「シ者達のメロディー」
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