2196年、第一次火星会戦から約一年が過ぎたころ。

火星、月周辺の制宙権、並びに火星は木星蜥蜴とよばれる無人兵器の群れに制圧されていた

連合軍と蜥蜴の軍との力はあまりにも違いすぎた、しかし、そんな中ただ一つ善戦を続けている軍があった

それは・・・・西欧方面軍、先の火星大戦で多くの民間人を開戦前から収容し、地球へと帰還させ

次に行われた月面防衛作戦ではネルガルが試作していた機動兵器、エステバリスとデルフィニウムの混合部隊で殿を務め無事に帰還した、その後は先の二つの会戦から得たデータをもとに各地に固定型のレールカノンを設置

それと共に戦艦に追加装備型のレールガンを持たせることで敵機動兵器に対する攻撃能力をもたせ

西欧ではその名を知られてなかったネルガルと契約を結びエステバリスを先行量産してもらいそれを実戦で使用していた

しかし、連合軍内では西欧軍の評判は悪かった、何しろ固定砲台などの設置を報告せずに行ったからだ

これで戦果が上がってなければ司令官とその案を立てたものは確実に失脚していたが

面白いほど戦果をあげており、今では西欧方面が地球で一番安全なところとまで言われだしている

そんな中・・・・西欧方面の一つの基地の前に二人の男が立っていた

そのうちの一人、ビジネスマン風の姿をしている男の名はプロスペクター、ネルガルの会計監察役である

もう一人、いかつい顔をした大男の名はゴート・ホーリー、もとは軍人であったが退役後はネルガルのボディガードとして雇われている

「ミスター、今日こそ話を聞いてもらえるだろうな」

「ええ・・・・彼が要求してきた事柄は全てクリアしましたからやっと交渉ができますよ」

この二人はある一人の男と契約を行うべく、はるばる極東のニホンからやってきていた

「・・・・しかしここまで長かったな」

「ええ・・・・まさか交渉するだけで三ヶ月もかけさせられるとは私も思いませんでしたよ

まあ・・・彼の能力は今回のプロジェクトには必要不可欠ですからな・・・・」

「失敗は許されない・・・か・・・・・・」

「ええ・・・・・・ではいきましょうか、ゴート君」

二人はそう言うと基地の中に入っていった

すでにこの二人は顔パスのレベルに達している、それも仕方ないだろう約三ヶ月間ここに毎日通っていたのだから

その過程でその目当ての人物以外とも交渉を行ったりしていたが全員が最後は

『彼を説得できたのなら乗る』の一点張りで完全に契約を結べた者はいなかった

二人は賓客用の部屋に招かれしばらく待っていた・・・すると一人の男が黒尽くめの服装で一人の少女を横に携えて部屋に入ってきた

「お待たせしました、少し事後処理で手間取った物で・・・・・」

「いえ、こちらこそ交渉の場を持たせていただいたことを感謝しております」

プロスペクターが笑顔のままでそう返す

その黒ずくめの男こそプロスペクターとゴート・ホーリーが契約を結ぶべくやってきた目的の人物

西欧方面軍総司令グラシス=ファ=ハーテッド中将直属の特殊エステバリス部隊『Moon Night』

その部隊の隊長であり西欧軍のエースを集めた最強の特殊部隊『ヴァルハラ』の副指令・・・・

連合軍内では『ハーテッド家のジョーカー』とまで謳われている人物

アキト=ファー=ハーテッド・・・・・・軍内でも一、二を争う稀代の名将であった







刻まれゆく神話
第一話
今、動き出す一つの『歴史』



「さて・・・・前回こちらが要求したことを全て終わらせたからここにきた・・・と見てよろしいですね」

「はい・・・・とりあえずこれが西欧方面軍総指令グラシス中将の許可証です

そしてこれが連合軍総司令ガトル大将の許可証です」

「・・・・・・確かに」

「そしてこれが・・・・・アキトファンクラブの会員の51%の署名です

「あははははは・・・・・本当に集めたんですか。

まあこれでこちらの要求もすみましたし・・・・・話を開始しましょうか」

「ふぅ・・・・・・・ネルガルは新型戦艦を製造しているのは知っていますね?」

「ええ・・・・・・ND−001『ナデシコ』・・・でしたね」

「はい・・・・・そこで貴方にナデシコの艦長になってほしいんです」

「お断りします」

アキトはにっこりと笑うとそういい部屋から出て行こうとした

「な!!ち・・・ちょっと待ってください!!」

「なんですか?」

「まだこちらから条件は出していません・・・・お給料はこれくらい用意させていただきますから」

プロスペクターは必死にアキトを止めるとすぐに電卓にアキトに払う予定の給料を表示してアキトに見せた

そこにはしばらく働いていれば本気で家を土地ごと買えるんじゃないかってほどの金額が表示されていた

「すいませんがエステの調整がまだですので」

「ああ!!待ってくださいってば!!なにがご不満なのですか!!」

「俺、パイロットですから」

「わかりました!!パイロット兼艦長でどうですか!!」

プロスのほうも必死である、何せ彼を雇うのを失敗したら自分はどれだけ上司に叩かれるかわかったものではない

「・・・・どうして艦長にこだわるんですか?」

「はあ・・・・・貴方は今まで蜥蜴との戦闘を勝ち抜いてきた経験もあり

また、艦隊レベルでの指揮能力も軍内ではトップクラスの実力者です

ナデシコには多くの民間人が乗り込みますからその上に立つ人物はかなりの腕をもっていないといけません

そこで蜥蜴の部隊との戦闘経験もあり、また相当の実力を持っている貴方に白羽の矢が立ったと言うわけです」

「・・・・・・俺はあくまでパイロット業に専念したいんですけど」

「ふぅ・・・といわれましてもこちらも譲るわけにはいきませんので・・・・・・

とりあえず、副艦長として地球連合大学の主席の御人を雇っております

他にも貴方の補佐として同成績で大学を卒業した御人を

副艦長の補佐としてもう一人の逸材を用意しております

ですからパイロットとして出撃して戴いても結構ですが・・・・

できれば艦内で指揮を取っていただくとこちらもありがたいのですが・・・・・」

「ふぅ・・・・・・戦闘時はパイロット優先では駄目ですか?」

「そうですな・・・・・・こちらもなるべく譲りたくはないのですが・・・・・・

緊急時の指揮をエステから直接する自信がおありなら・・・・」

「・・・・・わかりました、ところでこの船の本当の目的を教えてくれませんか?」

「ははははは・・・・・急に何を仰るのですか」

「ナデシコのスペックを見させていただきましたが地球圏内ではまずそう簡単に負けることはないでしょうね

何よりも木星蜥蜴と同レベルの武装がある、しかもその核となる相転移エンジン・・・・・

宇宙空間で最強の力を発揮する物のようですけど、これはどう説明するおつもりですか?」

「いやはや・・・・・・わかりました、しかし内密にお願いします

ナデシコの真の目的地は火星の民間人の救助です

「なるほど・・・・・・だとしても自殺しに行くおつもりですか?」

「・・・・どういう意味ですかな?ナデシコは蜥蜴の戦艦とは比べ物にならないほどの力を持っているはずですが」

「あなた達は一個一個で見ているからでしょう。

それに主砲が一つしか、しかも前方にしかないのはあまりにも危険すぎる

包囲されれば一瞬で終わりますよ、ナデシコは」

「な・・・・・・・」

「まあ・・・・策がないわけでもありません」

「それはなんですかな」

「レールガンを追加装備してください、奴らのフィールドも実弾兵器を防ぐには相当の力が要るようです

そうすれば火星での活動をできるだけ早く済ませ、火星圏離脱を急げば間に合うかもしれません」

「ふむ・・・・・わかりました。会長に直に取り合ってみます」

「お願いします、後・・・・・ラピスも乗せて構いませんか?」

「その少女もですかな?」

「ええ・・・・・二人共気付いているでしょうがラピスは・・・・マシンチャイルドです

俺がラピスとあったのも強制的に人体実験をしている研究所を破壊しにいったときです

お二人・・・ネルガルの・・・・シークレットサービスの人ならラピスの重要性はわかるでしょう?

このまま西欧においていくよりはナデシコに乗せた方が遥かに安全ですから・・・・・

無論・・・・ネルガルが何かしようとしたら容赦なく撃退させてもらいますよ

ラピスは大切な『妹』なんですからね」

「・・・・・わかりました、では契約書にサインを」

アキトはプロスから契約書を受け取るといくつかの条項を消した

「おや・・・・・・それにも気付かれましたか・・・・・・

まあいいでしょう、貴方のような超一流の人材が得れるのなら安いものですからな」

「すいません」

「いえ、この日にニホンのサセボドックにまで来てください。

いやはや、これで超一流の人材と一流の人材を手放さずにすみますな」

「そう言えば・・・・・この基地からどれくらい乗り込む予定なんですか?」

「これを御覧ください」

プロスはそう言うと一枚の紙を差し出した、そこには『契約成功時の追加クルーリスト』とあった

そのリストにある名前を順にあげていってみよう

まずサラ、アリサハーテッド姉妹、ルーク・テア並びにその娘ミリア・テアにメティス・テア

「・・・・・・よく説得できましたね」

「いやはや・・・・皆さん一流の腕をもっていますからな、交渉は苦ではありませんでしたよ」

ちなみに・・・・ルーク・テアはメカニックとして(実は結婚前は世界をにぎわしていたメカニックだった)

その娘ミリアとサラはその料理の腕を見込まれコックとして、メティスは昼間の通信士として雇われたのである

アリサは・・・・・言うまでもなくパイロットだった

「では・・・サセボドックでお待ちしています」

「はい・・・・期日には間に合うようにします」

プロスとアキトは互いにそういい会釈しあった、その後プロスとゴートはニホンへと戻っていった

「あっ、ルークさんですか、いえ・・・実は作ってほしいものが・・・」













同年十月、サセボドック、ネルガル製機動戦艦『ナデシコ』ブリッジ

「うーん・・・・・暇ねえ」

「まあ発進しないとあんまり仕事もないですしね」

「まだ艦長も副艦長も着てませんからね」

上から操舵士のハルカ・ミナト、通信士のメグミ・レイナード、オペレーターのホシノ・ルリである

「そう言えば艦長ってどんな人なのかしら」

「私はかっこよくて優しい人がいいなあ」

「甘いわよメグちゃん、そんなに都合よくはいかないわよ。

せいぜいひ弱なおぼっちゃまかごつい顔したおじさんよ、

それに女ばかりブリッジに集めてるのも疑わしいわね」

「あっ、いわれてみればそうですね」

「ルリちゃんも何かされたらお姉さん達に言うのよ」

「それは心配ないと思います」

「へ?何で」

「データ、みてみます?」

「あら、データあったの?」

「はい、映します」

ルリがそういってまもなくアキトの全身図(バイザー装着)入りで詳細を書いているウィンドウが開かれた

艦長:アキト=ファー=ハーテッド 出身地 火星 性別 男性 年齢 18歳

西欧方面軍精鋭部隊『ヴァルハラ』の副指令にして『Moon Night』の隊長

戦闘時の服装とその性格から『黒衣のロキ』の二つ名をもっている


「これが艦長のデータです」

「・・・・うそでしょ、地球で一番の有名人じゃないの・・・・」

「私って・・・・幸運なのかな?」

アキトは多くの蜥蜴の部隊を壊滅させておりその名声は西欧だけではなく世界中に鳴り響いていたのだ

もっとも、当の本人はそんなことはまるで気にしていないのだが・・・・・・

「ちょっと何なのよこの艦は!!」

ミナト達の後ろ側で先ほど到着した軍人達が急に騒ぎ出した

「何であんな素人ばっかり乗せてるのよ!!」

「お言葉ですが、彼女達は各分野のエキスパートです。

さらに艦長は指揮官としても、パイロットとしても世界でも最高の逸材、

副艦長も地球連合大学在学中に、総合戦略シミュレーションで無敗を誇った逸材です」

「その逸材はどこにいるのよ!!」

「それは・・・・」

「あ、ここだここだみなさーーん私が副艦長のミスマル・ユリカでーすブイ!!」

「ブイィィ!?」×ブリッジ全員

「くっ・・・・はははははははは・・・・・・・・・予想以上に面白いところだなアリサ」

「そうね・・・・・この軽さは『Moon Night』・・・いえ・・・『ヴァルハラ』クラスね」

「ここも・・・・・楽しい人でいっぱい?」

ユリカの後ろにいる黒尽くめの男と銀色の髪をした女性と桃色の髪の少女がユリカの行動を見てそういった

「やっと来たか・・・・待ちわびたぞ」

「悪い、ニホンの道には慣れてなくてな・・・・・・」

そう言うと黒尽くめの男・・・・アキトとアリサはユリカの前に歩み出た

「俺が艦長のアキト=ファー=ハーテッドだ、戦闘中は厳しくするがそれ以外は個人の意見を尊重する

何かお祭り騒ぎのしたい人は言ってくれ、俺も祭りは好きだからな」

アキトはにっこりと笑いながらそういった、横ではアリサが頭を抱えている

「・・・・・・・・」

ブリッジの全員がアキトの自己紹介にあっけにとられた・・・・・普段TVなどで流されているのはアキトの戦闘シーン

つまりは、アキトの真剣モードの時だけなのだ、だからいきなりお祭り騒ぎと言う言葉が出てきたのにあっけに取られたのだ

「ふはははは・・・・相変わらずじゃな」

「フクベ中将!!軍を退役したそうですが・・・・この艦に乗っておられたのですか」

「まあな、君もこれに乗ると言うことは・・・・・・」

「ええ・・・・・かつての過ちを正したい・・・・・」

「そう・・・・か・・・・」

『ヴィーヴィーヴィーヴィー』

「な・・・・なに」

「敵襲か!?状況確認急げ!!」

「あ・・・・はい」

いきなりアキトが指揮をとり始め今まであっけにとられていた面々も仕事に移りはじめた

「敵の攻撃はこの真上に集中し始めています」

「敵の狙いはこのナデシコね・・・・」

黒髪長髪の女性がそう呟く

「ん?君は?」

「ああ、私はアオイ・スズカ、貴方の補佐役よ」

「そうか、うん?そこの男性は「ちょっとそんな事言ってる場合!!とっとと反撃しなさいよ!!」・・・どうやって?」

「主砲を真上に向けて敵を焼き払うのよ!」

「上にいる軍人さん達も吹っ飛ばすわけ?」

「ど、どーせ全滅しているわよ」

「それって、非人間的っていいません?」

「貴方は味方を信頼することすらできないんですか?それでよく士官が勤まりますね」

ミナトの指摘に戸惑っているキノコをメグミ、アリサが追撃する

「な・・・あんた達!!上官に対してその口の聞き方はなによ!!」

「私、軍人じゃありません」

「私はあくまで西欧方面軍からこのナデシコに着たんです、貴方は正式な上官ではありません」

「落ち着かんか!!、艦長、何か策はあるかね?」

「・・・状況を見るにこのままナデシコが発進しても主砲を打つ前にやられるか

撃てたとしても相当の部隊が生き残るでしょう、アリサ、早速で悪いが出撃できるか?」

「ええ、任せて頂戴」

「・・・と言うことで囮を出します、囮が敵を引き付けているうちにナデシコは海底ゲートを通り海中に、

その後タイミングを合わせ上昇し主砲で敵を殲滅させます」

「そこでこの俺の出番さ!!」

左足にギブスをし整備員二人に支えられている男が急に叫んだ

「・・・・・何だ、ヤマダか。足を折ってる奴は邪魔だ、大人しく怪我を治せ」

「なに!?・・・・・ってアキトか?・・・・後、俺はダイゴウジ・ガイだ!!」

「ルークさん、アリサが発進します、エステの準備をお願いします」

アキトはガイを無視し格納庫にいるルークへと通信を繋いだ

「ああ、まかせておけ。お前は出ないのか?」

「ええ、今回は艦長に徹しますよ」

「あの・・・・艦長・・・・囮がすでに出てるんですけど・・・・・」

「え!?」×ブリッジ全員

「陸戦用エステバリス一機、地上に向けてエレベーターで上昇中」

「パイロットに通信を」

「了解」





エステバリスコックピット

「戦争なんて御免よ、私はコックになりたいだけなんだから」

長いやや栗色の髪をポニーテールにしている少女がそう呟いていた

「そこの君!!」

「え?きゃあ!!」

いきなり目の前に黒いバイザーに黒いマントをしている男の姿が映り少女は驚いた

「君・・・名前と所属は?」

「えっと・・・・テンカワ・ルミ、コックです」

「なっ!?・・・ル「ああーーーーールミちゃんだーーーー!!」

「な・・・・ミスマル・ユリカ!!」

「ユリカ・・・・知り合い?」

「うん、私から王子様を奪おうとする意地悪い女の子なの、 ルミちゃん!!アキトは何所!!」

「こっちが知りたいわよ!!それに意地悪いってなによ!!

貴方がお兄ちゃんに迷惑を毎日のように

かけまくってたから止めてただけでしょうが!!」


「ちがう!!迷惑だったのはルミちゃんの方「黙れ!!」・・・はい」

いつまでも続きそうだった二人の口げんかを止めたのはアキトの一喝だった

「ふう・・・・・ルミ、悪いが地上に出たらしばらく逃げまくってくれ、じきに援軍が行く」

「え?・・・・どういうことですか・・・それにルミって・・・」

「エステバリス地上に出ます」

「え?・・・・・ひぃ!?」

地上に出たエステを出迎えたのは大量のジョロによる包囲網だった

「恐れるな!!自分の力を信じろルミ!!」

「え・・・・・・うん!!」

ルミの乗る桃色のエステバリスは彼女が頷くと共に空に向かってジャンプし、ジョロの包囲網を超えた

「そこから先は全速力で走れ、できるだけ相手は無視するんだ!!」

「わかった!!」

ルミはアキトの指示に従いつつ、敵から逃げていた

「こちらアリサ!!友軍機の居場所を転送して頂戴」

「わかりました、今、テンカワ・ルミ機はここです」

ルリはそういいながらアリサに周辺のデータとルミのエステの居場所を伝える

「OK、後は任せて頂戴」

アリサはそう言うと西欧からもってきた自分の空戦フレームでルミ機の援護に向かった

「ふう・・・・これで大丈夫だな」

「注水八割方終了、ゲート開きます」

「エンジン、準備いいわよ?」

ルリとミナトが発進可能の報告をする、アキトは軽く頭を天井に向けると正面を見据えた

「ナデシコ!!発進!!」

「ナデシコ、発進」

その命令と共にナデシコは海中ゲートを通っていった





「ルミちゃん・・・大丈夫?」

「は・・・・はい、大丈夫です」

アリサはバッタやジョロを倒しつつルミ機の進路確保をしていた

「そろそろ時間よ・・・・・海岸線に急いで」

「わかりました!!」

ルミはそう言うとエステを全速力で走らせ海岸線に向かっていった

アリサもその背中を守りながら海岸線へと急ぐ

「行き止まり!?道を間違えたの?」

「跳べ!!ルミ!!」

ルミが何もない海を見てそう嘆いた瞬間、アキトから通信が入った

「え?・・・でも」

「俺を信じろ」

アキトはまるで親が子をあやすかのようなやさしい声でいった

「・・・・・うん!!」

ルミはその言葉で腹をくくったのか海に向かってジャンプする

その足が海に沈むかと思った瞬間、ルミのエステは海面に立っていた

「ほえ?・・・・・ナデシコ?」

「良く、がんばったなルミ」

「敵残存兵器、射程内に全部入ってる」

「アリサ、離脱しろ!!グラビティブラスト放て!!」

『ギュオオオオオオオオンン!!』

その音と共に漆黒の光が敵を喰らい尽くす

「す・・・・・すごい・・・・・」

「やっと地球もここまで来たのね・・・・・」

その光景をじかに見ていたパイロット達はそう呟いていた





「戦況を報告せよ」

「バッタ、ジョロとも残存0、地上軍の被害は甚大だが死傷者は5」

「そんな!!偶然だわ!!」

「この艦の力見させてもらった。艦長も良くやった!!」

「流石ですな、看板に偽りなし・・・・これからも安心して任せられますな」

「ふぅ・・・・・ルリちゃん、民間人に死傷者は出なかったかい?」

つい先ほどまで目を瞑っていたアキトが急にルリに訊ねた

「はい、民間人に死傷者は出ていません」

「そうか・・・・よかった」

「あの・・・・・すいません・・・艦長さん・・・・私と会ったことありませんか?」

ルミが通信を入れてきて遠慮がちにそういった

「くくくくく・・・・・お前は兄の声も忘れたのか」

「え!?・・・・・・まさか」

アキトはバイザーをはずすとルミのウィンドウをまっすぐに見つめた

「十年ぶり・・・・だな、元気そうで何よりだ」

「お・・・お兄ちゃん・・・・無事だったんだ・・・・良かった・・・」

急にルミは泣き出してしまった、アキトはやや困ったような顔をしていた

「おいおい・・・・・泣くなよな・・・着艦したらブリッジに来い、いろいろ積る話もあるだろうしな」

「・・・・・うん!!」

ルミはそれを聞くと満面の笑みを浮かべた、

アキトはその笑顔を見るとすぐにバイザーをかけなおした

幸か不幸かバイザーの下の目を見たものはブリッジにはいなかった

今までプロス達ですら見たことのないアキトの金色の瞳

それを見たとき・・・・少なくとも人は・・・・驚くだろう

「それじゃあ、アリサ、ルミ、両機とも帰還します」

「了解しました」

アリサからの通信にルリが答え二人のエステはナデシコに着艦する

そのころユリカは先手を取ったアキトにより眠りについていた(気絶とも言う)

そして彼女の補佐役である影の薄い青年は気絶した彼女を医務室へと連れて行った

何故かブリッジの面々はアキトのとった処置に抗議するでもなく世間話に花を咲かせ始めていた

・・・・・はたして・・・こんなメンバーで無事に火星にたどり着けるのだろうか・・・・・

それは・・・・神も知らない・・・・と言うより想像できなかった・・・・













後書き

今回多くのネタを放出しましたがまだまだ話の洗練度が低かったように思われます

さて・・・ここでアキトとルミの人物補足をしておきます



アキト=ファー=ハーテッド

八歳の時にグラシスの養子に、戸籍上はアリサとサラの叔父にあたる

養子になってまもなく自らの希望で徹底的なスパルタ教育で軍人として必要な物を叩き込まれた

それ以外にもコックとしての修行やメカニックとしての修行、挙句の果てに女装の修行までさせられた

性格は戦闘中はまじめだがそれ以外ははっきりいって楽天家に近い

十五歳で軍人になり火星会戦前にはグラシスの参謀役として働いていた

火星会戦後はレールガンシステムの提案、ネルガルとの交渉、エステ部隊の隊長を務め

対艦戦用特別フレームをネルガルに開発してもらい小型チューリップを三個機能停止にさせ

ヤンマ級戦艦を六隻、カトンボ級を十隻落とした(通算で)その功績から少佐に特別昇進

『黒衣のロキ』の名は地方で敗退し続けている軍の士気あげのために作り出された『英雄』の名

もっともアキト本人はあまり気にしないので軽く受け止めている。

今の連合軍、エステバリスライダーの中では最強の栄冠を手にしているが。

艦隊指揮等はその腕最高クラス(ユリカクラス)だがシュンやグラシスがその上にたっている

その金色の眼と特別なIFSは心のそこから信頼している人間以外には見せておらず(テンカワ夫妻の言いつけ)

西欧方面の人で見せてもらったことのあるのはグラシス達以外ではテア一家とシュン、カズシ位である

それ以外では黒いマントに黒いバイザー(黒アキト)をつけ続けて目を見せようとはしていない

それでも仲間内からの評判はいい、女性関係にはやはり奥手で今までで彼女と呼べる存在はいない





テンカワ・ルミ

TV本編アキトによく似た人生を歩んできた、

サセボの雪谷食堂で雇われていたがある人物にアプローチをかけられ続けており

それから逃げる意味合いで食堂を後にし自転車をこいでいたらユリカと遭遇、

重度の兄依存症であり、またアキトも兄バカであった為近寄ってくる男達は全員アキトに蹴散らされていた

アキトより二歳下、身長は低めだがスタイルは良くリョーコと張り合えるレベル(笑)

ユートピアコロニーでの傷跡(心傷)も残ってはいるが戦闘音を聞いて怯え出すほどではない

根は強く、自分が決めたことはやりとおす強さを持つ

IFSをつけた理由はTVアキトと同じ事件が起こったとき、アキトが自分の持つIFSを使用し車を止めた時に

その際のIFS使用についてアキトが怒られていたのを見て『お兄ちゃんを守る為』につけた





色々な部分をちょっとぼかしてみました、まああらかた推測がついてる人もいるかもしれませんが・・・

次回・・・・キノコの乱であのお方が壊れる予定です、完全に壊せないかもしれませんが・・・・・

さらに・・・今回出番+台詞がなかった西欧組を一気に出します(ナデシコに乗ってる方々)

では・・・・・・次回・・・・・お会いしましょう

 

管理人の感想

B−クレスさんからの投稿です。

・・・なんか、ジュンが女性になってる(笑)

それにしてもこのアキトは艦長さんですか、ドリームキャストのナデシコを思い出しますね。

やっぱり、機動戦闘をしながら指示を出すのかな?

予告してられる西欧組みの暴れっぷりに期待しますね!!