「・・・・確かに・・・誰かが乗っていた跡があるわね」

ウリバタケに呼ばれて格納庫にきたムネタケが回収された敵兵器を見てそう呟く

「しかし提督、そんな事がありえるのでしょうか?

今まで、木星蜥蜴は無人兵器しか送り込んでいません

それにイネス先生は普通の生物にボソンジャンプは耐えられないと言っていたはずです」

「・・・それでも・・・これが事実よ・・・無人兵器にはこんなコックピットなんて要らないわ

とりあえず艦内に潜伏中と思われる敵パイロットを見つけ出して捕まえるわよ

下手に混乱を大きくしたくないわ、できるだけ内密に事をはこぶわよ」

「でもよ、宇宙軍と違ってナデシコには艦内警備隊なんざ乗ってねえぜ」

「・・・・そうね・・・・テンカワとイツキちゃんには月に先発して向かってもらおうと思ってるし・・・

整備員は五人一組で、副長はパイロット達に連絡して最低でも二人で捜索に向かって頂戴

コックピットを見る限り敵パイロットは一人がいいとこでしょうからね

発見したからといって焦らないで、他の部隊に情報を伝えて確実に捕らえるのよ」

ムネタケの言葉に全員が大きく頷きそれぞれがチームを組み捜索に向かうこととなった




機動戦艦ナデシコif
『新たなる刻の歌』
第十四話 遠い星から来た『彼等』

ちなみに・・・アキト達が月に向かうこととなった理由は二つあった

まずは早期の戦力補強、アーサー、アルテミスの両機はナデシコよりも高速度で動けるため早くに月艦隊と合流できるのだ

もう一つは・・・・ネルガルが製作している最新鋭機のテスト役である

アキトには最新の単独強襲用機の調整を、イツキには最新型エステの調整を任せられたのだ

その後・・・・・潜伏したパイロット・・・・白鳥九十九は正史通りミナトとの出会いを果たした



その頃・・・・・木連戦艦ゆめみづき

「・・・その情報は本当か?」

「はい・・・・偵察型で北辰殿がナデシコに潜入しました」

「ちっ、・・・・ナデシコの内部構造はわかるか?」

「いえ・・・・・申し訳ありませんが・・」

「そうか・・・・・仕方あるまい・・・舞歌に伝令を、『高速輸送機にて影を送れ、我、友を守りにゆく』とな」

「了解しました・・・・・いいのですか?おそらく北辰殿は閣下の勅命を受けた物だと・・・・」

「白鳥がナデシコに乗り込んでいるなら話は別だ、奴の事だ・・・下手をすれば北辰に喧嘩を売りかねん」

「なるほど・・・・艦長の性格ならそうかもしれませんね」

「・・・月臣はどうしている」

「謹慎を命じられてからずっと個室に篭っているようです」

「月臣に伝えておいてくれ、本日付けで謹慎を解除、艦の指揮を託す、こちらからの戦闘行為は禁止・・・・・とな」

「了解しました」

提督・・・・黒河龍斗はそう言うと格納庫に向かった

その後・・・・・彼は送られてきた高速輸送機に乗ってきた悟刻達と合流

その高速輸送機を使いナデシコへの潜入を決行した・・・・・



その頃・・・・ナデシコブリッジでは・・・・・

「驚きましたなーーー、間違いなく地球人類です。

多少、遺伝子を弄くった跡はありますが」

プロスにより九十九の遺伝子データの確認が行われていた

(ブリッジに集合したのはとっさの時に反応できるようにとのムネタケの言葉による物)

「私は地球人とは違う!!誇り高き木連の兵士だ!!」

プロスの言葉に真っ向から反論する九十九

「まぁ言い合っても仕方がありませんので・・・・・・艦長、彼をどうしましょうか?」

「うーん・・・・・そうですね・・・・」

ユリカが九十九の処分をどうしようかと悩んでいた時・・・・・・

『ヴィーーー!!ヴィーーーー!!ヴィーーーー!!』

突如として警報が響いた

「どうしたのルリちゃん!?」

「最悪です・・・・・・侵入者が七人・・・・ブリッジに向かってきています」

「七人?・・・・それくらいだったらあんまり深刻に考えなくても・・・・」

「いいえ・・・・言いたくはありませんが・・・・そのうちの一人は・・・・おそらくアキトさんと同等の力を持っていますよ」

「すまないが侵入者を見せてはくれないか?」

九十九がルリに頼み侵入者達の映像を見せてもらう

そこには・・・・疾走する編み笠の男達・・・・・北辰と北辰六人衆が映っていた

「なっ!!何故北辰がここに・・・・」

「貴方は・・・・あの男の名前を知っているのね?」

手にもっているリボルバーの銃弾を確認しながらムネタケが九十九に問う

「ああ・・・・彼女の判断は正確だ、言えた義理ではないが奴を侮ってかかれば・・・・確実に・・・死ぬ」

「・・・それほどの猛者って事ね・・・」

「ああ・・・・すまない・・・縄を解いてくれないか・・・・奴が相手なら・・・俺も戦うことに躊躇いは無い」

「・・・・わかったわ・・・・・貴方の目は曇ってはいない・・・・信用させてもらうわ」

ムネタケはそう言うと九十九の縄を隠し持っていたコンバットナイフで切った

それとともに・・・・・・

『ドッゴーーーン!!』

「ふむ、戦艦にしては女が多いな・・・・」

そんなことを言いながら・・・・北辰はその姿をあらわした

「北辰・・・何故ここに来た」

九十九が戦闘態勢のまま北辰を睨みつけ言う

「ふっ・・・・・そなたを救出に来た・・・・・」

「・・・貴様がそんな命を受けるわけが無いだろう、もし本当に俺の救出目的なら提督が直々にくるはずだ」

「くくく・・・・・・まあいい、本来の目的はテンカワ・アキトの乗る機動兵器の情報の回収

そして・・・・・・ナデシコの破壊よ」

北辰のその言葉とともに後ろにいた六人衆が抜刀する

「・・・・・滅」

「応!!」

北辰の言葉とともに六人衆が攻撃に移る・・・・・それを迎え撃つパイロット達・・・結果は・・・



「ちく・・・しょお・・・・・・」

「つよ・・・すぎるよ・・・・」

「くっ・・・・これでも身体は鍛えていたんだがね・・・・・」

「ぬぅ・・・・・この俺が・・・」

「お姉ちゃんと同等・・・・・それ以上だよ・・・・」

「・・・・・完敗ね」

「う・・・嘘だろ・・・・強すぎるぜ・・・」

パイロット達の完敗だった・・・・・・ゴート、サツキ、アカツキの三人は善戦したが時間稼ぎ程度にしかならなかった

「やれやれ・・・・・テンカワ達を月に行かせたのは失敗だったわね・・・・こんな化け物が乗り込んでくるなんてね・・・」

「くくく・・・・・命だけは助けてやろう、この船が沈むまではな・・・・」

「木連軍人・・・いや・・・・一人の男として・・・・貴様には負けん」

「ふん・・・・・実力差がわからぬわけではあるまい、大人しく他の物が消えるのを見ているがいい白鳥九十九」

ムネタケ、九十九の二人は北辰に正面から対峙していた

余裕がある北辰と違い、二人は気圧されない様に自分の意識を高めるので必死だった

だからこそ・・・・・見失ってしまった・・・・・側面から攻撃しようとしていた・・黒塗りの刀を持った一人の男の姿を

「斬!!」

編み笠をかぶった男は・・・そう叫ぶとともにルリへと斬りかかった

「ルリルリ!!」

「なっ・・・・ミナトさん!?」

『ザシュッ・・・・・』

「くうっ・・・・・・・」

「仕留めそこなったか・・・・」

「貴様ああ!!」

「くくく・・・・我を前にして注意をそらすとは・・・・・未熟」

「なっ!!ぐはっ」

・・・まさに一瞬の出来事だった、ルリを守る為に盾になったミナト・・・

斬りかかった編み笠の男の一言に激怒した九十九・・・・それにより生じた隙に九十九を一撃で倒した北辰・・・・

それとともに・・・・北辰は部下に命じ、負傷したサツキを立たせ、その首に短刀を突きつける

「茶番は終わりだ・・・・テンカワ・アキトの乗る機体のデータを差し出せ

早くしなければこの女が死ぬぞ?」

「くっ・・・・・」

ルリが北辰を睨みつけながらアーサーのデータをディスクに移す

「念のため行っておくが小細工をしたところで無駄だ、我らにも妖精はいるのでな」

「・・・・・・・サツキさんを放してください」

ルリがデータディスクを差し出しながら言う

「くくく・・・よかろう、受け取れ」

そういいながらサツキをムネタケのほうに放り投げる、ムネタケはサツキを受け止める為に体制を崩す

「そして・・・・・・死ね」

そう言い、体制を崩したムネタケに斬りかかろうとする北辰・・・・・しかし

「ぬっ!!」

『キィン』

急にその身体を反転させその手にもった日本刀で飛んできた物を弾くその北辰の視線の先には

「貴様・・・・・黒龍・・・・・・何故このようなところに・・・・」

そこには・・・・舞歌親衛隊『影』の六人を従えた・・・・・龍斗の姿があった

「九十九は俺の友だ、貴様こそ何故ここにいる」

「ふん・・・・・閣下の勅命・・・・といったらどうする?」

「俺には関係ないな、俺の仕事の邪魔をするのなら・・・・・蹴散らさせてもらうぞ」

「そう上手くいくかな?・・・・・滅!!」

「各員・・・・敵を迎え撃て・・・・・散!!」

「応!!」×北辰六人衆&舞歌親衛隊『影』

各自が一対一の戦闘を開始する

「・・・・貴様と戦うのはあの時以来だな」

「・・・貴様を殺したら舞歌の立場が悪くなる・・・・・生け捕らせてもらうぞ」

北辰はそう言うと日本刀を、龍斗はマントから出した逆刃刀を構える



「ほらほら、女に負けるのが悔しくないの?」

「・・・遅すぎる、話にもならんな」

「まあ・・・・技の練習台程度にはなるか」

「・・・・・北辰六人衆の武名も所詮北辰に支えられた物ですか・・・・・」

「はぁっ!!・・・・・これで終わりですか?」

「・・・龍斗殿に感謝するんですね・・・・あなた達に手加減をするように命じたのは龍斗殿なのですからね・・・」

上から、闇龍、羅刹、修羅、刹那、光龍、悟刻の順である・・・・・

彼らは・・・・圧倒的な実力差を持って六人衆を叩きのめしていた

その力は・・・・ナデシコクルーに北辰以上の戦慄を覚えさせる物だった・・・・・・

そして・・・・

「斬!!」

『キィン・・・・・・・・カキィィィン、ズシャァァ』

「・・・・その程度か北辰、腕が落ちたのではないか?」

「くっ・・・・・言ってくれるではないか」

龍斗は殆ど動かずに北辰の攻撃を捌ききっていた

それは・・・・・素人目にも実力差がよくわかる物だった

パイロットを余裕を持って倒していった編み笠の男達・・・・・

その男達よりもはるかに強い北辰、その彼らを手玉に取っている龍斗達・・・・・

「(もし・・・・・彼らがこちらに攻撃してきたら・・・)」

それは・・・・戦いを見ている全員の意見だった。

もし・・・龍斗達がこちらに攻撃を仕掛けてくれば、それこそなすすべなく全員やられるだろう

「・・・そろそろけりをつけさせてもらうぞ」

龍斗はそう言うと一瞬の内に北辰の懐に入った

「くらえ・・・剣舞『草薙』!!」

「ぬっ!?『キィン、キィン、キン、キィン・・ガキィィン』ぬお!?」

北辰は日本刀で龍斗の攻撃を受け止めていたが、最後は耐え切れず体制を崩した

「大人しくされ」

「くくく・・・・・時間だな」

北辰がそう呟いた瞬間、急にミナトの息が荒くなり始めた

「ミ・・ミナトさん!!」

「体が熱い・・・・まさか・・・・毒?」

ナデシコクルーが急に状態が悪化し始めたミナトの周囲に集まりだす

「北辰・・・貴様!!」

「くくく・・・・・今回は我の負けだ、大人しく引いてやろう」

北辰はそう言うとブリッジから撤退し始めた、それとともに倒れていた六人衆もブリッジから出て行く

「ちょっとどいてください・・・・・・・」

光龍はナデシコクルーを押しのけるとミナトの症状を見始めた

「どうだ」

龍斗が光龍に訊ねる・・・・光龍は真剣な顔をしてその言葉に答えた

「最悪です、この症状・・・・木連暗部の暗殺用の特製品です」

「貴方、この毒の正体を知っているのね?解毒剤の調合法も知ってるわよね?」

イネスが光龍を見ながら言う

「はい・・・しかし・・・・解毒剤には木連にしか生えない特別な薬草がいるんです

一応・・・木連の戦艦には予備として大量においているのですが・・・」

「・・・・ナデシコの艦長・・・ミスマル・ユリカ・・・・だったな・・・・

その女はこちらで治療させてもらう、このまま放って置いては死ぬだけだろうからな

時間は一刻を争う、一時的に毒の侵攻を遅らせる解毒剤をもってきているので必ず助けてみせる」

「・・・・・わかりました」

「・・・すまんな・・・・・治療が終わり次第そちらに返す・・・・

そちらでの扱いは敵に捕らえられた物、こちらでの扱いは捕虜として扱うことにしておく

そちらの方が余計なごたごたは少なくなるだろうからな

次にあう時は・・・・・敵として挨拶させてもらうことになるがな」

龍斗はそう言うとマントから注射器と解毒剤を出し、光龍に渡した

光龍はそれを受け取ると慣れた手つきでミナトに解毒剤を注射する

その後は・・・・羅刹、修羅、刹那の三人がミナトを輸送船まで連れて行き

光龍、闇龍、龍斗はイネスとともにパイロット達と九十九の簡単な治療を行い輸送船に戻っていった





その後・・・木連戦艦ゆめみづきでは二人の男が対峙していた

「・・・貴様がここにいるとはな・・・・北辰」

「くくく・・・・・すぐに出て行く・・・・何故閣下の命にそむいた・・・・黒龍」

「貴様こそ・・・何故時間を稼ぐような真似をした・・・・・

急ぎ撤退すれば俺たちはあの女の症状には気付かなかったはずだ」

「・・・・・単なる気まぐれだ」

「ふん・・・・・・さな子

「!?」

北辰に動揺の気配がはしる

「・・・・・・北辰・・・己を偽るのはやめておくことだ・・・・・・・・

偽った強さは・・・・・・・真の強さでは無いぞ」

龍斗はそう言うとその場から立ち去っていった

「その程度・・・わかっておるわ・・・・だが・・・・我は・・・・・我は・・・・」

北辰の呟きを聞いたものはいなかった・・・・・・・

ミナトは・・・・無事解毒剤が間に合い、今は解毒剤の副作用で深い眠りについている

九十九は・・・責任を感じつきっきりでミナトの看病をしていた

その光景を見て闇龍が舞歌に連絡をしていたりするが・・・・・まあ些細なことだろう



早すぎる北辰の登場・・・・それは・・・・新たなる歴史への序曲でしかなかった

進み始めた歯車をとめられるものはいない・・・・・

歯車を元の道に戻そうとする守護者、よりよい道に導こうとする逆行者達

そして・・・・・傍観者の立場であったがついに表舞台に出た異端者

最後に笑うのは・・・・誰なのだろうか・・・・・時は・・・ただ静かに未来へと進んでいる









後書き

非常に短めになってしまいました今回・・・・・余り上手く行きませんでした

次回・・・やっと北斗登場(予定)です。

次回は少々長めになると思います

では・・・次回お会いしましょう

 

 

管理人の感想

B-クレスさんからの投稿です。

なんだか龍斗が、最初から最後まで場を仕切っていましたねぇ

月に行ったアキト達は結局最後まで蚊帳の外だし(苦笑)

しかし、ミナトさんをこんな手で連れ出しますか。

九十九の性格を考えれば、確かに付きっ切りの看病をするでしょうね(笑)