ニューヨークを恐怖の渦に陥れた吸血鬼事件からしばらくして、街はすっかりその平穏を取り戻していた。
その街の片隅で――――――
「おい、なあ、ナオ!!」
「・・・・・・」
「んだよ、まだ遅れてきた事怒ってんのかよ?」
「『ってんのかよ』じゃねー―よ」(いっぺんこいつとは決着をつけんとな・・・・・・)
「ところでよぉ。滝役って女のガキじゃなかったけか?」
「いうな。あの配役じゃあんなアクションシーンは無理だろうが」
「ったく、大人の事情ってやつかぁ?」
「やかましい」
「お前よ」
「ん?」
「今までどこで何やってたんだよ」
「俺か?俺は・・・・どこにいたって相変わらずさ」
「・・・・・まぁ、そんなとこだろうな」
「ほら、ナオさん!!もう出番きちゃうよ!!ちゃんと来なきゃ、もうお店に入れてあげないからね!!」
「おっと・・・そいつは困る、さっさといかねぇとな」
わきあがる店内。今この場にいる人間全てが上げている歓声は、ステージの中央でスポットライトを浴びながら朗々とした声で歌う少女、ユキナへと向けられていた。観客席の最前列には、ヒカルやサイゾウ、そして、退院したエミリオを含む、孤児院の子供達がいた。
コンサートが終わり……
「そうそう、ユキナのことは礼を言っとくぜ。お前がワクチンを持ってきてくれなかったら今ごろは・・・・」
「ああ、ぎりぎりで進行を抑えられたな。まっ、これもヒーローとして当然のことってやつだ!!でもな、それもあるが・・・・」
ガイはガイクロンのエンジンをまわし始めた。
「あいつぁ、死にもの狂いで人間でいようとした。人の心っつーのには、そういう力もある。くぅーー、ひさびさに燃えたぜ」
「おい、もう行くのか」
「ああ・・・・なあ、ナオ」
「あ?」
「・・・・・・・・・また、戦いが始まるかもしれん」
「・・・・・・・ポイな」
「そん時ゃあ、頼むぜ」
そう言って、ガイはバイクに足をかけた。
「・・・・人類の自由と平和ってやつか?ちっ、しゃあねぇ」
そう言った時にはもうガイクロンは走り始めていた。しかし、ナオは腹をたてはしない。そのまま静かに自分もガイに背を向け、歩き出す。
(俺がこう答えるのがわかってんだろうな、あいつには)
「手伝ってやらあ」
摩天楼を包まんとした闇を払った、一陣の「疾風」は、訪れた時と同じように、誰にも知られることなく、街を通り過ぎていった。
第一話 摩天楼の疾風 END
次回予告
「正義でも悪でも殺しあうような奴は皆悪魔だよ!!」
ハーリーの居場所がわかった―――ガイからのメールを受け取り、内戦の続く「ガモン共和国」に向かったナオ。その国で語られる、敵味方の区別なく大量殺戮をしているという『紅い拳の悪魔』の噂。戦災孤児や負傷者を収容する診療所での再会。力なき者達を狙う黒い影。
次回、「たった一人の戦場」
「ほぉぉ・・・・いい性能だな。キサマの作戦目的とIDは!?」
「正義。仮面ガイダー二号」
あとがき
皆様、はじめまして。アトランティスです。こういったSSを投稿するのははじめてなので、まだまだ拙い所が多々ありますでしょうが、温かく見守っていただけると幸いです。できるかぎり努力していきますので、よろしくお願いします。
代理人の感想
はい、お気付きの方はお気付きの通り、この作品は代理人の作品「仮面ガイダー」を元にしています。
もっとも、事実上名前をお貸ししただけなので殆ど別物ですが(笑)。
思い起こせば今年の四月。
このネタの許可をもらいたいというアトランティスさんのお問い合わせに返事を返してから早半年。
・・・で、なんてぇかもろにネタが被る作品が一つ出てしまいましたが
ライダーのキャスティングは随分違うようですし、そこらへんで色々と差はつけてくれるでしょう。
事実上競作みたいになってしまいましたが、これで双方の作品の質が上がるといいですね。
では、次に期待して。