注意書き。

1.この話はネタバレが含まれている可能性が高いので第3章・第1話ぐらいまでは読んでからこちらをご覧になってください。

2.物語と言うよりはその時のモブ(失礼)の心境を描いているので、正直言えば本編に組み込めたかもしれないものもあります。

3.一応、「時の流れに」に準拠しているキャラ性格を意識していますが、筆者のイメージ付けの為に性格が一部違う恐れがあります。



ご了承下さい。




・・・これは、本編で描けなかった(もしくは描き忘れた)物語の一つである。




サブ・ストーリー集

「時の流れに・reload」サイドストーリー「アイの日記」







プロスと契約をしている辺りからのアイ視点。



・・・お姉ちゃん帰る気出るかなー。


駄目駄目!ぜったい帰らせなきゃ!

私が弱気になってどうするのよ、しっかりしなきゃ!

・・・でもお姉ちゃん寂しそうな顔しかしない。

辛いな・・・。

でもこれが、これがあるからお姉ちゃんは帰る気持ちが根付くはず。

「・・・で、契約はこれでよろしいですか?」

いけない、契約を変えなきゃ。

うまくユリカさんがナデシコに乗り込めても、交際禁止じゃ拷問よ。

隠れてするって手もあるけど、念には念を入れておかないと。

「ちょっと待って」

私は契約書の一部を指差した。

当然、それは「男女間の交際は基本的に禁止、手をつなぐ以上の事をしてはいけない」の一文。

「ここ消して」

「ああ、気付かれましたか。ここは気付かれた方のみ消せる特典になっていますので、お二人はこの契約についてはフリーです」

プロスさん、困ったような笑顔で改正してくれた。

よかった、もし改正するのに給料の何%とかかかったら問題だったわ。

「では、食堂の方に行きましょう」

・・・実は立ち話だったのよね。



お姉ちゃんは少し困惑したような顔で耳打ちしてきた。

「・・・ねえアイちゃん。何であの項目消したの?」

・・・・・そう思うわよね、普通は。

8歳児の姿の私と、元男のお姉ちゃんじゃ誰とも恋愛なんてしないから。

え〜と・・・どう誤魔化そうかしら。

・・・・そうだ!

「私ね、ハーリー君でも誘惑しちゃおうかなー・・・なんて思ってたの」

「ハーリーくんって・・・あのハーリー君?」

私はハーリー君と直接会ったことがある。

お姉ちゃんはナデシコCとの通信のとき一回だけ見たことがあった。

ルリちゃんの弟のような存在、だけどルリちゃん関連には凄い剣幕で対応するあの子。

お姉ちゃんが顔を合わせたときは凄い顔してたけど。

彼がこっちに来ていた事もルリちゃんに聞いていた。

「・・・ハーリー君も災難だなあ・・・」

お姉ちゃん、私怒るよ?

そりゃ、11歳だったわよ、ハーリー君は。

でも私は今8歳扱いなんだから良いじゃないの。

・・・・もちろん本気じゃないけど。

いいや、今度寝てる間にいたずらしちゃおう。

・・・いたずらもするけど、私が今できる事は少ない。

実験も、ほとんど出来ない。

イネスが来てからじゃないと薬品もそろわないし。

それで、私が今やろうとしていることは・・・日記だ。

お姉ちゃんが食堂に向かっている間、小さなノートを取り出し、書き込み始めた。

まずは今日の日記。

(ナデシコに乗船した日)

私は日記をつけることにした。

昔も日記はつけていたからあまり変わったことじゃないかもしれない。

でも、今回は少し違う。

なぜなら、今度の日記は「観察日記」なのだから。

何の観察日記かって?

お姉ちゃんの観察日記よ。

お姉ちゃんが女性としてどう変わっていくのか記録したいの。

それはこれからの研究にも繋がるし。





「これでよし」

私はとりあえずこれで納得した。

初めはこんなもんでいい。







(防衛ラインを超えた翌日)

今日、お姉ちゃんは泣いてた。

起きたときに泣いてた。

ユリカさんを突き放し、戻らなかったことを後悔してきたと言ってくれた。

それはそうよね。

今まで辛い思いをして戦ってきたんだから、ホルモンによる心境の変化が起こったらそんな重い感情に耐え切れるわけないもの。

ユリカさんが今出てきてくれたら良いんだけど、ナデシコに乗り込むために何らかの努力をしてるはずだから、贅沢は言えないけど。

お姉ちゃんごめんね。我慢してね。





(サツキミドリでパイロット三人娘と合流した日)

今日はお姉ちゃんのこの世界での、初陣。

ルリお姉ちゃんと一緒にその様子を見てた・・・けど。

いきなり本気を出すお姉ちゃん。

・・・・目立っちゃ駄目でしょ。

あんまり目立つと後々面倒だよ。

で、今日は少し変わったことがあった。

私が医務室でガイお兄ちゃんに少しイタズラ(実験)をしていると、お姉ちゃんが入ってきた。

「・・・アイちゃん」

「あ、お姉ちゃん」

私が振り向くと、お姉ちゃんは何か慌てた様子で、青い顔をしてた。

「!どうしたの!?]

「実は・・・」

私が駆け寄るとお姉ちゃんは事情を話し始めた。

「・・・・・・股から血が出たんだけど・・・・病気かな・・・・・・」

・・・・私はずっこけた。

「お姉ちゃん、それ、生理」

「生理?」

・・・・・・生理が分からないの?

私は呆れた面持ちで分かりやすいよう30分ほど時間をかけてゆっくりと生理について説明した。

「・・・要約すると子供を作る為の細胞を排出してるってこと?」

やっと理解したみたいね。

「でも子供なんて出来ないよね?」

・・・・分かってない。

お姉ちゃん、ナデシコでは数少ない常識人だと信じてやまなかったのに・・・。

私は大袈裟に溜息をついてみせる。

そういう事に免疫がないのは知ってたけど、ここまでとはね・・・。



(火星到達後)

今日はお姉ちゃんとイネスを迎えに行った。

是非、一緒に実験をしたいと思っていたのよ。

自分と一緒なら意見の食い違いも無く、自由に実験が出来るし。

砲戦フレームで走ったとき、風が気持ちよかったな・・・。

お姉ちゃんは相変わらず、外面は強く装ってる。でも私は知ってる。

どんなに強くても、心はぼろぼろなんだって。

だから、ユリカさんと合流するまでは私がお姉ちゃんを護らないと。



(ジャンプが終わり、8ヶ月が経過した日)

・・・・・・・何か凄いことになってる。

うん、確かにDNA上では限りなく近いからジャンプしたときの座標が近づくのは分かる。

現に私もイネスの横に現われたもの。

・・・でも、上に覆い被さった状態のお兄ちゃんとお姉ちゃんは少し、疑いたくなる。

何かあったんじゃないか疑いたくなった。

・・・・・絶対無いとは思うけど。

あと、最近はお姉ちゃんがホウメイガールズに溶け込んできた気がする。

食堂に行くといつも話しているから。

それでお姉ちゃんに話を聞いてみた。

「どう?女の子も結構楽しいでしょ」

って。

そしたらお姉ちゃんは

「・・・・・・・・・うん」

妙に間があったけど、多分、言おうか言わないか考えてたみたい。

お姉ちゃんは変に頑固なところが多くて自分の事すらいまいち理解できてなかったみたいだけど、今はそんな印象は無い。

う〜ん、やっぱり思考が柔軟になるのかな?




(アキトが暴走した日)

・・・お兄ちゃんも色々溜め込んでるみたいね。

お兄ちゃんもユリカさんを求めているのは分かる。

何か溜め込むと表面上に出ちゃうのよね、お兄ちゃんの場合。

・・・・・お兄ちゃんは何をしたら考えを改めてくれるんだろう。

お姉ちゃんは、お兄ちゃんを止めようとしてサレナを使おうとしたみたいだけど、

その前にお兄ちゃんは全滅させて帰還した。

・・・・・・・・お姉ちゃん、気持ちは分かるけど、サレナを急に使ったらネルガル側に目をつけられるよ?





(テニシアン島に調査に行った日)

今日はお姉ちゃんと一緒にラーメンを作った。

・・・楽しかった。

ユリカさんや、ルリお姉ちゃんはこういう感じだったのかな?

お姉ちゃんもいつもは見せてくれない笑顔を見せてくれて良かった。

関係ないけど、実験台にしてたガイお兄ちゃんが脱走した。

・・・薬の効果に「筋力及び、肉体強度の上昇」って書いておかなきゃ。




(ナナフシを撃墜した日)

・・・今日、またお姉ちゃんは泣いた。

ここの所、毎日寝汗を書いてる。

一緒に寝ている私はそれを知ってる。

今日は5時だというのにトレーニング室でその焦燥を消そうとしたらしい。

でも、残ったのは虚しさだけだった。

お姉ちゃんを見に行ったとき、それ理解できた。

・・・・ごめんね、お姉ちゃん。

今は耐えて。



(オモイカネの反抗期の日)

今日は、お兄ちゃんが連合軍に出向した。

お姉ちゃんがその原因であるムネタケ提督を殴ろうとしたリョーコお姉ちゃんを止めていた姿をみて、思わず私も泣いてしまった。

・・・お姉ちゃん、もしお姉ちゃんがそういう目にあったら私がついていくよ。

お姉ちゃんは泣いてはいなかったけど一番悲しそうに見えた。




(アキトが出向になった翌日)

今日、お姉ちゃんはやけに疲れた顔をしてた。

どうやら、皆を励ましたりしていたみたい。

・・・・・一番励まされなきゃいけないのはお姉ちゃんでしょーに。

私はいつも声をかけてるけどあまり変わらないみたい。

・・・私じゃ役不足なのかな。




(その翌日)

お姉ちゃんとルリお姉ちゃんは風邪を引いたらしい。


・・・・好機!←ふた回り大きく。


お姉ちゃん、疲れてるみたいだから休ませてあげよう。

でもきっと無理ばかりしてるからまた一日休んだら働きに出るに決まってる。

だったら・・・私の科学者としての知識を使って動けなくするまで!

・・・・・で、完成したのは「肉体退化捕縛剤」だった。

何でこれを作ったかのかといえば、普通の薬はお姉ちゃんの良性ナノマシンで分解してしまう恐れがあったことと、

厨房で働けず、なおかつパイロットも出来ないくらい小さくしてしまえばいいと思ったから。

・・・ルリお姉ちゃん、巻き添えにしてごめんなさい。

二人のその可愛い姿は私のベストスナップとしてアルバムにしまって置くわ。

・・・使い捨てカメラ一個丸々つかっちゃったもん。





(アキトがいなくなってから一ヶ月の日)

・・・お姉ちゃん無理しすぎ。

お兄ちゃんがいなくなった分の穴を一人で埋める気?

そんなの無理よ。

お姉ちゃんのお陰で皆立ち上がれたんだから少しは休みなよ。

お姉ちゃんは過労だよ。

研究員で過労で倒れた人がいた。

無理をしすぎ、なおかつ一度倒れたのにそのまま一年間働きつづけ、死んだ人が。

その人と同じ状態だった。

もう、立っている事すら辛いはず。

今日中には倒れてしまうだろうと考えてると、午後にはお姉ちゃんが医務室に運ばれてきた。

・・・お姉ちゃん、もう休んで。

私、お姉ちゃんがそこまで自分を追い詰める姿をみると泣きたくなるの。

だから私はイネスと相談してジュースに薬を混ぜた。

当然効果が薄まらないように医療用のものにだけど。

この前と同じ薬、けど前ほどは縛らない。ストレスが増えないように。

疲れているときは甘いものがほしくなるから案の定、飲んでくれた。

お姉ちゃんは私を恨めしそうに見ながら眠ってしまった。

・・・・・ごめんね、本当にごめん。

お姉ちゃんが死んでしまったら、ユリカさんが悲しむのよ。

一度夕食を食べるために食堂に行った後、様子を見にきたらお姉ちゃんは寝ながら泣いていた。




『・・・・・俯くその背中に痛い雨が突き刺さる祈る想いで見ていた』



悲しそうな顔をしていた。




『この世にもしも傘がたった一つだとしても探して君に渡すよ』



私は、お姉ちゃんを騙す事に罪悪感を感じずに入られなかった。



『何も出来ないけど君の変わり濡れるくらいわけも無いさ』


悲しみを代わることが出来ない事に涙した。



『お願いその悩みをどうか私に打ち明けて』


悲しいなら、私が、抱きしめてあげる。



『必ず朝は来るさ。終わらない雨も無いね。だから自分を信じて』



今の私にはそれくらいしか出来ないから。



『一人で背負わないで気付いて私がいること』




私の胸で眠って。



『もうすぐその心に綺麗な虹がかかるから』



あともう一息だから。








(アキトが帰還した日)

・・・・私のせいでナデシコがピンチになった。

でも、お姉ちゃんが出撃して気絶したらもっと危険だからこれでいいのかもしれないけど。

今日はユリカさんがやっと来てくれた。

お姉ちゃんにすぐにでも会わせたい。

お姉ちゃんのボロボロの心を唯一、治せるユリカさん・・・今はコウタロウさんだけど。

あと一週間で疲労を回復できるはずだから。

お姉ちゃん、もうすぐだよ。







・・・・今回は、本編がここまでしか進んでいないので終了。




おまけ。

3−2、アイサイド

注意。

これはおまけなのでパロディです。

実際無いような事があっても、突っ込まないようご協力お願いします。

ご感想があれば、掲示板のほうに書き込んでいただけると非常に助かります。

話を分けても良かったのですが、それほど長くならないのでここに書きます。









夢を・・・・見ていました。






雄々しく、荒々しく、とても幻想的な夢を・・・。





夢の中の人になった私は、泣いていました。





悲しんでいるわけではありません。




自分の合いたかった人に合えて、嬉しくて、嬉しくて、仕方ない、と、





嬉しくて泣いていたのです。





目の前にいるその人の唇が、私に触れ、強く強く抱きしめられました。




この夢の中の人は思わず、抱きしめ返しました。




ひたすら、これが夢ではない、現実なんだと噛み締めるように、反芻します。




私は、夢でこの人を見ています。




この人はきっと現実で抱かれているのでしょう。



羨ましく、思いました。



私の心も満たされ、この人は、




「嗚呼、自分はこの瞬間のために今まで生きてきたんだ」




と、自分が今まで死にたかった、消え去ってしまいたかったという感情を全て捨てきる事ができました。






不意に、私は押し倒されました。






急な出来事に、私は戸惑いました。




この人も、驚きを隠せず、拒絶こそ見せませんでしたが、少し抵抗をしました。





抵抗に反応したのか、その人は一度唇を離し、耳元で呟きました。





その言葉は、二人が、過去に行う事の出来なかった行動を示していました。





この人は二・三度息を吸い、その人に身を委ねました。




この人は、その人に抱かれ、再びとめどない涙を流しました。




今、愛しい人に会えた嬉しさと、激しい愛撫に。




暖かい・・・・・。




私は、この人と同じ感覚を共有しています。




暖かく、気持ちよく、もう二度と離れたくない。




この人はそう思います。




私もそう思います。



しかし、意識はどんどん遠のいていきます。



やがて何も見えない真っ白な世界に出て行ってしまいました。




私はそこで目がさめました。






「・・・・良かったね、お姉ちゃん」




私は涙を流しました。





作者から一言。

歌を入れて雰囲気で誤魔化せ・・・ましたか?

本気で誤魔化そうなんて思ってませんけどけどけど・・・・。

・・・・・後半やっちまったかも・・・。

一応R指定とかには入りませんよね?

歌の歌詞にこういうの入れてもOKだったんで(だってジャンヌダルクはもろだし)。

前半だけでは少々足りないかな、と思ったんで後半を追加したんです。

後半はもちろんスクライドを参考にしてますけど。

・・・・こんなネタやるためにアイの声優を田村ゆかりにしておいたとか(爆)。



改定後の一言。

・・・第1話サイドストーリーの一部を切り取って貼り付けただけです。

この日記は、また改定する可能性が高いので悪しからず。

つーか第2章2話アキコサイドでアイがアキコの夢の中に入ったのはこのネタのせいです、多分。

04年2月22日。武説草良雄。

 

代理人の感想

・・・・・・・・・・・・・・よかったのかなー(爆)