火星においてゴールデンベルズ、5121小隊と合流したナデシコは順調に地球への道を進んでいた

その間・・・アキトは今まで以上の速度で自分を鍛え上げていた・・・万が一のことに備えて・・・

そして・・・月軌道上までもう少しに迫った時・・・・訓練していたアキトに急に通信が入った

「よう、アキト・・・・わりぃ、邪魔しちまったか?」

「いえ・・・そろそろ切り上げようと思ってましたから・・・それでなんのようですかウリバタケさん」

「ああ・・・お前に頼まれていたDFSが完成したんでな、その報告だ」

「もうですか?・・・・随分と早くに仕上がりましたね」

アキトは少々驚いていた、完成にはもう少し時間がかかるだろうと予想していたからだ

「ああ・・・ルリルリが手助けしてくれてな、あと・・・ゴールデンベルズの艦長も手伝ってくれたんだ

おかげでソフトの完成が予想より早くに終わったんだよ、ついでにバーストモードも開発しておいた

まあ俺からの報告はそれくらいだ、んじゃあな、訓練もいいけど身体を壊すんじゃねえぞ」

ウリバタケはそう言うとコミュニケをきった、アキトはそれを確認するとルリにコミュニケを繋いだ

「アキトさん、どうしたんですか?」

「ちょっと聞きたい事があってね・・・・今は大丈夫かい?」

「はい、今は私の部屋にいますから大丈夫ですけど・・・・・アキトさんは?」

「訓練室さ、プロスさんに頼んで一人でいれる様にしてるから大丈夫だよ

ところでルリちゃん・・・・あのテレサさんがDFSの開発に手を貸してくれたらしいけど・・・・」

「はい、事実です」

アキトの問いにルリは何事もなかったのかのように答えた

「・・・・彼女は彼の仲間なんだよ、危険じゃないかい?」

「それは大丈夫です、何度か話しましたが危険性はそうありませんし

手助けしてくれたほうが此方のメリットの方が(いろんな意味で)大きいですから」

「メリットね・・・どんな物が大きいんだい」

「まず・・・彼女が開発しようとしている士魂号の最終段階・・破神号の設計図を元にすることで

ブラックサレナ、ブローディアの開発が早まりそうです、それに軍内部の協力者も作りやすいですし・・・

此方のデメリットは殆どありません、むしろ明日香インダストリーを抑えてくれてるからメリットだらけです」

ルリはまだ疑念を持っているアキトに次々と自分達のメリットを伝え説得した

5121の主力である士魂号は明日香インダストリーが開発した機動兵器である

陸戦にしか使えず、速度や小回りではエステに劣るが(士翼号は別格でエステと同じく高速移動が可能)

母艦から離れての稼動可能距離と攻撃力では大きくエステを上回っている

テッサが設計し、ミスリルの主力となっているアームスレイブ(以降AS)も士魂号の後継機である

エステに比べてエネルギーウェーブの効果範囲を気にせずに動け

エステよりも強力なその力でバッタのフィールドを貫通する事が可能な士魂号とASは今でも陸戦部隊の主力兵器である

その主力兵器を開発したテッサと明日香が最大に支援している速水が持っている株は全体の 約4割に及んでいる

決定権こそないが、ルリ達が回収した11パーセントの株と組み合わせれば事実上明日香は陥とし終っている

さらにASを開発したテッサの力は兵器開発の経験がないルリ達から見たら喉から手が出るほどほしい物だ

その代りにテッサが要求した物は・・・士翼号の宇宙戦用の改造とDFSを一個譲り渡す事であった

元々DFSは量産予定だったし、士翼号の改造も大きなデメリットにはならないためルリは喜んで手を結んだ

ちなみに・・士翼号を改造した理由は、ゴールデンベルズに搭載しているASの宇宙戦用では速度は士翼号と同等だが

破壊力と言う点では最新機である士翼号にどうしても劣ってしまうからだ・・・・

ARX-7アーバレストなら速度、攻撃力共に士翼号を上回っているが一機しか生産しておらず 今は地球にある

月面に控えているだろう敵大部隊との交戦を考え士翼号の改造に踏み切ったのだ



アキトには秘密だがルリにとってのメリットの一つにA・A同盟と言うものがある・・・・

A・A同盟(正式名称アキト&厚志同盟)は二人に害をなす存在を徹底的に排除する為の組織である

ちなみにアキト側にルリ、ラピス、メグミ、リョーコ、ホウメイガールズ、ユリカが所属しており

厚志側にはテッサ、舞歌、千沙、舞、未央といった面々である

行動力のアキト側、智謀の厚志側と言うような感じで互いに協力し合っているのだ

まあ・・・・アキトと厚志にとっては不幸の源かもしれないが・・・・・・・・



「そうか・・・・分かった、でも・・・何か不審な動きがあったら伝えてくれるね?」

「はい、当然です」

アキトの言葉にルリが頷いた時・・・・・

ヴィー―!!ヴィー―!!ヴィー―!!

「月方面に敵の大部隊を発見、パイロットの皆さんはすぐに出撃してください!!」

警報が鳴り響き、メグミの通信がナデシコ中に伝わった

アキトもそれを聞くとすぐに自分用のエステに乗り込んでいった・・・・完成したばかりのDFSを持って・・・・



時の流れにif
第五話 変わり始める『時』



ナデシコエステ部隊が出撃した頃、ゴールデンベルズの部隊も出撃していた

ゴールデンベルズ側はアキトと同じくDFSを所持した士翼号宇宙戦用換装型

M9宇宙戦用に乗った壬生屋と滝川、千沙と舞といった状況である

なお・・・舞達は戦力増強の為M9の予備機に乗り込んでいるのだ

「敵は連隊規模です、確認できるだけでヤンマが二十三、カトンボが百七十八、バッタは約八千六百

最初にゴールデンベルズとナデシコ連続攻撃で敵陣形を崩します

各機はそのまま撹乱を重点に置きながら敵を撃破していってください!!」

敵と真正面から向かい合っているパイロット達にユリカからの通信が入り、グラビティブラストが放たれる

グラビティブラストを受け敵戦力の約10パーセントが破壊される

それと共に、速水、舞、壬生屋が一気に敵陣深くに切り込んでいった

「おい!?無茶すんな!!」

その行動に驚いたリョーコが叫ぶ

「大丈夫だよ、あいつらならこれくらいは平気だ」

滝川がその手に持つライフルでバッタ達を狙撃しながらリョーコへと通信を入れた

「でも・・・・・って嘘!?」

ヒカルがその言葉に返そうとした時、ヒカルは自分の目を疑った

それはそうだろう・・・・あまりにも数が違うバッタ達の群れに突撃していった三人は・・・

それぞれが個別に動き、敵に反撃すら許さぬ勢いで次々とバッタを葬っていたのだ

その中でも・・・速水は特に異質だった・・DFSの威力もあってのことだろうが

速水は・・・一振りで纏めて五体以上のバッタを次々と葬っていた

「これでも俺たちはあのクマモト決戦を生き抜いてきたんだからな、あの程度じゃあやられねえよ!!」

滝川はそう言うと再び狙撃によりバッタ達を次々と落としていく

「そうですね、あの時の戦況と比べたらこちらの方が幾分かマシですね」

「ミノタウロスタイプもスキュラタイプもいないからな・・・

バッタなどせいぜいゴブリンかナーガタイプ、カトンボなどスキュラに比べればおもちゃのような物だ」

「芝村、過信は駄目だよ、どんな状態でも気を抜いたら直ぐに落ちちゃうんだからね」

滝川の言葉に前線の三人も通信を入れて各々言いたい事を言いながら戦闘を続行している

「・・・・何時までも三人に任しておくわけには行かないな」

アキトはそう言うとDFSを起動させ速水たちと同じラインまで行くとバッタを葬り始めた

「へへっ・・・俺たちものんびりしてるわけにはいかねえよな・・・いくぜ!!」

それに続きリョーコ達が前線に行き、後方には狙撃役の滝川と援護の千沙が残る事になった





「遅すぎですよ!!」

「私に許可なく触れる事は許さん」

ドッゴーン!!

宇宙戦用のASに乗る芝村と壬生屋がその手に持つ超硬度大太刀でバッタを切り裂く

「いくぞ!!ヒカル、イズミ!!」

その合間を縫うような形でリョーコ達三人がディストーションフィールドによる突撃攻撃を仕掛け

「オラオラオラオラオラ!!!!」

残党をガイが片っ端から始末していく





「アキト君、右の部隊は任せたよ!!」

「了解」

速水とアキトはそう言葉を交わすと中央付近で戦っているリョーコ達から離れ

それぞれ右翼、左翼の敵の大部隊と戦闘に移った



「久しぶりに本気で行くよ・・・・!!」

速水はそう言うと、腰に用意していた超硬度大太刀を左手に持ち二刀流で敵を葬り始める

「悪いが・・・手加減はしない!!」

アキトも速水が二刀流で葬り始めると同時にDFSの出力を最高まで引き上げバッタを纏めて五匹近く葬り続ける


その二人の圧倒的な戦いは・・・・まるで舞を舞うような戦い方だった



「ふむ・・・・速水と同等レベルのものがまだこの世界にいたか・・・世界とは広い物だな」

「そうですね・・・速水さんは既に世界最強の人物だと思いましたが・・・

その考えを改める必要がありそうですね」

「おいおい・・・火星での戦いでわかってはいたがよ・・・本気でアキトと同等かよ・・・」

「世界って広いんだねぇ・・・・」

「・・・・・私達とは格が違うわね・・・・二人共」

その圧倒的ともいえる戦いを見ていた5121、ナデシコの女性パイロット達はそう感想を漏らしながら戦っていた



ゴールデンベルズ ブリッジ

「敵、木星蜥蜴の両翼の戦力十パーセントダウン、中央の戦力は十六パーセントダウンしました」

オペレーターが戦況報告をする、それを聞くとテッサは戦況図を見ながら次の作戦を立て始める

戦況図では・・・中央の団体よりも両翼にいるアキト、速水の方が戦力的に上と見たのか

中央に集結していたバッタ達が両翼へと偏り始めていた

「現状ではこっちが有利ですが・・・しかし数ではあっちの方が圧倒的に上・・・・

殲滅行動にでるのは愚かでしかありませんね」

「えぇ、その意見には賛成ね・・・、ナデシコの主砲で敵中央の露払いをしてもらって

その後このゴールデンベルズの主砲で敵陣中央に穴をあけましょう」

「その後・・・ナデシコ、ゴールデンベルズは全速力で中央より地球方面に離脱・・・

その際・・・速水さん達は安全圏に退避できるまで艦の護衛・・・ですね?」

テッサは参謀である舞歌に確認の言葉をかける、舞歌はその言葉に小さく頷いた

「作戦は聞いての通りです!!ナデシコ、並びに各パイロットに通信を!!

急いでください、敵が中央に集結してはこの作戦は失敗します!!」

その後からは実に素早い行動だった・・・通信士がナデシコに作戦を伝えている間に

オペレーターは中央に集結しているパイロットに撤退を指示、速水、アキトにも後方に引くように通信を入れ

各員がグラビティブラストの影響圏から抜け出すとナデシコ、ゴールデンベルズの順で敵陣中央に砲撃を仕掛け

中央に陣取っていたヤンマ、カトンボ艦隊の撃破に成功

その後はフィールド出力を臨界まで上げ、左右からの砲撃をギリギリながら防ぎきり

接近してくるバッタ達は各所属艦近くで待機していたパイロット達に撃墜されていった




月の連合軍影響圏まで離脱したところで友軍に保護され、無事にナデシコ、ゴールデンベルズは地球へと降下した





地球、極東方面軍サセボドック

ナデシコ、ゴールデンベルズは連合軍の指示もありこのドックへと帰還した

帰還したナデシコクルーとゴールデンベルズクルーを待っていたのは軍の高官達だった

「ナデシコの諸君、火星探索ご苦労であった・・・しかし・・・君達が地球から離れるさい軍に戦いを挑んだのも事実だ

しかし・・・君達の火星の難民保護の功績、月面に滞在していた蜥蜴部隊の戦力を大幅に削った実績を特別に認め

ある条件を飲む代わりに君達が行った事は全て不問にしよう・・・なお、これはネルガルとの協議の結果だ」

軍の高官の高圧的な態度にナデシコの面々は不満を隠そうともしていなかった・・・・・・

「まず・・・条件の一つに・・ナデシコを軍のゴールデンベルズの監視下に置く

この事でテッサ大佐の反逆行為に関する件は不問にする」

テッサの独断での火星へのナデシコ支援は軍の腐った高官達からは反逆行為だとみなされた

もっとも・・その状況下でゴールデンベルズが地球から出れたのはまともな高官達が支援したからだった

本来死罪のはずの反逆がここまで軽減された事もそのまともな高官達のおかげであった

「次に・・・これより連合軍は生命線であるクルスク工業地帯の防衛戦を開始する事になっている

たびたび蜥蜴の部隊が攻撃を仕掛けてきていたが・・・敵の行動を見るに

約一週間後には蜥蜴の大攻勢があるだろうと予測されたからだ

ナデシコ、並びにミスリル所属のゴールデンベルズ、5121にはこの作戦に参加してもらう

この条件を呑めば今までの事は全て不問にしよう」

はっきり言ってこの条件は・・・少なくとも民間の船であるナデシコには厳しすぎる条件だろう

「・・・失礼ですが、その考えは連合軍の意思ですか?」

速水が・・・その高官を睨みつけるように言う

「・・・その通りだ、数人はこの処置に反対していたが・・・過半数はこの処置に賛成していた

連合軍の意思ととってもらって構わんよ」

「・・・・誰が反対していたのですか?」

「そこまで言う必要性などあるまい、速水中尉

男は・・・軍隊では何よりも重視される上下関係を利用しこの話を終わらせようとした・・・

しかし・・・・男は速水に与えられた一部の特権の存在を忘れていた

「なら・・・絢爛舞踏章受賞者、速水厚志として聞かせていただきます・・・・

誰がこの処置に反対していたのだ?」

男はその言葉を聞きギョッとした、自分は速水が絢爛舞踏章を授章していたことを忘れていたのだ

絢爛舞踏章とは・・・その勲章が持つ権限を行使する時

いかなる上下関係であろうとも作戦の概要、以下に重要な機密情報でも受章者に隠す事は許されなくなるのだ

しかし、戦略などに口出し、命令を自分よりも上のものに降すことは許されない

あくまで・・・情報に関してのみ受章者は上下関係、機密を無視する事が可能なのだ

しかし・・・最高クラスの機密や相手が大将である場合は話は別だが・・・・

「はっ・・・・西欧方面軍司令と極東方面軍司令であります」

男も・・・しぶしぶながら敬礼をし自分が知っている情報を速水に伝えた

「そうか・・・・・情報ありがとう、これより絢爛舞踏章の権限を再び凍結します」

速水も敬礼を仕返すと、そう伝え普段のぽややんな顔に戻った

「ふぅ・・・・先ほどの命令に逆らえば反逆者として処理される・・・民間人であろうと例外ではない

・・・・・よく考え・・・・決めるのだな」

男はそう言うと立ち去っていった・・・・彼の副官らしき人がクルー達に向かって頭を下げていたのが印象的だったが・・・・





その後・・・ナデシコクルー達は話し合いを続けた結果・・・全員がナデシコに残る事になった

無理矢理罪人にされるよりは、今は従っていつか連合軍の奴らに泡を吹かせてやろうと言う意見で一致したからだ





次の戦いは・・・逆行者達は本来経験したことのない戦い・・・・この戦いから・・・歴史は急激に流れ始める

最後に勝つものは果たして誰なのか・・・・勝利の女神は・・・今はまだ微笑んではいない

























後書き

まず一言・・・待ってくださっていた方々・・・申し訳ありませんでした!!

言い訳を許してもらえるのなら・・・一言だけ・・・スランプでした

なかなか話の形が纏まらず・・・これを書き上げたのも以前から少しずつ書いていたからです

次は・・・新連載の予告編になるか・・・新たなる刻の歌の前日の夜になるかはわかりませんし・・・

それ以前に・・・今月中にもう一作書き上げられるかも不明です

最近身の回りも忙しくなり始めたので・・・・どうか気長に待っていただけると幸いです

私は・・・電波である三国ナデシコ以外は全部書き上げるつもりです

今まで投稿している物は責任を持って最終回まで書き上げるつもりです

ですから・・・・時間はかかるかもしれませんが・・・・どうか最後までお付き合いください

 

 

 

代理人の感想

取りあえず、テッサって原作ではアーバレストは設計してませんよー、とツッ込み。

 

で、冒頭のルリとの会話ですけど・・・・

「メリットだらけ」って時点で怪しいと思わないかなぁ(笑)。

そう言う言い方をされると裏があるとしか思えないんですが。(爆)

 

「うまい話にゃ裏がある」

 

これはやっぱり万古不変の名言でして(笑)。