北斗とアキトの戦闘があった当日のピースランド城、賓客用の一室

そこのベッドに、テンカワ・アキトは眠っていた

「う・・・・・うん?」

「アキト、意識はしっかりしてる?」

少しうめき、上半身を起こしたアキトを見て、ずっと看病していたイツキが話し掛けた

「イツキ?・・・・・ああ、大丈夫、しっかりしてるよ。

・・・・・ちょっと身体は痛んでるみたいだけどね」

アキトはイツキに話し掛けながら軽く身体を動かしていた

『カチャリ』

「おや?お目覚めになられましたか、申し訳ありませんが国王陛下がお呼びですのでご足労をお願い致します」

執事と思わしき人が部屋に入ってきて、アキトが起きているのを確認するとアキトに向かって礼をしながら話し掛けた

「・・・・わかりました、イツキ、行こう」

「わかった」

しばらく考えるそぶりを見せたアキトだったが、しっかりと頷きながら肯定の返事を返し

イツキもアキトの声に頷きながら返した

「では、私の後についてきてください」

執事はそう言うと、二人を城の大部屋まで案内した



「では、私はこの辺で」

執事はそういいながらアキト達に一礼をし、その場から立ち去っていった

『カチャリ・・・』

「ナデシコ所属、テンカワ・アキト中佐、ただいま到着しました」

「同じくナデシコ所属、イツキ・カザマ中尉、ただいま到着しました」

アキトとイツキはその部屋にいる人物達を見るなり敬礼をした

その部屋にいた人物とは・・・西欧方面軍総司令、グラシス中将、極東方面軍総司令ミスマル中将

そして・・・・・事実上連合軍の最高司令官でもあるアフリカ方面軍総司令、ガトル大将だった

「よく来てくれた、ささ、遠慮せずに席に座りたまえ

これから行う話は・・・・・君達・・ナデシコにとっても有益な話になるだろうからね」

ガトル大将がそう言うと、アキトとイツキはそれぞれ空いている席に座った

そしてアキトが全体を見回すと・・・ピースランド国王や、ルリ、そして・・・・

「では、改めてご挨拶させていただきます

私は木連軍優人部隊総司令官、東舞歌少将です、そしてこの隣にいる男性が・・・」

「木連軍優人部隊副司令官、黒河龍斗大佐だ」

今は戦争中である木連軍の将にして、ナデシコと同じく和平を志す者

東舞歌と、黒河龍斗だった




機動戦艦ナデシコif
『新たなる刻の歌』
第十八話 『宣告』の日



「・・・・・さて、現在戦争中であるはずの軍の司令官達がそろって我々に話をしたいとはどういうことかね?」

舞歌と龍斗の自己紹介が終わったあと、ガトル大将が二人を睨むような形で言う

「・・・・我々にとっても余りにも急な話でしたから詳細はこれを見てください」

そう言うと舞歌が一枚のホログラムディスクをテーブルの上に置き、起動させた

そのホログラムは・・・・・木連軍総司令官、草壁春樹中将を映し出した

『このような形での会見を行う無礼、どうかご容赦願いたい

私は木連軍の総司令官、草壁春樹中将である

この度の急な会見には理由がある、我ら木連は、地球との休戦協定を結びたいと思っている

その理由をもう一つのホログラムディスクに移しているので詳しくはそれを見てほしい

最後に・・・・我ら人類は今、危機を迎えていると言うことをよくわかってほしい』

そこで、草壁からのメッセージは途切れた

「・・・・・木連が我らと休戦を結ぼうとする理由とやらを見せていただきたい」

そのメッセージを聞き、しばらく考え事をしていたガトル大将が舞歌の方を向きなおしながら言った

「わかりました・・・・・これを御覧ください」

そう言うと舞歌はまた別のホログラムディスクを出し、をれを起動させた、それに映っていた物は・・・

「(ホップ・・・・これは)」

『(ああ・・・間違いない・・・マルス達・・火星の守護者が動き出したんだ)』

マルスの乗るオメガと、謎の機動兵器達に次々と粉砕されていく木連軍の姿だった



「・・・これが・・・木連が和平をなんとしても行いたい理由です」

映像が終わったあと、しばらく沈黙の時が続いたが・・・・舞歌がその沈黙を破った

「念のため聞くが・・・・この映像は真実なんだね?」

ミスマル中将が舞歌を、疑惑の眼差しで見ながら言った

「はい・・・・信じられない事ですが・・・事実、火星の駐屯部隊とは通信が取れていません」

「ふむ・・・・・・地球だけではなかったのか」

「!?、・・・・・先ほどの発言はどういう意味ですか?」

グラシスが・・・何気なく漏らした言葉に、舞歌が激しく反応した

「・・・実は、ナデシコが離れていた昨日・・・月宙域の防衛を担当していた北米軍が全滅したと言う話を聞いたのだ

私も最初は嘘だと思ったのだが・・・・映像には、一機の機動兵器に蹂躙される北米艦隊が映っていたよ

その機動兵器は・・・私は君達の新型兵器だと思っていたのだが・・・・・違うようだな

先ほどの映像の中に、その機動兵器の姿があったよ」

グラシスは・・・ゆっくりとだが・・・・とても重大な発言をした

「・・・奴らは自分達の事を火星の守護者と冠している

奴らの戦力はまさに未知数、推定でも俺と北斗、テンカワ・アキトを合わせた戦力を凌駕している

木連の方では奴らとの決戦を挑むべく、最新機である夜天光の量産体勢に入った

火星で散った同胞達の無念を晴らす為の聖戦だ、士気も極限まで高まりつつある

地球との和平がなれば後顧の憂い無く、奴らとの決戦を挑む予定になっている

もし地球との和平がならなければ・・・・・守護者との決戦を前に地球に猛攻撃を仕掛ける予定だ」

グラシスの発言にまるで驚いた様子が無い龍斗が、木連の現在状況を話した

「ちょっとまってください、貴方達は地球が手を貸さなければ滅ぼすといっているのですか?」

龍斗の、聞き捨てなら無い発言に、今まで静観していたルリが抗議の声をあげた

「残念だけど・・・・それが木連の意思よ、戦術的にも、戦略的にもこの案は破棄できないの

もし・・・火星の守護者が予想を大きく上回る戦力なら・・・・地球の軍を吸収する必要があるの

それに・・・先に地球を叩いておかなければ、木連だけで火星の守護者を倒せたとしても・・・

弱体化したところを地球連合軍に攻撃され、木連が敗退する可能性が高いわ

そして・・・・その後木連の首脳部は地球の法で裁かれ、死刑か、良くても拘留

木星は地球の植民惑星にされ・・・・木連の一般市民たちは地球市民の怨みのはけ口にされるでしょうね」

ルリの抗議に対し、舞歌は、子供に言い聞かせるかのようにゆっくりと返した

「そんなことは・・・!!」

「無い・・・とでも言いたいのか?

ならば・・・・今までの歴史を振り返ってみろ、大敗した国が・・・自治権を認められた事があったか?

多くの国が、自治権を奪われ、国王や皇帝は殺され、その国の市民は奴隷にされ・・・殺された

このような歴史がある以上・・・・無いと言い切れるのか?」

ルリの更なる抗議は、龍斗の小さな、しかしはっきりと響く声で封じ込められた

「・・・・・勿論、我々木連も自治権さえ取得できればもう戦争を起こすつもりはありません

和平の際に我々が求めるのは、一つ目に、木星を我々、木連の手で統治する事を認める事

二つめに、地球との貿易を認め、貿易体制を自由貿易にする事

三つめに、火星の守護者討伐の為に全面的に協力する事

これだけです、木連からは、物資運搬の際にチューリップを使用する事の許可

貿易の際に木連プラントで生産された一般生活補助用、並びに戦艦整備用の無人機の提供

最後に、火星の守護者撃退後、火星再建の際に建設用、並びに開拓用無人機の無償提供

さらに、建設物資の提供を保障します、その際に・・・火星の一部に木連の市民の入植を認めていただきたいのですが・・・・

現状ではまだ早い話なので、入植に関してはまた後日の会談で詳しく話すようになっています」

龍斗の発言で、一気に緊迫した空気になったのを崩す為に、舞歌が和平の条件を切り出した

「ふむ・・・・・火星の守護者とやらが地球の敵でもあると言うのなら・・・・悪い話ではありませんな」

「ミスマル中将もそう思うかね?」

「・・・・・わかった、和平を結ばせていただこう

既に極東、西欧、中東の三軍が和平の意思に傾いている

私が指揮するアフリカ方面軍も和平の意思に向けば、この和平は連合軍の意思といってもいい

正式な和平はもうしばらくかかるが・・・・とりあえず火星の守護者とやらを撃退するまでの和平は結ぼう」

ミスマル、グラシス中将の会話の後、しばし考え事をしていたガトル大将が和平に肯定の意を示した

舞歌はそれに感激し、手を結ぼうとした時

『大変です!!ボース粒子の増大反応を確認、機動兵器が一機、ボソンジャンプしてきます!!』

コミュニケを通して、オモイカネの報告が届いた

「くっ、今は木連では跳躍は禁止されているはず・・・・・龍斗殿!!」

「わかっている、夜天光で出る」

舞歌の命に従い、龍斗がボソンジャンプで部屋から出て行った

「イツキ、俺たちも行くぞ!!」

「ええ、わかってるわ」

「私も行きます」

龍斗がボソンジャンプした後、アキトとイツキが部屋から出て行く、その後を追う形でルリも部屋から出て行った





ピースランド近辺、ナデシコブリッジ

「機動兵器のジャンプアウト終了を確認、データ・・・照合・・・・ブラックサレナ!?」

情報収集をしていたラピスが敵機動兵器の正体を知り、驚愕した

「どういう事でしょう・・・木連の刺客とでもいうのでしょうか?」

「とりあえず和平を壊させない為にも、エステ隊出撃「ちょっと待ってください」・・・はえ?」

勢いよく出撃命令を出そうとしたユリカだったが、ハーリーにそれを阻止された

「ボース粒子の増大反応を確認、データ照合・・・・・夜天光です!!」

ハーリーの報告と共に・・・・真紅の機動兵器、夜天光が戦場に現れた

「我らが同胞を殺めし者よ・・・、散っていった同胞の無念を晴らす為にも・・・・

我の手で貴様の命を戴く!!」

戦場に現れた機動兵器から・・・ナデシコクルーにとって聞き覚えのある声が聞こえた

「ほ・・・・北辰!?」

ラピスが・・・・・僅かに震えながら反応する

「落ち着いて、ここには北辰は来ていないわ、来ても私が守ってあげるから・・・・ね?」

チハヤが、ラピスを後ろから抱きしめ、母が子をあやすように優しく言い聞かせた

ラピスも落ち着いたのか、震えを止め、チハヤに笑みを浮かべると再び仕事に移った

「ほう・・・・外道と呼ばれていたそなたが我を止めに来るとはな」

聞き覚えのない声がブリッジに響いた

「・・・・もはや外道である事は止めた、今の我はかつて我が妻、さな子が愛した武人・・・・

木星圏・ガニメデ・カリスト・エウロパ及び多衛星・小惑星国家間反地球共同連合体所属

陸戦特務部隊総指揮官、影護北辰大佐だ!!

我らが同胞を殺め、同胞の手で作られし機動兵器を奪った事・・・・後悔させてやる!!」

北辰が、しっかりとした声でそう言い切り、手に持った錫杖を構え、戦闘態勢に入る

「なかなかの覇気・・・・・面白い、このアフェランドラがお相手しよう!!」

その言葉と共に・・・・ブラックサレナが動き出す

それに応じ、夜天光も加速し、ブラックサレナと戦闘に入った





ピースランド領空

「二人共、ちょっと速度を出すからしっかり席に座っててよ!!」

アキトが操縦する小型のヘリコプターがナデシコに向かって飛んでいく

「(ホップ、あのアフェランドラって奴は何者なんだ!!)」

操縦しながらアキトはホップに話し掛ける

『(アフェランドラ・・・我々の創造主が造り上げた生物兵器製造用ナノマシンだ、花言葉は『雄々しい』

ランクはナイト、力なら僕よりは上だ、性格は・・・・かつてのニホンの武士といったところだ

どうやら今回は完全にお遊びらしい・・・、機動兵器を持ってきてないからね)』

「(ランクってのは何なんだ、それに機動兵器はどれだけの奴を持ってるんだ?)」

『(ランクは・・・僕達の力を表したもの・・・・チェスの感覚でいい

守護者の戦力は・・・まず、ランク外にいる人型無人兵器

名を持たず、機械的な処理だけだけど、並みの人間よりははるかに強いポーンランク

知力を発展させ、マイクロブラックホールなどを自由に制御できるだけの演算能力を持つビショップランク

武力を発展させ、エースランクの人間が十人束になってやっと互角に打ち合える可能性があるナイトランク

マイクロブラックホール弾ですら無効化する程の守護能力を持ったルークランク

そして・・・全てにおいてナイト、ビショップ、ルークを凌駕しているクィーンランク

最後に・・・・守護者が守るべき存在・・・ボソンジャンプを制御する演算ユニットが匹敵するキングランク

ポーンは無人兵器の機体を改良した物に乗っている

ビショップ以上はそれぞれ専用の機体を渡されているんだ

少なくとも・・・・ブラックサレナよりもはるかに高性能な機体がね)』

アキトは、その話を聞くとさらに速度を上げ、ナデシコへと向かっていった





ピースランド近辺

そこには・・・漆黒の夜天光が戦場に向かって飛んでいた

「甘い!!」

「ほう・・・なかなかやるな!!」

そのウィンドウには・・・・真紅の夜天光とブラックサレナの戦闘の映像が映っていた

「(なんだ・・・俺はこの戦いに見覚えがある?・・・・馬鹿な、夜天光とブラックサレナは一度も手合わせはしていないはずだ

だが・・・・この感覚は何だ!?、何かが・・・・・頭の奥底から呼び出されているようだ)」

その戦闘光景を見ている龍斗は、酷く不思議な感覚に困惑していた

「その黒百合の弱点は・・・・白兵戦に不向きなところだ!!」

その声と共に、真紅の夜天光が錫杖をブラックサレナに向けて振り下ろす

カキィイン!!

「残念であったな、我はもとより白兵戦を得意としている、剣くらい持ってきておるわ!!」

「ぬぅ・・・・・だが・・・こちらの方が優勢!!」

仕留めたと思った攻撃を受けられ、一瞬動揺した北辰だったが、直ぐに有利な体制のまま鍔迫り合いに移った



『ふははは・・・・怖かろう、悔しかろう?たとえその身に鎧を纏おうとも 、心の弱さまでは守れないのだ!!』



「(くっ、またか!?あの声は・・・・北辰か?・・・俺の過去に・・・・何があったんだ・・・・

いや、今はそんな場合じゃないか、急がなければ!!)」

一瞬酷い頭痛に襲われた龍斗だったが、頭痛が治まると共に再び戦場に向かって急いでいた



シャクヤクブリッジ

「あの北辰殿が・・・・・あんな事を言うなんて・・・・」

「いや・・・・元々北辰殿はああいう人だったんだ・・・・・・

誰よりも部下を信頼し、誰よりも部下に慕われていた

もし・・・さな子殿の事件が無ければ・・・・木連優人部隊の総司令になっていたお方なんだ」

「・・・・ふん、親父もやっと気が付いたのか・・・・母さんが何を求めていたか」

シャクヤクブリッジに集まっていた面々の大半は、今の北辰を信じられないといった表情で見ていた

それも仕方ないだろう、木連では北辰は『外道』、『史上最悪の影』と言うような印象が大きいのだ

今の・・・・一人の木連の武人としての北辰の姿は・・・・余りにも以前との差がありすぎたのだ





「ぬぅぅぅぅぅ!!」

「はぁぁぁああ!!」

『ガキャァアンン!!』

つい先ほどまで鍔迫り合いが続いていたが、同時にその刃をとき、再び錫杖と剣がぶつかり合うと共に

夜天光とブラックサレナは、爆発で飛ばされるかのように、距離をとる事になった

「ふぅぅぅ・・・・・流石にやりおる」

「貴様ほどの武人と打ち合える事・・・・嬉しく思うぞ!!

しかし・・・・・そう時間は無い・・・・・これで決着をつけるぞ!!」

アフェランドラ・・・ブラックサレナは、そう言うと剣を構えた

「・・・・よかろう、その勝負、受けさせていただく!!」

北辰・・・・夜天光もそれに応える形で錫杖を構えた



その・・・・睨みあいの姿勢を見て・・・・速度を速める人物が居た

「(なんだ・・・・この嫌な予感は・・・・)」

ドシュオオオン!!

ブラックサレナと夜天光がブースターを全開にし互いに突撃しあう

「これで・・・・決着をつける!!」

ヒュォオン!!

「くっ、だが、その軌道なら受けきれる!!」

ヒュン、ガキィン!!キャリキャリキャリキャリ・・・

先に動いた夜天光の錫杖を、ブラックサレナはその手にもつ剣で防ぐ



「(はっ!?この後・・・・・たしか!!)北辰!!敵は隠し武器を持っているぞ!!

「何!?はっ!!」

龍斗の通信を聞き、敵の熱源の発生状況を確認した北辰は、サレナの左手の武器に気付いた

「くっ、間にあってくれ!!」

「避けきれるか・・・・・、否!!避けてみせる!!」

『ドォオン!!、バシィイン・・・ザシュウウン!!』

「・・・・すまぬ、助かった」

「気にするな」

「真剣勝負の真っ最中に乱入か・・・・まあよかろう、隠し武器を使った我も悪かったのだからな」

片腕を失った真紅の夜天光が、隣に来た漆黒の夜天光に話しかけた

何故このような状況になったのか・・・・先ほどの戦いの状況を述べよう

まず・・・北辰の乗る夜天光が、傀儡舞用の姿勢制御用のスラスターとブースターを全開にし攻撃を避けようとした

しかし・・・敵の攻撃の方が一瞬早く、コックピットに直撃するかと思われたが

漆黒の夜天光がブラックサレナに、ブースターの加速力をそのままに、蹴りをサレナにぶつけて、弾き飛ばした

ブラックサレナも予想していなかった蹴撃に対処できず、弾き飛ばされたが、弾き飛ばされながらも片腕を奪ったのだ

「二対一か・・・・・不利やもしれんが・・・・武士たる物早々引くわけにはいかん!!」

ブラックサレナ・・・・アフェランドラは不利な状況とわかっていても、自らの士気を高めていた

その・・・高まる士気に反応し、北辰と龍斗は何時でも動ける体制に移行する

「おちついて、アフェランドラ、引く事もまた大切なことだよ」

急に戦場に声が響き・・・・ボソンの光が発生し、・・・その場に・・オメガが現れた



ナデシコブリッジ

「・・・最悪です・・・オメガの出現を確認」

「諦めちゃ駄目です!!エステ部隊全機出撃、アキト達は先にいってください!!」

ルリの報告に一瞬、絶望の空気が流れたブリッジだったが、ユリカの声に全員が正気に戻った

「その通りだ・・・まだ俺達はあいつと戦ってもないんだ、絶望するのはまだ早すぎる

テンカワ・アキト、アレスで出るぞ!!」

「イツキ・カザマ、木連の人たちの援護の為にアルテミスで出撃します!!」

その報告と共に、ナデシコのカタパルトからアレスとアルテミスが出撃していった



「ちっ・・・・俺とした事が・・・・アキト達に遅れをとるな!!

俺たちが強くなったってこと・・・・あいつに教えてやろうぜ!!」

「おう(了解)!!」

リョーコの言葉と共に、エステ達も戦場へと向かっていった



戦闘空域

「やれやれ・・・・地球の人たちは血気盛んだね・・・・僕は宣告に来たんだよ

今日は君達の相手をしている暇は無いんだよ」

オメガに乗るマルスの声が・・・しっかりと響いた、・・・世界・・いや、太陽系に存在する全ての人間に対して

「悪いね、これからの宣告は全人類に関係するから通信関連のものをハッキングさせてもらったよ」

マルスは・・・・何一つ表情を変えずにそう言いきった

「僕達、火星の守護者は、愚かな全人類の抹消をここに宣言する

君達・・・今の次元軸の人類を僕達はずっと見続けていたけど・・・・ここまで戦争を続けるとは思わなかった

でも・・戦争を続けるだけなら僕達もここまではしなかった、だけど・・火星を滅ぼそうとしたのだけは許せない!!

百年前は・・・何本もの核弾頭を打ち込んだ、それも・・・少数の生き残りを滅ぼす為だけに

そして・・・今は・・その復讐の為に戦い、火星の大地を汚し・・・我々の守護する遺跡を奪おうとした!!

もはや・・・・許してはおけない、僕は・・・火星の守護者の代表として、全人類の抹消を決定した

けれども・・・君達にもチャンスをあげよう、僕たちが攻撃に移るのは・・・今から一年後にしよう

それまでなら・・・・僕たちが示す一部の火星の大地にも、君達の部隊を置く事を許してあげる

もし・・・・僕たちを打ち倒す事ができると思っているのなら・・・全戦力を持って挑んでくるといい

この一年の間の戦闘では・・・僕達はハッキングを全面的に禁止する事を約束しよう

この約束は・・・・我らが主の名にかけて、誓わせてもらうよ。

・・今の次元軸に生きる人類の抵抗がどんな物か・・・・試させてもらうよ」

マルスはそう言うと・・・・ブラックサレナと共にボソンジャンプした

マルスがジャンプした後・・・・・しばらくは誰も動く事はできなかった・・・・・





約四時間後・・・ピースランド大広間

そこには・・・通信によって、地球、木連を代表する実力者達が顔を会わせていた

全員が全員、真剣な表情で話を続けていた・・・・・・話の内容は一つ、いかにして火星の守護者を撃退するかである

「・・・では、まず半年は戦力充実に費やした方がいいようだな」

「でしょうな・・・・、敵本拠地周辺以外での駐屯は許されているようですが

地球と木連で戦力を充分に増強した後で先発隊を送り込むべきでしょう」

地球連合軍総司令官、ガトル大将と、木連軍総司令官、草壁春樹がそう結論を出し合った

結論が出ると、それぞれの実力者は通信を切っていった・・・おそらく仕事に移ったのだろう

今回の話し合いで決まった戦力の補強案はこういうものだった

まず・・・木連からは最新鋭機、夜天光を量産し、その性能の高さゆえに封印され続けていた機体

木連プラントで発見された・・・装甲、エンジン、その他全てがオーパーツ

しかも・・・バッタ達とは比べ物にならないほど高性能な物ばかりで造り上げられている最強の機体を

木連最強の戦士、黒河龍斗に適性検査をおこない、乗りこなせるようなら前線で使用する事が決定された

地球からは・・・最強と名高いナデシコ部隊の補強を行い、さらに、ナデシコ級戦艦を建造

現在のYナデシコ、コスモス、木連のシャクヤクに加え、カキツバタ、さらに各々の強化ユニットを完成させる事を決定

さらに・・・ブラックサレナのデータを基に、エステに変わる新型量産期として開発予定だったネルガルのアルストロメリア

クリムゾンのステルンクーゲルを、世界レベルでバックアップし、三ヶ月以内に開発終了、その後、一斉量産が決定した

アルストロメリアは、夜天光が間に合わなかった時に、優人部隊の隊員達に回されることに決定した

それと共に・・・パイロット達の訓練が開始され、エースクラスのパイロットには新型のカスタムエステを

西欧方面軍エースパイロット、『白銀の戦乙女』であるアリサのように超一級のエースには

ナデシコで使われている特別製カスタムエステを、ネルガルの方で生産する事も決定された

もはや・・・・企業、国家、軍、私怨と言う共存を邪魔する考えは殆ど消えていた。

太陽系に生存する全ての人類が・・・・生き残りをかけての戦に真剣になっていた

ハッキングを開始されれば、人類は、なすすべなく滅びてしまうだろう

そのハッキングを封じれているのは、相手側の約束の期限である一年間のみ

その一年間の内になんとしても、火星の守護者を打ち負かせてみせる

その思いだけが・・・・地球と木連、そして月の人たちを一つにしていた・・・・

先発部隊が火星に向かうのは約五ヵ月後、航行する期間を考えての事だ

ナデシコとシャクヤク、コスモスとカキツバタ、これらの艦は全て先発隊に向けられる事になった

それぞれの艦に乗り込んでいる戦士達は、出向の日まで・・・・思い思いにすごしていた

地球に残す家族と過ごすもの、ひたすら鍛錬に励む者、あえて何時もと変わらぬ生活をすごそうとする者

もはや・・・歴史と言うものも・・・運命と言うものも彼らの前には存在していないだろう

ただ・・・・彼らは・・・先の見えぬ未来にむかって・・・僅かな希望と勇気をもって・・歩み続けていく

それこそが・・・・光溢れる未来へに繋ぐ為の、唯一の選択と信じているから・・・・・・・









後書き

微妙に中途半端になりましたが、いかがだったでしょうか

典型的といってもいいですが・・・第三勢力の発生と、対抗する為の和平と言う今回の流れ

政治的な観点からすればよくある話だと思いますが・・・・・どうでしょうか?

次回は・・・・火星での、最後の戦力増強になります

その後・・・決戦前日の場景を、なるべくメイン級キャラ全員分、一人称で頑張りたいと思っています

この物語も閉幕が近づいておりますが・・・・ここまで付き合ってくださった皆様方

どうか・・・・最後までお付き合いくださいませ



追伸

今回よりネットが復活いたしました、それに伴いメールアドレスも変更しました

代理人様にも伝えておりますので、メールでのご感想はそちらのアドレスにお願い致します

 

 

 

 

代理人の感想

謎の敵より先に地球に攻撃を加えるというのは、

つまり、人類の存続よりも木連の存続のほうを重視している、と言うことですか?

つーか、そうとしか思えん(爆)。

ブラフにしちゃあ余りに幼稚すぎますしねぇ。