『白騎士』・・・・テンカワ・アキトと『紫衣の戦乙女』・・・・・イツキ・カザマが出向して約一ヶ月がすぎた・・・・・

死の大陸とまで言われかけていたユーラシア大陸は今は北米大陸を超えるほどの安全率を誇っていた

その理由は・・・言うまでもなくネルガルの最強の機体『アーサー』と『アルテミス』による活躍だった・・・

そんな中・・・・ユーラシア大陸から徹底的に蜥蜴を追い出そうと

中東の最強部隊『マーズソルジャー』と西欧最強部隊『ホワイト ナイツ』が手を組んだ・・・・





「これで・・・・三つ目!!」

「流石は隊長!!腕は衰えていませんね!!」

「アキト!!一気にいくわよ!!」

「ああ、援護射撃をしっかりと頼むぞ!!」

『ギュオオオオオオン!!』

「咆えろ!!我が内なる青竜よ!!秘剣!!青龍咆哮斬!!!

『グゥゥウオオォォオオン!!』

「チューリップ完全に消滅しました!!」

「アリサ中尉、一匹も逃すんじゃないぞ!!」

「わかってますよ隊長」

マーズソルジャーは・・・かつてアキトが率いていた極東方面軍所属火星駐屯部隊の最強のエステ隊だ・・・・

そして・・・・・ホワイト ナイツはアキトを中心に新結成された西欧最強の部隊。

今回は六個のチューリップと五千近いバッタが相手だったが先陣を切ったアキトとイツキの活躍もあり

特に大きな被害も無く完全に殲滅する事ができた・・・・・・







機動戦艦ナデシコif
『新たなる刻の歌』
西欧編第二話 英雄と言う名の『罪』



完全にバッタを殲滅し終えたマーズソルジャーとホワイトナイツは合同で祝勝会を開いていた

「ははははは・・・・・・どうしたカズシ、もっと飲まんか!!」

「隊長・・・・酔ってますね?」

シュンはすでに相当量の酒を飲みカズシに絡んでいた・・・・・

そして・・・・・・二つの人影が宴会をやっているところから少しはなれたところで並んでいた

「・・・・・まさかこんなに早く再会することになるとはな・・・・・」

「ええ・・・・まあ今回の戦いで中東は一息ついたから明日から私もアキトの部隊に入ることになったわ」

「そうか・・・・・しかしあいつらも変わってないな・・・・」

そういうアキトの視線の先にはマーズソルジャーの面々がいた

「ふふふ・・・・・でも皆嬉しそうでしょ?」

「・・・・確かにな・・・・・普段よりも一層制限をなくしているな・・・・」

・・・・ちなみにマーズソルジャーは別名『無法部隊』・・・・・

腕は一流で仕事はこなすのだが未成年などの飲酒が基本と言う状態だった

「皆アキトが生きてるって私が言った時本当に驚いていたもの。

しかもアキトが軍を抜けたときなんか『隊長の名を名乗る輩をぶっ殺す!!』とか言ってたらしいわよ」

「・・・・・ユキヒトだな・・・・・・まあいいか・・・・俺も久々にあえて嬉しいしな」

アキトはそう言うとマーズソルジャーの輪の中に入っていった



「・・・・あの人がアキトの思い人か・・・・・・かなわないな・・・・」

「そうね・・・・・アキト、本当に嬉しそうに話してるものね・・・・」

アキトとイツキが話している光景を見ていたアリサとサラがそんなことを呟いていた

ちなみに・・・・サラはアリサがアキトを紹介した時に一目惚れをし

両親と祖父の援助を受けオペレーターとして軍に入ったのだ

ちなみに・・・・・アリサも両親から承諾・・・と言うよりアキトを捕まえて来い!!と言われていた・・・・

祖父が爺馬鹿ならその子は親馬鹿・・・・と言うわけだろうか?

まあ・・・・・・流石の二人もアキトとイツキの話している光景を見て諦めたようである



そこから・・・・・まさに地獄の宴が繰り広げられたことを補足しておく・・・・・





地獄の宴・・・・(サラ、アリサの暴走、マーズソルジャーの暴走、シュンの暴走、アキトの暴走が続けて起こった)から三日後

『ホワイト ナイツ』は新たに加わったイツキを連れて本来の基地まで戻ってきた

「おにいちゃーーーーーん!!」

アーサーから降りたアキトを一番最初に迎えたのはメティスだった

「ははは・・・・ただいまメティちゃん」

「お帰りなさいアキトさん、頼まれてた食材は運んでおきましたよ」

「ありがとうございます、ミリアさん」

メティの背後にいたミリアが微笑みながら言う

「よお!!やっと帰ってきたな」

今アキトに声をかけた男性・・・・ヤガミ・ナオ・・・・・かつてテニシアン島でアキトと一騎打ちをした男であり

その後、クリムゾングループから撤退、軍のガードになり、今はミリアのガードを引き受けている

「ナオさん・・・・グラシス中将の護衛はいいんですか?」

「そういうなよ、たまには骨休めもしたいんだからな」

「骨休めか・・・・・アリサ、久しぶりに買い物に行かない?」

「御免姉さん、ちょっと今日はエステの再調整をしておきたいの」

「あの・・・・サラさん、私このあたりに詳しくないので少し教えてくれませんか?」

「良いわよ、後・・・・サラで良いわよ私はイツキって呼ばせてもらうけど・・良いわね?」

「分かりました、よろしく」

そう言うとイツキは手を差し出し、サラもその手を握る

この二人はあまり話した事がなかったのだ・・・・・・だからイツキは敬語でサラと話そうとした

しかし、今の二人はまるで十年来の親友のようにこのあたりの店についてはなしていた

「アリサちゃん、俺もエステの調整手伝うよ」

「アキトさん・・・・良いんですか?アキトさんが一番疲れていると思いますけど・・・」

「大丈夫だよ、軍にいたときと比べたらあれくらい何でもないさ」

アキトは今までの行軍で、料理、深夜の警戒、非常時での戦闘の先鋒などを務めてきた

しかも、この基地に来るまで二、三回敵と接触し、その全てを破壊してきた

つまり・・・・・アキトは一番疲労がたまっているのでそのまま眠ってもおかしくは無いはずなのだ

事実、二番目に疲労がたまっていたと思われるカズシは帰ってくるなり自分の部屋に直行している

それなのに、アキトは平然とした顔で食材の確認をしていたのだ

「へえー―――お姉ちゃんお兄ちゃんのフィアンセなんだ」

「こら。・・・・すいません妹が」

「いえ・・・かまいません」

「さてと・・・・外に出るんだから準備しないとね」

「・・・・・・・アリサちゃん、これでどうだい?」

「・・・・ちょっと反応が鈍いですね・・・・パーツが劣化してるみたいです」

「そのあたりは整備員の人たちに任せたほうが良いね」

アキトたちは思い思いに久しぶりの土地、休日を楽しんでいた





数時間後・・・・・・・

「アキトさん、通信が入っていますが」

「あ・・・・繋いでください」

アキトのコミュニケに繋がった通信はミリアのものだった

「すいません・・・・メティスはそちらにっていませんでしょうか?」

「メティちゃん?・・・・・きてないけど・・・・どうしたの」

「いえ・・・・まだ帰ってきてないので・・・心当たりを当たっているんですが・・・・」

「・・・・・・わかりました、何人かで手分けして探して見ます

ミリアさんは自宅で連絡を待っていてください」

「・・・・・すいません、メティをお願いします」

アキトは通信をきるとすぐに外に出る準備をした、アキトは何か嫌な予感がしていた

何か・・・・・・取り返しのつかない事が起きる予感が・・・・・

「ん?アキト・・・何所に行くんだ?」

「メティちゃんが行方不明らしい、ちょっと捜索にいってくる、ナオさんも手伝ってください」

「わかった、未来の義妹を守る為だ」

アキトはナオの言葉に僅かに苦笑しすぐに基地から出る・・・・・その瞬間

『ブロロロロロ・・・・・キィィ』

一台の車がアキトとナオの前に止まった・・・・扉が開かれ・・・・降りて来たのは・・

「おにいちゃん!!」

行方不明のはずだったメティス・テアだった

「メティちゃん!?どうしてここに」

「なんだか変な人たちに捕まりそうになったんだけど・・・・・

あのおじさんが助けてくれたの」

「ははは・・・・・・おじさんは酷いな」

運転席の方から一人の男が降り、メティスの言葉に苦笑していた

「お前・・・・テツヤ!!」

「久しぶりだな、ナオ・・・・・・・しかしお前がついていながらどういうことだ」

「・・・・・・・・何がいいたい」

「ふぅ・・・・・・貴様はこの子に何があったかわかってないのか?」

「そう言えば捕まりそうになったって・・・・・・どういうことなんですか?」

アキトがテツヤを真剣な表情でみつめながら言う

「反連合軍の組織だ・・・・・・反クリムゾン、反ネルガル、どうとでも取れるがな・・・・・

奴らは和平主義とかじゃあない、ただ単に連合軍と取って代わりたいだけの連中だ

それにネルガルやクリムゾンをよく思ってない連中が加わっている・・・・その絶好の標的は・・・

他でもないテンカワ・アキト、お前だ」

「俺が?・・・・・・・それが何でメティちゃんを誘拐することに繋がるんですか」

アキトは納得がいかないと言った表情で言う

「お前は今の連合軍にとって最高の象徴だ、敵を単独で破壊し、チューリップすら叩き切る

お前の活躍で息を吹き返した前線はそれこそ数が知れん

逆にいえば反連合軍にとって一番厄介なのもお前だ

なるべくならその力を取り入れたい、しかし真正面から言っても返り討ちは目に見えている

・・・・・とすればとる方法は?」

「そうか!!外堀・・・・アキトと親しい一般人を誘拐しその交換条件で!!」

ナオがテツヤの言いたいことに気付いた

「その通りだ、テンカワ・アキト、お前ももう少し自覚した方がいい

お前が持つ『白騎士』・・・・『英雄』の名の原罪と言うものをな」

「原・・・・・罪?」

「そうだ、今のお前はそう容易く一般人と接触できるような立場ではないんだ

お前がその力を、力ない人間の為に振るえば振るうほどその罪は深くなる

お前が接触したことでこの子の様に巻き込まれる可能性だってあることを忘れるな」

テツヤの言葉にアキトは何も反論できなかった

「しかしテツヤ、どうしてお前は今回のことに気づいたんだ?」

「あらかた張っておいたんだよ、密偵を一人基地に送って情報を集めさせてた

その中で一番危険性が高い奴を奴らの視点で考えて搾り出した

その結果がこれだ、・・・・今、ライザが率いている別働隊が奴らの基地を探している」

テツヤがそういった瞬間、人影が一つ現れた、その人影は怪我をしているのか脚を引きずるような形だった

「!?サラちゃん!!」

アキトはその人影の正体を認めるとすぐに走り寄った

「はぁ・・・・はぁ・・・・・ご免・・・・アキト・・・・イツキが・・・」

「!?・・・・・イツキになにがあったんだい」

アキトが感情を抑えた声で聞く

「イツキが・・・・私を逃がす為に・・・・『プルルルル』」

サラの言葉を遮る形でアキトのコミュニケに通信が入った

「・・・・・・」

アキトは無言のままコミュニケを起動させ通信を開く

「お初にお目にかかります『白騎士』殿」

その画像には仮面をかぶった男と思われる人物が映っていた

「・・・・・・・お前は誰だ」

「これは失礼、私は反地球連合軍組織『フォックス』のリーダー

唐突ですが貴方の姫君は預からせてもらっています」

男はウィンドウをずらし拘束されているイツキの姿を映し出した

「イツキ!!」

「ご安心を、まだ何もしておりませんので。

さて・・・・・貴方にはここに来ていただきたい」

男はそう言うとコミュニケにマップデータを映し出す

「ここで貴方の姫君と共にお待ちしております

なお、護衛の人間が来るのはご遠慮ください

別にきていただいてもかまいませんが無益な殺生はしたくありませんので

では、お待ちしております」

男はそう一方的に言うと通信を切った、後に残ったのはこのあたりのマップデータだけだった

「くっ、裏を突かれたか!!」

「イツキ・・・・・・・ぐぅ・・・・・・・・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

「アキト、おちつ・・・・・・!?」

呼吸が荒くなっているアキトを落ち着けようとナオがアキトの方をむいた時、ナオは我が目を疑った

アキトの髪は虹色に輝き、その顔には光が走り、その目は紅く染まりつつあった

「グッ、ウォォォオォオオォオオオ」

アキトは・・・・・まるで肉食獣のような声で叫び声をあげた

そのあまりにも凄まじすぎる威圧感にナオも、テツヤも、サラも動くことはできない

それだけではない、基地にいる者達も身動きできないほどのおぞましさがその叫びにはあった

アキトは叫び声をあげ終わると信じられないほどの速度で走り始めた

ナオ達は・・・・・そのアキトを見送ることしかできなかった



「ちっ・・・・・まだ身体が動くのを拒んでやがる」

「ふん・・・・・腕が落ちた・・・・といいたいところだが俺も大差ないな」

「身体が・・・・・まるで動かない」

アキトの威圧はいまだに跡を残していた、まして一番近い場所で聞いた三人はその効果も桁違いであった

「おじちゃん達どうしたの?身体が動かないの?」

一人、メティは平気な顔をして歩いている

「メティちゃんは大丈夫なのか?」

「何が大丈夫なの?」

本当に分からないと言った感じでメティがたずねる

「アキトだよ・・・・・・さっきのアキトを見たんだろ?」

「うん・・・・・・ちょっと怖かったけど・・・・・・

でも・・・・・お兄ちゃんが起こったのはイツキお姉ちゃんが捕まったからでしょ?

だからあんまり怖くなかった、お兄ちゃんが怒るのは当然だもん」

メティは微笑みと共にそういいきる

「ふっ・・・・・その通りだったな、ナオ、お前はその子を連れて帰れ

俺はライザと合流し『白騎士』の援護に回る」

「おいおい、ふざけるなよ、メティをさらおうとした連中が相手だ、後方で待ってられるか!!

サラちゃん、メティを頼む」

「・・・・・・わかりました、くれぐれも気をつけてください」

サラの言葉にナオは片手を挙げて応えた

もう、ナオ達に恐怖の感情は無かった、メティの言葉・・・・『怒って当然』

その言葉を聞き、各々が自分とアキトの立場を入れ替えたのだ・・・・・

その結果、アキトと同じ行動をとるだろう、と言う結論に至り、恐怖は完全に無くなった

「ナオ、足手まといになるようなら切り捨てるぞ?」

「へっ、それはこっちの台詞だ!!」

二人の男は軽く笑いながら言葉を交わした





一つの事件・・・・これはその程度で終わるはずの事件だった・・・・・・

しかし・・・・・・・運命の悪戯か、この事件は大きな歴史の転換になった

そして・・・・・歴史が変わるとき、黒き龍白き鎧を纏いし騎士が出会う

この二人の出会いがどのように歴史を歪めていくか・・・・・それを知る者はいなかった

そう・・・・・・修正力を司る存在さえも・・・・・・・・・・・・













後書き

今回は短めで仕上げました

この作品では西欧組はナデシコに来ない予定ですからあまりスポットが当たっていません

まあ逆にスポットを当てるべきなのかもしれませんが・・・・・・・

後、レイナが出てないと言う方・・・・レイナはネルガルの社員です

ですから・・・・・いずれ出てくる予定です・・・・やや壊れてですが・・・・・・

次回・・・・・遂に龍斗とアキトが初対面の予定です

次回が終わったらまた時ナデに近くなりますが・・・・・オリジナル要素を少しずつ入れて行きます

では・・・・・・テストが近いですから少し更新速度が落ちると思いますが・・・・頑張ります

次回以降にご期待くださいませ

 

 

管理人の感想

B-クレスさんからの投稿です。

メティをテツヤが助けて、イツキが捕まりますか・・・

う〜ん、そうくるとはねぇ。

それにしても、最近テツヤの活躍が目立つなぁ(苦笑)

外伝だけのキャラだったのに、インパクトが余程強かったんですね。

さて、次話ではついにアキトと龍斗の初対面ですか。

楽しみですね。