チューリップ通過中のナデシコのブリッジでは・・・・・・
「・・・・以外に時間がかかりますね」
「そうだね・・・・・ルリちゃんも少し休んでお茶でも飲んだらどう?」
「そうですよ、私に任せて休んでください」
「・・・・はい、ありがとうございます」
「モグモグ・・・・・・アキト、おかわり」
殆どのクルーが倒れているのに・・・・・
アキト、ラピス、ルリ、フィリスの四人は呑気にケーキを食べながら紅茶を飲んでいた・・・・・
刻まれゆく神話
第七話
ナデシコに集いし『戦友』
第4次月攻略戦
西欧方面軍の活躍とネルガルより支給された最新鋭の装備を武器に
月面の勢力圏を奪還しようと宇宙連合軍が猛攻撃を開始していた
しかし・・・・敵の戦力は予想を越えており、一部で勝利しても別の所で敗退すると言うように
戦局は膠着状態に陥りつつあった・・・・・・
「くっ・・・・ネルガルの最新艦はまだこんのか!!」
戦局が不利になりつつある地球連合軍極東方面軍第二艦隊提督は叫ぶように言った
「近辺戦闘宙域の掃除中です!!もう少しかかるそうです!!」
通信士も叫ぶように提督に返した・・・・その時
「チューリップより強力な重力波反応・・・・・ヤンマタイプより高出力のようです!!」
オペレーターが・・・・・ある意味絶望的な報告を伝えた・・・・
ただでさえ厳しい戦況であるというのに・・・・・・敵の増援・・・しかも
一隻で戦況を大きく揺るがす可能性を秘めたヤンマ級・・・・それを凌駕する存在なのだ・・・・
「くっ・・・・・来るならこい!!いかに強かろうとこのグラジオラスの突撃にはただでは済むまい!!」
第二艦隊提督は・・・・玉砕覚悟で戦闘を続行しようと決意した・・・・
そして・・・・・チューリップの口が開き・・・・中から・・・一隻の戦艦が出てくる・・・・・
「な・・・あ・・・・あれは・・・・・・」
「い・・・・・生きていたのか!!」
「くっ・・・・くくくく・・・・・この戦い我らの勝利は目前だぞ!!
各員気合を入れなおせ!!ナデシコに通信を入れろ!!」
「はい!!」
グラジオラスのクルーが思い思いに言葉を発し・・・提督が全員に喝を入れ直した
その戦艦は・・・・火星で消息を絶った・・・・ネルガルの切り札であった・・・ND−001『ナデシコ』であった
ナデシコブリッジ
「モグモグ・・・・ゴクン、艦長、通常空間に復帰しました」
つい先ほどフィリスと交替しなおしたルリが口に残っていたケーキを飲み込み報告する
「現在位置と周辺状況の確認を、あと・・・タイムラグがどれだけ発生したかも確認して」
「はい・・・・・周辺状況をどうぞ」
ルリがブリッジのメインウィンドウに周辺の状況を映し出した
「・・・・・戦闘中のようですね」
「・・・押されてるみたい・・・・アキト、どうするの?」
その光景を見たフィリスとラピスがアキトのほうを向く
「・・・・ナデシコ急速反転、主砲を蜥蜴艦隊の方に向け、連合艦隊に損害が出ないように角度の調整を
発射準備が整い次第レールガン、グラビティブラストの順に発射、その反動を利用し一時後退する」
「了解」
アキトは冷静に戦況を確認し最善と思える策を実行に移した・・・・・・
その後・・・・アキトの作戦は見事に成功し、敵陣の真っ只中にいたナデシコは連合艦隊の先頭にまで無事に下がった
「ふぅ・・・・作戦成功」
「艦長、連合艦隊の旗艦から通信が入っています」
作戦が無事に成功したことに安堵したアキトにルリから報告が入った
「わかった、開いて」
アキトの言葉と共にメインウィンドウにグラジオラスの提督が映った
「アキト少佐、極東方面軍第二艦隊の代表として礼を言うよ。
ナデシコのおかげで戦況は大きく此方に傾いた
本当に・・・・ありがとう!!」
「いえ・・・当然の責務ですから・・・・・
後・・・すいませんがしばらくナデシコを後方に置いてくれませんか
実は・・・・敵のチューリップを通過した際に多くのクルーが気絶してしまっているようなのです」
「はははは・・・・・・それぐらいおやすい御用です、極東方面軍第二艦隊の名に賭けて、守って見せましょう」
そう言うとグラジオラスからの通信は途絶えた
「艦長・・・・どうやって起こしましょうか?」
現在ナデシコの全能力を一人で支えているルリがアキトに向かって訊ねる
「そうだね・・・・ルリちゃん、これを艦全体に流して、音量は抑えてね
あと・・・・皆、耳栓を忘れないでね」
ルリはアキトから受け取った音声データを不思議に思いながらも指示通り再生した・・・・・
「ユゥゥゥリィィィィカァァァァァ!!!」
アキトが渡した音声データとは・・・御察しの通りコウイチロウの雄叫びだった
「お父様ぁぁぁぁ!?」
その音声データに呼応するようにナデシコ艦内からも爆音が響いた・・・・・
その後・・・その二重爆音のおかげで何とか全員が目を覚まし、第一種戦闘配置についた
「ルリちゃんからの報告によるとナデシコがチューリップを通過したさいに八ヶ月ほどタイムラグが起きている
その間に連合軍とネルガルは手を組んだらしい
それと・・・・さっき敵のフィールドデータを確認したんだが・・・・確実に強化されている」
エステ(アキト専用0G戦)に乗りこんでいるアキトがブリッジとパイロット達に現状を報告している
「アキト・・・・敵の戦力はどれくらい上がっているの?」
「そうだな・・・・今まで一人でやってたのが三人でやっとって位だろうな・・・
今回の陣形を伝える、リョーコ、アマノ、マキは三人で中陣を
イツキ、ルミ、チハヤの三人は後陣を、俺とアリサ、カズヤが先陣を務める」
アキトの指示に全員が静かに頷いた
「全機出撃!!くれぐれも深入りはするな!!」
「了解」×パイロット全員
アキトの声と共にエステバリスが全機出撃していった・・・・・・
戦闘宙域
「くっ、本当にこいつら堅くなってやがるな」
「本当だね、バラバラに動いてたらすぐに囲まれてたかもね」
「艦長の言う通りね・・・・・二人共、連携を崩さないようにしましょう」
リョーコ達はイズミの言葉に頷くと常に一定の距離を保ちながら戦闘を続行していった
「・・・敵フィールドの詳細データ収集完了・・・・かなり強化されているようだなアキト」
カズヤがラピッドライフルを撃ち、敵のフィールドの強化具合を確認するとアキトに話し掛けた
ちなみに・・・何故艦長からアキトになっているかと言うと・・・・・
ヴァルハラでは基本的に上下関係と言うものが無く尊敬する人に敬語を使うのが基本なのだ
アキトとカズヤは昔からの親友である為敬語などは特別な場以外は使った事がないのだ
「そうだな・・・・アリサ、久々にやるか?」
「やりましょうかアキト」
アキトとアリサはそう言うと互いに自分の得物を構える(アキトは西洋剣の形状をしたイミディエットソード)
そして・・・・・一度大きく後ろに下がったと思うと・・・・一気にバッタ達に向かって突撃しだした
二人を覆うディストーションフィールドは・・・黒く染まっていた・・・・
「ファイナルチェリオ・・・・・久々にみたけど・・・・凄い威力だな全く」
ファイナルチェリオ・・・・アキトとアリサの混合攻撃で最強級の力を誇る技である
西欧方面軍カスタム機は他のエステと違い重力波受信アンテナが大小各一枚ずつ増加されている
その中でも特にフィールド面を強化されているアキト機とアリサ機のフィールドを重ね合わせることで
グラビティブラスト級の破壊力を持ったフィールドを張る事が可能となっているのだ
その力を応用し、攻撃に転じさせたのがファイナルチェリオである
ただ・・・一直線に突撃していくので前方に味方がいると巻き込みかねないという欠点がある
「ルミ、大丈夫?」
「うん、ありがとうお姉ちゃん」
「第二波がきますよ・・・・気をつけて」
イツキ達後陣の方にも敵は来ていた・・・・それは仕方ないだろう
いくらアキトとアリサが敵戦力の二割を葬っていても敵の量は本当に凄まじい
今までと違い敵の力もかなり強化されている・・・・後陣まで敵が進むのもやむ終えないことなのだ
戦況は連合側に傾いてはいるが決定打は出ないと言う状況だった
いくらナデシコが敵を葬っても後方に待機しているチューリップが次々と増援を送ってくるのだ
アキトも一度引き再編制をしてから攻撃を再開しようと考え始めていた瞬間・・・・・・
『ズバシュウウン!!ズバシュウウン!!』
何所からとも無く光の矢が走り後方に待機していたチューリップを破壊し、敵戦力の多くを葬っていく
「こ・・・これは・・・・多連装のグラビティブラスト!?」
その光景を見たカズヤは驚きを隠せず思わず叫んでいた
「・・・ネルガルのコスモスプロジェクトが開始されていたのか・・・・・
全エステ部隊に告ぐ、ナデシコに帰還せよ」
アキトはその光景を見ると、ナデシコ発進前にネルガルにハッキングをして見た
ネルガルのコスモスプロジェクトの事を思い出していた
エステバリスは一機も欠けることなく無事にナデシコに着艦していった
ナデシコブリッジ
「アキト様アァアア!!」
アキトがブリッジに戻ってきた時に聞こえた第一声がそれだった
「・・・・で・・・・どうして君がそこにいるんだい?」
「嫌ですわアキト様、このアキト=ファー=ハーテッドファンクラブ会長である
このカグヤ・オニキリマル・・・アキト様と会う為ならばコスモスの艦長くらい務めて見せますわ」
・・・・その通り・・・この通信は救援に来たコスモスからナデシコへの通信だったのだ
「それより、何か急用でも?」
「そうですわ。ナデシコのこれからの立場の補給クルー等をそちらに伝えますので
コスモスに着艦してくださいませ」
「・・・・わかった、あと・・・・このナデシコには多くの火星の難民が乗っているから
コスモスの方で受け入れてほしい」
「わかりました、流石はアキト様・・・・あの火星から住民を救ってくるとは・・・・・・」
「すいません、此方から牽引用のトラクタービームを照射しますので
後の作業は此方に任せておいてください」
カグヤがトリップし始めたのでオペレーターのマキビ・ハリが通信を入れ直してきた
「トラクタービームの照射を確認・・・・後はほうっておいても大丈夫そうです」
「そうか・・・・艦全域に通信、戦闘態勢解除。
整備班、ブリッジ班はコスモスの着艦後の作業の為各員の持ち場にて待機」
アキトの指示にメグミは頷きアキトの言葉通りに艦全体に通信を入れた
その後・・・ナデシコは無事にコスモスに着艦し、多くの難民をコスモスに預けた
アキト達は新クルーとの合流の為にブリッジにて待機していた
「お兄・・・っと艦長、新しいクルーってどんな人たちなんですか」
新しいクルーに興味があったのかコックの仕事も休憩なのでブリッジに来ていたルミがアキトに訊ねる
「ルミ・・・今までどおりでいい、血が繋がってなかろうがお前は俺の大切な妹・・・家族なんだからな」
「・・・・うん・・・・ありがとお兄ちゃん」
ルミがそう言って満面の笑みを浮かべた時、ブリッジの扉が開き二人の男性と一人の女性が入ってきた
「ああ!!君は!?」
「げっ・・・あ・・・アンタは!?」
入ってきた人たちの中で髪が長めの男性がルミの姿を見て叫び、ルミもその男性の姿を見て叫んだ
「いやぁーーー君がこの船に乗っていたとはね、こんな所で会えるとは思っても見なかった・・・
やっぱり僕達は運命の赤い糸で結ばれてるんだよ」
髪が長め・・・以降(ロンゲの男)がルミの方に近づいてくる
「なにいってんのよ!!アンタのせいで私は雪谷食堂をやめる事になったんだからね!!」
「どうして僕をそこまで避けるんだい・・・・・僕は本当に君の事が好きなんだよ!!」
人の目も全く気にせずロンゲの男がルミに向かって告白まがいの事をする
「私はね・・・・アンタみたいな軟弱者が一番嫌いなのよ!!」
ルミはそう完全に言い切る、男は少しショックを受けていたがすぐに気を取り直したようで
「なら・・・・・・君の好みの男性像を教えてくれたまえ、僕は必ずその男性になって見せよう!!」
ロンゲは懲りずにいいルミが叫ぼうと大きく息を吸った瞬間
「・・・・・・いい加減にしろ」
抑揚の無いアキトの声がブリッジに響き渡った・・・・・・・・
「プロス君・・・・補充要員まで性格第二にしなくてもよかったのではないのかね?」
その光景を静かに見ていたフクベがプロスに耳打ちしていた
それに対しプロスは苦笑を浮かべるしかなかった
「おっと・・・・・・そう言えば自己紹介がまだだったね・・・・・・
僕の名はアカツキ・ナガレ、パイロットとしてこのナデシコに乗り込む・・・・・
腕には少々自信があるんだ、どうかよろしく」
アカツキがそう言うと隣にいる女性が一歩前に出て姿勢を正した
「エリナ・キンジョウ・ウォン。本日より副操舵士として任務につきます」
その挨拶を見てプロスが小さく愚痴を言っていたりする・・・・・
「キンジョウ・ウォン?・・・・レイナの知り合いか?」
アキトがエリナの姓を聞き疑問に思った事を訊ねる
「え・・・ええ、レイナは私の妹だけど・・・・・知ってるの?」
「ああ、西欧に一時期来ていたからな、俺の乗るエステの専属整備士をやっていたんだ
レイナは元気にしているか?」
「ええ、・・・・そう言えばあの子西欧から帰ってきたとき妙に嬉しそうだったわね・・・・・・」
「あんた達、そんなことより私の話を聞きなさいよ!!」
アキトとエリナが話している間自己紹介をして無視されていたキノコが喚いた
「・・・・・またアンタか・・・・・・」
アキトはその姿を見るといやそうな表情を隠そうともしなかった
「ふん、・・・・・・まぁよろしく頼むわ、あんた達が活躍すれば民間人だって助かるでしょうしね」
言葉使いこそ以前と変わってはいなかったが・・・・・その言葉には・・・以前のような物は含まれていなかった
ただ・・・・純粋にその言葉が出たんだろうと思わせるような口調だった
「ふぅ・・・・・やっと目を覚ましましたか・・・・」
アキトはそんなムネタケを見ると安堵の溜息をついた
「・・・・アンタと会って・・・二年になるかしら・・・・随分と遅くなったけどね・・・・・・」
ムネタケはそんなアキトを見るとどこか遠い眼をしてそう呟いた・・・・・・・
「ナデシコにようこそ、ムネタケ・サダアキ殿」
フクベはそう言うとムネタケのほうに手を伸ばした
「・・・これから宜しくお願いします」
ムネタケは・・・・どこか新兵を思わせる清々しい笑顔を見せフクベの手をとり・・・堅く握り合った
多くのブリッジクルーはそれを見て衝撃を受けていた・・・・・
「ね・・・姉さん・・・・・ムネタケ副提督・・・・以前からすると相当変わってない?」
ジュンは衝撃の余り思わず近くにいたスズカに訊ねた
「・・・・本来・・・ムネタケ・サダアキ殿はああいう人だったらしいわよ
軍に入隊した時からその才能を認められていた・・・・
けど・・・・その能力の高さゆえに危惧され・・・・抗争に巻き込まれた・・・・・
その時から・・・・以前のように地位にしがみつく様になったらしいわ」
スズカはさも当然と言うような表情でジュンに説明していた・・・・・・
「さてと・・・・これでメインクルーはそろったね・・・・・・」
アキトがブリッジ全体を見回しながら言う
「ナデシコはこれより地球圏に帰還、それと共に軍との共同作戦に入る事になった」
「それって・・・・私達に軍人になれってことなの?」
アキトの言葉にミナトが不満を隠さずに詳細を訊ねる
「いや・・・・正確には軍に協力してもらうだけだ、つまり・・・民間人による義勇軍と言うわけだ
一応給料などは払いがいいネルガルの方に任せてある
ただ単に時折軍から依頼がくるだけ・・・・と考えた方が良いだろうな」
アキトが、なるべく不満を起こされないように詳細についてはなした
「艦長、ふと思ったんですけど・・・・・月の攻略戦に参加しなくていいんですか?」
オペレーター席で情報を収集していたルリがアキトに訊ねる
「ああ・・・・・それは大丈夫だ・・・・・」
アキトがそう言った瞬間、ナデシコのレーダーに後方より接近してくる物体を確認した
「大型の機影を確認、その数十五」
「まさか・・・・敵!?」
「いいや・・・・・」
ルリの報告にユリカが敵の伏兵かと驚くがアキトは冷静にそれを否定した
アキトが否定してまもなく・・・・多くのエステバリスがナデシコの前方に表れる・・・
その多くが一度ナデシコの方を振り向き、敬礼をしてから前面の戦場へと向かっていった・・・・
「西欧方面軍第一特殊部隊・・・・・・『ヴァルハラ』
そして・・・特殊戦略機動兵器部隊・・・・『Moon Night』
後はシュン提督達に任せれば大丈夫さ、ナデシコのクルーも疲弊している
ここは大人しくしているのが最善さ」
その後・・・月軌道上の戦いはアキトの言葉どおり『ヴァルハラ』、『Moon Night』の活躍により
連合軍の勝利で幕を閉じた、その後・・・・・ナデシコは補給を終え、地球へと降りていった
正式にナデシコに所属する事になったイネス、カズヤ、フィリス
追加クルーとして乗り込んだムネタケ、アカツキ、エリナ
二つの歯車がかみ合った事によりナデシコの残る事となったフクベ
この後、歴史は二つの歯車の流れにより未知の歴史へと動き出していく・・・・・
少しずつ・・・・しかし・・・・・確実に・・・・・・
歴史の最後に残る物は・・・・絶望の闇か希望の光か・・・・知る者は誰もいない・・・・・・
後書き
今回はつなぎと言うことで簡単に済ませました
次回・・・ちょっとしたお遊びをします
では、次回お会いしましょう
代理人の感想
ん〜、書く事がないですねぇ。
ではこちらもまた次回。