「・・・・どうやら敵の反応は無いようですね」

「そうね・・・・でもおかしいわね・・・普通ならバッタの一機か二機配置していると思うけど」

「ほな罠かも知れへんってことですか?」

「レーダーには反応ありませんけど・・・」

「大丈夫よ・・・敵は・・・・別の物を追ってるみたい・・・・私には・・・・見えるもの」

火星の大地を巡回作業(ユートピアコロニーに敵が近づく前に破壊するため)を行っている指揮車ではそんな会話がされていた

「こちら速水・・・・士翼号のレーダに何かが引っかかりました・・・・・降下してきてるみたいですけど」

「こちら壬生屋、速水さんの言うとおり何かが接近してきてるみたいです・・・・数は一」

「・・・・了解しました・・・通信回線を開いてください、その謎の物体と連絡をとって見ましょう」

先行偵察を行っている速水と壬生屋から通信が入り、それを聞いた善行が通信を開くように命令した



「こちら地球連合極東方面軍所属5121、聞こえていたら返事をしてくれ」

「こちらネルガル所属ナデシコです、感度良好です」

善行の呼びかけに応えたのはナデシコの通信士、メグミ・レイナードだった

その声を聞き指揮車の中は一気に盛り上がった・・・・久々に友軍の声が聞けたのだ、盛り上がらない方がおかしい

「すまないがナデシコは今まで火星を生き抜いてきたのですか?」

善行がふと疑問に思った事を訊ねる、降下してきたとはいえそれは敵の目をごまかすためなのかも知れないからだ

「いや、そなた達を救出する為地球から来たのだ、久しぶりだな善行」

その声は・・・5121の面々にとっては余りにも聞き覚えが会った

「ふぅ・・・・一応私は貴方の上官なんですけどね・・・まあ良いでしょう

我々、5121は民間人の多くをユートピアコロニーで保護しています

チューリップがありますからコロニーの地下シェルターに繋がっている特別通路を用いて保護して頂きたい」

「了解しました、その通路があるところまで誘導をお願いします」

善行の提案はユリカに受け入れられた、民間人もナデシコの救助に大人しく従い乗り込んでいった

その後、5121は全物資をまとめナデシコに乗り込むことになった

それは・・・・かつて恐れられ、その力を分断された連合最強の小隊の復活も意味していた



時の流れにif
第四話 鬼神の力と『覚悟』の違い



ナデシコブリッジ

そこには・・・5121の代表としてパイロットの速水と壬生屋、司令の善行が来ていた

「ようこそナデシコへ、私がナデシコの艦長であるミスマル・ユリカです」

「どうも、私が5121の司令である善行忠孝です、後こちらの二人が5121が誇るエースパイロット達です」

「はじめまして、パイロットの壬生屋未央と申します。今はエステバリスに搭乗しています」

「同じくパイロットの速水厚志です、僕は士翼号に乗り込んでいます」

二人の紹介が終わると一人の女性が速水の前まで歩いていった

「・・・・やはり生き残っていたか・・・・たわけが。

そなたが火星に残ったせいで地球の部隊の士気ががた落ちになったではないか」

その女性・・・芝村舞は速水の顔を見るなりそう言い放った、しかし・・・5121の面々は誰も気分を害してはいなかった

「御免・・・・でも・・・・芝村だったらわかってくれるはずだよ

きっと君も同じような状況になったら同じ事をしたと僕は思うしね」

速水は少しすまなさそうな顔をすると微笑んでそう言い返した

「た・・・たわけ、な・・・何を馬鹿な事を・・・・誰が小隊を救う為に単独で残るなど・・ハッ」

微笑みを見たせいで思考回路が若干鈍った舞は思わず白状してしまった、

いくらきつい言葉で隠していても仲間を気遣うと言う気持ちは既にばれていた

「ふふふ・・・・やっぱりね、君なら僕が残った理由をわかってくれてると思ったよ」

速水はそれを聞いて嬉しそうな笑顔を見せた、それを見た壬生屋と舞は行動を停止した

「よっ、バンビちゃん。元気だったかい?」

「瀬戸口君も元気そうだね」

「・・・どうやら5121が復活したようですね、全員そろってますよ」

瀬戸口が速水に話し掛けているときに船員名簿を見ていた善行がそう言った

「ふむ・・・・三つに分けられた部隊がまた一つになったか・・・・世界は5121の復活を望んでいるようだな」

それを聞き行動停止から復活した舞がそう言った

「あの・・・・三つに分けられたってどういうことですか?」

ユリカが舞が言った言葉に反応し訊ねた

「ああ・・・・・それは私が説「説明しましょう!!」・・・貴方ですか」

善行の台詞は突然ブリッジに現れたイネスに遮られた

「さすがイネスさんですね、説明と聞いた瞬間にきましたよ」

「もしかしたら無意識の内にジャンプしているのかも知れないね・・・」


いきなり出現したイネスを見てルリとアキトが小さな声で話した、それを・・・ある人物は聞き逃さなかったが

「では・・・なぜ5121が三つに分けられたかを説明してあげましょう

まず・・・・5121はどんな部隊か知っているかしら?」

「オモイカネによると五年前のキュウシュウ戦争の際に作られた学兵部隊だそうですけど」

イネスの言葉にルリが返した、これは舞達が乗り込んでいたときに調べた情報だった

「そう・・・でもただの部隊じゃあなかった・・・『死を呼ぶ絢爛舞踏』速水厚志、千年に一度の『天才』芝村舞

極東方面軍稀代の『智将』善行忠孝、現世(うつしよ)の『阿修羅』の異名を持つ壬生屋未央

一騎当千の異名を持つ白兵戦の天才、来須銀河・・・・他の面々も何かしら異名を持っているわ

つまり・・・各方面のエースで造り上げられた部隊といってもいいの・・・・・・

無論、五年前・・・結成時にはここまで強力になるなんて誰も思ってなかったでしょうね

でも・・・結成された瞬間から5121はその類稀なる才能を存分に発揮していった

そんな部隊が戦争が終わったらどういう処置を受けるかわかるでしょう?」

「・・・どういう処置を受けるんですか?」

イネスがさも当然と言う形で話を打ち切ったが、メグミ達民間人にはわからなかったらしい

「まずは解散ね、5121と名前だけは残すでしょうが・・・・主力になる人たちは分断されるでしょうね」

「その通り、我らは三つに分けられた・・・・・・

5121にとって最強の剣であり、腐敗した軍人達にとって最凶の剣でもある速水は

結成されたばかりのミスリルと言う部隊に一人で向かわされた

私は整備員数人を連れて別の部隊との合流を命じられた

残る5121の面々はろくな人材補給もされぬまま火星の駐留部隊に回された

・・・・全ては我々がこれ以上強大になる前に一つずつ潰そうと考えた連中が仕組んだ事だ」

「そんな事が・・・」

クルーの多くがその事を聞き絶句した・・・軍の腐敗がどれほどかわかったような気がしたからだ・・・・・

ヴィーー!!ヴィーー!!ヴィーー!!

「なっ!?ルリちゃん!!」

「はい・・・・前方に大型チューリップを確認、敵が次々と出現してきています」

「やれやれ・・・・・少しはゆっくりと出来ると思ったんですけどね・・・・・ののみさん、何時ものお願いします」

その報告を聞いた善行が眼鏡を上にあげながらいい、ののみがその言葉に頷いた

「202v3、202v3、全兵員は現時点を持って作業を放棄、直ちに出撃態勢に移ってください」

ののみの声がナデシコに響き、ブリッジにいた速水達も格納庫へと向かっていった



「はっ!?ルリちゃん格納庫の様子は」

「あ・・・・はい、映します」

あっけにとられていたユリカ達だったが、気を持ち直すと格納庫の様子を見ようとウィンドウに映しだした



ナデシコ格納庫

「行きましょうか皆さん、総員配置1,2,3!!出撃まで百八十秒!!」

善行の言葉と共に5121のメンバーは次々と自分の乗る機体に乗り込んでいき、3分たった頃には全機出撃していた

「本当に出撃した・・・・・じゃなくて・・・エステバリス隊も全機出撃、援護をします!!」

余りにも早い行動に再びあっけに取られたが、ユリカも援護をするべくエステを発進させようとした・・・・しかし

「必要ないわよ、・・・・・士魂号は宇宙では大きな戦力にはならない・・・だからこそ彼らは出撃したのよ

それに・・・・彼らはね・・・幾度となく火星の部隊を壊滅させているのよ・・・・あの程度なら楽に勝てるでしょうね」

イネスは・・・自信に満ち溢れた声でそう言いきった



火星大気圏内、ナデシコ近辺

そこでは・・・・・まさに圧倒的な勝負がくりひろげられていた

「ふふふ・・・・・その程度じゃあこの士翼号を捕らえる事なんて出来ないよ・・・・今だ!!」

「分かっている、ミサイル全弾発射!!」

ドドドド・・・・ドッゴーーン!!

速水の乗る士翼号に撹乱され、完全に足止めされたバッタ達を

オモイカネの援護により単独での行動を可能にした騎魂号(舞達がナデシコに持ち込んでいた)のミサイルで一掃した

「ジャミング用意、効果時間内でけりをつけてください」

その爆発でバッタ達の足が止まったのを見逃さずにジャミングで追い討ちをかけ、レーダーを無効化させる

「壬生屋未央・・・・・参ります!!」

その機を見て、同じくナデシコに持ち込まれた士魂号、重装甲に乗る壬生屋が突撃する

「こちら滝川、援護射撃を開始するからあたんじゃねえぞ!!」

その壬生屋の後方にいる滝川機がもつジャイアントアサルトが火を噴く

その援護射撃によりカトンボが二隻沈んでいく・・・・・・それを見た速水が両手に超硬度大太刀を構えた

「この空気・・・この肌触り・・・・僕は・・・戦場に・・・力に魅入られてるみたいだね」

速水は・・・・自嘲気味にそう呟くと壬生屋よりもさらに前衛に突撃し多くの花を咲かせていく





ナデシコブリッジ

「な・・・・なんて奴らだ・・・・あれだけの数を相手に互角に戦ってやがる・・・・」

「あの青い機体のパイロット、アキト君といい勝負するんじゃないかな?」

「噂には聞いてたんだけど・・・・・・恐ろしいほどの力ね」

パイロット三人娘がその光景を見て感嘆の声を漏らしていた

「あのパイロット・・・・何者でしょうか・・・」

「分からない・・・でも・・・・あの動き・・・俺には見覚えがある」

「・・・・どういうことですか?」

「あれは・・・木連式柔、覇神の柔だと思う」

「覇神の・・・・柔?」

「ああ・・・俺が月臣に習う時に聞いた事がある・・・・・・

木連式柔は三つの流れで出来ていると・・・・・・

まず・・・一般兵が習う分流・・・・覇兵の柔

次に・・・月臣や九十九のような士官、北辰のような影が習う覇王の柔

そして・・・・影以外の上流士官・・・その中の一握りの家だけに教えられた覇神の柔

覇兵の柔は動きの型まで・・つまり体を、覇王の柔は気の使い方・・・つまり技までで免許皆伝にするらしい

覇神の柔は・・・心、技、体の三つを備えてやっと一人前らしい、その先は・・・伝説の領域に入るらしいが・・・

あの動きは・・・・俺の知っている覇王の柔を超えている・・・・覇神の柔の領域に入っているだろう」


アキトとルリは・・・・余りにも凄まじい速水の動きを見て小さな声で話をしていた



「ふうっ・・・・少し数が多いな・・・・・このままじゃあ押されかねないか・・・・仕方ない」

速水は増え続ける敵の部隊を見ると大きく息を吸い込んだ


その心は闇を払う銀の剣  絶望と悲しみの海から生まれでて

戦友達の作った血の池で  涙で編んだ鎖を引き  悲しみで鍛えられた軍刀を振るう

速水は・・・・全通信を開き澄んだ声で歌を歌い始めた


どこかのだれかの未来のために

地に希望を 天に夢を取り戻そう

われらは そう 戦うために生まれてきた


速水の歌に、舞が、壬生屋が、善行が・・・・・5121の面々が次々と続いていく

歌いながらも・・・・その動きは鈍らず・・・むしろ段々と良くなってきていた


それは子供のころに聞いた話 誰もが笑う おとぎ話

でも私は笑わない 私は信じられる

あなたの横顔を見ているから

はるかなる未来への階段を駆け上がる

あなたの瞳を知っている  今なら私は信じられる  あなたの作る未来が見える

あなたの差し出す手を取って   私も一緒に駆けあがろう!!

段々と歌に力が入ってくる・・・・それを聞いているナデシコの面々の中にも闘志が沸き始めた

「何だこの歌は?・・・・・力が湧いてくるみたいだ」

「・・・地球連合極東方面軍陸戦部隊に伝わる突撃行軍歌だ・・・・・・

まだこの歌を引き継ぐ者達がいたとはな・・・・・・」

段々と力が湧いてくる感覚に捕われたリョーコが疑問を口にし、フクベがそれに応えた

幾千万の私とあなたで あの運命に打ち勝とう

どこかのだれかの未来のために マーチを歌おう

そうよ未来はいつだって  このマーチとともにある

ガンパレード・マーチ  ガンパレード・マーチ・・・・・

本当に・・・少しづつだが確実に5121のメンバーの動きは確実に良くなっていく・・・・

しかし・・・それでも・・・敵の量は減ることなく、次々と増援が送られてくる

オール!ハンデッドガンパレード!! オール!ハンデッドガンパレード!!

全軍突撃!! たとえ我らが全滅しようとも

この戦争、最後の最後に男と女が一人づつ  生き残れば我々の勝利だ!!

全軍突撃!! どこかの誰かの未来のために!!

善行の声が戦場に響き、それと共に速水、壬生屋がさらに前線に突撃していく

そうよ未来はいつだって  このマーチとともにある

私は今一人じゃない いつどこにあろうと ともに歌う仲間がいる

死すらも超えるマーチを歌おう 時をも超えるマーチを歌おう

ガンパレード・マーチ  ガンパレード・マーチ・・・・・・

速水が善行の後を継ぎ歌の最後のフレーズを歌いきった

その歌が終わると共に・・・・5121の動きはさらに凄まじい物になっていった


「しかし・・・・減りませんね・・・・チューリップを落とせれば勝ちなのですが・・・」

善行がまるで減らない敵を見てそう呟いた

敵も考えているのか最初の配置以外ではヤンマを送り込んでくる事はなかった

次々と送られてくる増援はバッタかカトンボだった、カトンボの爆発では大型チューリップは破壊しきれないのだ

少しずつ・・・敵を減らしてはいるがこちらは有人、敵は無人・・・・しかも次々と援軍が来ているのだ

このままなら押し切れるかもしれないが一歩間違えば逆転されかねない状況だ

そんな時・・・・・戦況は大きく動く事になる・・・たった一つの通信によって

「司令、5121特別回線に通信が入っています」

「特別回線に?・・・・・開いてください」

善行は既に使われていなかった特別回線に通信が入ってきたことを疑問に思ったが、敵では無いと思い通信を開いた

「こちらゴールデンベルズです、ただいまより援護射撃を行います

チューリップ近辺に集中砲火を行いますので前衛の部隊を引かせてください」

「・・・・・わかりました、全機一時後退、援護射撃を待って再度攻勢に出ます」

善行の声に従い前衛に出ていた速水、舞、壬生屋の三人が後方に下がる、そして・・・・

ギュオオオオオンン

ギュオオオオオン

ドッッゴーーーン!!

漆黒の光が連続して空から降り、その光がチューリップを破壊し、敵の部隊を壊滅させた・・・


ナデシコブリッジ

「なっ・・・・・多連装のグラビティブラスト!?ネルガルでも実用化していないものをなぜ・・・・」

「ナデシコ上空に待機している戦艦らしき物体から通信が入っています・・・・開きますか?」

プロスがその光・・・グラビティブラストに驚き、ルリが謎の通信の対処についてユリカに訊ねる

「・・・・開いてください」

ユリカは若干考えた後通信を開く事に決意し、ルリに命令を伝えた

「こちら、宇宙連合軍特殊任務部隊ミスリル所属ゴールデンベルズです

援護しますので全部隊収容後上昇し火星大気圏内より離脱してください」

「こちらナデシコ、了解しました」

その後のユリカの指揮はまさに迅速だった、すぐさま善行に通信を行い5121を収容

その後・・・・火星高空で待機していたゴールデンベルズと合流、直ちに火星圏内から離れていった・・・・



火星圏内から離れて約一時間後・・・・・

「ここまで来れば大丈夫でしょう・・・・直接お話したい事もありますので

ゴールデンベルズとナデシコを接艦したいのですがよろしいですか?」

「あ・・・・はい、わかりました」

その後・・・ナデシコはゴールデンベルズと接続し、ゴールデンベルズから代表がナデシコに乗り込んできた



ナデシコブリッジ

「まずは自己紹介をさせてもらいます、私はゴールデンベルズ艦長のテレサ・テスタロッサです」

テレサ・テスタロッサ・・・テッサは自己紹介が終わると速水の前に歩いていった

「やはり・・・・生き残っていてくれましたね」

「君が一番僕の力を知っているでしょ?もっと信じてくれないかな・・・・」

「ふふふ・・・・・それはそうですけど・・・・不安な物は不安なんですよ・・・」

テッサと速水は何所か恋人を思わせる雰囲気で話をしていた

その光景を見てブリッジに来ていた千沙、舞歌、壬生屋、舞の四人が漆黒の炎を背負っていた

「・・・・そなたがミスリルの司令か?」

舞が速水とテッサの間に割って入るような形でテッサに話し掛ける

「はい、速水さんにはミスリルにいる間色々とお世話になってたんです

テッサは舞の問いにあっさり答えると全く違う方向の話題を展開した

「ほう・・・・・そうか、私は舞だ、芝村をやっている」

舞も何かに感づいたのか挑発するように芝村の部分を強調した

・・・・今の空気を一言で言うと・・・・ピリピリした雰囲気

「貴方が速水さんの言っていた芝村さんですね、これからよろしくお願いします」

テッサも逆に芝村の部分を強調し握手をしようと手を差し出し、舞もそれに応え手を差し出す

「「ふふふふふ・・・・・」」

二人は・・・・・握手をしながら何所か邪気を纏った笑みを浮かべていた・・・・・

この状況を一言で言うと・・・気まずい雰囲気

「と・・・・・ところであのゴールデンベルズとは一体何所が作ったものなのですかな?」

プロスはその邪気を消散させようと思い浮かんだ疑問をテッサにぶつける事にした

「ああ・・・・ネルガルから技術支援を受けて完成させたんです。

その交換条件として火星に向かったナデシコの後方支援をする事になったんです」

テッサは邪気を消滅させプロスのほうを見ながら笑みで答えた

「ほう?・・・・・・技術支援だけですかな?」

「はい、戦艦の設計は初めてではなかったので私が設計したんです。

ゴールデンベルズの詳しいデータはネルガルの方に送っていますよ」

テッサはそう言うとユリカの前まで歩いていった

「先程言った通り、ゴールデンベルズはナデシコが地球に帰還するまで後方支援に回ります

その際に・・・・ゴールデンベルズでは戦力が・・・パイロットが不足しているので数名回してほしいのですが・・・」

「ええと・・・・そういわれましても・・・ナデシコもパイロットに余裕は・・・」

「では・・・・ナデシコに現在搭乗している5121のパイロットの方々を数人

ゴールデンベルズに乗り込んでもらうようにしたいのですが・・・・それではどうでしょうか」

「それでしたら・・・・・こちらとしては構いませんけど・・・・」

ユリカはそういいながら傍観の体勢に入っていた善行に視線を送った

「ああ、私も構いませんよ。

士魂号は元々地上用でしかありませんから・・・・

そちらに宇宙戦用の機体があればそちらに乗り込んだほうが良いでしょうしね」

ユリカの視線に意味に気付いた善行は軽く微笑を浮かべてそう言った

「では・・・・速水厚志、滝川陽平、壬生屋未央の三名をゴールデンベルズに移動させていただきます

戦力バランスなどから考えたらこの三名をこちらに乗せればナデシコとの戦力差はほぼ0になるはずですから」

テッサはパイロットを指名すると反論を防ぐ為戦力の均等化と言うことを前面にだした

戦場において囮などに使うのならまだしも部隊の極端な戦力差の開きは敗退に繋がりかねない

それぞれが単独で行動するのならまだしも、今回のように同時進撃を行うのなら戦力差はほぼ同じの方が良いだろう

もし片方が押されていてもほぼ同格なら救援に向かわせる事が可能にしやすいからだ

もし、戦力差が開いていた時にその主力の方が押されていたならもう片方が救援に行くのは難しい事になるだろう

直接部隊指揮等をした事がある舞歌と千沙、舞の三人はその重要性を知っているために文句を言うに言えなかった

「ちょっと悪いけど・・・・話があるんだ・・・・ちょっとで良いから付き合ってくれないかな?」

テッサがその事を話している時に速水はアキトに近づきそう言った

「・・・・俺は話す事は無いんですけど・・・・」

「君にはなくても僕にはあるんだよ・・・・The Prince of Darkness?

「!?・・・・・分かりました、ここではなんですから部屋で話しましょう・・・・」

アキトは速水の言葉に一瞬驚いたがそれを隠し速水の提案を受け入れた

「あら・・・・私もちょうど速水さんに話がありましたからご一緒させてもらいますね

電子の妖精さんはまだお仕事ですか?」

テッサが二人の話が終わった所でルリに向かって話し掛けた

「!!・・・・・すいませんプロスさん、私もちょっと用事がありますので席を離れさせてもらいます

オモイカネ、後お願いね」

ルリはそう言うと先に出て行った速水、アキト、テッサの後を追いブリッジから出て行った

ブリッジに残った面々はその光景を呆然と眺めていた・・・・・・・・・



ナデシコ・・・ルリの部屋

「さてと・・・・一つ俺の問いに答えてください・・・・アンタは何者だ」

ルリの部屋にアキト、速水、ルリ、テッサの四人が入った後、アキトが速水を睨みながら言う・・・・

その雰囲気は・・・黒の王子と言われた頃の物だったが・・・・速水はまるで動じた様子はなかった

「僕はね・・・以前の歴史では・・・・青の死神といわれていた男だよ」

「青の死神!?それに・・・・以前の歴史って・・・・まさか・・・・」

速水が言った二つ名の名前に聞き覚えがあったルリは驚愕の余り目を見開いた

「そう・・・・君が想像している通り・・・・僕も逆行者の一人さ・・・勿論テッサちゃんも逆行者だよ」

速水の・・・・アキト達にとっての余りにも衝撃的な事実にアキトとルリは絶句した

「さて・・・・次は僕から質問させてもらうよ・・・・君は・・・この歴史で何をするつもりだい?」

速水が・・・・何時に無く真剣な表情でアキトを見ながら言った

「俺は・・・・・この戦争を終わらせる・・・そして・・・・あんな未来を繰り返させやしない」

アキトは・・・・速水の言葉で気を取り直し同じく真剣な表情で返した

「そう・・・・・じゃあ・・・・君は・・歴史の変革の為には・・・・親しい人を殺す事が出来るかい?」

「なっ!!・・・・・・・何がいいたい」

速水の言葉にアキトは再び衝撃を受けたが殺気を纏った眼で速水を睨みつけた

「言葉どおりだ・・・・貴様は・・・親しい人を殺してでも歴史を変えようと思っているのか?」

アキトの目に応えるかのように・・・速水が纏う気も・・・かつて・・・青の死神といわれた頃のものに戻っていた

「・・・・そういうお前には覚悟があるのか?」

「ああ、俺の父は木連出身だ、俺は8歳まで火星で育ち・・・それから約六年間木星で過ごした・・・

当然木連での知り合いも、親友もいる・・・・俺は・・・俺が望む未来の為なら・・・その者たちを殺す覚悟がある

貴様に・・・・・それだけの覚悟があるのか?」

「くっ・・・・・・オマエの・・・・望む未来とは何だ」

アキトは・・・・速水の余りにも凄まじい気に飲まれたが・・・何とか気を取り直し速水に質問し返した

「俺が望む物も・・・・和平だ・・・・最も・・・貴様とは違うだろうがな」

「俺とは違う?・・・・・・どういうことだ?」

「俺は・・・木連主体の和平を築く・・・・貴様は・・ナデシコ・・・地球連合主体の和平だろう?」

「・・・・何がいいたい」

速水の・・・・挑発するような声に・・・アキトが反応し問い返す

「地球主体の和平では・・・真の平等な和平なんかありえないと言うことですよ」

その言葉は・・・・今まで傍観していたテッサの口から放たれた

「・・・どうしてですか?草壁主体の和平では平等になんかならないと思いますけど」

その言葉に・・・・同じく隣で傍観していたルリが返した

「確かに・・草壁中心では無理でしょうけど・・・速水さんが中心に立てば・・・・大丈夫です」

「・・・・それでは質問を変えます、なぜ地球連合主体ではいけないのですか?」

テッサが余りにもあっさりと返したのでルリは切り口を変えて再び攻撃に移る

「ふふ・・・貴方はよく見ていなかったんですね・・・・・・

統合軍の主力の軍人は何所の軍人でしたか?・・・・・・・地球出身の軍人ですよ

それに・・・木連は結局自治権を取得できましたか?

地球連合の傘下の植民惑星としか見られていなかった・・・・・そうではありませんでしたか?」

ルリはテッサの言葉に自分の記憶を照らし合わせていく・・・・その記憶は・・・テッサの言うことを肯定する物が多かった

「木連は・・・地球に比べて物資が余りにも少なすぎます・・・・・

クリムゾンの支援を裏で受けて、技術差が圧倒的で・・・やっと地球と互角の条件だったんですよ

でも・・・・ナデシコが完成し・・・技術差はひっくり返り・・・A級ジャンパーの存在でボソンジャンプの優位も無くなった

そんな状況で・・・元々木星を狙っていた高官達が平等な条件で和平を結んでくれると思いますか?

少しでも平等にするには・・・国力が劣る木連が・・・・ほんの少し優位にたっていなければいけない

・・・・・私と速水さんは・・・・この歴史の戦いの中でその考えに行き着きました」

ルリも・・・テッサの言葉に反論するに出来なかった・・・・・・

ルリにとって恐ろしかったのは草壁・・・その草壁から速水が主導権を奪った後に和平を結ぶといっているのだ

速水が・・・・無茶な条件を出そうとしないなら・・・・和平は確実に結べるだろう

「・・・・一つ聞く・・・・お前はなぜ和平を目指す事にした」

「・・・俺は・・・かつての歴史で・・・・最愛の人を失った・・・・それでは理由にならんか?」

「・・・・・・いや・・・・・・」

アキトは・・・速水の思考の底にある物について尋ね、速水は・・・・悲しそうな顔で返した

アキトは・・・・・同じ匂いを感じ取ったのかそれ以上の追求をする事を止めた

「テンカワ・アキト・・・・・貴様も和平を目指している限りは・・・・・敵対はせん

だが・・・・もし俺の道とぶつかり合う様な事があれば・・・・俺は貴様を殺す」

「・・・そう簡単にやれると思う!?」

「思う・・・・・なんだ?」

「・・・・・何でもない」

「そうか・・・」

速水は・・・先程の一瞬の内にアキトの首に持っていたナイフを突きつけていた

その動きは・・・・まだ鍛えあがっていないアキトの目にはとても見えず・・・・恐怖を与えた

「・・・・話はそれだけだ、邪魔をしたな」

速水は・・・・そう言うとルリの部屋から出て行った、テッサもそれに続き出て行く・・・・・

「アキトさん・・・・・・」

速水達が出て行ってしばらくして、ルリがアキトに話し掛けた

「ルリちゃん・・・・どうやら・・・とんでもない化け物が身近にいる事になったね・・・」

「・・・・勝算は・・・・ありますか?」

「・・・・今は絶対に勝てないだろうね・・・・しばらくは・・・敵にならない事を祈るしかない・・・」

アキトは・・・・ルリの部屋のドアを見ながら・・・悔しそうな口調でそう呟いた・・・・・・







歴史と言う一つの舞台に同時に開かれた二つの新たなる舞台

最終的にどちらの舞台を選ぶのか・・・また両方の舞台が選ばれるのか・・・・・

知る者は無く・・・・ただ・・・主演となる逆行者達だけが動き続けていた












後書き

今回・・・展開を少し急ぎました、元々火星からそのまま撤退させるつもりでしたから

無論フクベ提督はそのままナデシコに残っています

和平の件に関しては色々なご意見があるでしょうがとりあえず私の考えですので

この件に関しての非難だけはやめてください、他のところの非難は受け付けますから・・・・

後、覇兵、覇王、覇神の柔はオリジナル設定ですのでナデシコ初心者の方はご注意を

では・・・・次回お会いしましょう

 

 

代理人の感想

う〜む・・・・・・・・傍から見てると、どうも速水主役、ガンパレキャラメインですよねぇ。

その他投稿(ガンパレ)に移したほうがいいかしらん。