テンリョウ・アキコ。
彼女は時を逆行してきたテンカワ・アキトである。
ユリカ達が愛しくなってきている（見た目）肉体年齢１６歳。精神年齢２４歳。
彼女の目的は未来を変えることだが。
同時にユリカとアキト(もう一人の逆行してきた方)をくっつけることも目的になっているようだ(笑)。
第４話「ユリカの憂鬱、アキコの野望。」
「アキコちゃん、アキトとはどういう関係なの〜」
ユリカが唐突に話しかけてきた。
例によって（サツキミドリで戦死者が居なかったおかげで）暇をもてあましているのだ。
その返答を返そうとするも、アキコはどう言おうか迷う。
そして、ルリに耳打ちして聞いてみた。
(ルリちゃん、どう答えればいいかな？)
(そんなこと私に聞かないでください)
一蹴されてしまった。
「え〜アキトとは昔に親の研究所で何度か会った事があるんです」
「うんうん」
「これといって関係は持っていません。エステの操縦訓練はよくやりますけど」
「それだけ、とは言わないわよね」
いつの間にかミナトまで参加してくる。
「そうですよね〜あんなに息が合ってるのにそれだけじゃないわよね〜」
メグミまで怒気含んだ声で話しかける。
(マジすか？)
アキコは少し焦った。
自分との関係を聞かれても答えかねるものである。
「・・・親友ではありますけどそれ以上のことはありません」
びしっ。
ブリッジの空気が固まった。
親友と言うキーワードは結構こたえている。
「しんゆう・・・」
ユリカは固まる。
自分のことをアキトにどう認識されているかといえば「幼馴染」程度である。
鈍いユリカでもそれくらいは分かる。
「親友・・・」
メグミはアキトとの関係は・・・同職者以上、友人以下程度だ。
「・・・(怒)」
ルリはルリでアキコを引きずり出す。
廊下。
「アキコさん！あんなことをあの二人の前で言うのは厳禁ですっ！」
「え？何で」
アキコはあくまでつじつまを合わせようとしただけである。
「いいですか！今の時点ではあの二人は好意を抱く知り合い程度の位置でしかないんです！
そんなことを言っても必ず傷つくだけです」
「う〜ん。つじつまが合えばと思ったんだけどね〜」
「つじつまあわせより前にやることがあるでしょう！
嫉妬心を買って出撃に支障が出たらどうする気なんですか！」
「・・・ごめん。これからは気をつけるよ」
こういうときは嘘でも納得するのが大切である。
女性は自分の言ってることを理解してもらえないことほど腹が立つことは無いのである。
「ルリお姉ちゃ〜ん」
アイが走ってきた。
「なに？アイちゃん」
既にアイちゃん扱いだ(笑)。
もちろん、不信感をもたれないように、と言うこともあるのだが
精神年齢が下がっていることも理由に入るだろう。
「食堂いこっ」
「私はサレナのプログラムがあるから」
「まってよルリちゃん。もう昼なんだし、一緒に行こう」
「そうですね。ご一緒させてもらいます」
厨房。
「アキコ！この料理運んでくれ！」
「はい！」
ホウメイに頼まれて料理を運ぶアキコ。
「はい、アイちゃん」
アキコはアイに注文の品、スパゲティーミートソースを差し出す。
「ありがとう。お姉ちゃん」
その席にはルリも同席している。
入れ替わりにアキトがルリにチキンライスを持ってくる。
「はい、ルリちゃん」
「ありがとうございます、アキトさん」
「お兄ちゃんがんばって〜」
「はいはい・・・ん？」
アキトはあることに気づく。
皆の視線が自分に集中しているのだ。
「な、何？」
「アイちゃん・・・」
「え？何？ルリお姉ちゃん」
「二人のこともちゃんと名前を言ってください」
「なんで？」
「そうしないと・・・」
ルリはアイに耳打ちする。
(アキトさんとアキコさんが夫婦みたいに見えますよ)
(あ・・・・・)
そう、この時コンビはサザエさんで言うマスオ(アキト)・サザエ(アキコ)・ワカメ(アイ)の
夫婦＆義理兄妹関係に見えるのだ！
おまけに最悪な事態があった。
二人は同じエプロンをしていたのだ！
元々、同じ色しか使っていなかったのでこの色を無意識に選んでいた。
「アキトさん〜」
メグミの怒気に満ちた笑顔が待っていた。
「うああああ」
ずりずりとアキトは引きずられていった。
「やれやれ。アキコ、お前さんが代わりをつとめなよ」
「え！？何でですか！」
「当たり前だ。お前のせいで貴重な戦力を失ったんだからな。きりきり動きな」
「・・・は〜い」
しおらしく動き始めるアキコ。
しかしこの日、彼女は一つの伝説を打ち立てた。
「一人で１０倍の仕事をした女」としてホウメイにたたえられたのだ。
「凄いスピードで動きまくっていたからな・・・」(ホウメイ談)
・・・この時、アキコはこの時間軸に来て最初に全力を出した日として記憶に残すこととなった。
火星到達寸前。
ウリバタケの抗議が始まった。
「我々は〜断固ネルガルに抗議する！」
やれやれ、とアキコはさっさと格納庫に向かう。
アキトたちはその様子を傍観している。
「やっぱり今回もこうなるか・・・」
「こんな細かい説明誰がよむってんだ〜！？」
「あ、それ私読みました」
「んな！？」
「これで証言は崩れましたね」
ルリの一言にプロスは不敵に笑う。
「艦長！こんな理不尽な要求のめるか！？」
「のめないよ！はんた〜い！」
のりのりで反対を開始するも、警報が鳴り響く。
どごおお。
「うおっ！？予告もなしにですと！？」
「戦場ではあたりまえだろが〜」
いつの間にかアキトもいなくなっていた。
『こちら、アキト』
『こちら、アキコ』
「了解です。発進してください」
ルリのオペレートによりエステが発進する。
数分後にはリョーコ以下３人が来るだろう。
ＡＡコンビは弄ぶがごとくバッタを誘導しながら撃破していく。
もちろん余力はあまりにあまっている。
『待たせたな！』
『リョーコさん』
『ああ。遅くなった』
『どうしたんですか？』
『ちょっと俺のエステに乗ろうとしてた馬鹿やろうをぼこるのにちょいと手間取ったからな』
哀れガイ・・・いくらアキコにエステを使われているからって女性の機体に入ろうとしたお前が悪い。
不死身のガイでは手間取っても仕方が無い。
『ＯＫ！アキコ、リョーコちゃん達と援護してくれ、吶喊(とっかん)する！」
『お、おい』
『大丈夫だよリョーコさん。アキトは一人でも全滅させかねないから』
『なら任すぜ！』
『りょ〜かい！』
『死に急がないことね』
ふぉぉぉぉ・・・。
エステのブースターが静かに高鳴る。
そして、アキトのエステは・・・舞う。
バッタたち雑魚はディストーションフィールドの収束した直接攻撃によって撃破していく。
『うひゃ〜マジでやるなぁ』
リョーコは感嘆の声を上げる。
『まだまだ。本気になったらそれこそナデシコが沈むよ』
アキコは解説する。
もちろん、この間には次々とバッタをラピッド・ライフルによって撃墜している。
どどどどどどどど。
『わ〜い、お花畑お花畑！』
各個撃破を続ける。
しかし、もっとも冷静にイズミのエステは無駄な動きをとらずに正確な援護射撃をしている。
アキトはー戦艦を狙っていた。
『そこか・・・』
イミテッド・ナイフを使い、フィールドに切れ目を入れてから
ディストーションナックルで落とす・・・・
その動きを繰り返し、最終的には加速のついたディストーションナックルで戦艦を沈めたりもして見せた。
戦闘終了後・・・。
火星に突入する際に格納庫ではてんこまいであった。
「きゃ〜！！」
三人の女性がアキトの方に寄りかかって・・・覆いかぶさってきた。
「うお〜！」
ウリバタケもこっちにきたが・・・・たまたまいたアキコの手によって受け止めてもらえた。
「おおっ！？すまんな・・・ってなんちゅう力だ」
アキコは思わず片手を差し出したが・・・・片手で男一人を支えていられるのは不自然である。
それに気づいたアキコはご丁寧にも
「あ・・・も、限界」
と、わざとらしいコメントつきで手を離した。
「わ〜！？」
ごりっ。
鈍い音がしたが・・・まあ、気にしない方面で。
到着後。
一応、イネスを迎えに行く必要があるのだが・・・今回はアキコに行ってもらうことにした。
アキトはナデシコのエースで手放せない・・・と言うことで。
もちろん、アイも一緒だ。
ふおおおおおん。
「きもちいいね、お姉ちゃん」
「そうだね。でもあんまり目立たないでよ？」
「うん！わかってる」
なぜ、イネスにアイを会わせてもよいとアキコが踏んだのかー。
それは、幼いころの自分の姿を覚えていることは稀だからである。
では、これを読んでいる方々に質問しよう。
自分の小学生２年生のころの顔を覚えてますか？
正確に書けますか？
ほとんどの人はかけないでしょう。
自分の顔ならなおさらで、なおかつ、養子になったイネスでは当然である。
「この辺だな・・・ていっ」
アキコは軽く飛んで地面を踏みつけた。
ぼすっ！
「ビンゴ・・・！」
「きゃ〜」
楽しそうにアイはアキコに抱きついている。
とっ。
アキコは着地する。その腕にアイを乗せて。
「っ！貴様・・・木星のやつらか！」
「へ？」
アキコはきょとんとした顔で男を見つめる。
そこにはイネスはいない。
なぜか男が鉄パイプをもって襲い掛かってきた。
「ちょっ・・・話を聞いて・・・」
「ぐらぁ！」
男の鉄パイプが空を切る。
しかし、アキコは片足で軽々と鉄パイプを曲がらせる。
ばきっ。
そのまま、男を吹っ飛ばす。
「ぐほっ・・・」
どさっ。
「有無を言わさず女子供に手を上げるなんて・・・恥を知りなさい」
アキコは昔の目つきでにらみつける。
「そこまでよ。勇敢なプリンセス。あなたはどこから来たの？」
イネスが奥から出てきた。
「私達はあなた達を迎えに来ました」
「いやよ」
やはり拒否してきた。
前回も同じだったのでアキコはとりあえずナデシコに連れてくることにした。
「詳しい話はプロスさんにしてください。私は火星育ちですけど今の事情は良く分かりません」
「わかったわ」
ひゅううううう。
風を切るエステ。
今回は女性・・・ユリカに騒がれもしない。
アキコにはそんな気楽さがあったが・・・・。
アイが騒ぐので少し操縦がし辛かった。
ナデシコサイド。ルリ視点。
ナデシコでは一つの問題が発生していました。
アンチ・テンカワ同盟が発足しています。
どうやらアキトさんがアキコさんやユリカさん、メグミさんにリョーコさんを
とっかえひっかえしているという良からぬ噂が立っているようです。
・・・そうでなくてもあの二人仲良さそうですもんね。
「なあ・・・ルリちゃん」
「どうかしましたか？」
「なんで俺こんなやつにかかわること多いのかな」
本気で言ってます？
ここは「正確に問題があっても腕が一流」がウリのナデシコですよ？
そうでなくても普通は妬まれますよ。
・・・アキトさんには人の嫉妬心がわからなすぎます。
でも・・・・だからこそ綺麗な、何事にも真っ直ぐな人なんでしょう。
アキコがナデシコに戻る際、敵襲があった。
「グラビティブラスト、はっしゃ〜！」
ユリカの掛け声とともにグラビティブラストが放たれたが・・・
「戦艦クラスにはノーダメージです」
機動兵器を蹴散らした程度で戦艦を落とせていない。
「え〜！？」
「艦長・・・どうしますか？」
「エステ隊の発進、そして再充電と後退をいそいで！」
その事態に対応してナデシコを逃げさせようとするも・・・。
結局、グラビティブラストが効かないがためにナデシコは大きな損害をこうむった。
何とか敵は退けたがまだ敵は出てくる。
だが・・・作戦を練らねばならない時期なのに・・・なのに・・・。
「３・２・１・・・どっかーん！」
始まってしまった。「なぜなにナデシコ」が。
今回はルリに放棄されて、のりのりのアイがお姉さん役だ。
ウサギの着ぐるみは・・・アキコだった。
アイの泣き落としにかかったらしい・・・。
とはいえ、涙を流しながら番組に出ている姿は哀愁を誘わずに入られない(笑)。
〜番組終了〜
「と、言うわけでこの船ではこの火星から逃げ出すことすら不可能です」
「そんな！」
「とにかく・・・」
「とにかく・・・？」
「おなかすいたんで食堂どこかしら？」
がくっ！
皆、豪快にこけた。
「そこの可愛い娘に案内をお願いするわ」
「わたし？」
イネスが指名したのは・・・アイだ。
「こっちだよ〜」
かわいらしく案内するアイ。
食堂。
「アイちゃんって他人の気がしないのよ」
「そ、そうですか」
そりゃそうだ。本人なんだから(笑)。
イネスはアキトを見ながら話し始める。
「ねえ・・・アイちゃんにとってアキト君てどんな存在？」
「え〜と。優しくて頼りになるお兄さんかな？」
アイは当然のごとく言う。
「じゃあアキコちゃんは？」
「大好きなお姉ちゃんよ」
「あの二人、妙に似てるわね？なんか兄妹みたいだし」
「そ、そうかな？」
すっとぼけてみせるが、イネスの目は誤魔化せていないようだ。
「はい、ラーメンとオムレツお待ちどうさま」
アキトが二人の前に料理を持ってきた。
「ねえ、アキトくん？私達どこかであったこと無い？」
「え(汗)急にそんな事言われても」
イネスはあくまでアキトのことを気にしていたいようだ。
と、そこに。
『二人とも近づきすぎ！』
ユリカの通信が入った。
今回は危機を救ったようだ。
『って・・・そうじゃなくてイネスさんはブリッジに来て！』
(？イネスさんだけ？)
アキトは少し引っかかった。
前回はアキトが呼ばれたのだが・・・。
(あ、そういえばさっきアキコが出たんだよな)
そう思いながら厨房に戻っていくアキトだった。
「・・・要するにクロッカスの偵察をしろってことですか？」
「ああ、そうだ」
パイロットの選抜は三人娘＋アキトＯＲアキコとなった。
ナデシコの最大戦力の二人はどちらか置いておかないと危険だからである。
その時、ルリが割り込んだ。
「アキトさん、ジャンプフィールド発生装置が出来ましたのでラピスに会いに行って下さい」
「ありがとう。そういう訳で頼む」
「・・・ああ、分かった」
・・・結局、アキコが出ることになった。
「アキコ、でます」
ばしゅん・・・。
氷の大地にアキコの砲戦フレームが降り立つ。
先に出撃していたリョーコ達と合流した。
『おう、アキコ。来たか』
『ええ、行きましょう』
パイロット三人娘とともに進もうとするアキコ。
だが、リョーコの足元に無人兵器が現われる。
『なっ！？』
しっかりとリョーコのエステをロックしてドリルで突き刺そうとした。
『たっ、たすけてくれ・・・テンカワ〜！』
(ここからじゃ届かない・・・仕方ない、プロスさんに泣いて貰おう！)
アキコは自分の位置からでは接近戦では間に合わないと踏み、キャノン砲の砲身をリョーコエステに向けた。
『リョーコさん！歯ぁ食いしばってください！舌噛みますから！』
どんっ・・ぼむっ。
『うおっ』
キャノン砲は見事に無人兵器を吹き飛ばしたが、同時にリョーコの砲戦フレームの一部を破壊してしまった。
『大丈夫ですか？』
『あ、ああ。・・・結構無茶するなアキコ』
『あの場合は仕方ないでしょう。もし射程外だったら完全にお陀仏だったんですから』
『・・・ありがとうよ』
『ところでリョーコ、テンカワ君に助け求めちゃうなんて、これはもしかして？』
『もしかするわね』
『なっ！てめーら、からかってんじゃねーよ！』
その光景を見て、アキコは微笑んでいた。
(・・・やっぱり変わらないな、みんな)
『テンカワにはアキコが居るじゃねーか！！』
ごんっ。
アキコは豪快に頭をシートに叩きつけた。
『・・・リョーコさん。俺、別にアキトとは付き会ってませんよ』
『何ぃ！本当か！』
『・・・嬉しそうにしちゃって』
『ち、ちげーよ！』
(・・・・後でアイツどついておくか)
アキコは密かにアキトを叩こうかと思案した。
ナデシコに戻ったアキコは、フクベに呼ばれた。
「クロッカスを使う。イネス君とアキコ君に少し手伝ってもらいたいのだが？」
「ええ、構いませんよ」
そして、三人はクロッカスに向かう。
だが、出迎えてくれたのは、一機のバッタだった。
「・・・・邪魔するよ」
ががががが・・・・。
一箇所にマシンガンの弾を集中させ、バッタの装甲をぶち破る。
「さて、行きましょう」
「・・・済まないな」
中に入っていくと、イネスはアキコに耳打ちをして話し掛けてきた。
「・・・アキコちゃん、一つ聞きたい事があるんだけど・・・・・・」
「提督の事ですか？」
「・・・分かってるの？」
「ええ、分かってます」
「・・・・・なら、何で素直に提督を信じる気になったの？」
そのイネスの一言に悩ましい表情でアキコは答えた。
「提督はやりたくてやったわけじゃないと思うんです。
軍に英雄に仕立て上げられた、家族や故郷を自分で壊した事に対して心に傷を持ってると思うんです。
・・・分かるんです。俺もそういう傷を持ってますから・・・」
「・・・アキコちゃん、あなたどういうー」
アキコはイネスの前に手を出して静止した。
「そこから先はいえません。これ以上踏み込む事は許しません」
「・・・分かったわ」
「・・・アキコ君」
フクベは立ち止まった。
「・・・・君ならナデシコを託せる。ここで引き返して欲しい」
「・・・提督、囮になるんですか？」
「・・・・・これ位しか出来ないからな」
「・・・行きましょう、イネスさん」
「ちょ・・・アキコちゃん！そこまで信用できるの！？」
振り返って戻ろうとするアキコにイネスは反論する。
「言ったでしょう？俺も提督と同じ身の上で生きてます。だから提督のしたい事が分かるんです。
ユートピア・コロニーは提督の故郷です。
それを自分で壊してしまったんですよ？
・・・その気持ちを思えば・・・・いえ。
恨む事は出来ないんです。
恨んだとしても何も起こりません。
それはよく分かります」
「・・・アキコ君。君の過去に何があったのかは知らん。
君は若い。
・・・だがだ。
何だ？君が背負う重すぎる「業」は。
・・・・まるで私以上の大罪を犯してしまったかのようなその背中は。
・・・・・・まだ若いんだ。
何だって出来る筈だ。
・・・過去を背負うな、君のような若者は未来だけを見て生きればいいんだ」
「無責任な事は出来ません。俺はあくまでその上に立って生きる事を選択したんです。
・・・・・人並みに幸せになってみますよ」
「頑張れよ、若人」
フクベとアキコは背を向けて反対の方向に歩き出した。
(・・・人並みの幸せ・・・か。
人並みの幸せは置いてきたからなー・・・・)
アキコは色々と掛け合いをしているブリッジの端でまどろんでいた。
「クロッカスから通信」
ルリのその一言にアキコは目をモニターに向ける。
「アキコ君！君はまだ若い！
何かを成し遂げる事も、家庭を築く事もできる！
その為にも生きていけ！私の屍を乗り越えていけ！
君達はきっとできるだろう！
・・・私のような悪い大人の見本にはなるな！
君達なら・・・！」
「クロッカス、通信圏外に入りました」
(・・・家庭、か。
ユリカはどうしてるんだ？
俺は・・・会いたいけどな。
提督、あなたは死ねませんよ。
また会えたら・・・笑顔で出迎えてもらえますよ、きっと)
「・・・アキコちゃん本当にいいの？提督をあのままにしておいて」
イネスは話を聞いていたアキコに話しかける。
その問いにはー
「過ぎた事です。
あの人がユートピアコロニーを破壊した張本人でも。
・・・それに提督が一番惨めだったんだと思います。
さっきも言ったでしょう？故郷を、家族を自分の手で壊してしまったんですから・・・」
「・・・思ったより冷静ね」
「そんなことありませんよ」
(・・・そう、幸せを奪い続け自分の家族を見捨てて逃げてきた俺がこんな事を言うなんて・・・未練、かな)
アキコはしばらく感慨に浸る。
彼女の心中は恐ろしいほどに静まり返っていた。
・・・ひと時の空虚感に。
作者から一言。
今回は・・・地味でした。
やっぱりアキコメインだと物語の全容が分かりづらいですね。
何とかしたい物です。
次回こそ、次回こそ〜(ぐさ！)
『見苦しい作者ですいませんねここはアイがお詫びします』
アイさ〜ん(泣)DI(ピー)ばりのメス投げはやめてください(５０本ほど)・・・
もう虫の息です・・・・。
『あら、こんなところに実験材料が』
げ！イネスさんまで！
・・・死刑決定？
改定後の一言。
・・・クロッカスの辺りがすげえ手抜きだったんで修正しました。
やっぱりこれくらいは書いとかないと。
０４年２月２２日武説草良雄。
管理人の感想
武説草良雄さんからの投稿です。
う〜ん、ま、大きなイベントが無い場合には地味にならざるをえないでしょう。
そこらへんは、作者の方の力量次第ですね。
それにしてもアイちゃん（元イネスさん）、すっかり精神年齢が低くなっちゃって（苦笑）