ナデシコは現在休養中だ。
それぞれが疲れを取り、来るべき決断の時、戦いのときに備える。
今回は、休暇中とその後を描く。
第5話「ナデシコ休業中」
2日目の夜ー。
アカツキのA・T組織の追跡の後、彼はエリナに強制連行させられた。
「・・・参ったな」
アカツキは月のネルガル支部でぼやいた。
彼は休暇中だが・・・いつもがエリナにとっては休暇扱いで、仕事をサボっている事になっているのだ。
その為、彼は仕事をする事を余儀なくされている。
「・・・・こんな事になるなら普段暇なときにやっておくべきだった・・・」
・・・いつも言うお決まりの台詞。
夏休みの宿題を夏休みが終わる一週間前に始める少年のような心境なのだろう。
がちゃ・・・・とん。
「はい、差し入れ」
エリナが突然現われ、机の上にあるものを乗せる。
「・・・いくら落ち目の会長でもこれは酷いんじゃないかな?」
「いいから早くやりなさい!それの10%片付けるまではトイレも行っちゃいけないからね!」
そう言ってエリナは部屋を出た。
がちゃ。
「・・・会長ともあろうものが夜食にカップめんを渡されるなんて・・・侘しいよ・・・」
ひとりごちてアカツキはそのラーメンをすする。
ずずずず〜。
「まあ、四の五の言える立場じゃないからな・・・でもせめて出前が欲しかった」
・・・・自業自得。
「燃えたよ・・・燃え尽きた・・・真っ白にな・・・・」
ウリバタケはまだ燃え尽きていた。
だが、某同盟はそれぐらいで追撃をやめはしない!
「ウリバタケさん!昼の続きですよ!」
サラ他、某同盟のメンバーが集結していた。
その後ろには何とか誤解を解いて戻ってきたハーリーとサブロウタとジュンが縛られた上で引きずられていた。
「たのまぁおっつあん・・・少し眠らせてくれ・・・・」
「聞いてますか!」
「聞こえねえんだよ・・・耳がよ・・・」
何を言っても上の空である。
「・・・・連行しておきましょうか?」
「そのうち正気に戻るだろ」
リョーコの呑気な台詞とともに、ウリバタケは拘束され・・・謎の部屋に放り込まれた。
「・・・・はっっ!俺は一体・・」
やっと正気に戻ったらしく、ウリバタケは周りを見回す。
「うりばたけさ〜ん・・・」
「やばい・・・・本気でやばい・・・」
「僕はまだ死ねないんだ〜!」
・・・・・・お仕置きの執行は、近い。
・・・こちらはナデシコに帰ってきたアキコサイド。
「アキコさん、一緒にお風呂はいりません?」
「え?シェリーちゃん、何急に?」
アキコは部屋に戻る途中、シェリー、マリー、アイの三人に出会った。
「理由なんて要りませんよ、ただ入りたいからです」
・・・単純にそう思うのだろう。
「・・・・・別に構わないけど」
「「「やった〜!」」」
(・・・なんで喜ぶの?)
アキコは少し恥ずかしそうに額を掻く。
「早速行きましょう!」
「引っ張らないでも逃げないよ。ほら、着替え取りに行くから」
そして、大浴場に来た。
ここは部屋に風呂がついていない者用なのだが、女性は重要なポジションにいる為、個人の部屋を持っている。
だから実際は要らないかもしれないが、コミュニケーションの為だろう。
・・・何気にサウナやら牛乳の入った冷蔵庫が置いてあるのが粋だ。
がら。
「ところでシェリーちゃんはアキトとデートしてたけど二人は何してたの?」
「「秘密」」
声を重ねてアイとマリーは微笑した。
「・・・話してよ」
「女の子には秘密が多いものなんですよ、アキコさん」
「・・・そういうもんかな」
まさかアキトの監視をしていたとはいえない。
「そうですよ」
「・・・ま、いっか」
アキコは呟いてから服を脱ぎ始める。
「あ、アキコさん。ルリから聞いてたんですけどその傷・・・」
シェリーはアキコの傷、胴を中心に付いているおびただしい傷を見た。
「ああ、大丈夫」
アキコは小さい笑みを浮かべながら言葉を継いだ。
「今はこの傷があっても辛くないよ。
コウタロウが、皆がいれば気にならないよ」
「・・・・・相変わらず強いですね」
シェリーはその言葉に少し困ったように眉をひそめた。
「いや、コウタロウが来てくれなかった時は少し辛かったよ。
・・・その時はアイちゃんしか居なかったから・・・・・・」
「・・・お姉ちゃん、私じゃ役不足だったの?」
目を潤ませてアキコの方を見つめるアイ。
それを見て、アキコは優しい瞳でアイのほうを見た。
「ううん。
アイちゃんが居なかったら俺は死んでたよ。
治療が出来たのはアイちゃんのお陰だし、コウタロウと再会できたのも皆が頑張ってくれたからだ。
・・・ぜんぜん役不足なんかじゃないよ」
アキコはアイの頭を優しく撫でる。
急に静まってしまった空間に、話の流れを変えようとしたシェリーの一言が響いた。
「・・・・にしてもアキコさん。スタイルいいですよね」
「そ、そうかな?」
シェリーの視線はアキコのバストに向く。
「・・・85はありますね」
「お姉ちゃんは86あるよ」
「・・・・・測ったの?」
「うん。寝てる間にね」
・・・アイは「アイの日記」(サイドストーリー参照)に身体データまで記入していた。
「・・・アイちゃんにはかなわないなぁ・・・」
「・・・・・」
自分の胸とアキコの胸を見比べるシェリー。
・・・・ちなみにシェリーは78だ。
「・・・・・はぁ」
溜息をつくしかないようだ。
「・・・さて風呂風呂!」
誤魔化すようにアキコはアイの背中を押した。
がらっ。
「あ、アキコちゃん。珍しい」
「メグミさん」
風呂にはメグミ、ミナト、イツキ、ルリが居た。
「ナデシコに乗り込んでから初めてみたわよ」
「・・・ええ、見ての通りの体なのであまり見せられないんです」
「「「!」」」
アキコの傷だらけの体を見て、それを見たことのない3人は驚いた。
「こんな傷・・・どこで?」
「・・・言えないんです。むしろ言いたくないんです・・・・・・」
「ご、ごめんなさい」
イツキは罰が悪そうに俯いた。
「でも今日は大浴場に来たのね?」
「ええ、シェリーちゃんと積もる話もあるので」
「知り合いなの?」
「はい」
・・・どちらかと言えば家族関係だ。
「あ!そういえばアキコちゃんコウタロウ君と付き合ってるんだって?」
・・・某同盟がアキトの監視をしていた際に目撃してしまったらしい。・・・・・よせば良いのに。
「・・・・あー、まあ、はい」
・・・実際は付き合っているどころではなく、籍は入っていないが既婚者だ。
「デートしてきたんでしょう!?どうだった?」
メグミは興味深々という目をしていた。
「・・・えー・・・と」
何を話すといってもラーメン食べて服を見に行ったくらいだ。そんなに話すことはない。
「いいじゃないですかそこは伏せても」
(ナイス!ルリちゃん!)
「二人は婚約者なんですから」
ごちん!
アキコは石鹸無しで見事なスリップダウンを見せた。
(全然ナイスじゃない〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!)
・・・彼女はこれから来るであろう自分への質問を考えながら、少し痛む後頭部を抑えた。
「何!?ホント!?」
「本当ですよ。お二人はナデシコに乗る前に結婚してたとかしてないとかそういう話もあったんです」
「でも二人とも17くらいよね?ナデシコに乗る前は15・・・結婚できる年齢じゃないわよ?」
ミナトは冷静に突っ込んでみる。
だが、ルリはそれよりももっと冷静に、
「ええ、同棲していたそうです」
「「「えええええええ!」」」
・・・もはやアキコはダウンしたまま動こうとしない。
ルリの容赦ない冗談混じりの(事実だが)口撃に苦笑するしかない。
「・・・おね〜ちゃん、大丈夫だよね?」
アキコの体の頑丈さを知っているアイは駆け寄りこそすれ、心配している様子はあまり見えなかった。
「・・・・・大丈夫だけどルリちゃんを止めてくれ〜」
「・・・いくら私が実質一番年上だからってこれをどう止めろって言うの?」
まだ止まらないルリの話を聞きながらアイは呆れた。
「・・・う〜」
「アキコ、大丈夫?」
マリーは結構心配しているようだった。
「ルリちゃん、やめなさい」
「あ・・・はい」
シェリーがやっとルリを止めた。
(やっと終わるか・・・)
「今のは揺ぎ無い事実ですが、
アキコさんのプライベートの話です。あまり突っ込まないほうが・・・」
がくっ。
アキコは再び倒れた。
(シェリーちゃんも止める気はあっても否定する気はないんだね・・・)
・・・二人の言動にKO寸前のアキコ。
「・・・・確かにこれくらいにしておいたほうが良いわね」
「・・・・・でも事実なのよね?」
「「ええ、事実です」」
・・・息はぴったりだ。
「「「・・・・」」」
三人はアキコの方を向く。
アキコは死んだふりをした。
「・・・・アキコちゃんもいい加減腹を決めて話しなさい」
「・・・・強制ですか?」
「できればね」
「・・・・体洗ってから話します」
しゃああああ・・・・。
「二人ともあんなに話す事ないじゃないか」
「アキコさん、こっちにいる間ルリとアイちゃんに心配かけたお返しですよ」
「・・・ははは、そうだけどね・・・・・・」
ちゃぷん・・・。
「で。どういうことなの?」
ナデシコ内では良識人のカテゴリーに入るミナトでさえもアキコに迫る。
いや、むしろ良識人であるからこそ突っ込んでいるのだろう。
「・・・え〜と・・・」
アキコは自分の設定(笑)を思い出して必死に作り話を作る。
「・・・アイちゃんは俺の家の養子で、シェリーちゃんとマリーちゃんはコウタロウの家の養子じゃないですか?
・・・・お互いに似た境遇で育った上、家が近かったんで良く遊んだんです。
それで、うちの両親は良く家を空けたんでコウタロウの家には何度も世話になったんです」
「・・・それだけじゃ婚約だの結婚だのの話には発展しないわよ?」
痛い突っ込みを貰ってアキコはまた唸る。
「・・・・・その、単純にお互い好きだったんです。
俺が料理ができるのはコウタロウの家にお邪魔する代わりに夕食を作ったりしていたからですし、
片親のコウタロウの父親が「うむ、これなら家の嫁になれるな」とか言い出して冗談だったと思ったら、
真剣な顔して「息子を頼むぞ」とかいって旅に出ちゃったんです。
・・・そしたら自然にどちらかの家に泊り込んだりするようになっちゃって・・・・。
で、火星が襲われそうになったとき私が逃げる際にコウタロウ達も別コースで逃げたんですが、
お互い場所がわからないと思ってた矢先に再会したんでいっぺんに関係が進んだみたいな感じです」
・・・・自分でも何を言っているのか分かっていないのだろう。
少し混乱したような話をしたが、何となく理解してもらえたようだ。
・・・脇でシェリーとルリとアイは頭を抱えていたが。
(・・・そんなに変だったかな、今の作り話)
混乱していたわりにはよく言う。
「・・・へえ。苦労してるのね、あなた達って」
「え、ええ」
・・・こんな調子で大丈夫なのだろうか。
その頃。
「はぁ〜」
コウタロウは風呂から上がり、ジュースを買いに自販コーナーに向かっていた。
「お、コウタロウ」
そこにはシュン、カズシ、ナオが集結していた。
「どうした?」
「あ、ジュースを買いに」
「その服は今日買ってきたのか?」
「ええ、まあ」
コウタロウの服装は青の上下の半そで・半ズボンに白のパーカーを着込んでいた。
「似合ってるぜ」
ナオがからかうように微笑んだ。
「はは、どうも」
がこぉん・・・。
自販機が大きな音を立てて缶を落とす。火星ソーダだ。
「隊長〜今日は奢ってくれるんですよね?」
「・・・約束だからな」
「どうかしたんですか?」
「提督がな、ナオが将棋に勝ったら俺とナオに酒を奢ってくれるって言ったんだよ」
「コウタロウもどうだ?」
「え、遠慮しときます」
・・・実は彼は下戸だ。
以前、アキコと成人の祝いに飲んだ事があったが、一口飲んだだけで二人とも倒れてしまった。
「いーからこい!」
ぐいっ。
シュンは強引にコウタロウの腕を引っ張った。
「わわっ」
・・・最初から意見を聞く気はないようだ。
「・・・で、酌をして欲しかったわけですか」
「おお。出来れば綺麗なねーちゃんと行きたいとこだが、こんな中年に酒を注いでくれるクルーなんて居ないだろ?もう一杯頼む」
とくとくとく・・・。
「ほれ、お前も飲め!」
注がれた酒はコウタロウの前に突き出された。
「あ、あの俺、未成年ですので・・・」
逃げようとするコウタロウをナオがロックした。
「いいから飲めよ!」
(みんな出来上がっちゃてる〜!)
コウタロウがそう考えてる間に口の中に酒を押し込まれた。
ぐぃっ・・・ごきゅっ。
「きゅう」
コウタロウは倒れた。
「お?大丈夫か?」
ナオが起こそうとする。
だが、それをシュンが止めた。
「まあ待て。こういう時は様子を見ろよ」
「へ?何でです?」
カズシはよく分からないような顔をしていた。
「こういう風に下戸ですぐ倒れちまうヤツはな、大体すぐ起き上がって好きなやつの名前を叫んでから、そいつの元に向かうんだぜ」
「へ〜、流石隊長。悪酒では西欧一と呼ばれただけはある」
「まあな!」
・・・かなり酒癖が悪いということらしく、ふんぞり返るシュン。
「う〜」
するとコウタロウが立ち上がった。
「来るぞ来るぞ」
「アキト〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
「「「へっ?」」」
呆然とする三人を尻目にコウタロウは部屋から出て行った。
ぷしゅっ。
「な、なあ。あいつそういう趣味だったか?」
「さ、さあ。少なくともあっちではアキトも嫌な顔をしなかったですし・・・」
「・・・・・・恐るべし」
・・・責任をもはや放棄した三人組だった。
「アキト〜〜〜〜〜〜!」
・・・目をぎらつかせて廊下を疾走するコウタロウ。
彼はアキコの位置を正確に知っているようだった。
何故、分かるのか。
では、アイちゃんに説明を頼みましょう。
「はい!アイです!
久々の説明ですので気合を入れて説明したいと思います!
え〜何故、ユリカさん&コウタロウさんはお兄ちゃん&お姉ちゃんの位置が正確にわかるのでしょう、ということですが。
では、ユリカさんの行動からそれを割り出して見ましょう。
まず、ユリカさんはイネスが乗艦した際、イネスがアキトに接近した時に
「二人とも近づきすぎ!」
・・・と、超反応で止めました。
しかし、このシーンでも他のシーンでもそういう行動をとる時は暇でしょうが、四六時中見張っているわけではありません。
某同盟のデート監視のように特殊なケース以外ではそれはやっていないと思われます。
では、何故反応が出来るのか。
私は少しユリカさんを観察しました。
で、ある時、ユリカさんの髪の毛が一瞬、たった一本ですが毛が逆立ったのです。
さながら鬼太郎のごとく。
次の瞬間にはお兄ちゃんに通信を入れていました。
そこではメグミさんがお兄ちゃんに接近していたのです。
これらのことから私は一つの仮説にたどり着きました。
それは「T・Aレーダー」です。
ユリカさんにはお兄ちゃんの位置、そして異性が周囲30センチ程度に近づいた時をナデシコ内では感知できるのではないか、という仮説です。
もちろん、科学的根拠なんてこれっぽっちもありません。
しかし、ここはナデシコです。
普通のSFではありえない超常現象が起こりえます。
イズミさんの殺人的トークを皮切りに、超回復&超耐久力をもつヤマダさん、あの三人の料理など・・・。
解明できないものが多いのでこれも「ナデシコ七不思議」にいれてうやむやにしたいと思ってます(オイ)。
では、説明終わります」
はい、こちらナデシコ。
アキコを探すコウタロウはついにアキコを発見した。
さっき風呂に入っていたメンバーで歩いていた。
「!?」
コウタロウの形相に驚いたアキコは少し身構えた。
「あ〜き〜
ごすっ」
・・・とりあえず後ろから当身をかまして気絶させる。
「・・・何やってんだよ、コウタロウ」
「あ、アキコさん。そこまでしなくても・・・」
「大丈夫、コウタロウは男だろ?」
・・・何気に根拠のない自信を見せ、夫(爆)に一撃かました事に罪悪感を感じる様子もない。
まあ、今の叫びをしまいまで聞いていたら色々面倒な事になるかもしれない。
それは置いておいて、コウタロウの様子を見てみるアキコ。
「くんくん・・・酒臭いな・・・酔った勢いでこんな事になったのか」
「・・・お酒って、プロスさんが許さないんじゃないですか?」
「いや、今は休暇中だから別に酒盛りくらいやっててもおかしくないんじゃないか?」
「・・・う〜ん、見た感じ自分から飲んだとは思えませんけど・・・」
コウタロウは目を覚ます気配がない。というより、静かな寝息を立て始めている。
「・・・・お騒がせしました」
「・・・色々大変ね」
「・・・いえいえ」
コウタロウを担ぎ、アキコはコウタロウの部屋に向かった。
「ウリバタケさ〜ん・・・居ないなぁ・・・」
ウリバタケがそろそろ落ち着いたかと思い、シーラはウリバタケを探していた。
「私が徹夜して作ったロボット見て欲しかったのに・・・」
だが、ウリバタケはお仕置きの執行中で居ない。
お仕置きの執行人は・・・イネス・フレンサジュだ。
「あ、ウリバタケさんだ」
・・・謎の部屋から出てきたウリバタケは肩を落としていた。
「ウリバタケさ〜ん・・・あれ?」
そこに居たのは・・・誰だ?
翌日。
「え〜、ウリバタケ・セイヤさん、高杉三郎太さん、アオイ・ジュンさん、マキビ・ハリ君は、
クルーのプライバシーを侵害したとのことで、女性陣の与えた罰を受ける事になりました」
プロスが苦笑をしながら発表した。
「と言うわけで、これから一ヶ月この姿で生活する、食堂の手伝いをするとのことです」
そこには・・・18前後の少女となった3人と、7歳程度の幼女が・・・。
「・・・どういうわけだ?」
「・・・・・分からん」
「え〜某同盟のコメントによると、「注目されたりする側の気持ちを理解して欲しい」と言う事ですが・・・」
・・・・プロスの説明にわけがわからない面持ちの男性クルー達。
「・・・屈辱だ」
「ううう・・・情けない・・・死んでしまいたい・・・ルリさん」
「・・・これじゃナンパもろくに出来ん・・・」
「・・・・なんでこんな事に・・・・」
で、食堂の手伝い。それはウェートレスだった。
普段はホウメイガールズ&アキトで料理を運んでいる。
・・・それをいちいち罰ゲームでやらなくてもいい気がしないでもないが。
まあ、居て困るわけではないのでやらされている。
「・・・」
こんっ。
やや力任せにウリバタケは料理をテーブルに置いた。
「ほほ〜なかなかいい感じになっちゃいましたねウリバタケさんも」
「髪が短いヤンキー女な三郎太も・・・グッツ!」
「ジュンとハーリーなんか元に戻らなくても良いよな」
・・・整備班から凄い反応が出ている。
ぱしゃっ。
「写真とってんじゃねーよ!」
「班長、その格好で怒っても迫力がありませんよ」
「・・・はぁ〜」
ウリバタケは諦めたように厨房に戻っていった。
(・・・なんかアキコの気持ちが分かった気がするぜ・・)
ああ、全くそのとおりだ。
ヤツも本当は男なのだからな。
「あらら〜ウリバタケさん可愛いですね〜」
「・・・どっちかって言うとチーフって感じじゃない?」
食事をとっていたシーラとレイナが話していた。
「そうですか?肌のつやが十代ですよ?」
「・・・なんでそこまで分かるの?」
「ほれはれふねえ」
「・・・のみこんでから話しなさいよ」
口に食べ物を含んでいるときは話してはいけません。
「・・・んぐっ。・・・・勘です」
「・・・まんまね」
すると、近くにウリバタケが通りかかった。
「あ、ウリバタケさん。あのロボットの件なんですが・・・」
「・・・すまね、休暇が終わってからにしてくれないか?」
「あー・・・はい」
ウリバタケは黄昏ながら料理を運びつづけるのだった。
「今日はどうするか」
「う〜ん」
アキコとコウタロウは一段落した食堂で話し合っていた。
「・・・髪の毛が伸びちゃったから切りに行こうかな」
「え?見た感じ伸びてないけど」
「違うよ、ここ、ここ」
コウタロウは頭をぽんぽんと叩いた。
「・・・ああ!なるほど」
ウィッグの下の長髪が夫婦の営み(笑)をする時見ている長さは、いい加減切った方が良いかもしれない長さである事を思い出した。
「・・俺もいい加減うっとおしいんだよな」
癖毛のアキトは髪がぼさぼさ・・・とは言わないが、流れが入り乱れている。
髪が伸びたのは火星の後継者の残党を追っていたあたりからだった。
「でも切りに行くのか?プロスさんに頼めば良いじゃないか」
そう、ナデシコの理容を担当しているのはプロスなのだ。
・・・本当に何が本職なのかわからない男だ。
「今は休暇中だし、アキコはいいかもしれないけど俺は皆に髪を下ろした姿を見せられないよ」
「・・・おおぅ」
アキコは手をポンと叩いた。
・・・・すっかり忘れていたらしい。他人の空似では済まない。
ただでさえプロスにはシェリーの時から勘ぐられているのだ。
もし、正体がばれるような事になると戦況に関わる・・・のかもしれない。
「それにシェリーちゃんも切った方が良いでしょ?マシンチャイルドだって事ばれちゃったんだし」
「・・・・・そういえばそうだな。
でもマリーはどうする?ルリちゃんとラピスに任せておくか?」
「んー・・それがいいかもね」
・・・アキトに任せるとアキトが危険だからである。
「・・・でもコウタロウさんと別行動で良いんですか?」
「へ?何が?」
二人は理容室に来ていた。
とりあえずシャンプーを終えて頭を拭いてもらっている。
「昨日はウリバタケさん達に追跡されたんでしょう?」
「・・・ウリバタケさんがあんな目に会ってるんだ。誰も追跡なんてしないよ」
「・・・まあ、そうですね」
納得したのか、シェリーは口を閉ざした。
「ん〜。どういう髪型が良いかな」
コウタロウは美容院よりも髪型の選考に戸惑っていた。
「ジュン君カットで良いかな?」
・・・何か不幸がつきまとわりそうでならないのだが。
「・・・今までの髪型(ウィッグ)から急に変えないほうが良いよね。うん!」
コウタロウは目に入った美容院に入った。
残されたマリー視点。
・・・・・・・・・。
アキトが私を置いて出かけてしまった。
アキトは私が要らないのだろうか。
五感が戻ってユリカに会ってアキトが嬉しいと思ってくれるのはいい。
でも私は不安。
アキトは私を嫌いにはなっていないだろう。
けど、好きでもない、必要でもないなら同じ。
・・・・私は何をすれば良いんだろう。
「・・・ねえ、ルリ」
「なんですか?マリー」
・・・・・私の傍にはルリとラピスとハーリーが居る。そしてここは自販コーナー。
アキトと同じ世界から来たラピスである私。
違う世界から来たラピスであるこの子。
・・・でも。
どこか違う。
私はアキトを求めないと不安。
そこに居るラピスは明るく振舞う。
・・・・何が違うんだろう?
「・・・・私、アキトが居ないことが当然なんて思った事がない。
私はアキトとリンクが繋がっていないし、私はアキトを追ってここまで来た。
・・・・だからラピスみたいに明るくなれない・・・・・」
・・・私は明るくない。
アキトの明るさが無いと、太陽を無くした月のように見えなくなってしまうに違いない。
「・・・マリー。今は慣れればいいんですよ」
「・・・慣れる?」
・・・慣れ。
良く分からない・・・。
意味は分かる。
「アキトさんもアキコさんも環境になじむ事を望んでいると思います。
一緒に遊んだり、仕事をしたりする事に慣れていけば良いんです」
・・・アキトはそれを望んでいる?
・・・・私が慣れる事を?
・・・・・・う〜ん。
「・・・うん、やってみる」
・・・こういうくらいしか出来ない。
「ね、マリー」
ラピス・・・私は今はマリー。
ラピスがしている事を私もすればアキトは喜ぶの?
・・・なんだろう?
「一緒に見よう」
何を見るの?
「アキトが見た事のある『ゲキガンガー』を」
アキトが見ていた?
アキトはそれが好きだった?
それがアキトの気持ちを分かるための第一歩になるの?
私はそれについて行こうとした。
「「それはやめて!!」」
・・・ルリ、ハーリー。耳が痛くなるよ。
「え?何で?」
・・・私もよく分からない。
「え・・・とその!だから・・・」
「・・・ゲキガンガーが悪いとは言いませんが、女の子の見るものではありません」
・・・そうなの?
「ぶー!面白いのに!」
・・・どうなんだろう?
「あれ?なにやってるの?」
白髪の・・・シーラっていったかな?
「あ、シーラさん。実はゲキガンガーは女の子の見るものかどうかを話してたんですよ」
「・・・別に良いんじゃない?」
「「へ?」」
「格好いいと思うなら男も女も関係なし。
見てつまらないなら見なければ良いし、面白ければ見れば良いでしょ?」
「・・・正論ですが」
「なんなら私の人生のバイブルとも言える「スクライド」をー」
「やめてください!」
・・・煩い、ハーリー。
「え?何かまずいことでもあった?」
「いえ、少しラピスには辛いんですよ・・・ちょっと」
・・・どう辛いの?
「でも百年以上前のアニメなのに内容がわかるの?
ハーリー君って見かけに寄らず・・・歳に似合わず結構詳しいね。
ていうより踏み込みすぎ?オタク思考?」
「うわああああぁぁぁん・・・・・・」
だだだだだだだ・・・・。
・・・ハーリーが逃げた。
「・・・キツイですね、シーラさん」
「ふっ。オタクをも乗り越えて実際にアニメの技すら操る私だからこそ言えるのよ」
「・・・・そういうもんですか?」
「人生がアニメチックだからね」
・・・どんな人生?それ。
「まあ、そんな話は置いておいて・・・女の子同士になったところで聞くけど、どんなのがいいの?」
「そうですね・・・出来るだけ分かりやすい、暴力がないのがいいんですけど」
「え〜?難しいんじゃない、暴力無しって」
「・・・結構大変ですか?」
「ううん。一つ良さそうなのがあるよ。
ルリちゃんも見てごらん。多分、好みだと思うよ」
そう言ってシーラは自分の部屋に案内した。
パソコンとベットと棚しかない殺風景な部屋。
「・・・と、これこれ。「赤ちゃんと僕」」
「・・・どんな話ですか?」
「母親を無くした兄(11)が弟(2)と一緒に微妙な年齢の中で精神的に成長する話」
「・・・微妙にハードじゃないですか?」
「そう?ルリちゃん達はこれくらいの年頃でしょう?
それに、今私達が置かれている状況の方がハードだと思うんだけど」
「・・・まあそうですけど。じゃ、借りますよ?」
「うん。休暇が終わる前に返してね」
それで私達は部屋から出た。
途中でアイに会った。
「あら、ルリお姉ちゃん。何してるの?」
「はい。少しマリーにどういう風に人と接したら良いのかをアニメで知ってもらおうと」
「へー。ちなみにどんな話?」
「母親を無くした兄(11)が弟(2)と一緒に微妙な年齢の中で精神的に成長するお話だそうです」
「私も暇してるから一緒に見ていい?」
「いいですよ」
「医務室に来る?ジュースもあるし」
「・・・じゃあお邪魔しちゃいます」
・・・アイってイネスなんだよね?
「・・・さて、どうしよう」
シーラは唸っていた。
ルリ達が部屋をでた後、シーラはウリバタケに見せるロボットの改良をしようと考えていた。
「ミサイルもドリルも自爆装置も全部つけたし・・・。
男のロマンとして名高いロケットパンチ(有線)・・・。太ももからは缶のお茶が出せる・・。
何より、この顔と表情の多さがポイントだけど・・」
色々マニアックな燃え機能を搭載しているらしい。
ちなみに・・・萌え機能は少ないらしい・・・(笑)。
「よしッ!目からビームだ!」
・・・何でこうマニアックかな。
『うさちゃんねんねしてるのー。おっきするのー』
『実・・・・もう起きないんだよ・・・』
モニターには死んだウサギとそれを見て涙する兄の姿がー。
『うさちゃ〜ん・・・』
弟も泣き出す。
「うえっ・・・うっ・・・」
「わぁ〜ん・・・」
「ひっく・・・」
「・・・・」
(・・・涙?)
その部屋にいた4人は泣いていた。
マリーは自分が知らず知らずのうちに涙を流している事に気が付いた。
(・・・何でだろう、悲しい・・・アキトが居なくなったときとは違った・・・寂しさが・・・)
・・・その後も、アキトのように無意識下で女二人をはべらせ、優しさを見せてしまう弟に笑ったり、涙したりして4人は一日を過ごしてしまった。
「・・・シーラさん、ありがとうございました。凄い感動しました」
「よかったでしょ。私も初めてみたときは涙ぼろんぼろんでさ」
シーラはルリからディスクを受け取る。
「・・・アニメも捨てたもんじゃないでしょ?」
「・・・・・はい。また、見せてくださいね」
「うん、気が向いたらおいで」
マリーに教えるつもりが、自分に教えられたような気になったルリだった。
まだ真っ赤な顔だが、自室に戻ろうとするルリ。
「あ、ルリちゃん」
「ア、アキトさん」
「どうしたの?」
泣き顔であるため、何かあったのかと思ってしまったらしい。
「いえ、なんでもないんです・・・」
「そ、そう?」
二人は言葉を失った。
次の言葉が見つからないらしい。
数刻が立ちー。
「で、ではこれで」
「う、うん」
気まずそうに二人はわかれて行った。
(・・・アキトは私がああいう風になったら喜ぶの?)
マリーは自室で悩んでいた。
ちなみに、シェリーと同室である。
(・・・私は、どうしたらアキトの一番になれるの?
・・・・・二人とも五感が戻ってサポートは要らない。
じゃあ、私はどうしたら良いの?)
マリーはまだ自分がどうしたら良いのか分かっていないらしい。
きゅるるる〜。
(・・・こういう事を考えててもお腹は減る。何か食べに行こう)
マリーは部屋から出た。
ぷしゅっ。
「あ、マリー」
「・・・アキト」
部屋を出るとアキトが居た。
「アキト、私って要らないの?」
「え?」
突然の質問にアキトは困惑する。
「要らないって?マリーが要らないわけ無いじゃないか」
「・・・でも、こっちのアキト・・・アキコは私が居なくても大丈夫になった。
私は誰にも必要じゃない。私が死んだって誰も困らない。
・・・・・・だから要らないんじゃないかって」
アキトは少し悲しそうな顔をしていた。
(・・・コウタロウもアキコもあまり構ってあげてないのか?
いや、コウタロウは少なくともここに来るまで構ってたよな。
ラピスはハーリー君がアニメを見せてくれたから何とかなったけど・・・。
まあ、そっちも不本意だといえば不本意だ。
・・・ああいう風になると色々大変だしなぁ・・・)
「そんな事無いさ。マリーはアキコの家族だろ?」
「・・・うん」
マリーは頷いた。
アキトは少し複雑ながら、話を続けた。
「家族って言うのは一緒に居るだけで安心できるし、必要なんだ。
自分が居ないと生きていけない人ができるような状況になる必要はないよ。
・・・アキコもマリーが居なくなったら困るよ。マリーもアキコが居なくなったら困るだろ?
・・・それと同じさ」
「・・・うん、そうだね」
マリーは納得したらしい。
きゅるるる〜。
・・・再び、マリーの腹の音がなった。
「ははは、マリー。お腹すいたかい?」
「・・・うん」
恥ずかしそうに頷く。
(何だ、不安になったり恥ずかしそうにしてるじゃないか。大丈夫かもしれないな)
「じゃ、食堂に行こう。何か作ってあげるよ」
「!うん!」
嬉しそうに頷くマリー。
(・・・アキコにも言ってやらないとな)
食堂に向かいながらアキトはそう思った。
「・・・似合ってる?」
「はい、とても」
・・・二人は美容室から出てきた。
シェリーは以前と同じ、ツインテール。
アキコはセミロングにしたらしい。
「・・・でも、やっぱり違和感はあるね」
「こっちから見ると色気抜群ですよ」
「・・・色気を重視したわけじゃないんだけど」
アキコはその髪を指先でいじった。
そこに一人の男が通りかかった。
「おう、良いね君。少しお茶でもしない?」
「え」
・・・流石に声をかけられるとは思わなかったのだろう。
その男は金髪でロンゲの、古臭いかもしれないよくいるナンパ男だった。
あ、三郎太に似てるけど、顔が顎下にヒゲを蓄えていてあまりもてそうではない事を追記しよう。
「いえ、結構です」
「おおうっ。その初々しさがそそるね〜。いいじゃないか」
・・・あくまでやめる気は見受けられない。
そこでシェリーに耳打ちした。
(ねえ、やっちゃっていいよね?)
(いいんじゃないですか?)
意見はまとまったらしい。
だが、そこに。
「アキコ〜!待った〜?」
「あ、コウタロウ」
いつもと変わらない髪形でコウタロウが現われた。
「お、連れのアンちゃんか。
なあ、このねーちゃんと茶をしても良いよな?」
・・・何と、こぶつきどころか恋人つきでもナンパをしようとするらしい。
よほどもてないのだろう。
「なっ!アキコは俺の恋人だよ」
「・・・何だ、やる気か?」
・・・やる気の問題ではない。
こういう男はもてるもてないの問題ではすまないだろう。
「どいてろ」
がすっ。
「くっ」
「コウタロウ!」
その柄の悪い男の一撃を受けて、コウタロウはダウンする。
「アキコは・・・渡さないぞ!」
立ち上がって男に反撃をした。
「そんなもん・・ぐはぁっ!」
ばきっ、ごっ。
避けようとした男の後頭部にアキコの飛びまわしげりがヒットした。
ついでにコウタロウの必死の正拳突きも何とかヒットした。
・・・・どさっ。
男はダウンして二度と立ち上がる事は無かった。
「・・・コウタロウ、助けてくれたのか?」
「え、うん」
「・・・ありがとう」
「・・・ううん」
「「・・・・・・・」」
二人は黙りこくってしまった。
(・・・なんか格好良かったな・・ユリカ)
(・・・私じゃアキトは護れないけど・・・出来る限りの事はしたいんだ・・・)
「じゃ、じゃあ帰ろっか」
「う、うん」
二人は振り返って帰ろうとした。
「あ、あれ?シェリーちゃんは?」
「帰っちゃったかな、はは」
・・・気を使って帰ってしまったらしい。
「ただいま〜と」
二人は格納庫から居住スペースに戻る。
「お、アキコにコウタロウ。戻ったか」
「アキト、ただいま」
二人は待っていたらしきアキトに遭遇した。
「二人とも少し話があるんだが。部屋に来てくれないか?」
「別に良いけど・・・コウタロウは?」
「別に用事はないよ」
「よし、来い」
三人はアキトの部屋に向かった。
「で、話って?」
「いや、実はな・・・・」
アキトは今日の出来事を話した。
「・・・・・そうなのか。マリーはそんな事を・・・済まない」
「謝らなくてもいい。俺だってラピスの事はハーリー君に任せっきりだったからな」
謝るアキコにアキトは言った。
「アキコ、マリーちゃんと遊んであげようよ」
「・・・まあ、そうだな。明日、どこか連れて行ってあげるか」
「話はこれだけだ」
「じゃ、俺達は行くぞ」
「またね」
ぷしゅっ。
アキコ達は部屋を出ていった。
「・・・・俺も少し考えておかないと。ルリちゃんもラピスも大切な家族だからな」
・・・某組織に引っかからない程度に考えておけ、アキト。
おまけ。
「っ・・・視線が痛てえ・・・」
ウリバタケは廊下で嘆息した。
昼食代わりのカップめんを買いに出ただけでもこれだ。
できるだけ人目につかないように自分の部屋に篭っていたのだが。
がこん。がこん。がこん。がこん。
カップめんが自販から音を立てて落ちてくる。
四つあるが、無論、他のメンバーの分である。
・・・じゃんけんで負けたらしい。
「はぁ〜・・・」
溜息をつくウリバタケ。
だが、同情するものは誰も居ない。
「買って来たぞ〜・・」
「「「はぁ〜〜〜」」」
中に入ると溜息をついている三人が・・・。
「・・・いただきます」
ずずずず〜。
「「「「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」」」」
そろって溜息をつく。
「・・・しかし注目される事がこんなに辛い事とはな・・・」
とウリバタケ。
「・・・次の手でも考えます?」
茶化すように三郎太。
「・・・またこういう目に会うのは御免だよ」
涙ながらにラーメンの麺を吹くジュン。
「・・・・・ルリさんに合わす顔が無いですよ・・・」
・・・ぐずりながら溜息をつくハーリー。
「・・・組織の解散をするか」
「!それは駄目ですよウリバタケさん!」
ウリバタケの一言にハーリーは怒鳴る。
「このままでは毒蛇を野に放ったままになってしまいます!」
「・・・そうだが、またこういう目に会ってみろ。貞操の危機だぞ、ジュン、ハーリー」
「「うっ」」
二人はたじろいだ。
幼いハーリーと童顔で女顔のジュンは確かに貞操の危険がある(笑)。
整備班の数人に襲われかかるほどである。
ぷしゅっ。
「やあ!元気かい?」
「アカツキ・・・貴様・・・」
そこにはアカツキが居た。
彼は、ネルガルの仕事でお仕置きを免除された。
「おっと。君達にあるものを私に来たのにそれは無いんじゃないか?」
「あるもの?」
「そうだ。これは報復を可能にするものだ」
すると、アカツキは子瓶を取り出した。
「これがなんだか分かるかい?」
「!それは!」
「そう。君達が飲まされた『一ヶ月限定乙女の劇薬』だ」
こう書くと乙女に飲ませる劇薬のようだが、要は一ヶ月で効力の切れる女性化の薬だ。
「どうやってそれを?」
「実はね。さっき仕事を終えて、古傷の左膝が痛むんで見てもらおうかと思ったんだ。
そしたら医務室でなにやらアニメに夢中になっててアイちゃんが気付かない。
だから何か復讐に使えそうなものを探したんだ。
それで見つけたのさ」
「ほほう・・・」
「これをTAに飲ませればそれなりの復讐になるはず」
「・・・失敗したら一生この格好で居ろとか言われるんじゃないか?」
三郎太の突っ込みが入るが・・。
「流石に一生を左右する事にはならない。それに、アキトが女になれば某同盟側にも有利になる。
あれほど執着されているんだ。女になればべたつかれる、目の前で服を脱がれる、風呂に誘われるなどなどされる事はある。
あっち側に有利な状況になればこちらへの報復も無くなる。
TA本人は理性を効かせないとアイツの命のほうが危険だからな。
それによるダメージも望めるし、何より、こちらに攻撃の矛先が向けられる確率を減らして攻撃が出来る。
・・・・そういう事だ」
「「「おおおおおお〜〜〜〜〜!」」」
・・・アキトに危機が迫る!
ついでにアキコの正体もばれる確率がアップ!
この危機をどう回避する!?
作者から一言。
・・・今回も休暇話でした。
1週間かかってこれかい!って突っ込んでいいです。
・・・意見をまとめるのが下手なんです俺。
マリーのラピスとは違うところをクローズアップしてみたんですが。
・・・・・どうでしょう?
・・・それに、
>二人は格納庫から居住スペースに戻る。
・・・入り口はここでよろしいでしょうか?
では次回へ。
代理人の感想
どうだったかなぁ・・・少なくともアキトが最初に入ったときは格納庫経由していたし、
格納庫が搬入口と直結しててもおかしいとは思いませんが。
それはともかく・・・・ツッコミ所がねぇ・・・。