短編小説集・こんなIFがあったとか言う話。






〜LONELY WAY〜 
















元の色彩は真っ白い病室。

明かりは落とされ、月の明かりのみが部屋に射し、黒と白のみで構成された世界が出来上がっていた。

そこには一人の女性が居た。

だがその表情は憂鬱そのものだった。

白い寝間着に、生色の豊かでない白い肌。

黒い長髪が印象的だが、部屋の白さと相まって、ますます健康的には見えない。

現在でこそ病弱そうに見えるが、彼女は元来そういう言葉が似合う人間ではなかった。

活発で、天真爛漫で、思ったこと、思いついた事はハッキリと、あるいは周りの反発も省みずに。

ただただ嘘をつかず、自分に正直な人間だった。

その影も見当たらない、生きる気力を無くしている、まるで人形のような表情を浮かべるだけ。

昔の彼女ならば、義妹のように、自分の夫を探しに出て行く所だろう。

しかしそんな様子は一切見られない。

むしろ、動きたくないようにも見える。

何が彼女をそこまで変えてしまったのか?

理由は沢山あるだろう。


自分の幸せを、人生をぶち壊されてしまった事。

数ヶ月にわたる人体実験で心に傷をつけられてしまった事。

自分が長生きできない体にされていた事。


そして最後の、本当に最後の領域である恋人が自分から離れようとしている事。


彼女は確かに強かった。

戦艦の艦長と言う役職のプレッシャーなどは感じずに。

ある意味、極度の能天気で跳ね返していただけかもしれないが、悲しみを乗り越えて強くなった。

だがそれ以上に迷っていた。


大きな責任を背負った。

自分の存在意義を忘れた。

人と戦争をしなければいけなくなった。


そんな時に、夫たるアキトが居た。


逆に、アキトが弱い部分を露呈した時には彼女が強さを見せて励ました。


お互いに支えあっていたのだろう。

お互いに求めたのだろう。

だから結ばれたのだろう。


しかし、アキトは帰ってこない。

理由は一切聞いていなかった。

ルリも聞かなかったし、関係していたアカツキ達も口外しようとはしなかった。

ただ、彼等の口から分かった事はただ一つ、


−アキトにはアキトの考えがある−


だが、彼女は焦っていた。

命が段々と尽きていくのが分かる。

彼と居られる時間がどんどん短くなっていく。

自分が死ぬ事を感じなければ、覚悟しなければならない。

その上彼が帰ってこないとなれば今の彼女には耐えうるはずも無かった。

それ故に、何も考えないように眠ろうとするが、長く眠りすぎた白雪姫には眠る事が難しかった。

(アキト・・・アキトの考えって何・・?)

そして目を瞑って考える。

眠れないから、頭の中に勝手に考えが浮かんでいく。

(私は・・・)

彼女の目頭が熱くなり、涙腺が緩んでくる。

(私は・・・アキトが思ってるよりも全然・・弱い、よ・・・?)

ついに、涙が零れ落ちた。

頬を伝って落ちるそれは、どこか、儚さと美しさを見せたが、彼女には見えはしないし、自分の事なのでどうとも思わないだろう。

人が泣いている姿を美しいと形容する事は、芸術性には富んでいるかもしれないが、人間性には乏しいのかもしれない。

(アキト・・・あなたは・・私が居なくても大丈夫なの・・?大丈夫だから・・・私が嫌いになったの・・・?)

嗚咽の声が、病室を支配する。

暗く静かな部屋に響くそれは、哀しみの色以外には何も見せてはくれないだろう。

一人の女性の哀を彩る以外の事はしてくれないだろう。


かちゃ。


病室のドアが開いた。

真夜中、ここに来るのは見舞いに来た知人でもないだろう。

病院の人間か、もしくは自分を再びさらいに来たテロリスト達か。

どちらにせよ、彼女は抵抗ができる体ではない。

彼女はもうどうでもいいように無視して泣き続けていた。

だが、次の瞬間、それは打ち砕かれた。

「ユリカ」


!!


彼女が顔を上げた。

そこにはアキトが居た。

黒いバイザーと黒い戦闘服を着ているが、紛れも無く、アキトだ。

「夜分、すまない」

「あ、アキト・・・?どうして・・・?」

「どうして、か」

ふ、と鼻で笑い、ハッキリしない視力の中泣きじゃくっている彼女の顔を見つめた。

(何て間抜けで情けない顔だ。それはそれでお前らしいが)

心では苦笑しながらも、久方ぶりに出会った妻に愛らしさや恋しさを思い出す。

この数年間、捨てていたはずの、暖かくて、優しい感情が胸に灯る。

「見舞いに来るのに、理由が必要か?」

「え・・・う、ううん」

ユリカはここで返事をしなかったらアキトがすぐに帰ってしまうのではないかと思い、焦ったように否定した。

アキトは彼女に花を放り投げると窓の方に行ってしまう。

淡い光に照らされて、アキトは流星を眺めた。

「流れ星、か」

ぽつりと呟くと、彼はバイザーを外した。

一瞬だけナノマシンが煌めいた。

彼もやはり感情を抑えきれていないのだろう。



『空に蒼い流星 夜の銀河を滑るようだね』



ユリカは一瞬見えた流れ星に一生懸命祈っていた。


(アキトが私から離れませんように・・・。

離れませんように、ずっとずっと離れませんように・・・・!)


彼女は何となく、分かってしまった。

彼がここからすぐに居なくなってしまう事が。



『二人ビルの窓から 遠くの街を探していたよ』



「そろそろ、俺は」

「行かないで!」

アキトがボソリと帰る意思を伝えようとしたが、ユリカはその先を言わせまいと叫んだ。

そして、無理矢理力の入らない体でアキトに抱きついた。

「・・・何故?」

「何故・・・って・・?」

「俺はテンカワ・アキトじゃない。

Prince of Darkness、血塗られた復讐鬼だ」

「じゃあ、何で!何で私にお見舞いを」

「知り合いの見舞いをするのに理由が要るのかと聞いた。さっきはいらないと言っただろう?」

「そ、んな・・・」

彼女は涙を流した。

わざわざ自分の心を砕きに、テンカワ・アキトという存在を諦めさせる為にここに来たというのか。

「私は・・・もうすぐ・・」

「ああ」

振り向きもせず、アキトは頷いた。

彼もまた、彼女の体の事は分かっていた。

「だからテンカワ・アキトの代わりに花を持ってきた。

ヤツの執念は俺の認める所だ」

「ひくっ・・・」

(・・・ユリカ、今の俺はお前を抱きしめる資格は無いと思う)



『悲しい瞳で愛を責めないで 何も言わずに行かせて欲しい』



(けど・・・俺はケジメをつける為に行かなきゃいけないんだ)

アキトは振り向いた。そして

(今度も死ぬかもしれない。いや、俺は死にに行くんだ−。

だから敢えてお前に会いに着た。

Prince of Darkness−

血塗られたこの姿でも、最後になるかもしれないお前と居られる時間が、欲しかった。

だが俺は−)



『細いその肩をそっと抱きしめて』 



「っ!」



『涙キスで拭った・・・・』



「アキト・・・」

「お前を抱いているのはテンカワ・アキトじゃない。

黒い皇子だ。

お前は今別の男に抱かれている。

・・・夫の事を思うなら、これ以上のことは望むな」

「・・・ひくっ、うっ・・・ううう・・・」

ユリカはアキトの胸の中で、泣いた。



『いつか読んだ小説 めくるみたいに思い出すのさ 僕の腕に集めた 君の黒髪 淡いジャスミン』



「テンカワ・ユリカ。

お前には涙より笑顔が相応しい。

ヤツも、涙を望んではいないだろう」

「・・えく・・・ひっく・・」

「俺はもう行く」



『僕のこの気持ち わかってくれたら 君のいつもの微笑み見せて』



「だから・・・お前は笑って生きて欲しい」


アキトは歩き出した。

ユリカはそれを止めるだけの力を持っていなかった。

そっと腕をほどかれたユリカは床にへたり込み、泣きながらもアキトを見送った。

何を叫んでも言葉にならないし、ついていくことも出来ない。

ただ、見送る以外にできることも無かった。


きゅぅぅぅぅ・・・・。


ボソンジャンプの青い光が部屋を支配していく。

歩くアキトを包み込み、青い光が黒い戦闘服に映える。

神々しさ、というには若干似つかわしくないが、それでも充分な幻想的な雰囲気を見せた。

そして、彼は消えた。

『Set Me Free この自由と Set Me Free 引き換えに 走れメロスのように

Set Me Free 止めないで Set Me Free 僕をこのまま見送ってくれ』
























数日が経過した。

その間に彼女は驚くほど衰弱し、痩せていった。

ほんの数日前までは見舞いに来た人物に強がりでも笑顔を見せていたのに、彼女は眠るばかりであった。

そんなある日、彼女の義妹が訪ねてきた。

「ユリカさん」

「・・・ん・・ルリちゃん・・」

義妹の一声で目を覚ましてユリカは体をゆっくりと起こした。

数秒の時間をかけて、やっとこさという感じである。

「ユリカさん、アキトさんが来たらしいですね」

「・・・どうしてそれを?」

「エリナさんから聞きました。

アカツキさんからの伝言らしいですけど」

「・・・そう」

ユリカはアカツキの元にアキトが居る事は聞かされていた。

だが、会いに行く事はルリでも出来ないとも聞かされていた。

「・・・ルリちゃん、もう私・・・長くないみたい・・」

「・・・そうでしょうね」

ルリは感情を込めずに返事をした。

彼女はそれほどうろたえていなかった。

「・・・どう、して?

どうしてアキトは戻って来てくれないの?」

「・・・」

「・・・答えて。

・・・教えてよ・・・ルリちゃん・・・」

「なら、一つ聞きます」

ルリはユリカの問いを無視して逆に問い掛けた。

「さっき、ユリカさんの主治医からの診断が来ました。

もって三日です」

「・・・そう」

「イネスさんが火星の後継者の残した実験データから治療薬を開発しました。

私はそれを届けに来たんです。

・・・受け取ってくれますね?」

「・・いらない」

ユリカはルリの言葉を拒絶した。

「私はアキトと居られないなら生きてる価値なんて無い。

そんなもの捨てちゃって」

「受け取ってください、あなたにはその義務があります」

「いらない」

「受け取ってください」

「要らないって言ってるでしょう!」


ばちん。


(い、たい・・・?)

一瞬、ユリカはその痛覚が、何のために起こったのかが理解できなかった。

揺らめいた視界が直った瞬間、目の前の人物の姿を見ることによって、それはやっと理解できた。


ルリが、自分を殴ったのだと。


「なに・・・何で・・」

「甘えないで下さい」

震えながら、ユリカは呆然とした。

そして、自分の視界が涙に塞がれていくのを認識していった。

「ルリちゃん・・・に・・何が分かるの・・・」

「何が分かる、ですって・・・あなたこそ、自分の事が一番のくせに!何を言ってるんですか!」


ばちん。


「・・・っ!また!痛い、痛いよ!」

「そうです、痛いんですよ!

こんなものじゃ・・・アキトさんが味わったのはこんなものじゃないんですよ・・・」

「私だって・・どれだけ辛い目を見たか・・ルリちゃんも知らないわけじゃないんでしょ・・・。

もう・・・疲れちゃったよ・・・死んじゃって・・・楽になりたいよ・・・」

「死んだら何も楽にはなりません。

生きてこそ楽があるんです」

ルリの真摯な眼差しが、ユリカには痛かった。

自分のやりたい事は死んでなせる事ではない。

それは分かっていたが、今までの事でどうしてもネガティブにならざるを得なかった。

「あなたが死んだらアキトさんは悲しみます。

どうしてそれを・・・分からないんですか」

「・・・っく・・・じゃあ・・・何で?」

ユリカは既に泣きじゃくっていた。

幼女のようなその視線と口調で、呟いた。

「何で・・・アキトは私の傍に居てくれないの・・?」

「あなたの為です」

「・・・私の?」

訳が分からないそうにユリカは聞き返した。

「アキトさんは火星の後継者を追いかけていたんです。

たった、一つの希望を繋ぐ為に。

たった、一つの願いをかなえる為に」

「・・・」

「イネスさんが作った薬のデータを探す為にアキトさんは戦っているんです。

何人も殺して、血糊で手を真っ赤に染めて、死を覚悟して戦ってるんです。

あのテロリスト達だけじゃなく、罪の意識とも戦ってるんです。アキトさんは!」

「・・・」

「でも・・・それでも。

アキトさんはあなたと添い遂げたい。

その願いだけで、あるかどうかも分からない実験のデータを探して命を賭けたんです。

あなたには・・・恐らく、どれだけ血に汚れてもアキトさんはアキトさんだと言い切れるでしょう」

「・・・」

「けど、今のままじゃアキトさんの事は何一つ理解できない。

・・・何一つ、痛みを分かち合えない。

何のためにアキトさんが血眼になって火星の後継者の残党を追いまわしていたと思ってるんですか?


・・・・どうしたって、あなたと生きたいからじゃないですか?」


ユリカはハンマーか何かで頭を殴られたような気がした。


(そうだ。

アキトは戦っているんじゃないか。

どんなに辛い思いをしても、私と居たいんじゃないか。

・・・私はアキトの事を誰よりも分かってあげなきゃいけないんじゃないか。

そういう関係になる為に私達は・・・結婚したんだ・・・)

「・・・そう、だよね・・・・」

ユリカはシーツの上に涙をぽたぽたと落とした。

小さい染みがいくつか出来た。

ルリはそのユリカの姿を見つめながら、言葉を継いだ。

「・・・連合軍からの通達がありました。

火星の後継者の残党が戦力を終結して最後の戦いを挑みに来ると。

アキトさんがここに来たのも多分、それが関係しているんじゃないですか?」

(そっか・・・もしかしたら死ぬかもしれないから・・・会っておきたかったんだ・・)

だがその説明で一つだけ分からない事があった。

「・・・じゃあ、何でアキトは体を治していかなかったの?」

至極当然だろう。

戦う時に感覚が完全であれば今まで以上に戦えることは確かである。

それに、自分の体を治せるならアキトの体も治っていいはずだと彼女は思ったのだ。

何となくルリもそれを察知していたらしく、間髪おかずに答えた。

「これもエリナさんの話から推測したに過ぎませんが・・・Prince of Daknessの仮面を捨てる為です」

「・・・?」

「アキトさんは、完全に戦いと決別する為・・・戦うのを止める為にPrince of Darknessとして戦いを挑んだんです。

そして、全ての決着を終え、完全な『テンカワ・アキト』としてユリカさんの元に帰って来たいと」

「・・・」

「ユリカさん、あなたはどうします?」

「・・・決まってるよ、ルリちゃん」

ユリカは決意と希望に満ちた顔つきになった。

それは今までの暗い顔つきではなく、本来の明るい笑顔に似た、彼女らしい微笑だった。

「アキトを、迎えに行こう!」

「・・・薬は?」

「アキトが体も治さず命を賭けてるんだから先に私が治る訳には行かないよ。

さ、行こ!」

フラフラしながらも、彼女は声を弾ませて歩み始めた。

アキトが生き残ると確固たる自信を持っている顔つきだ。

(私は、ユリカさんの代わりにはなれない。

ユリカさんが亡くなってしまったとしても、あの人の心は掴めない)

ユリカの後姿を見ながらルリは一人、思った。

(だから、ユリカさんと一緒にあの人を追いかける。

あの人も、ユリカさんも幸せにしてあげたい。

二人は『大切な人』だから)

















二日が経過した。

「・・・もう、居ないな」

アキトはボソリと呟いた。

(単機で突撃した割に良く持つ−)

アキトは崩壊したDFSを見てふっと笑う。

恐らく、これが無ければこの戦いは惨敗を喫していただろう。

何しろ高機動ブラックサレナといえども万能ではない、北辰との戦いで勝利する為だけに磨かれた刃なのだから。

大群を相手取るように出来ていないブラックサレナがここまで戦えたのは一重にDFSのお陰といっていいだろう。

だが、それももうない。

そしてブラックサレナ自身も大きなダメージを負っている。

恐らく、次に部隊で掛かられたら−ボソンジャンプで逃げるくらいしか手は残っていないだろう。

だが、彼にはその選択肢は無かった。

これは弱かった故に人を傷つけた自分への決別の戦いなのだ。

後退する道など、選ぶことは許されなかった。

何より、彼自身が許さなかった。

そして−

「・・・!北辰」

「来たな、遅かりし復讐人」

「生きていたのか」

火星の後継者が全滅してから現われた北辰に難色の色を表すでもなく、憎悪を露にするでもなく、

アキトはただ、ぼそりと呟いた。

「そう簡単に我を滅する事などできん。

ただ・・・貴様との決着をつけるために黄泉路から舞い戻った!」

「いいさ。

お前が最後の敵なら死んでも生きても後悔はしない。

・・・・・もっとも一人で死ぬ気は無いがな!」

アキトはフン、と鼻で笑い、ブラックサレナを身構えた。

「お前達が何度蘇ろうと、何度死のうと」

DFSを地面に叩きつけ、アキトは北辰を睨んだ。

「俺は何度でもこの仮面を被る。

Prince of Darknessという醜い道化の仮面を被って戦ってやろう!」

「もはや・・・いうべきことは無い」

「こい」

「・・・いざ!」

「勝負!」



『人は一度だけ すべて捨てさって 賭けてみたくなるのさ

Lonely Way この僕の Lonely Way 思うまま 走れメロスのように

Lonely Way 行き先は Lonely Way 遥か彼方の夢を探して』




(北辰・・・お前に対する憎しみの情は捨てた)

アキトは独白するがごとく、心の底で呟く。

(お前も、一度死んだ)

(だが、俺もここには死にに来た)

(Prince of Darknessとして・・・ここで死に・・!)

(あいつの元に戻るって・・・俺は決めたんだ!)
































ら!













「負けられないんだあぁぁっ!!」


「ぬうっ!?」




アキトの体が青い銀色の光に包まれた。

それは、ナノマシンの光とも違った、神秘的な光だった。





がしゃん・・・。





「今度こそ・・・終わりだ・・!」

「・・ぐふっ」

「俺の・・・勝ちだ・・・・・・」

「・・・・・ふ・・・げ、に・・・恐ろしきは・・・執念を越えた・・・・ち、か・・・ら・・・・・か」


どごん・・・。


ブラックサレナが拳を引き抜くと、夜天光は爆発した。

ブラックサレナ自身も、その爆発で軽く吹き飛ばされた。

その爆発の衝撃で、アキトは意識を失った・・・。


そして、偶然か、視力を補助していたバイザーが、その時、崩れた。








































眩しい。

光がある。

俺の瞼を焼く。

俺に起きろと命令する。

そして、俺は目覚めた。

「・・・・」

そこには、三人ほどの女性が居た。

俺を覗き込んだままの体勢で眠っていた。

知っている顔だ。

ユリカ、ルリちゃん、ラピス・・・。

目の下に隈が出来ていた。

結構心配されてたみたいだな。

「・・・おーい」


びくん×3。


「・・・あ」

「・・・あ」

「・・・あ」

「「「アキト(さん)!!」」

「わ、わ、わ」

俺は抱きつかれた。

三人に抑えられては動けない。

だがそんなことは一向にお構い無しのようだ。

しばらく、そのままで居た。

聞いてくれそうに無かったから。

そして、俺は開放された。

「ユリカ」

「・・・ア、キト?」

さあ。

あの一言を言おう。

ありきたりだけど、一番言いたかった、お前に言いたかったあの一言を。

あの時お前に言えなかった、取って置きの一言。

とびっきりの、二度と出来ないくらいの笑顔で。

俺とお前の時が動き出す、あの言葉を。


































「・・・ただいま」



















































作者から一言。

・・・何となく書いてしまいました。

というかコンセプトはスクライドのラスト、劉鳳と水守の別れのシーンをちょいちょいと改良。一番力を入れたのはそこでした。

・・・だって似てるんだもんなぁ。

次回作でも引用しようと思ってる類似性です。

てか、ユリカの弱さもやってみたいかなーって。

男らしいアキトも引き続きやりたいなーって。


思っちゃったんだからしょうがない。


それにネタに詰っちゃったし、短編を書くのは練習になるって度々聞いたし・・・いいわけ臭いのは承知済みです。

でもreloadほどきっかけらしいきっかけを作れないのが少し残念かも。

敢えて死なせると言う手もあるんですが、それじゃちょっと幻想チックかなぁって。

こういう歌詞にあわせたご都合主義も嫌ですけど、俺が死ぬのを書くと美化された虚像の死になっちゃうし。

ほら、ちょっと、その、「二人で」と比べちゃうとやっぱりあっちの方がいい加減な気がしちゃうんですが。

それと表現を豊かにしたいと思ったんですけど、これじゃあただの継ぎ接ぎですかねぇ(苦笑)。

ラストはありきたりの中のありきたりだったし。後半はまたちょっといい加減でしたし。

それにしても、劇場版アフターは色々書けて短編がやりやすいですね。

サンクス、蒼き流星レイズナー。

では、また。

 

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代理人の感想

ありきたりだっていいじゃないか!

わけがわからなかったり、見てて不快になるよりはよっぽどましだいっ!

まぁ、「ありきたりだからいい」とはならないのが微妙なところではありますが。

 

ところで、ユリカにルリが説教するのを見るとそれだけでなんか不愉快になるのは何故だろう(笑)。

コウイチロウやミナトあたりならそうでもないし、

説教じゃなくて感情的にわめくのをみて、自分を省みるという展開もそれはそれでおっけーなんですが。