テニシアン島での作戦が終了して、約一ヶ月がたっていた
その間、ナデシコは海に落ちたチューリップを破壊して回っていた
そして・・約一ヶ月がたった今日・・ナデシコに新たに任務が言い渡される
ナデシコ格納庫
「・・・・IFS伝達率良し、照準調整・・・・良し」
「各部装備チェック・・・・・弾薬、砲身、機体状況・・・・・良し!!」
「ブースター、スラスター、共に良し!!」
ウリバタケ、ルーク、テッサの三人が、一機のエステにつきっきりになっている
「ふぅ・・・・・何とか完成したな」
ウリバタケが額の汗を拭いながら言う
「はい、少々速度面で不安がありますが・・・・充分許容範囲内です」
テッサがチェックシートに表示されている結果を見ながら言った
「まぁ・・・・この重装備で速度まではいかないだろうな、
0Gタイプで造ればもう少し速くできるが・・・・そう急ぐ必要もないだろうな」
IFS、照準の状態を見ていたルークがアサルトピットから降りてきた
「そういえばよ・・・・・副提督はブリッジにいなくていいのか?
西欧方面軍でも最高クラスの智将なんだろ?」
ウリバタケがテッサの方を向きながらいった(テッサはムネタケの代わりに副提督になっている)
「ふふふっ、テッサでいいですよ、それに・・・・私はメカニックに関する智将ですから」
微笑みを浮かべながらのテッサの言葉にウリバタケは混乱し始めていた
「西欧方面軍では一口に智将といってもいろいろタイプがあるんだ
まず・・・総司令官グラシス=ファー=ハーテッド中将は戦略を見る眼に長け、人材の良し悪しを見分ける眼力がある
アキトの居た部隊、ヴァルハラの総指揮官オオサキ・シュン提督は戦術、戦略両方見る目があったが
グラシス中将に比べたら僅かに劣る、人材を見極める力もな
そして・・・テッサはメカニック・・・まあ機体の開発、整備、操作の面で非常に優れているんだ
さらに・・・テッサは戦術をたてる才能もある、機体の限界能力を把握してる分、下手な指揮官よりよっぽど上だ」
ウリバタケが悩んでいる事が何かわかるとルークは解説を始めた
ルークの言うとおり西欧方面軍では智将にも何通りかの形がある
他の方面軍のように単純に戦術眼、戦略眼だけでいえばテッサは智将と言うレベルでは無い
しかし・・・・西欧方面軍ではテッサのメカニック技術を認め、艦長、総指揮官などの大任を任せていたのだ
無論・・・・万が一に備え、補佐官としてカリーニン中佐などをつけることにしていたが・・・
『今回の作戦内容の報告を始めます、メインクルーの方はブリッジに集まってください』
メグミの通信が入ると、三人ともブリッジに向かっていった
三人がブリッジに来た頃・・・・既に他のクルーは全員集まっていた
刻まれゆく神話
第十話
『黒衣』の弱さ
「全員集まったようだね・・・・・
今回、ナデシコは連合軍からの要請により、クルスク工業地帯に配置された敵の新兵器を叩く事になった
クルスク工業地帯は西欧方面軍陸戦部隊の約4割の軍需物資を生産している為
可能な限り速やかな奪還をおこなわなければならないため、ナデシコに任務が回ってきた
敵の新兵器の名前はナナフシ、射程などは既に調査済みで、このナデシコの主砲を上回っている」
「ちょっと待ってアキト、もしかして・・・・ナデシコだけでそのナナフシを叩くの?」
アキトの言葉にユリカが疑問の声をあげる、他のクルー達も心配そうな顔をしているが・・・・
「安心しろ、西欧方面軍との共同作戦だ詳しい話は・・・・テッサ」
アキトが隣にいるテッサに話を促す、テッサも僅かに頷くと一歩前に出た
「西欧方面軍の調査により、ナナフシの正体は大型の重力波レールガンと確認されました
この砲身でチャージして生成したマイクロブラックホールを打ち出しているようです」
テッサが衛星で撮影されたナナフシの画像を交えながらナナフシの能力を解説している
「しかし、ナナフシのマイクロブラックホールのチャージには、十時間前後の時間がかかるようです
さらにナナフシは、相転移反応をもつ敵性物体に優先的に攻撃をするようです
そこで・・・西欧方面軍との協議の結果
西欧方面軍が囮となり、鹵獲した敵の戦艦をナナフシのレールガンの的とする事で時間を稼ぎ
その隙にナデシコからエステバリス部隊を出撃、クルスクに潜入し、ナナフシの破壊を行う事になりました
この時、ナデシコはナナフシの攻撃を回避する為に後方待機になるのでエステ部隊での単独行動になります
この時、編制は砲戦を三機、艦長は新型の重武装戦フレームを、他の方は陸戦の重武装タイプで出てもらう事になります」
テッサがそう言いきると、再びアキトが前に出た
「作戦開始は三時間後、パイロット達は出撃に備えて置くように・・・・解散」
アキトの言葉と共にブリッジクルー以外の面々がブリッジから出て行った
ナデシコ格納庫
そこには、新型フレームの前で立っているアキトの姿があった
「ん?アキトじゃないか、どうだ、この新型は」
エステの換装を手伝っていたルークがアキトに気付き、話し掛ける
「ルークさん・・・・・こいつ・・・やや大型ですね」
「まぁな・・・武装を充実させた分、全長が8.3mになっちまったからな・・・・
その分・・・・武装は充実しているぜ」
ルークは自信たっぷりに言うと、アキトに武装の解説を始めた
新型のフレーム・・・・重武装戦フレーム・・・それは・・・その名に恥じぬ武装をしている
まず・・・・両腕に守備のために大型シールドを装備
その真下にダブルガトリングガン、それに挟まれる形で小型のリボルビング・バンカー
接近戦用に、背中の格納部分に入れられているイミディエットソード
さらには・・・両肩にミサイルポッドを装備している、その上で・・・ジャミングシステム、ダミーバルーンを搭載
脚部はガトリングガン、リボルビング・バンカーの反動に備え、重機動戦の物にしている
「・・・まさに・・・・歩く武器庫ですね・・・」
「まあな・・・・重装備の分、速度は重機動戦よりややまし程度になっちまったけどな・・・・
まぁ・・・・しばらくはこいつで頼む
こいつが完成すれば砲戦フレーム、重機動戦フレームの大幅改良ができるからな」
「・・・・わかりました、今回の作戦中に、できるだけデータを取っておきます」
「頼むぞ、じゃあ・・・・・後は休んでろ、整備は俺たちの仕事なんだからな」
アキトはルークの言葉に頷くと、格納庫から出て行った・・・・
約三時間後・・・・・
「艦長、ナナフシがマイクロブラックホールを発射したそうです」
ルリからの報告を聞き、アキトは深く頷く
「全エステバリス出撃、囮はまだ三機あるが早々にけりをつけるぞ」
アキトの言葉に、パイロット達は頷き、次々とナデシコから出撃していった
アキトたちが出撃してしばらくたった・・・ナデシコブリッジ
「・・・・艦長たちは予定通りに目標地点を通過しているようです」
「ラピス、ちょっと重武装戦フレームの状態を映してくれない?」
「わかった」
ルリからの報告と共に、テッサがラピスに頼み事をしていた
「・・・各部の負担は予想通りみたいね・・・もう少し脚部のスラスターを強化した方がいいかも・・・・」
重武装戦の各部の負担状況を見たテッサは、すぐに改良案を考え始めた
「ねぇ・・・・・副提督と艦長ってどんな関係なの?仲良いみたいだけど」
待機命令のため、暇になっているミナトがやや意地悪な笑みを浮かべてテッサに訊ねた
「テッサでいいですよ、副提督なんて飾りの役職みたいな物ですから
私とアキトさんの出会いですか?そうですね・・・・・・初めてあったのは・・・・三年前ですね
三年前・・士官学校での訓練戦の時に・・・・・たまたま一緒のチームになったんです」
テッサは、ミナトに軽く微笑みながら応えると昔を懐かしむような表情になった
「その頃の私は・・・・はっきり言って士官としては落ちこぼれだったんです
戦術は立てられても先を見通し続けるだけの力がなくて・・・・・
ただ・・・・機体の相性や、詳しいデータを深く知っているからギリギリ残っていただけでした・・・
そんな私を・・・アキトさんは激励してくれたんです
『誰よりも一番、機体の特性を把握しておくのが司令の役目さ
機体の特性を把握してない指揮官じゃあ勝つことはできても、味方を生きさせる事はできない
テスタロッサさんはその点では誰よりも優れてるよ』
そう・・・・励ましてくれたんです、それが・・・・私とアキトさんの縁の始まりですね
それから・・・・私はアキトさんに機体の特性を、アキトさんは私に戦術を教えあっていたんです」
「ふぅ〜ん・・・・・・そう言えば艦長は貴方の護衛をやってたときもあるそうだけど・・・・」
ミナトの更なる問いに、少々自分の世界に入っていたテッサが戻り、その問いに答える
「ええ・・・ミスリルの旗艦を設計してまもなくの頃ですね・・・・・・
あの子は・・・相当のじゃじゃ馬で、状況を見て出力調整をしないと、すぐにバランスが崩れるんです
前線に出すには・・・指揮官に、一年近い訓練が必要だったんです
そうでないと、バランスを崩して、実力の半分も発揮できなくなりますから・・・・
その事もあって、私が臨時に艦長になる事になったんです、その時に少佐に異例の昇進をしまして・・・
なんだか私を狙う人が出てきたらしくて・・・その護衛のために、アキトさんが副官になってくれたんです」
テッサは、僅かに苦笑いしながらそう言った、そう思った瞬間・・・・急に険しい表情になった
「でも・・・・そのせいで・・・・アキトさんは・・・・あの黒衣を・・・ずっと着るようになったんです」
「どういうこと?アキトのカラーは最初っから黒色じゃあなかったの?」
テッサの言葉に、ユリカが頭をかしげながら訪ねる
「わしから話そう」
テッサの表情がさらに歪み、口が開こうとした瞬間、フクベがそう言った
「本来・・・艦長のカラーは白銀だった、白銀の戦乙女、アリサ=ファー=ハーテッドと共に白銀の双天使と呼ばれていたのだ
だが・・・あるときだけは・・・・黒色が艦長のカラーだった
その時とは・・・・内部粛正の時だ」
フクベの言葉に、その話を聞いていた全員が、息を呑んだ
「元々、軍内部では抗争が激しい・・・自らの地位のために上司を蹴落とす奴も珍しくは無いのだ
実際・・・グラシス中将も副官に裏切られ、失脚寸前に追い込まれたことすらある
そんな時に・・・艦長は常に動いていた・・・影の・・暗殺者としてな
艦長の軍内での二つ名を教えてやろう・・・・『粛清の死神』・・・本来はこう呼ばれる時の色が黒だったのだ」
フクベの声が、段々と重く、威厳のあるものに変わっていく
「艦長は・・・多くの軍人を自らの手で殺めている、しかし・・・罪に問われた事は一度もない
彼が粛正する時は・・・もはや殺す以外に手のないほどの腐りきった者達だからだ
カレが殺めたものの中には・・・中将の地位にたっていた者すらいる
無論、残された家族達には連合軍から謝礼として生活の扶助が出ている
かく言うわしも一度欲に眼がくらみかけてな・・・粛正されかけた事もあった
艦長の黒の服は・・・これから死に行く者への喪服の意味合いがある・・・・
そして・・・・常に黒に身を包んだのは・・・・あの事件が起きてからじゃ」
フクベはそこまで言うと深く目を瞑り・・・・・もう一度眼を開いた
「ミスリルの旗艦であるトゥアハー・デ・ダナンが就航してしばらくして・・・艦内で叛乱騒ぎが起きた
アフリカ方面軍のバール少将が秘密裏に乗り込み、無理矢理徴収しようとしたのだ
その叛乱騒ぎの結果・・・トゥアハー・デ・ダナンに乗り込んでいた西欧方面の多くの軍人が犠牲になった
その殆どが・・・艦長と同期の士官ばかりだった
しかし、この叛乱は僅か一日で平定された、そのとき平定した人物がアキト=ファー=ハーテッド・・・・艦長だ」
「アキトさんは・・・多くの友人を殺されたことに激しく怒り・・・叛乱に参加した者たちを皆殺しにしていきました
しかも・・・・その一撃一撃が確実に致命傷になっていました・・・・・
その後・・・無事だった私達は急ぎ艦を戻し、死者を弔いました
そして・・・その日からです・・・アキトさんのカラーが・・・闇のような黒色になったのは
あの時のアキトさんは・・・こういってました・・・
『俺が・・・もっと早くに気付いていれば・・・もっと早くに・・・決断していれば・・・・!!』
勿論・・・クルーの中には誰一人、アキトさんの行動を咎める者はいませんでした
むしろ・・感謝している者が多かったくらいです
非情と言われるかも知れませんが・・・軍人である以上・・人を殺すことは全員が覚悟の上ですから
特に・・・私欲による叛乱は軍では重罪・・・死刑は免れない刑ですから・・・誰一人少将に同情する者はいませんでした
それでも・・アキトさんは自分で自分を責め続けていました
アキトさんにとっての黒は・・・死に行く者への喪服であると同時に・・死んでいった仲間達への喪服でもあるんです
私達では・・・・誰一人として・・・アキトさんから喪服をはずさせる事はできませんでした
多くの人は・・・あの黒服の事を褒め称えていますが・・・私達には・・なんとしても外させたい呪われた服なんです
せめて・・・この戦いが終わったら少しの間だけでも・・・あの服を外させたい・・・
それが・・・・アキトさんをよく知る人たちの・・・・総意でもあります」
フクベの言葉に、テッサが何かを決意した表情で言った
「だから・・・・安易な気持ちでアキトさんに近づこうとはしないでください
アキトさんに幻想を重ね、美化したままでいないでください、そして・・・自分の意思だけをぶつけないでください
その行為が・・・アキトさんにとって・・・最も心の傷を深くする行為なんです
本当にアキトさんの隣に立とうと言うのなら・・・アキトさんの本当の姿を見てからにしてください」
テッサは・・・メグミとユリカを睨みつけるような形で言い切った
実は・・・テッサはナデシコに乗り込んでまもなく、アリサから二人の事を聞いていたのだ
アキトの事を最もよく知り、その心の弱さも、強さもある程度はわかっているテンカワ・ルミ
共にいくつもの戦場を駆け、互いに背中を任せあえるほど信頼しあっているアリサ=ファー=ハーテッド
アキトの弱さを知り、だからこそアキトと共に歩んでいきたいと決意しているサラ=ファー=ハーテッド
同じく・・・アキトの弱さを知り、少しでも支えになりたいと思っているミリア・テア
企業人であるが故に、仮面に隠されたアキトの弱さに気付きつつあるエリナ・キンジョウ・ウォン
アキトの弱さを包み、初めて心の底からの笑顔を見た女性イネス・フレサンジュ
ナデシコで副官として共に働き、アキトから幻想を完全に取り除いたアオイ・スズカ
自らの愚かさに気付き、アキトとともに歩むべく自らの鍛錬を怠らないイツキ・カザマ
パイロットとして共に戦っているからこそ、幻想の正体に気付いたスバル・リョーコ
そして・・・・アキトの痛みを最もよく知り、それゆえに強く惹かれたテレサ・テスタロッサ
彼女達からすれば・・・メグミとユリカはやや押し付けているような感じがしていたのだ
だからこそ・・・テッサは今回の賭けに出た・・・これで少しでも二人の心構えが改善されれば
無論、テッサとてライバルは増やしたくない、しかし・・・勝負はあくまでフェアな方がいい
だからこそ・・・自分達と同じ土俵に上がるチャンスを与えたのだ
もしこれで気付かなければ・・・・アキトのほうから自然と離れていってしまうだろう
メグミとユリカは・・・顔を深く沈め・・・テッサが言ったことを熟考し始めた
一方その頃アキト達破壊工作部隊は・・・
「・・・休息は終了だ・・・・一気にけりをつけるぞ」
アキトの言葉と共に休息をやめ、全員エステに乗り込み、再びナナフシへと向かっていた
「前方に熱源反応・・・クルスクで生産された戦車のようです!!」
先頭を歩いていたチハヤが敵の存在を確認し、アキトに報告した
「・・・俺が突破口を開く、重機動戦部隊は陸戦二機をつれてナナフシに向かえ
他の陸戦は俺と共にこいつらを叩くぞ!!」
「了解!!」
アキトの声に全員が大声で返した
「初の実戦だ・・・じっくりとデータを取らせてもらうぞ!!」
『ガルルルルル・・・・・・・・』
まるで獣がうなるような音がし、重武装戦の両腕のガトリングガンが火を噴く
『ガン、ガンガン、ドッゴーーン』
ガトリングガンの弾は確実に戦車に当たっていき、次々と爆発を起こさせていった
「敵の陣形が崩れた・・・・一気に駆け抜けるわよ!!」
「わかりました」
「了解、アキト先にいってるぞ!!」
重機動戦に乗るイツキの声にルミが返事をし、カズヤがアキトに通信を入れてから一気に駆け抜けていく
「私は援護に回ります」
「僕が道に一番近そうだね、じゃあ僕も援護に回るよ」
重機動戦三機が駆ける道に一番近いチハヤとアカツキがそう言い、イツキたちの援護に回った
「じゃあ、私はアキトの援護ね」
「私、戦車を実物で見たのなんて初めてだよ」
「だからって気を抜くんじゃねえぞヒカル!!」
「ふっ・・・・・少しは楽しませてくれるかしら?」
アリサ、ヒカル、リョーコ、イズミの四人がアキトが相手にしていない側の戦車達を叩き始めた
戦いは・・・・まさに一方的であった、元々エステと戦車との性能差もあるのだろうが
アキトの乗る重武装戦のガトリングガンとミサイルポッドが敵を近づけずに次々と粉砕していく
さらに・・・アリサとリョーコ機が敵陣深くに侵入し、その手に持つソードで次々と切り裂いていく
アキトが撃ちもらした物は、イズミとヒカルが丁寧に破壊していった
クルスクが送ってきた戦車部隊たちは・・・・三十分と持たずに全てがスクラップと化していた
「よし・・・・・俺たちもナナフシに向かうぞ」
「OK、と言いたい所だけど・・・ちょっと増援が来てるわね
アキト、先に行って、私達は始末してから行くわ」
アリサの言葉に、リョーコ、ヒカル、イズミの三人が頷いた
「・・・・わかった、無茶だけはするなよ」
アキトはそう言うと全速でナナフシの方角へと向かっていった
「やれやれ・・・・本当はルミちゃんが心配で仕方なかったくせにね・・・・」
「艦長もやっぱり一人のお兄さんってことなんだね」
「公私混同してねえだけましだろ?一応始末はしてから行ってんだからな」
「どうでもいいけど早く始末しちゃいましょう、ゆっくりギャグも考えていられないわ・・・」
敵の増援、戦車約300相手でも全く焦る様子のないアリサ達だった
無論、この後、十分とたたずに全てスクラップに変化させていたが・・・・
そのころのナナフシ攻撃部隊
ナナフシまで後一歩という所まではいったが、今は改良された大型戦車に足止めを喰らっていた
「なにこれ!?火力が強すぎるよ!!」
「敵も馬鹿では無いと言うことですか・・・・改良されてますね」
「いくら重機動戦の装甲でもまともに喰らったらきついな・・・・どうやって抜ける?」
重機動戦の三人が眼の前の三台の大型戦車の猛攻を回避しながら言う
「一機くらいなら陸戦でも何とかなるけど・・・・三機もいるんじゃきついわね・・・」
「まぁ・・・・やるしかないでしょ!!ボク達がひきつけている間にナナフシを破壊するんだ!!」
チハヤの漏らした言葉に、アカツキが軽く返事をし、大型戦車の気を引くべく攻撃を開始する
『カタタタタタ・・・・・カァンカァン』
案の定と言うべきか、陸戦のラピッドライフルはあんまり効いてはいないようだった
しかし・・・攻撃された事で優先順序を変更したのだろう、戦車の攻撃はアカツキ機に集中し始めた
「よし、狙い通りだ、今のうちにナナフシを破壊しに行くんだ!!」
アカツキの言葉に押されるように、三機の重機動戦はナナフシへと再び歩んでいく
「やれやれ・・・・貴方って、見かけによらずいい所あるのね」
「そうでもないさ、好きな子の前でカッコつけたかっただけだよ」
「ふぅ・・・・男って損ね・・・・まぁいいわ・・・とっとと倒しちゃいましょう」
「OK、僕も何時までもかわし続けられる自信は無いからね」
アカツキとチハヤはそう言葉を交わすと大型戦車の破壊に集中し始める
護衛すべき対象が無くなった以上、陸戦は最大の強みであるその速さを生かし敵を撹乱していく
大型戦車はその重武装で何とか捕らえようとするが、仮にも一流の乗った機体である、そう簡単には捕らえられない
大型戦車は少しずつ・・・しかし確実にダメージを蓄積されていった・・・・そして・・
『ドッゴーーーン!!』
「よし!!一機破壊に成功!!」
爆発していく戦車を見ながらアカツキが喜びの声をあげる
「いいえ、二機よ、誘爆でもう一機沈んだわ・・・・でも」
「弾切れか・・・・予想よりはるかに硬かったねぇ・・・」
それをいい意味で否定した後、チハヤの声が暗くなる、それにアカツキはできるだけ明るい声で応えた
敵も弾薬を保持しつつ戦っているようでまだある程度の余裕があるだろう
エステに残された武器はイミディエットソードのみ、突っ込んでいくのは無謀といっていいだろう
「やれやれ・・・・ここは引くべきかな?」
アカツキがそう言ったとき・・・陸戦二機に緊急通信が入った
「巻き込まれたくなければ道を開けろ!!
「へっ?どわああ!!」
一瞬呆気に取られたアカツキだったが、その理由を背後から飛んでくる弾丸と共に理解した
先ほどの通信はアキトのもので、飛んできたのはダブルガトリングガンの弾だったのだ
「貴様は邪魔だ!!とっとと消えろ!!」
普段のアキトからは全く想像できないほどの恐ろしさがエステから滲み出ていた
そして・・・大型戦車はなすすべなく、ガトリングガンの餌食となり爆発した
しかし、アキトは歩みを止めずそのままナナフシへと突撃していった
重武装戦フレームコックピット
「くそっ・・・・間に合ってくれよ」
アキトが一人・・・誰に聞かせるでもなく呟いていた
アキトの頭の中には、先ほど入った通信内容が何度も蘇っていた
『なんですって!!囮が破壊された!?』
『すまない、予想以上に敵の動きが早かった、伏兵を配置され後続の囮が破壊されたらしい』
『くっ・・・・死傷者は?』
『幸い全員無事だ、ナデシコには此方から連絡しておく・・・後は頼む』
「もう・・・・俺は誰も失わないって・・・失わせないって決めたんだ・・・・
その為には・・・・・・人を殺すこともいとわない・・・そして・・・
この身砕け散り・・・消滅しようとも・・・後悔はしない!!
アキトはそう叫ぶと、さらに速度を上げ、ナナフシへと向かっていく
その行進は鬼神の様でもあり・・・安息の地を求めさまよう、傷ついた子供のようでもあった
その頃、ナナフシ撃破チーム
「よし、これくらい距離があれば十分だろ、全機一斉攻撃で沈めるぞ!!」
カズヤの言葉と共に、全重機動戦がその全ての弾薬をナナフシにぶつける
『ズッ、ドッ、ゴーーーーン!!!!!』
凄まじい爆音があたりに響く、全員がこれで決着がついただろうと思った・・・しかし
『キュィイイイイイン』
「そっ・・・そんな!!」
「馬鹿な!!あれほどの弾薬をくらってまだ動くのか」
「くっ・・・予備弾薬も撃ち尽くしてる・・・・任務失敗なの?」
動き始めたナナフシを見て三人とも驚愕と絶望に捕われかける・・・その時
「俺が破壊する」
もはや常にフルブースト状態の重武装戦フレームが現れ、そのままナナフシに突っ込んでいった
「いくらお前が固くても、こいつの前じゃあただじゃあすまないはずだ!!」
『ドン・・・・ドスーーン!!』
重武装戦の右手のリボルビング・バンカーがナナフシに突き刺さる
「こいつはおまけだ!!」
『ドン・・・・ドスーーン!!』
左手のリボルビング・バンカーも同じようにナナフシに突き刺さった
「砕け散れ!!」
『ドッ・・・・ゴーーーン』
「くぅううううう・・・・」
『ガシィイン』
アキトは、叫びと共にリボルビング・バンカーを爆発させ、ナナフシを内部から破壊した
しかし・・・・その反動は凄まじい物があり、重武装戦フレームはそのまま反作用により倒れた
「お兄ちゃん!?しっかりして!!」
「くっ・・・・だい・・・じょうぶだ、・・・ナナフシは?」
「安心しな、見事に機動を停止したよ、無茶しやがって・・・・・
ナデシコがくるからゆっくりしてろ、後・・・コスモスを補給の為に来るらしいぞ」
自分の身体よりも作戦を気にする親友の姿に呆れながらも、カズヤはナデシコからの通信内容を簡単に言った
それを聞いたアキトは、ゆっくりと意識を闇の中に手放していった
漆黒の鎧に身を包み、自らの弱さを押し潰す事で戦いに身を投じ
その漆黒の衣服で自らの罪を消そうとせず、自らの身を心を削り続ける心優しき少年
その少年を待つものは安らぎ満ちる光か・・・それとも永劫の闇か
知る者はなく、少年の歩みがやむ事も無い、ただ・・・時の歯車だけが静かに動き続けていた
あとがき
今回の話は、繋ぎとしてではなく、新型フレームのお目見えといった感じでしたが・・・どうでしょうか?
次回は・・・サイドストーリーを一回挟みます
最近作品の書きあがる速度が落ち気味ですが
今連載している作品はほぼ確実に最終話まで書く予定ですから・・・・最後までお付き合いくださいませ
代理人の感想
・・・・・ん〜む、実にどこかで見たような(苦笑)。
たとえて言うならリアル版ゲキガンガーのごとし(爆)。
時に、リボルビングバンカーって赤カブト虫の装備してるアレだと思いますけど、
あれ刺してから爆発させても内部からダメージを与えられはしないと思うんですが。
突き刺さるのはあくまでも鉄の杭だし(爆)。