長い・・・そう、おそらく、決戦に挑むものにとって一生でもっとも長い夜があけた




地球・木連の連合軍は総大将『ミスマル・ユリカ』の指示に従い

ムネタケ・サダアキの乗るナデシコ・ゼロを中心におき、その両翼に艦隊を配置する陣形で進軍した


そして・・・相手の制空圏まであと少しといった所で、全軍の進軍を停止し、ユリカは全軍に通信を開いた・・・・




機動戦艦ナデシコif
『新たなる刻の歌』
第二十一話 『存在』の『意義』



「・・・総大将のミスマル・ユリカです



これから私達は人類の敵となった火星の守護者と言う存在に対し攻撃を仕掛けます。


皆さんも聞いてのとおり、敵の戦力は相当の者です・・・

私達の全戦力をもってしても決して楽勝とは言えません



しかし・・・いかなる状況においても・・・諦めないでください

最後の最後まで、生きる事を優先して、戦い抜いてください。


そして・・・全員無事で勝利を祝いましょう


勝って、全員が無事・・・これが私達の本当の意味での勝利です!

誰一人かけることなく、この戦いに勝って、凱旋しましょう

以上で通信を終わります・・・必ず・・・勝ちましょう!!」




ナデシコ・ゼロ ブリッジ


『以上で通信を終わります・・・必ず・・・勝ちましょう!!』

「ふふふふふ・・・・」

提督席に座っていたムネタケは、ユリカの通信を聞いてわずかに笑みを漏らしていた



「あの子らしいわね・・・・その言葉、現実のものにする手伝いだけでもしてあげないとね・・・」


そういうとムネタケはゆっくりと立ち上がり、いままでの好々爺とした顔から凛とした軍人の顔に変わる


「ナデシコ・ゼロ、主砲発射体制にはいれ!!

 微速前進!!この艦が作戦の鍵だ!!各員気合を入れろ!!」





ムネタケの指示とともにナデシコ・ゼロが動き・・・それに呼応し全艦隊が前進する

少しずつ敵の制空権に入り・・・敵無人兵器の姿が少しづつ映り始める





「提督!敵部隊が射程圏内にはいりました!!」

「まだだ!!まだ前進しろ・・・・主砲へのEN伝達率はどうなっている!!」

「既に90%を突破、・・・95・・99・・・100・・・発射体制、完了しました!!」

「敵、機動兵器部隊が前進を開始しました!!」

「シャクヤク、ならびにナデシコから通信!作戦の準備は既に完了しているとの事です!!」

「よし・・・
グラビティブラスト!!放て!!」



『ギュオオオオオオオオオン!!!』




ナデシコ・ゼロから放たれた漆黒の矢は・・・多くの無人兵器を喰らい、押しつぶす・・・

それと共に前線に存在する艦隊全てから同じく漆黒の矢が放たれ、敵機動兵器部隊は次々と隊列を乱して行った







シャクヤク 格納庫

「龍斗殿・・・・」

デージーに乗る龍斗に、舞歌が通信をいれる

「わかっている、主砲が放たれたんだな・・・直ぐに出る」

そういうと共にデージーはカタパルトに移動し、出撃体制に移った

「・・・・武運を・・・」

舞歌の言いたい事は・・・そんな事ではなかっただろう・・・・

だが・・・今の舞歌にはそれを言うのが精一杯だった


「あぁ、必ず帰って来る、食事の準備でもしておいてくれ

黒川龍斗、デージー・・・でるぞ!!」

その言葉と共にデージーが高速度で敵無人兵器部隊に向かい、一閃の矢となり中央へと突き進んでいく


その後方に控えるのはほぼ同時に出撃した北斗が駆るダリアとアキトが駆るアレス

さらにその後方に北辰が乗る夜天光とイツキの乗るアルテミス、そしてホップの乗るバンクシア


先陣を務めるのは以上の機体、デージーが行く手をさえぎるヒノキを撃墜し

取りこぼした物をダリアとアレスが、さらにその後方から夜天光とアルテミス、バンクシアが撃墜していく


中陣を務めるのは、リョーコ機、ガイ機を先頭としたナデシコ隊と万葉機、千沙機を主軸とした優華部隊


そして夜天光に乗る秋山源八郎、高杉三郎太と、アルストロメリアに乗る白鳥九十九、月臣元一郎である


これらの部隊は極まれに来る機体を撃墜するだけですんでいるため実質戦闘は無い



後陣を務めるのが改良形夜天光に乗る悟刻、刹那、修羅、羅刹、光龍、闇龍

そしてブローディアに乗るサツキ・カザマである

こっちは中陣よりも戦闘に入りやすいが、その多くはブローディアのフェザーにより殲滅されている



これが・・・舞歌の立てた強行突入策である

まず最大の破壊力をもつナデシコ・ゼロの主砲でアキト達が通るべき道を

次に各戦艦の一斉射撃で敵無人兵器の隊列を乱し、再編成の遅れを生じさせる

その隙にデージーを先頭に、ほぼ一線上に突入部隊が並び、一斉に突入する

その際、最大戦力を誇るデージーによって、行く手をさえぎる部隊の多くを殲滅する事で

中陣、後陣の消耗を最大限に押さえる・・・・

一見無謀とも思えるこの作戦を、アキト達は見事に成功させて行った・・・・





「こちら悟刻、そろそろ作戦空域に入るので離脱体制に入ります・・・龍斗殿、御武運を」

「お兄ちゃん、お姉ちゃん・・・・気をつけてね・・・」

ポーンの制空権に入ると共に、悟刻とサツキが通信をいれ、その通信と共に

悟刻達の乗る夜天光、サツキの乗るブローディアが加速し、デージーを抜きポーン達との交戦体制に入る


「各員、敵に遠慮は無用だ、お前達の力・・・存分に発揮して、勝利しろ」

「サツキ・・・無茶だけはしないでね」

既にポーンとの睨みあいを始めた悟刻たちに、龍斗とイツキが通信をいれ・・・さらに先へと突き進んでいった




「っと・・・どうやら僕達もこの辺で離脱みたいだね、アキト君、後は任せるよ」

サツキ達と分かれてさらに進軍を続けてしばらく達・・・・ナイトの制空権に入ると共にアカツキがアキトに通信をいれた

「わかった・・・今度ばっかしは本気で戦ってくれよ?」

「いわれるまでも無いよ・・・まっ、そっちこそ操作ミスして機体損傷したとかしないようにね」

アキトとアカツキは互いに軽い口調で話し、最後に互いに苦笑いをすると、通信をきった


「それじゃあ・・・・ナイトとかいう人達に挨拶しに行きますか・・・!!」

アカツキはそういうと共に加速し、それに呼応するように中陣の全機体も加速する


アキト達はアキレアとシュロの両機体と睨みあいを始めたアカツキ達を横目に・・・・



さらに速度をまし、中央にまつオメガ・・・マルスの元へと急いでいく・・・





火星  遺跡上空



「・・・・やぁ・・・遅かったね・・・少し待ちくたびれたよ」

マルスは、龍斗の乗るデージー達を視認すると、いきなり通信をいれた

「・・・問答無用だ・・・・」

龍斗はマルスの言葉をそう切り捨てると共に、デージーに装備してあるDFSを起動する

「ちょっとまった・・・・せめて理由くらい知りたくないかい?

 どうして僕達が君達を殲滅する事になったか・・・本当の理由を」

「本当の理由・・・・だって?」

アキトはそう返しながらも、龍斗と同様にDFSを起動させる

「そう・・・あのときに宣言したのは仮の理由

 おそらくホップが君達にいったのも・・・まぁ近いかもしれないけど結局は仮の理由だね」

「・・・貴様だけがその本当の理由を知っていると・・・そういうのか?」

北辰が、マルスの言葉によって生じた疑問をぶつける

「あぁ・・・そうだよ・・・

 そもそも不思議に思わないかい?

 逆行者・・・つまりその世界以外の平行世界から来た人間の・・・未来を変えようという行動

 その行動が・・・本当にその世界にとって何の害も無いはずが無いだろう?」


マルスは北辰の言葉にそう返し、ゆっくりと・・・話し始める


「そもそも平行世界とは本来決して交わらない世界でしかない

 それはなぜか、交わればその世界が干渉しあい、両方の世界とも消滅しかねないからだ

 交わりが小さければ、さほど大きな軋みにはならずに・・・

 その世界に交わった平行世界の住人達は、その世界の住人としていきれるだろう

 だけど・・・その小さな交わりが・・・大きな軋みを生み出す存在だったら?

 答えは簡単・・・その軋みが原因となり、その世界は他の世界からの干渉を受けやすくなり

 その結果・・・・干渉しあった世界が両方とも滅ぶ・・・・

 平行世界には数多くの種類がある・・・・・

 もともと逆行者が来る事を前提としている世界、他の異文化と交わっている世界

 科学が発展せず、魔術が発展した世界、いまの科学よりもはるかに進化した世界

 人が存在しない世界・・・例を挙げればそれこそ無限大になるだろう・・・


 しかし・・・僕が生まれた世界の科学者達は一つの仮定をほぼ確証の物とした


 その平行世界の多くは・・・大木から伸びている枝のようなものに過ぎないと・・・

 そして・・考え付いたんだよ・・・世界の軋みを防ぐための策を」

マルスの言葉に・・・全員が動くことも忘れ・・・ただ聞き入っていた


「その大木にとって重要な現象は、その大木から枝分かれした世界全てで発生する・・・

 そう・・・この世界の大木にとってのその重要な現象を・・・自分達で用意する事にしたんだ


 それが・・・遺跡・・・ボソンジャンプの存在

 ある特異な分かれ方をした世界ではこの力は単なる便利な運搬用能力として使われたみたいだけど

 でも・・・大木の世界では・・・この力をめぐって戦争が発生した」

「・・・ならば何故、貴様はその理由とやらを話す

 事実、この世界でも戦争は起きているだろう?」

龍斗が、マルスの矛盾した部分を突いた、マルスは苦笑するとその言葉に返した


「あぁ・・・一度目の戦いは確かに起きたよ

 でもね・・・その戦争の行きつく先が既に歪みきっていたんだよ

 本来は、二度目の戦争もおきるはずだった・・・片方の戦力が消耗しきらない限りはね

 けど、この世界の行きつく先は・・・両方の戦力が充分でありながら、恒久的な和平が結ばれる・・・

 君達にとってはこれ以上の結末は無いかもしれないけれど・・・・

 少なくとも、大木の世界からすれば、大きな歪みでしかないんだよ

 だから僕達は宣戦布告をすることにした

 僕達の存在理由は歪みを生み出す世界の修正だからね・・・・」



「・・・・・くだらん」


マルスの言葉に、僅かに沈黙した空間を打ち壊したのは・・・龍斗の一言だった



「結局その歪みとやらは、貴様達が勝手に決めて、勝手に計ったものでしかないのだろう?

 なぜこの世界がゆがんでいるとわかる、歪んでいるのは貴様らの認識でしかない

 貴様の言うとおりに、平行世界はかなり多くのものがあり、本来は交わらんだろう

 もしかすると、貴様の言うとおりに交わった世界が崩壊しあうこともあるかもしれん・・・・



 だがな・・・貴様らに勝手に決め付けられて、勝手に修正されるのだけは認められん

 貴様が言う歪んだ世界にも、多くの生物がすみ、それぞれの人生を必死に生きているんだ

 それを自分勝手な考えで、勝手に修正されるのだけは・・・決して許せん!!」



龍斗は・・もはや怒気を超え、覇気・・いや・・・鬼気といってもいいほどの気を発していた


「・・・確かに・・君のいうとおりだよ・・・・

 結局歪みだ何だといっても、所詮それは僕達が勝手に決めた事に過ぎないんだ」


そのマルスの言葉に全員が呆気に取られる・・・・

それはそうだろう・・・全員が、マルスが龍斗の意見を肯定するとは思っていなかったのだから


「でもね・・・僕達の存在意義は、君の言う勝手な行動なんだよ


 それを捨てれば、僕達に存在する意義は無くなる・・・・・

 君達がこの世界での存在権をかけて戦いに応じたように・・・・

 僕にとってもこの戦いは存在権をかけた戦いでしかないんだ」



マルスの言葉に、全員が再び沈黙する・・・・とおもわれたが・・・

「結局・・・どんな大義名分を振りかざそうと・・・」

「戦いは・・・自らの存在権をかけての物でしかないんだよ・・・・」

龍斗の言葉に、マルスが呼応し・・・・互いに剣を構える

「俺達は貴様達を倒し、自らの存在権を確実なものとするために・・・・」

「僕達は、作られたときから常に守り続けてきた存在意義を守り抜くために・・・・」


両者がじわじわと接近を始め・・・それをみたアキト達も急ぎ臨戦態勢に入る


「いざ・・・・」

「尋常に・・・・」


マルスと龍斗の言葉が・・・一瞬止まる、・・次に言葉を発した瞬間・・・戦いは始まるだろう






「「勝負!!」」

『ギャリィィィィン!!』



































後書き(らしきもの)

実に中途半端なところできりました今回・・・感想をもちづらい事と思います

しかしあのまま書くと先にマルスサイドの決戦を書き終えちゃいそうなのでここで我慢してください


まず更新が遅くなった理由ですが・・・OSバージョンアップ(MEからXP)にともない、辞書データ引継ぎが不可能になってしまった事と・・・

もう一つ・・オンラインゲームにはまってしまってました・・・・

身の回りのごたごたもあったのですが・・・ゲームが一番大きい要因かと・・・・

催促のメールを下さった方・・・真にありがとうございます、本気でやる気が出ました

次はポーン戦、ナイト戦、マルス戦・・という感じで話しを進めて行きたいと思います

戦闘シーン書くのが苦手ではありますが・・・精一杯頑張らせていただきます

次の更新は・・・遅くても五月、できればGW中に一作更新したいと思います


ここまで呼んでくださった方々・・・もう一息でエンディングに入りますので・・・・

どうか・・・もうしばらくの間・・・お付き合いくださいませ


追伸

平行世界云々の話題は自分の考えでしかないので・・・その辺に関する突っ込みはできるだけスルーしてください(汗

後、メールでの感想はできるだけ返信しますが、掲示板での感想はご返信できない場合がありますので ご了承ください

 

 

代理人の感想

さすがに盛り上がってきました。

終わりよければ全てよし、ごーごーれっつごー、です。