アキト達は地球に帰還した。

これは、一時的な帰還とも言える。

だが、意味があることだ。

地球の和平の意思を固める事。

それが彼らの目的の一つである。

今はー。








第8話「エンドレス・ワルツ=武闘曲」









・・・ここはトレーニング室。

「うおおおおおお!」

『ははは〜♪ガイさん遅い遅い!』



がががががん!



「ぬが〜!」

『突っ込んできたら攻撃しやすいじゃないか』

シミュレーター内ではディオがガイを弄んでいた。

『ねえ、ディオ。ガイさんはもうギブアップさせた方がよくない?』

『やだよ〜まだシーラ姉に教えてもらった技、使い切ってないんだもんね』

そういうと、ディオは黄色のブローディアの胸部から何十本かのイミディエット・ナイフを取り出した。

『その機体の損傷でこれだけのナイフの数・・避けきれるかな?』



ばしゅっ。



「ぬおおおお!なめんなぁ〜〜〜!」

ガイは致命傷を避ける形でナイフを受けながら回避しようとした。

『甘いよ!デンドロバリスぷれーーーーす!』

・・・だが、無情にもディオはどこから持ってきたのか、デンドロバリスをガイのガンガーに叩きつけた。



・・・・ぷちっ。




『勝った・・・ヤマダ家の血統を根絶やしにした・・・』

『・・・その台詞ってシーラ姉からの受け売りだよね』

『もちろん』

・・・ダッシュ達はラピスの影響を受けているが、ディオはシーラに影響を受けているらしい。

『・・・・・・それより、今の攻撃でシミュレーター・・・凄い音がしたんだけど・・・』

『あ、大丈夫。普通なら脳震盪で気絶してるはずだけど、ガイさんなら普通に痛がってるだけさ』

・・・・・・根拠のない自信である。

「やっぱりディオならこれだよね」

・・・・シーラも変なところで自信つけてるし・・・。








『アキト兄〜!私達も連れてってよ!』

「・・・・駄目だ。俺とブローディアはセットじゃ絶対入れてくれないんだって。

そもそもお前達を人前に出したらその度説明が面倒だし・・・」

「それなら私がついてくわ、お兄ちゃん」

「・・・アイちゃん、気持ちは嬉しいんだけど二人を説得するのには逆効果だよ・・・」

アキトは苦笑した。

「・・・・・そもそも、俺じゃなくてアキコがルリちゃんの護衛をすればいいんじゃないか?」

「でもお姉ちゃんも一応ついて行くんでしょ?」

実は、アキト&アキコはルリに護衛を頼まれていた。

だが、先の二人の事もあったという理由で結局ついて行かされる事になった。

「・・・そうなんだけどやっぱりナデシコにはどっちか残ったほうが・・・・・・」

「・・・ナデシコはドックに停泊、特製エステはネルガル支社に隠してあるわよ。

休暇扱いなんだし・・・・・お兄ちゃん、腹を決めて行って来なさいよ」

「・・・はぁ。了解」

アキトはとぼとぼと歩いていった。

「私も準備しなきゃ」

アイも自室に戻る。

『う〜・・・やっぱり納得できない!』

『でも僕らはプログラムだし・・・ディア、諦めようよ』

『駄目!誰か頼れる人は・・・』

と、そこにシーラが通りかかった。

『あ!シーラ姉お願い、私達ピースランドに行きたいんだ!』

「え?アキトさんについて来たいの?」

『うんうん!』

その一言を聞いて、シーラは少し考え込んでからこう答えた。

「・・・一人だけなら何とかなると思う」

『え!本当!?』

「うん。セレスにちょっと体を借りてディアが操ればいいのよ」

『そんな事が出来るの?』

「・・・だってプログラムとしての完成度はディア達のほうが圧倒的に高いじゃない。プログラムを操るくらい簡単でしょう?」

『やった〜!』

『あの・・・僕は?』

「一人だけって言ったでしょう?」

『・・・(泣)』

「ディア!その代わり、あなたはアキトさんが誤解を受けないように「セレス」として振舞うのよ。くれぐれも、私から離れないように!」

『は〜い!』

こうしてディアは、セレスの体を借りてピースランドに向かう事になった。

「・・・・私もそろそろポイント稼いで置かないと」

・・・・何を企んでいる?

「あのジュンさん」

「うん?なんだい?」

「ナデシコの招待者の一人として呼ばれているんですよね?」

「あ、ああ」

「なら、このアタッシュケースを託します」

シーラは少し大きいケースをジュンに渡した。

「え?これはなんだい?」

「もし危険な状況に出会ったらこれを開いてください。

取り説が入ってますんで。心配なら自分の部屋だけであけてください」

「?ああ」

シーラはさっさと去ってしまった。

「・・・ジュンさんなら似合うよね。私に惚れてくれるかな・・・?」

・・・あくまで自分が惚れたのではなく惚れさせたいらしい。









・・・で、ルリが王(父親)と再会する。

「おお!ルリ、大きくなって!」

「はじめまして、父」

ルリは小さい礼をした。

「・・今まで苦労してきたのでしょう。大変でしたね」

「それほどでもないです、母。私には兄、そして姉といえる人が居ました。

ナデシコに乗っている間もお互い励ましあい、戦場を越えてこれたのもその人達のお陰です」

「・・・では後ろに居る人物が」

「はい。アキトさん、アキコさん。紹介をしてください」

「・・・テンカワ・アキト。ナデシコのコック兼パイロットをしているものです」

「テンリョウ・アキコ。パイロット兼コックです。アキトとは親戚の関係です」

おおおおおおお!

兵士から歓声が上がる。

アキトは「漆黒の戦神」の名で呼ばれる地球最強のエステバリスライダーとして誉れ高い。

・・・だが、アキコはそういうネームバリューがないせいか、あまり目立っていない。

「・・・そうですか。ではルリ、お二人とも少しお話があります。別室に来て下さい」

女王の方は王を差し置いて二人と話がしたいらしい。

・・・だが王は動じていない。

王の風格か?いや。

・・・・・・尻にしかれているらしい。

別室についた途端、王女は少し目を細めて話し始めた。

「明日のパーティの事なのですが・・・招待状も出していない人からも参加表明がありまして。

こちらも断る理由がありませんので全てお受けしました。・・・・ですが、あなた達の目的はそこにあるようですね」

その一言にルリは少し視線を落とした。

「・・・・・見破られてましたか」

「あなた達はどこか全てを悟った顔をしています。

・・・・・ルリ、あなたはまだ11なのでしょう?

確かにマシンチャイルドで頭がいいのは分かります。

けど、感受性に富んでいないという報告を聞いていた割には・・・・いえ、これはそこに居る二人の存在でかたがつきます。

・・・何故、そこまで落ち着き払っていられるのですか?」

「ナデシコは癖の強い艦ですから」

ルリは少し困ったような顔で答えた。

「・・・簡単な返事ね、ルリ。そういうからには本当なんでしょうけど・・・。

でも、あなたの顔からはそれ以外にまだ言う事はいくらでもある・・・そう見えますよ。

言って御覧なさい、ルリ。私はその一言がどんなに馬鹿げていても信じますよ」

王女のその一言にルリは後ろのアキト達を見た。

「・・・すいません、王女様。その問いには答えかねます。

・・・どうしても、というならお話しますが・・・」

アキトが口を開いた。

「何故、ですか?」

当然の返事、ルリが答えていけない事が何故アキトには分かるのか。

「・・・・・これは、ルリ姫が辛い目にあった事を・・・マシンチャイルドとして育てられた事よりも辛い事があったんです。

それは、俺、アキコ、そしてここには来ていない数人の人物も含めて言えることです。

・・・・・・これを聞いてしまったら後に引き返す事は出来ない、そう思ってください」

そのアキトの一言には大岩のような重さがあった。

(この私が・・・物怖じしている?)

王女はその重みに思わず、冷や汗を流した。

(それでも私はー)

王女は母親として、聞いておきたかった。

「・・・子に辛い事があったら聞くのが親の役目。

その話を聞いて身に危険が及んだとしても聞くのが親。聞かせてください」

「・・・では、お聞かせしましょう」

「いえ、アキトさん。母の御前です、私が話します」

ルリは憮然とした態度でそれを遮った。

「これは・・・ある男女のお話です」

彼女の心中は穏やかではなかった。

いくら母でもこれを聞かせていいものではないー。

母だから聞かせてはいけない、そう思っていた。

だが、アキトは王女の意思に任せた。

彼はこれ以上隠し通そうとするのは無理だと踏んでそうしたのだ。

「・・・幼馴染の二人は、成り行きで戦艦に乗る事になり、そこには私も居たわけです。機動戦艦ナデシコ、第一の歴史です」

「・・・第一?」

「聞いていてください。ナデシコの中で様々な事件に巻き込まれながら男女は成長、

その二人は結婚、私を養子として引き取りました」

「・・・え?な、何を言ってるの?」

「黙ってください、母。無礼だとは存じています」

「・・・・・分かりました、続けてください」

「・・・ですがその二人は新婚旅行の最中、シャトル事故に見せかけた誘拐事件に巻き込まれました。

私は悲しみました。

その三年後の事です。

二人は生きていました。

ただ・・・もっとも望まない形で。

男性のほうは五感を失い、女性のほうはある計画のために生きながら人柱にされてしまいました」

「・・・その計画とは・・・?」

「ヒサゴプラン・・ボソンジャンプと呼ばれる一種のワープ航法の為の計画でした。

・・・・・実を言うと、ここで既に木星蜥蜴との戦争は終わっていました。和平が成立したんです」

「和平・・?」

「木星蜥蜴は人間だったんです。そして、この戦争の目的はたった一人の男が報復の名を借りた、

ボソンジャンプの覇権争いだったんです」

「ちょ・・・ちょっと待って。報復の名を借りたというのは?」

「・・・木星蜥蜴、その正体は100年以上前に火星を追放された移住民。

・・・・・・しかし、その移住民は地球側の陰謀で核を使用した抹殺作戦に会い、運良く生き残った人々が、

木星に逃げ延び・・・報復のチャンスを待っていたわけです」

「・・・・それを利用した、と?」

「はい。話を戻しますが、男性のほうは女性を取り戻す為に血の滲むような修行の末、力を得、何とか女性を取り戻します・・。

しかし、男性はもう余命がありませんでした。

ヒサゴプランで人体実験を繰り返され体へのダメージは測り知れないものになっていました。

短い寿命では女性も私も幸せに出来ない、さらに男性は大きな代償を払っていたのです。

・・・コロニーの連続爆破犯。

これ自体はヒサゴプランの発覚を恐れた木星側の証拠隠滅で、女性を探していた男性が犯人に仕立て上げられてしまった訳です。

・・・・・・このまま私達の元に戻れば危害が及ぶ、そう思った男性は寿命を燃やし尽くそうと宇宙を漂いました。

私は男性を追いました。

・・・ですが、ボソンジャンプ・・・場所だけでなく、時間まで移動してしまうワープですから・・。

それの事故で、私達は精神だけどこかに飛ばされました。

これで第一は終了です」

「・・・・・そんなことが」

「第二の物語は、最後だけが違ったんです。

宇宙を漂っていた男の前に妙齢の女性が現われ、一つの薬を託しました。

それは、寿命を元に戻す薬でした。

ただ、それを飲むと女性になってしまいます。

その後、女性となった男性はボソンジャンプで過去に戻り、過去を変えることにしました。

・・・これが第二です」

「・・・まさか」

王女は二人のほうを見つめた。

「最後に、現在。

第三の歴史。

第一、第二の歴史は平行世界といって、もし、ここでこうしたら、というちょっとした歴史の分岐で分かれた、複数の世界です。

そこで、第一の私、男性。第二の男性が会ったわけです。

・・・で、第二の方の女性は、男性を追って来ました。

そして、女性の感情を理解した男性は復縁します。

これまでの経緯は以上です」

「・・・つまり、第一の男性はアキトさん、第二の男性はアキコさん、ということ?」

「信じられませんか?」

「・・・正直、信じられないわ。でも、あなたの言う事なんだから本当なんでしょう。

・・・・・・・・つまり、どういうこと?」

「私達はあの歴史を繰り返さないように・・・今の省略した物語の中ではかなりの人がなくなっています。

親しかった人、関係ない巻き込まれた人々・・・。

以前は地球側をほぼ無視する形でナデシコが和平に踏み切ってしまったのが原因でいざこざが起こってしまいました。

・・・今回は、それを避けたいというんです。

極東、西欧は和平に賛成してくれたんですが・・・南米、北米、アフリカはまだ和平に賛成してくれない。

少なくとも過半数の意見を揃えたいんです」

「・・・つまり、交渉をしたい・・・そういうことなのね」

「ええ、そうです。

・・・・・私は見た目11歳ですけど、もう17歳なんです。

ナデシコには第二から来た私、17歳の姿の私が居ます。

・・・・・・・・・以上が、私達のたどって来た軌跡です」

「・・・・本当に波乱万丈な人生ね」

王女は少し溜息をついた。

「・・・・・・いいでしょう、ルリ。

あなたはあなたの思うがままに動きなさい。

私はそれに協力します。

・・・・それと、アキトさん。少し来なさい」

手招きされアキトは王女の前に出た。

「目の前まで来なさい」

数歩前に出る。



・・・びしいっ。




渾身の力を込めたビンタを放った。

「・・・あなたはルリを幸せにする義務があります。

前回・・第一の歴史のようなことになれば、私はこの身を焦がしてでもあなたを殺しに行きますよ」

「・・・約束します。

俺が、自分の意志で居なくなる事はありません。

最後の最後で踏みとどまり、ルリ姫・・・いえ、ホシノ・ルリを幸せにすると、誓います」

「・・・あなたを信じましょう。

またボソンジャンプとやらで飛ばされたら・・・無理矢理でも帰ってこれるように努力してください。いいですね」

「はい」

その返事に満足したのか王女は笑顔を見せた。

「では、そのついでといってはなんですがルリと踊って欲しいのです。明日の舞踏会、ダンスくらいは踊れますか?」

「じ、自信はないです」

「はぁ・・・では簡単にレッスンを受けてください。格好が付く程度でいいですから。

人を呼んでおきます、一時間ほどで済むでしょう。

・・・それとアキコさん」

「は、はい」

「あなたは女性と再会したようですが、舞踏会に呼んでありますか?」

「いえ、流石にこんな時まで私情を挟むのは・・・」

その困ったような顔に王女は笑いながら、もう一言。

「ほほ、構いませんよ連れて来ても。

どちらにしてもあなたは舞踏会に出席しなければならないのですからドレスも選んでいただかないと。

・・・・・それに、レディのたしなみがなってませんよ」

「いえ、その・・失礼しました」

アキコはあの復讐着を着ていた。

・・・そもそも礼服なんて持っていないので、SPっぽくアキトも同じ服装である。

「それとも、タキシードでも着ますか?あなたの婿殿にはドレスでも着てもらって」

「あ、それ楽ですね」

「・・・・アキコさん、冗談なんですから本気にしないで下さい」

・・・いい加減、女性らしさを学べ。











・・・で、翌日。ドレス選び。

「・・・やっぱり着なきゃ駄目?」

「そりゃ・・・ねえルリちゃん」

「そうですよ。着て下さい」

今、アキコはドレスを選ばさせられている。

アキコは女性としての自分を認めたものの、やはりドレスを着ることには抵抗があった。

「・・・似合う?」

アキコが白いドレスを身に纏った。

その姿は・・・一言で言えば「聖女」だった。

整った顔立ち。

流れているセミロング。

引き締まった体。

いつも見える大きい意思の篭った瞳。

・・・どことなく、厳正な姿だった。

「・・・・?」

戸惑うアキコ。

二人が固まってしまっているのだ。

あまりにも似合いすぎて。

見惚れている。

「ルリちゃん?」

「あ、はい・・・(赤面)。綺麗です。凄く・・・」

「・・・そうなの?」

アキコは意外そうに呟く。

元々が男性なのだ、あまり信じられないのだろう。

アキトはアキトでーユリカを思い出していた。

昔、式を挙げていたあの時を。

「お待たせ!似合う?・・・あ」

「格好いいよ、コウタロウ」

いきなり出てきたコウタロウはタキシード姿であった。

コウタロウもアキコの綺麗さに見とれていた。

「・・・き、綺麗・・・」

「そ、そう?」









「よし、北斗、枝織。

シャクヤクは舞歌殿に預けた。

あとはこの連絡船を使ってクリムゾンとの共同戦線に入るぞ」

「・・・叔父よ、少し説明的だな」

「・・・・・こう言わんと理解せんだろが」

・・・北斗達は頭が悪いらしい。

「とにかくだ。テンカワ・アキトを横合いから思い切り殴りつけてやれ。

北斗、お前は基本的に拳の戦いでは枝織に半歩だけ譲る。

・・・気をつけろよ?」

「俺達を誰だと思ってる?」

「お父様とお母様よりも強いんだよ」

「分かってる・・・だが、テンリョウ・アキコも半端じゃない。

クリムゾンの戦闘記録によると、兄者を倒したイオリというものを一瞬で片付けたようだからな」

「・・・その女、何者だ?」

「・・・分からん。だがこれだけの戦闘力に目を付けていない軍が間抜けなだけかもしれんが」

「・・・ふん。とにかく倒せば良いんだろう?」

「まあ、そういう事だ。二人とも絶対俺を見失うな。

そんな事になったら和平を壊すんじゃなくて地球そのものを壊しかねないからな」

「「・・・分かってる」」

・・・・・方向音痴?

「チハヤ殿、ライザ殿・・。

テンカワ・アキトは俺達がやってしまうが・・・構わぬか?」

「ええ、私達じゃ手がつけられないもの」

「そうね。私達は私達の与えられた仕事をやるのみよ」

「・・・ならば。外道の弟の名にかけて、この北山、任務を完遂しようぞ」



どどどどどどど!




地球についた連絡船は森に突っ込み、故障した。

「・・・で、叔父。完遂できるのか?」

「・・・すまん、連絡船の操縦は初めてだった」













「高杉殿ですね」

「ああ、お迎えありがとう」

俺は舞歌殿の命令である程度和平の具体化が出来たので報告に来るように言われていた。

・・・それにしても優華部隊が来てくれてよかった。

もしこれが優人部隊だったりしたらナンパはないだろうが声をかけられるところだった。

それは避けたい。反吐が出ちまう。

「・・・しかし、報告では男の人ではなかったのですか?」

・・・痛いところを突かれた。

どっちにしても話さなければいけないだろうけどね。

「・・・いや、ナデシコに乗船してた時にちょっとした罰ゲームでこんな目に会ってるんだ。

・・・・・一応あと1週間で治る事にはなってるんだけど・・・」

あ、引いた。

・・・・罰ゲームっていっても信じてもらえないよな、この場合。敵艦に居たわけだし。

だが、説明もせずこのままおずおず帰ってみろ。

ナチュラルに風呂に入らないといけない上に、貞操観念に関しては18世紀の日本人並だ。男だったとばれたが最後、

石打の刑にあっても文句は言えめえ。

・・・・ぶっちゃけ、ばれなきゃそれもいいかと思った自分が居たんだがな。

「ま、まあいい。

それでこのまま帰還すればいいんだね?」

「いいえ、舞歌様からこの指令を受けています」

ん?装備もないのに何かまだ任務があるのか?

俺はその手紙を受け取った。

それにはこう書かれている。

『サブロウタ、ナデシコの調査、ご苦労。

・・・すまないがもう一つ、頼みたい事がある。

実は北山が影護姉妹を連れて行ったようだ。

・・・これは秘密なんだが、草壁中将が指示した事らしい。

木連も疲弊している。

草壁中将が何を考えているかは分からないが、木連そのものは和平の意思が多い。

和平に支障が出ないように・・・は無理かも知れん。

お前はしらんだろうがあの二人はテンカワ・アキト並の戦闘力があるそうだ。

木連の隠し手を無くす訳にも行かん。

とりあえず帰還させろ。

              舞歌」

・・・すんません。無理です。

ミッションインポッシブルなんてもんじゃねえ。

どっちかっていうとメン・イン・ブラックの任務だ。

・・・宇宙人と言ってもいいアキト&アキコの戦闘力から言って止めるのは不可能だ。

少なくとも保護してつれて来い・・・という事らしいが・・・。

・・・俺ははこの絶望的な作戦にまさに絶望した・・・。

「あ、あの。顔色悪いですよ?」

「あ・・・・ああ、ははは。大丈夫だ」

「その手紙にはなんと?」

「・・・漆黒の戦神に匹敵する実力を持つ二人を連れて来い、っていう指令だ。

味方だがどうやら反和平派らしい。任務でこっちに来ているそうだ。

・・・・それを連行なければいけないらしい」

・・・俺が喋り終えると後ろの女の子は固まった。

俺ももうやめたいよこんな仕事。

早いとこナデシコに安住したいもんだ。

・・・・チーム分けして乗り込もう。










三郎太、三姫ペア。

「・・・まあ、駄目もとで突入するよ?」

「しかし情けなかね、その格好」

「・・・三姫君、そりゃないんじゃない?君と僕の関係上」

・・・・二人は一時、婚約をしていた仲である。

何とか記憶の中からそれを引っ張り出した三郎太は、ノリで(オイ)ペアを組んで侵入する事になった。

「・・・ナデシコは冗談で人の性を変えちゃうんだよ」

「・・・・・・ここまで来ると笑えるたい」

三姫は苦笑しながら城に潜入し始めた。








京子、百華、零夜チーム。

「・・・いい、百華、零夜。私達は決して弱くはないわ。でも、地球側の実力者がどこにいるかなんて分からない。油断しないのよ」

「分かってる」

「北ちゃんも枝織ちゃんも連れて来なきゃいけないからね」

「・・・特に、零夜。あなただけよあの二人を説得できるのは。だから絶対に死んだり気絶したりしないでね」

「・・・分かった」






万葉、千紗、飛厘チーム。

「・・・万葉、間違いなくあの二人・・・正面から行くわ。

だから出来るだけスムーズに脱出させる事を考えましょう」

「・・・しかし千紗。私達はどうするべきなんだ?

あの二人の戦闘は止められんし・・・脱出経路の確保か?」

「・・・まあそれがメインでしょうね」





・・・それぞれの思いをのせて舞踏会は始まった。






「・・・しかし、ナデシコ側は華やかだな」

会場の来賓たちはそれぞれ溜息をついていた。

ナデシコ側の女性参加者はユリカ、アキコ、サラ、アリサ、ジュン(爆)。

ジュンは警護参加のはずだったのだが、その顔の美しさから急遽参加させられた。

警護に当たっているのはヤガミ兄弟、ゴート、プロス、シュン、カズシ、そしてなぜかシーラ&セレスINディア。

「・・・何で僕がこんな事に・・・・・」

ジュンは黄昏た表情でアタッシュケース片手に突っ立っていた。

そんな状況では誰も誘わないだろうと思っていたが、声をかけられた。

「お嬢さん、一緒に踊りませんか?」

「・・・僕は男ですぅ・・・」

「はは、ご冗談を」

「・・・・・女装させられてるんですよ、本当に・・」

「・・・何故?」

「・・・・・・僕も分かりません」

「・・・・・お大事に」

・・・気を使ってくれたのか、男性は離れていった。

「うう・・緊張する〜」

「アキコ、リラックスリラックス」

「だ、だって俺、女らしくないし・・・」

「大丈夫だよ、少なくとも見た目で誤魔化せるよ」

「・・・う〜」

真っ赤な顔で舞踏をするアキコの顔はとても初々しかった。

「ルリちゃん、少し背があわないね」

「・・・シェリーさんならあうんですけどね」

アキトはルリと舞踏していた。

二人は王妃の機嫌を損ねないようにあえて踊っている。

・・・ルリはご満悦だが。



ばこんっ。



そこに・・・横槍を入れるように壁が破壊され・・・赤毛の女性が二人立ちはだかっていた。

「あいつだ・・・」

「うん・・・」

即座に警備兵が現れた・・・が。




ばしゅっ!

どこっ。

ぼすっ。




一瞬にして倒された。

「テンカワ・アキト!

貴様を倒しに来た!

俺の名は北斗!・・・北辰の愚息!」

「同じく、枝織だよ♪」

対照的な・・・しかし見た目はそっくりな少女が立っていた。

「な、なんだ!?」

「北辰の・・・娘?コウタロウ、少し下がってて」




ばっ。




アキコは高く飛び、白いドレスを脱ぎさった。

その下はアンダースーツである。

その場にいた婦人たちはその姿をはしたないと零そうとしたが、傷だらけのその体を見て凍りついた。

「・・・親父を倒した男を倒したテンリョウ・アキコ、少し相手をしてもらおうか」

「・・・・・北辰の仇討ちか?」

「いや、親父は生きているらしい。俺も実際に姿を見たわけではないがな」

「・・・・・・どういうマジックかは知らないが、それは残念だ」

「だが仕返しぐらいはしてやろう。お前に興味もあるしな」

北斗はその体に似つかわしくないどっしりとした構えを取った。

「・・・・・いくぞ」

「・・・・・・!」

そして・・・アキトも。

(殺気が無い・・・!?)

「テンカワ・アキト・・・アー君でいいね♪」

「何故俺を狙う?」

「草壁おじさんからの命令だし、アー君が強いから一緒に遊びたくなっただけだよ♪」

「・・遊ぶ!?」

「うん。アー君が私に勝てないと死んじゃうかもしれないけどね♪」

(!)

アキトは枝織の思考に戦慄した。

どんな優れた殺し屋でも殺気を持たずに殺すことは不可能だ。

彼女は本当に遊ぶぐらいの感覚でしかないのだ。

枝織の技術はーアキトと並ぶほどだろう。

「・・・枝織ちゃん?人を殺すことはいけないことだよ?」

「アー君が強ければいいんだよ♪噂が眉唾じゃなければ死なないですむだろうけどね」

「仕方ない。少し手荒くなるけど・・・教えてあげるよ」

アキトは構える。

枝織は本気だ。










「くそっ・・・どうなってるんだ?」

ジュンは走っていた。

・・・・ドレス姿のまま。

少し会場から離れ、テラスで休んでいる隙に大きな音がしたからだ。

「シーラちゃんに渡されたケース・・・開けてみるか」



かぱっ。



ケースを開くと、8つの玉が入っていた。

「これは・・・緑色の玉?」

挟んであった紙を読んでみる。

『えーと、これを見ているという事は結構ピンチですね。

手早く説明するとこれは小型ディストーションフィールド発生装置です。

ただ、人体に影響がある程度ではなく、せいぜい痛みを与える程度ですので悪しからず。

腕輪を装着する事によってIFSを使用した操作が行えます。

その場合、相手にぶつける、もしくは自分の身を護るなどがメインとなります。

起動方法は「エタニティーエイトッ!」と叫んでくれれば勝手にスイッチが入ってくれます。

ある程度技があって「円」と叫べばバズーカでもラピッドライフルでもガードできます。

「矢」と叫べば戦車くらいなら簡単に貫通できます。

「包囲」と叫べば自分の攻撃目標を囲んでくれます。

「飛」と叫べば上に乗って飛ぶ事が出来ます。

基本的に小型相転移エンジンを搭載しているので燃料切れの心配はありません。健闘を祈ります』

「・・・結構凄いな、これ。僕の力不足をサポートしてくれるなんてありがたい。・・・・・・エタニティーエイト!「飛」!」



ぶおっ。



「おおっ、早い!」

ジュンは時速40キロくらいで城の方向に進んだ。

だが、そこにはチハヤの姿があった。

「何をしてるんだ!?」

「くそっ!見つかった!?」

チハヤは爆弾を仕掛けようとしていたところであった。

「それは・・・爆弾?何故君のような女の子が・・・」

「・・・お前だって女だろう!」

「僕は男だ。・・・訳ありでこんな格好をしているだけなんだよ」

「・・・・・・どの道この爆弾は放っておいてもあと10分で爆発するわ。ここに居ればあなたは死ぬわよ?」

「じゃあ何で君は逃げない?僕が爆弾の解体ができるとでも?」

ジュンの問いにチハヤは溜息をつきながら答えた。

「・・・・・・復讐をしたいのよ、私が殺すはずだった兄を殺したテンカワ・アキトに。

残り10分、独演会をしてあげましょう」















「・・・チハヤ、うまくやってよ」

ライザは自らも爆弾を仕掛けるために走っていた。

どちらにしても会場はパニックだ、爆弾を仕掛ける事はそう難しくない。

「シーラ姉〜アキトに会いたいよ〜」

「我慢我慢。少なくともダンスが終わって戻ってきてから」

「・・・クソッ、人が居たのか!」

たまたま警備をしていた二人に遭遇しそうになって身を隠すライザ。

「・・・・・?あの辺からちょっと物音がしたから見てきて」

「は〜い」

(・・・出た瞬間に撃ってやる!)



ぱんっ。




「・・・へ?」

「ディア・・・お腹」

ディアのボディには小さい穴があいていた。

「・・・・・あ、穴が」

「・・・・何してんの・・・あんたは一体なにがしたいのっ!?」

シーラはシェルブリットを装着して臨戦体勢に入った。

「・・・何がしたい?私を縛るものを全て無くす為よ」








その頃ー。

イオリは自分勝手にクリムゾンの戦闘員を蹴散らしていた。

「・・・ふん、雑魚がぞろぞろといるな。死にたくなければそこをどけっ!」



ぼぅっ!



「きゃあっ!」

「・・・・・女か。退いていろ。ここは貴様のようなか弱い女が居るような場所ではない」

「な、何なのその炎は・・・」

「邪魔だ、退け」

イオリはずんずんと通り過ぎていった。

「・・・・・意外にフェミニストな人なのね」

そこに居たのは優華部隊の隊員であった。

「京子!大丈夫?」

「ええ、大丈夫よ。・・・・・百華、ちょっと後ろ向いてみて」

「・・・へ?」

・・・・後ろにはエタニティーエイトでチハヤと対峙するジュンが居た。

「・・・私の腹違いの兄・・・テツヤは、テンカワ・アキトに殺された」

「テンカワが?」

意外そうにジュンは聞き返す。

「そんなに意外?あれだけの戦闘力をもつ男なのよ、人の一人殺している位ありそうじゃない」

「・・・もしそれが本当でもよほどの事のしたんだろう?」

「ええ、兄は・・・人でなしだから。

・・・私の父が兄を裏切ったから・・・私は報復を受けたのよ。

全てを奪われた、だから殺したかった!

それを・・・私の復讐を不可能にしたあのテンカワ・アキトだけは!」

「・・・君は、そんな人生を・・・・・・」

「さあ、どうする気?私に黙って撃たれる?」

「円!」

エタティーエイトが円形を作り、防御の姿勢をとる。

「・・・君は僕を殺せない」

「・・・・・その玉、ただの玩具じゃないようね」

「シーラちゃん特製の護身用具さ、銃弾ぐらいなら防げる」

「シーラ・・・?シーラ・カシス?」

「な・・・何故君がその名を?」

チハヤは聞いた事があった。

シーラ・カシスという優秀な開発者がクリムゾンに居た。

今はネルガルに居るー彼女はクリムゾンの開発主任の娘だと。

「ふふ・・・あなたは何も知らないようね」

「・・・・・別に知ろうとは思わない。君もそんな復讐なんてやめないか」

「復讐をやめる?面白い事を言うのね。私は兄に全てを奪われたって・・・言ったでしょう?」

「だからってテンカワを殺す事にはならない!お門違いもいいところだ!」

「・・・馬鹿げているのは知っているわ。でも私は捨てきれないのよ。

兄の・・・あの男の・・・醜い笑顔が毎夜、夢に出てくるのよ?

「お前は俺を殺し損ねた。憎いだろう?悔しいだろう?」って。

そんなの耐えられるわけないじゃない。

なら・・・私が出来るのは・・・」

「・・・僕は君が奪われたものを取り戻そうとしないで復讐に生きるのは間違いだと思う。

単純にテンカワの事を案じているからじゃない。・・・アイツは憎いさ」

「なら私に殺させてくれてもいいんじゃない?」

「・・・・・・でも本当に「いい奴」なんだ。

ユリカを奪われた・・・いや、最初から僕は眼中になかったんだろう。

そんなアイツでも・・・・・アイツは誰にも力を誇示しようとしたりしない。

・・・誰よりも強く、誰よりも真実を知っているアイツは・・・死なせたくないさ」

「・・・・・・あなたのような人が父なら私は・・・こんな事をしなくてよかったのかもね」












「とりあえず名を名乗れ!てめえは何もんだ!」

シーラは臨戦体制の中、カズマならどうするかを考えた。

自分をカズマに重ねて相手と対峙しなければ、自分の弱い心では折れてしまう。

・・・彼女はそうしなければ戦えない。

「私はライザ。ある男に拾われ、騙されつづけた女よ」

「・・・な!?」

シーラはその返事に一瞬ひるんでしまった。

もし、自分がそういう目にあっていたらどうだろうと思ってしまったのだ。

自分が愛した人と真逆なのかと思いながら。

「そ、それが今の状況と何の関係がある!」

「・・・私は、その男の仇を討つつもりじゃないけど・・。

その男のせいで生きるのも死ぬのも出来ないの。だからここで死ぬ」

シーラはどんどん自分の心がカズマから離れていくことを感じた。

(この人・・・私と同じ・・・?)

「・・・死んでどうするの?死は終わり。生きていれば愛する人も探せる。

騙されても明日は存在する、生きていく術を探す事だって出来る。あなたは死ぬ事で楽になろうとしているの?」

「・・・そうね。この爆弾、あと10分で爆発する。ここで話を聞いていたら死ぬわよ?」

「私にはこの「シェルブリット」がある。逃げる事だってそんなに難しくないわ」

「・・・・・その白髪・・・白髪?クリムゾンの開発主任には白髪の子供が居るって聞いたわね。まさか・・・」

「・・・多分、予想の通り。私はシーラ・カシス。

・・・・・・あなたは私に似てる。

私は父親に殺されそうになって逃げた。

・・・その後、優しい男性に拾われた。

結局、父親にその人は殺された・・・。

その人、死に際になんていったと思う?」

「・・・何?」

「・・・「ありがとう」の言葉と愛の告白・・・場違いもいいところでしょう?

でも、それに縛られないで欲しいと、自分の代わりに幸せにしてくれる人を探せって言ってくれたのよ。

・・・・・・だから私は後を追うのをやめた。

生きていれば、何でも出来るの。

だから、私は生きる。その人の為に生きる」

「・・・素敵な男性なのね。テツヤじゃなくてその人に出会えたら私は・・・」

「今からでも遅くないよ、ライザさん。一緒に明日を生きようよ」

「・・・・・嬉しいわ、シーラちゃん」

ぽろぽろと少女のように涙を流すライザ。

自分のもう一つの可能性ーそれを垣間見て、自分も立ち上がってみたくなった。

「・・・・・・でも遅いのよ。私、もうこんな汚れた体じゃ・・・誰も抱きしめられないよ・・・」

「私だって、クリムゾンの研究員を殺しちゃったから・・・綺麗じゃないよ・・・」

「・・・そう、あなた強いのね。そんなあなたとなら・・・明日を生きていけるかもしれないけど・・・」

「なんでそこまで頑なに拒否するんですか!?」

「・・・裏を知りすぎた私は・・・・・・誰にも護れないのよ・・・」

「・・・・・・ライザさん」

「さあ、あなたは死ぬわけには行かないわ。行きなさい」

「ごめんなさい」



ーどむっ。




シーラはライザを殴りつけた。

腹部を、それもシェルブリットで。

「・・・あなたは生きていて良いんですよ。一緒にナデシコで生き延びましょう」

「・・・シーラ姉」

「ディア、ライザさんを担いで。私はこの爆弾を出来るだけ遠くに投げ飛ばすから」

「・・・うまく生きてね」

「・・・分かってるよ。ライザさんに生きてて欲しいもん」











「・・・チハヤ」

「・・・私は、兄を殺す事が生きる目的だったのよ?それ以外に何をすればいいの?

・・・・・だったらテンカワ・アキトに復讐しながら死ぬしかないじゃない」

「・・・・・ごめん、僕は君に僕の理論を押し付けているだけなんだろう。

でも言わせて貰う。

・・・・・・そんな生き方、寂しすぎるじゃないか・・・」

「・・・寂しいわよ。なら死んでしまったほうが楽よ」

「そうじゃない!君は兄と同じじゃないか!」

「わ、私が?」

叫んだジュンの気迫に驚くチハヤ。

「君は・・・復讐をしようとしているんだ。

君のしている事は・・・テンカワの幸せを奪う事だ。

・・・・・・第二の君を作り出す事にしかならない」

チハヤはハッと自らの立場を客観的に振り返ってみた。

確かに復讐というほどの復讐にはならないし、自分のやろうとしている事はテツヤと同じだ。

「・・・・・なら、私はどうすれば?」

「・・・無理な頼みかもしれないけど、少なくともアキトから手を引いてくれ」

「・・・・・でも今回の作戦が失敗したら私は殺される」

「ならナデシコに来てもいい。考えるだけの時間は作れると思う」

「・・・そうだけど。もう1分を切ってるのよ?」

「・・・ここまできたら逃げるしかないか。

作戦が失敗するにしてもしないにしても。

・・・ここで死ぬ事はないだろ?」

「・・・・・もう少しだけ、あなたに付き合ってあげるわ」

「ありがとう」

二人は走り出した。

すると、途中でチハヤが話し掛けた。

「少し賭けをしない?」

「賭けって?」

「あの爆弾が爆発して城を吹き飛ばす事が出来たら私はこの仕事を続ける。

もし、爆発しても城を吹き飛ばす事が出来なかったら私はナデシコに乗る。

どう?」

「・・・可能性は低いけど、乗った」

「・・・・・じゃ、ここらで高見の見物ね」

二人はある程度はなれたので立ち止まる。




どんっ・・・どんどんっ。





爆弾かと思われた物体は、打ち上げ花火だった。

「ぷっ・・・なんだありゃ」

「・・・・・・私、クリムゾンにも騙されてたって言うの?」

ジュンは笑った。チハヤは呆れていた。

「じゃ、賭けの約束どおり、君はナデシコに乗るんだね?」

「・・・・クリムゾン嫌いになったわよ。流石に。私の死に場所を無くしたんだから」

「ありがとう」

ジュンは笑顔を作った。

「あ、ジュンさん!」

「セレスちゃん?」

「ディアです。シーラ姉の方も・・うまくいったみたい」

逆の方からも打ち上げ花火が上がった。




「はぁ・・・はぁ・・・ジュンさん、そっちは駄目でしたか・・・」

シーラは城のほうを見つめた。

「・・・でもなんでこんな真似をしたんだろう?」

疑問の中、シーラは城のほうに戻っていった。







「・・・しかしこんなことをする阿呆が居るものなのか・・?」

イオリはその打ち上げ花火に目を細めていた。

「・・・・同感だ、兄貴」

「何だ、居たのかナオ」

「・・・・・ずっと後ろについてたんだが」

「どれくらい前からだ?」

「・・・会場から抜け出したあたりからだ」

「・・・・阿呆が」






「たまや〜っと」

「・・・ミスター、呑気に見物している場合ではないだろう」

「・・・そうですな。・・・これで我々の評判は落ちます。クリムゾンも味な真似をするものです・・・・」

「・・どうする?」

「私達は事の成り行きを見ているのが仕事でしょう、ゴート君」

「・・・む、痛いところをつくな」



























・・・アキトが戦闘に入ってから3時間が経過していた。

「ふふふ・・・」

「くくく・・・」

二人はー笑っていた。

今まで、自分と同じほどの実力を持つものが居なかった。

いや、北斗には枝織が居た。アキコにはアキトが居た。

しかしそれは鏡でしかない。

その者達は双子か、同一人物。

自分と同じ実力とは言いがたい。

「そろそろ決着を付けるか?」

「ああ。こんなに戦いが面白いと思ったことは無い。

・・・出来れば殺し合いはしたくないんだけどね」

「ふ・・・確かにこんな強敵は二度と現れてくれないだろうからな」

「そういう意味じゃ・・・まあいい」

二人は体に光を纏っていた。

北斗は赤に金色。

アキコは緑に銀色。

「これは・・・」

「これは木連式柔に伝わりし・・・「武羅威」。

「昂氣」だな。

この伝説の奥義を使えるとはな・・・・

何故、お前の技には木連式柔の流れをくんでいる?」

「・・・今のところは秘密だ。

そのうち教えるさ」

「ふん。こたえる気が無いか。なら・・・いくぞ!」

「おお!」


がつんっ!



二人はお互いの腕を超えるようにして拳を放った・・・・。

クロスカウンターだった。

「あ・・いうち」

「か・・・」

二人はその場に倒れこんだ。

「あ、アキコ!」

コウタロウがアキコの元に駆け寄る。

そしてこちらも・・・。

「はぁ・・・はぁ・・・枝織ちゃん・・・もう十分だろう?」

「アー君・・・もっと・・・もっと戦わせて!」

枝織は体が輝いてきた・・・。

そして、アキトも。

枝織は桜色に金色。

アキトは青に銀色。

「・・・これは」

「こんなに楽しいのは・・・生まれて初めてだよぉ!」

枝織は走りこんでアキトに走りよる。

「ああ・・・楽しいけどね、殺し合いは好きじゃないんだよ!」

アキトは枝織の拳を受け止める・・・しかし・・・。



ごぁっ。



「!?」

アキトは大きく吹き飛ばされた。

(なんだ・・・この破壊力は!?)

「あっ・・・北ちゃん!」

枝織は北斗が倒れていることに気付いた。

「アー君、また戦ってね。

・・・勿体無いね。殺しちゃうと二度と戦えないんだから」

「そうだよ」

「北ちゃん!枝織ちゃん!」

「あ!零ちゃん!」

「もう帰ろ!争う必要なんてないんだよ!」

「・・・うん、北ちゃんももう駄目みたいだし・・・」

枝織は北斗を担いで去って行った。



















作者から一言。

・・・大激戦&大混乱。

つーかルリ母が全然ちげ〜。

いや、無駄に風格出してみました。

・・・まー後はあの二人ですか。

・・・ギャグに関しては「ナデシコ」であると言う事を実感する程度で実施する予定。

シリアスではそこそこいける様に上達したいと思います。読みきりで書いてみようかなぁ・・・。

では次回へ。



 

 

代理人の感想

・・・・・聖女?

元がアキトで?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダメだ、まるっきり想像を絶してる。(爆)