〇地球・東京都・立川市・ミスマル邸─ミスマル提督

私は、ユリとアキト君を玄関で見送っている。
…昨日の酒がまだ抜けきっていないが、笑顔を崩したくなかった
だが、一つ、心配事というか懸念が残ってしまったな…。

「…ユリ、本当に今じゃなくていいのか?
 私の子である事は、まだ…」

「はい…一度、勝って…。
 いえ、少なくとも手ひどく負けても生き残って見せなければ、
 何も証明できませんし…騒ぎになります」

「俺もそう思います。
 ユリちゃんを守れずに、あなたに顔向けはできません」

ユリは今回は私の養子になってはくれないようだった。
…法律上、ユリを引き取ろうにも養子にしかできない。
血縁があるのに、残酷なことだな…。
だが、ユリはそんなことを全く気にしていなかった。
それどころか、自分がミスマル提督の娘であると、
実力をもって証明して見せるとまで言い切った。

…その決意に、私は揺らいでいた。

このまま行かせてはいけない。
二人が何かを背負っているのは明白だ。
重大な決意が二人を殺してしまうかもしれない…。
そう考えたが…二人を止めることなど、既に出来ないことも分かっていた。

「そうか…そうだな。
 必ず生きて帰れよ。
 ユリ、そしてアキト君」

「ええ、父さん…必ず」

「では、これで失礼します」

「待って!!」

アキト君は深々と礼をして、ユリの手を引いて歩いていこうとした。
…だが、二人は大きな声が聞こえて、振り返った。
直後、声の主であるユリカが二人に抱き付いていた。

「ぜったいぜったいまた会おうね!!
 まだ私達知り合ったばっかりで…。
 ちゃんと家族にらしいこと、まだなにもしてないもん!」

「…はい」

「必ず、戻ってきます」

…二人は小さく頷いて、ユリカの手をそっと離した
ユリカも、二人の瞳もうるんでいたが…。
アキト君はすぐに涙を止めて笑って見せた。
そうだ。旅立つ時には、男の子は泣いちゃいかん。

そして二人は、歩いて帰っていった…。

「…行ってしまったな」

「…お父様、ごめんなさい。
 私…二人を止めたかったの。
 でも、やっぱり無理なんですね…」

「ああ。
 …私も、止めたかったよ。
 死なせたくないな…」

父としては二人がPMCマルスをやめてくれることを、願ってしまっていた。
それでも…二人の人生を妨害しては父親などと言えないだろう…。

「でも、なんだか大丈夫な気もします…。
 ごめんなさい、昨日も夜更かししちゃって…」

「…いいさ、私だってそうだった。
 楽しかったか?」

「二人でゲームしてました。
 お父様。
 あのゲームで、ユリちゃん…私に二回も勝ったんだよ?」

「何…!?」

「士官学校入ってから、初めて負けちゃった。
 えへへ。
 …大丈夫、ユリちゃんがきっと勝たせてくれます」

「……ああ、きっとそうだ…」

ユリは士官学校も出てないのに、そんなに強いのか…。
ふふ…ミスマル家の血筋は、本当に筋金入りの天才のようだな。
そしてアキト君…君の決意とユリへの愛に私は賭けた…。
きっと、勝ってくれるはずだ…。

「それじゃお父様、私も行ってきます」

「うむ。
 配属が決まるきっかけがあるといいな」

ユリカはまだ訓練期間の休み中だが、軍関係のイベントに顔を出すつもりだった。
各提督との話し合いや、士官同士の交流が盛んで、
お堅い連合軍にあってかなり珍しい出会いの場所を提供するイベントだ。
各提督も木星トカゲとの戦争でかなり人員を喪失しているので、
このイベントで気に入った士官をスカウトする必要すらあった。
…戦艦が撃沈されてしまって、暇を持て余してしまっている提督も多いからな。

・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。

私は一人、茶をすすりながら仏壇の前に佇んだ。

「なぁ、母さん。
 見えたか…?
 あの子たちが笑っている姿が…」

仏壇の写真がぼやけてみえる…。
涙もろくなったな、私も。

「ユリが、あの時…。
 私達の元で生まれていたらユリカはここに居なかった…。
 お前を失う事もなかったかもしれない。
 だが、もはや私にはユリカが居ない人生は考えられん…。

 ユリは…私達の知らぬところで、生きてきた…。

 そんなユリにこうして出会えた。なんという奇跡だろう…。
 本来なら出会うはずがなかった姉妹が、ここで一緒に笑いあっている…。
 そしてアキト君は、ユリを守り抜いてくれると言ってくれた。
 二人は生まれが実験体という恵まれない環境ながら、  豊かな人生を歩もうと…一生懸命だ…。

 私達の娘と息子を幸せにするために、
 私も一生懸命できる限りの事をする…。

 だから、なあ。
 
 あの子たちを見守っていておくれ…」

私は祈るしかなかった。
二人の無事を…。
ユリカの将来を…。
そして、まだ見ぬ二人の娘たちのことを…。















『機動戦艦ナデシコD』
第十一話:detection-発見-
















〇地球・東京都内─ユリ

──私は、ミスマル父さんの『養子』になることを一旦保留しました。
戸籍上、私はホシノ夫妻の子供です。
実際、代理出産とはいえど、おなかを痛めて産んでもらっているので、
彼らが実の親、という事実を今のところ動かせません。
代理出産に関わる法律は、今現在も禁止に近い状態です。
そうなると血縁上の親が別にいるとしても、産んだ方の親が実の親ということになります。
試験管ベイビーの方が代理出産より安全なので、不妊対策としてはこちらが優先されており、
変な話ですが、よほどの特例でない限りは血縁上の親であっても、
戸籍をどうこうすることはできません。
私の出生を明かす事で家庭裁判所に申し出れば不可能ではないかもしれませんが、
その行為は恐らくネルガルの悪事をすべて公にすることになります。
…しかしそれはナデシコの出港停止、そしてエステバリスの生産停止にもつながりかねません。
そこまでの事態を引き起こす必要はありません。
ネルガルが少なくとも地球圏で木星戦争の立役者になり、
私達が訴訟をしない条件で出生を明かすというタイミングが必要です。
もっとも、今後…そこまではしないかもしれません。
…書類上の親というのにあまりいい思い出がありませんから。
ミスマル父さんとユリカさんが私を肉親と思ってくれた事の方が、百倍嬉しいです。

ミスマル父さんと別れ、私たちは佐世保へ帰ろう…と思ったのですが、
アキトさんが私とデートしてくれるというので、
一日付きっ切りでデートしてくれました。
それも、変装なしで。
本当は目立つともろもろ滞るのでよろしくはないのですが、
アキトさんが私との仲の良さを見せつけるように練り歩いているのを見て、
資金集めがもう不要になると考えてファンを振り払おうとしているのかと思いましたが…。
…ユリカさんを義姉と呼んでもまだ振り切れない自分を、
無理やり納得させようとしているようにも見えて、辛いです。
アキトさんが私を愛してくれる嬉しさを感じながらも…自分の不甲斐なさが嫌です。
…いつか、こんなことを考えないでいい日が来るのかな…。
アキトさんは、私とペアの指輪を買ってくれました。
給料三ヶ月分ほどは高くはないけど、それなりにいいものです。

「婚約指輪ってことで、受け取ってくれないかな」

「…結婚指輪じゃないんですか?」

「…式も挙げてないのに結婚指輪っていうのもおかしいからさ。
 ナデシコを降りた時、みんなと一緒に賑やかにやりたいんだ…」

「そうですね…。
 でも結婚しているのに婚約指輪っていうのもおかしいですよ」

「…ダメかな」

「いえ、それでいいと思います。
 私たちはまだ、なんていうか…夫婦どころか恋人としても未熟な気がしてます。
 本当はユリカさんと同じ年になった時に結婚でもいいくらいです。
 …それくらいかかるかもしれません。
 あの頃の思い出を振り切るには…」

私たちの関係は、ちょっと特殊です。
恐らくこんな関係で居る人はまず誰もいません。
最初は近所のお兄さんと子供みたいな関係から始まって、
次は妹か娘のような関係で…。
数年離れて出会った時は、明確にアキトさんに片思いしている自分に気づいていて、
この世界に来てからは、
恐らく母と養子の息子か、姉弟のように逆転して、
今は夫婦になろうとしていて…。

…何でしょう、ちょっと複雑すぎますね。

でもここまで来ても離れられないなら、
これからも離れずにいられる気がします。
あとは時間が解決してくれます。
…ただ、私達に時間がどれだけあるかということですけど…。
アキトさんだけじゃなく、私も少しは実験はされています。
寿命に影響がないレベルである事を願ってはいますが、
イネスさんが見てくれないとどうしようもない感じです。

そんなことを考えていたら、アキトさんが手を引いて案内してくれたホテルによりました。
アキトさんはちょっと高いホテルのレストランを予約してくれていたみたいです。
おいしい料理を食べて、お互いにしばらくこの世界での思い出を振り返っていました。
…ベタベタですね。

「…ベタベタ過ぎたかな?」

アキトさんは私の表情で察してしまったようです。

「とっても楽しいですよ。
 わからないなりに、ベタベタでも…。
 私に付き合ってくれるんですから」

「…うん、良かった」

アキトさんはきっとユリカさんにできなかったことを私にしてくれている。
当時は色んな状況が許さなかったとはいえ、後悔はあったんでしょうね…。
無理をしていたような昼に比べると、ずっと自然に笑ってくれています。
アキトさんの気持ちが届いてくるようで…本当に嬉しい。
…周囲の視線がなければベストですが。

「…それじゃ、佐世保に帰りましょう。
 まだチケットはとれそうですし…」

「…いや、今日は佐世保には帰らないよ」


え?

「部屋を取ってあるから、泊っていこう」

…しばらく私は固まってしまいました。
こういう時、何が起こるか、何をするのか…。
女の子ならちょっと大人びた小学生でもわかることです。
…アキトさんも、顔を真っ赤にしてなけなしの勇気を振り絞っている様子です…。

「…いいんですか?」

「…いい、そうしたいんだ」

アキトさんの返事は、自分を誤魔化しているようには聞こえない。
…本気、なんですね。
なら、私も正直に答えるしかありません。
私もこういう所に来た以上、心の準備はしてないでもなかったですけど。
それでもこんな大胆なアキトさんを見るのも初めてなら、
男女の関係、夫婦の営みというのも初めてで…嬉しい反面、私も勇気が必要でした。
…だけど『いいんですか?』というのは、
ちょっと女の子の返事としてはかわいげがなかったですね。
私は小さく頷きました。

「…はい。
 ふ、不束者ですが…」

こういうの慣れてないとはいえ、もうちょっと気の利いた言い方したかったです。
ごめんなさい…ユリカさん。
でも、私…頑張って来ます…!















〇地球・東京都・アカツキ邸─アカツキ

僕はシャワーの音を聞きながらベットに寝転んで昨日の出来事を反芻していた。
…まさか『あの』エリナ君に誘われるとは思わなかった。
どうして、と聞いても『聞かないでもわかるでしょう』としか彼女は言わなかった。
いや、その意味は男なら誰でもわかるんだけどさ。
告白すっとばして食事に誘ってこういうことをするとは思わないじゃないか。
…エリナ君は寂しいんだな、たぶん。
やっぱり『アキト君』とのことが忘れられてないんだろう。
とはいえ、彼女の身持ちの固さから考えるとやっぱり急すぎるんだが…。

「なに呆けてるの?」

シャワーから出てきたエリナ君が、バスタオル一枚で出てきた。
…堂々たるものだね。
昨日の余韻に浸っていた僕とはえらい違いだ。

「いや、君がどうして僕となんかと思ってさ」

「…女にそれを言わせるのは野暮よ」

「そうだね…」

当たり前のことを何聞いているんだと言わんばかりのエリナ君…。
どうも彼女にこういう態度を取られると僕は弱いんだねぇ。
…いかん、大関スケコマシの名が泣くな。

「それにこういう事に器用なアカツキ君なら、
 封を切る時に傷をつけるような事はしないでしょう?」

「…相変わらず計算高いね。
 それでも、ちょっとでも僕を想ってくれていたとは考えていなかったから、さ」

「私は好きでもない男に抱かれるほど暇でも尻軽でもないわ」

「…昔、兄さんがそんなことを言っていたな。
 『人生は一人の女を愛するには長すぎるが、
  好きでもない女を抱くには短すぎる』
 僕は結構名言だと思うね」

「よく言うわよ。
 あんたは好きでもない女の子を抱くのが趣味の癖に」

…ぐっさりくるね。
まあエリナ君のことをいう権利がないのはよくわかっている。
僕も、女性関係については親父によく似ているといわれることがある。
寂しがりなんだろうという自覚はあるさ、そりゃぁ。
エリナ君はバスタオルを取ると下着を着始めた。
…綺麗だ。
と、彼女がブラジャーを付けたところで、 モニターが付いた。
恐らく緊急のテレビ電話だ。

『会長…しっ、失礼しましたッ!?』

テレビ電話の先でシークレットサービスの若手の社員がうろたえる。
エリナ君が一緒でこの状況だ。そりゃ泡も食うよな。
僕は家で女性を抱くことはほとんどない。ゼロではないが。

「気にしないでいいわ。
 勝手に話してて」

「ああ、そういうことだ。
 続けてくれ」

エリナ君はモニターが付いてからはさすがに背を向けてはいるが、
意に介した様子もなく、着替えを続けている。
…エリナ君、度胸が良すぎないか?
こういう時に顔を赤らめるくらいはかわいげがあった気がするが。

『は、はぁ…。
 ご連絡があります。
 ミスマル提督から各地の秘匿研究所の調査の開始があったと報告がありました。
 軍事関係の人体実験が確認されたということで』

「なるほど。
 昨日、ホシノ君がミスマル提督宅を訪れたのと無関係ではなさそうだね。
 恐らくミスマル提督の独断だとは思うけど」

そう、ホシノ君がこの手の話で動くことは現状あり得ない。
クリムゾン関係に対してならわかるが、
ラピスを保護している研究所に深入りさせるような事は避けるだろう。
…会話の内容までは料亭のブロックが厳しいので、盗聴もできなかったが、
大体想像がつく。
ホシノ君が馬鹿正直に、エリナ君から聞いた自分の出生を語ったんだろう。
物事を隠すのが下手とはいえ、もうちょっとうまくやれよ全く…。

『は。
 ですので、一度研究所の破棄を命じた方が良いかと』

「ちょうどいいから研究所ごと破棄して、
 ネルガル本社に戻ってきてもらおう。
 先代からの負の遺産もいい加減清算したいところだ。
 あ、ラピスの件は研究所の職員に詳しく相談をしてくれ。
 彼女の健康状態だけは最重要だ。
 命や健康を損なうような事があれば僕とエリナ君を敵に回す事と同じと思ってくれ。
 今すぐに研究所にも伝えるように。
 移動の際はゴート、プロス両名を必ず呼ぶ事。
 いいね?」

『ッ!りょ、了解です!』

「他にも人体実験をしているなら罰しないから申告するようにとも言ってくれ。
 実験体はすべて保護。殺させないように。
 そうしないと寝覚めが悪いからね」

『はっ!失礼致しますッ!』

若手のシークレットサービスは背筋を伸ばして、通信を切った。
これくらい言っとかないとシークレットサービスってのは手荒にしがちだからねえ。
研究所の職員も、研究を破棄っていうと実験体まで破棄しかねないし。
流石に助かる命なら助けるべきだろう。
命あっての物種ってやつさ。
ま、保護をちゃんとしてもなお逆襲されるならその時はその時だ。
親父の悪巧みの残り物で、無意味に死なせることもないだろう。

「ま、どこまで親父が悪事をしていたのかは分からないけど。
 僕に迷惑がかからない程度にしてほしいね。
 全く」

「まるで自分が悪事をしていないような言い方ね」

「僕は善人ではないけど悪人にもなりきれないよ、多分。
 『あのテンカワ君』くらいになれるなら、いっそすがすがしいんだけど」

「あんたのほうが死なせた数は多いでしょうに」

「まあ、ね。
 でも戦うのを強要したことは一回もないよ。
 コマした女の子だってそうさ。
 一緒に寝ることを強要したことは一度もない。
 ──確かにそうなりやすい状況を作ったけど、
 選択権は彼ら彼女らにあったと思うけどね?
 君だってそうしていただろう?」

「そうだけど、やっぱり詭弁ね。
 強制したり、綺麗事言って命を差し出させる連中よりはずっとマシ…。
 そう思って自分の精神を安定させているだけじゃないの」

「そりゃそうだ。
 誰だって、善人にはなりたいもんさ。
 最低には誰だってなりたくない」

「そうね…」

エリナ君は『アキト君』の事を考えているんだろうな。
彼は…すすんで北辰と同じ最低に堕ちて、戦った…。
あの強さは僕にはまだ手に入っていない。
それでいいと思う自分と、それでは死ぬだけだと思う自分に揺られている。
決着は、まだついていない。

──ホシノ君、そのままじゃ死ぬと思うが、
  君は戦う時に『殺すくらいなら』って敵に自分の命を差し出すつもりかい?















〇地球・東京都内・ホテル─ユリ

私とアキトさんは背中合わせで…一糸まとわぬ姿で朝を迎えてしまいました。
…昨夜のことを、考えています。
悪い夜ではなかったんですが…良かったと思える夜だったんですが…。
…うまくいかないものですね。
途中、アキトさんが私を『ユリカ』と呼んだ事で、
お互いの盛り上がりが醒めてしまいました。
ロマンチックな夜で…。
丁寧に私を愛してくれたアキトさんだっただけに…。
二人して心底落ち込んでしまったので、中断して眠ってしまいました。
私がずるい事をしている自覚はありますけど…。
今日だけはちょっとだけユリカさんが恨めしいです…。

「…ゆ、ユリちゃん…昨日は…」

アキトさんは私を背中越しに見て、謝ろうとしました。
…さすがに、この場面で謝るのは失礼ですよ。

「…それ以上言ったら許しません。
 満足は出来なかったかもしれませんけど、
 あなたの気持ちが嬉しかったです。
 無理に…未練を今すぐ捨てようとしなくていいですから…」

「…うん、ご…」

「謝らないで」

「…はい」

…もう、強く言わざるを得ませんでした。
怒ってはいませんが…自分のしていることに自信をもう少し持ってほしいですね。
そうでないと、むしろ怒りたくなります。
私の嬉しいって気持ちまで消してほしくないですよ、もう。
…私はアキトさんの次の言葉を聞きたくなくて、無理に唇を奪いました。
アキトさんも言葉が出なくて、でも私に応えて深く口付してくれました。
無理に話すより、こっちの方がよっぽど分かりやすいです。
しばらく、そうしていました…。

・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。


私達はようやく落ち着いて、普通に戻れた気がします。
そこでなんとかお互いに反省会に入れました。

「こういう事も、何度か繰り返せばそういう事もないでしょうし…。
 じっくりやりましょう?
 何度も試せば済むことです」

「…うん、そうだね。
 俺はいつも失敗を怖がり過ぎてるよな…」

アキトさんはかなり深く沈んでしまいました。
自信を無くすくらいなら怖がらなければいいとも思いますが、 性分なので変えがたいんでしょう。
ナデシコに乗ってる最中、メグミさんともユリカさんとも進展しなかったわけですね…。
…まあ、アカツキさんほど軽くても困るんですけど、色々と。
私達は朝食をとったら佐世保に戻ることにしました。
仕事のスタートにはまだ2日ほどありますが…今日と明日はアキトさんと話し合うことにしました。
アキトさんと仕事の事でゆっくり話す事も重要です。
今までは芸能活動で言われるがままに番組や仕事に立ち向かってきましたが、
これからは依頼はあれど仕事を組み立てるのは私たちの仕事になります。
自由度は高くなりますが、責任もやることも青天井に増えていきます。
少なくとも基本の部分で共通認識がなければやっていけないでしょう。

佐世保に戻った私たちは、応接室でお互いに向かい合って話し合いました。

「そういえば…今は佐世保周辺にチューリップが多いからいいけど、
 戦地が遠くなったらどうしようか…」

「一応考えはあります。
 運ぶだけであればトレーラーがあれば運用できます。
 トレーラーは最悪その都度レンタルの形にしても何ら問題ありませんし。
 …ただ、戦艦がないのはもろもろ問題ですね」

そう、佐世保に拠点を置いてしまった以上、
艦載機としての運用が前提のエステバリスを、修理するにも一々佐世保に戻す必要があります。
ネルガル本社が近ければ整備にドックを借りることもできますが、
それ以外のドックは連合軍の持ち物なので役に立ちません。
ミスマル父さんがいくら便宜を計っても、これは無理です。
多額の献金で許可を得ていた、ナデシコの寄港とはわけが違います。
機動兵器の整備士は連合軍が独占していますし、民間のドックはまだありません。
とはいえエステバリスは極めて小型であるため、
木星の機動兵器はトレーラーで移動すれば補足できません。
この点についてはかなり有利になりますが、時間が純粋にかかるという問題もあります。
それ以前に整備員を確保するのが目下の課題なのですが…。

「海をまたぐ必要がある時はどうするの?
 まさかフェリーってわけには…」

「揚陸艇を使いましょう」

「ひなぎくの事?
 確かにそれなりに飛行もできるし、
 走破性を重視してホバークラフト装備だから悪くはないだろうし…。
 改造すればエステバリス用の重力波ビームを出すことも出来なくはないだろうけど、
 でもあれはそもそもサイズ的にエステバリスの積載量が足りなくなりがちで…。
 改造なんかしたら、一台も乗らなくなるかも…」

「複数台準備するか、往復させればあれば大丈夫です。
 結局、手間を惜しまなければなんとかなります。
 そもそもそういう状況になるかはわかりませんし、
 陸地についたらトレーラーでいいですし、
 揚陸艇そのものに重力波ビームを付ける必要はありません。
 別途重力波ビームを出せるトレーラーを準備すればよいです。
 ネルガルのカタログにも陸戦のエステバリスのお供に、
 って重力波ビーム搭載トラックは載ってますし」

アキトさんは手をポン、と叩いて納得してくれました。

「大胆だけど、いいかもしれないね。
 トレーラーは俺でも運転はできるし、
 そうでなくてもトラックの運転手はその時々で依頼すればいいわけだし、
 社員を増やさなくてもいいわけか」

「この方法自体は私のアイディアではないんです。
 トレーラー運用は実際私達が使った方法ですし、
 改造トレーラーからの重力波ビームは戦艦が運用できない場所で使われたんです」

私も連合宇宙軍に入る前士官学校で教わったことです。
木星戦争中は、エステバリスの導入にあたってかなり様々な運用が試されたそうです。
…それを先取りできてしまうのは少し卑怯ですが、
私たちが運用の先駆けとなり、運用方法が模倣されていけば悪い結果にはならないと思います。

…その後、私たちは夜遅くまで、エステバリスの運用だけではなく、
アカツキさんと話し合う機会を作る事や、保険の事、
社屋の事や、社員の給料から待遇、雇用の法律、制服やパイロットスーツの事まで…。
事細かに、でも部分的にはかなりかいつまんで、話しました。
アキトさんは終始感心したり、うなずいたりしながらたまに質問をして…。
最後は本当に疲れ切った表情で、うとうとし始めてしまいました。
すでに22時を回っています。

「…今日はそろそろやめましょうか」

「そう…だね…」

…そういえば、アパートはどうしましょうかね?
ここに住んじゃった方が多分安くあがりますし、
緊急時にも対応はできるかもしれませんが…そうしちゃいましょうかね…。
幸い、居住スペースには部屋数が結構ありますし、何とは言いませんが防音もいいです。
…それに、ちょっとくらいアキトさんにサプライズしてあげるつもりもありますし、ね。















〇地球・佐世保市・アパートの一室・ホシノ家─アキト

俺は失敗してばかりだな…。
色々経験してきたし、なんだかんだやってこれたから油断しているのかもしれんが…。
エリナとの事がなかったらもっとひどかったと考えると…情けない。
勇気を出してこのザマで…さらにユリちゃんに頭脳労働は投げっぱなしだ。
だが、昔みたいに自分自身が単なる半端者とは思ってない。
昔の俺に足りなかったのは時間と経験だけだ。
サイゾウさんが認めてくれた料理の腕も、
月臣に鍛えられた格闘の腕も、パイロットとしての自分も…殺しの腕でさえも。
一番にはなれなくても、誰かに必要とされるレベルになれた。
ただ、ろくでもない自分の性格で台無しにしているのではないか、といつも思う。
それを抜きにしても…頭と恋愛関係だけは弱点だ。本当に。

(アキト。
 それもきっと時間と経験だよ──)

…そうだな、ラピス。
お前もこれから自分の人生を歩まなきゃいけないのに、
こんなことで悩んでちゃ兄貴分として情けないもんな。

(…ばか)

ん?どうした?

(アキトなんか知らないっ!)

何を怒ってるんだ…。

・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。

夢から目が覚めた俺は、ラピスの言葉の意味を考えたが、
今一つつかみきれず、頭を抱えた。

「…ラピス、ちゃんと言ってくれよ。
 女の子の考えを読むの苦手なんだって…」

「…ん。
 ラピスがどうしました?」

ユリちゃんは瞳を半分だけ開いて俺を見ていた。
昔は低血圧で大変そうだったけど、 今はいい感じに普通に目覚められるようになっている。

「あー…ごめん。
 夢見てた」

俺は少しとぼけ気味に、ユリちゃんの隣から身体を起こした。
二人して少し汗ばんでいる事に気がついた。
…そういえば、そろそろ暑くなってきたなぁ…。















〇地球・佐世保市内・PMCマルス社屋・オフィス

アキトとユリは早速、眼上と合流して人材の募集を開始した。
アキトはパイロットと整備士だけの雇用で何とかしようとしたが、
わずか半年でも会社員として働いたユリには、
それでは会社が成り立たないことがよくわかっていた。
この点について眼上が時間をかけて、
アキトを論理的にボコボコに(現実的には優しく親切に)叩きのめした。
『木星トカゲが全滅した後会社をどうするのか』も考えなければならなかったが、
うまく運営もできずにそこまで考えるのは時期尚早ということで保留した。
さしあたっては、宣伝の期間に届いた履歴書の仕分けからだったが…。
段ボール5箱にも及ぶ、総勢1000名もの履歴書を見るのは、かなり困難だった。

「…ミーハーな女性が多すぎて困りますね。
 憧れるのはわかるにしても」

「案の定ってやつね。
 もっとも、アキト君のファンだからと言って使えない人ばかりとは限らないわ。
 吟味する必要はあるわよね」

「あれ、この人…」

主に男性の応募者を確認していたアキトが、一つの履歴書を見た。
そこには『保安部希望・ヤガミナオ』の文字があった。
履歴書の内容には、リターンマッチの希望もついでに書かれていた。

「何考えてんだこの人は…」

「いえ、その人は形だけの面接をして即採用しましょう」

「え?」

「今のアキトさんだけじゃトラブルがあったら会社を守り切れません。
 実力が分かっている以上、必要です。
 元ボディーガードの経験もありますし、いいと思います。
 倉庫管理じゃエステバリスのセキュリティも限度があります」

「そりゃ分かるけど…」

「アキト君、警備員を雇うにしても腕が確かな人で、
 顔見知りならいうことないんじゃないの?」

アキトは採用を渋ろうかと思ったが、現実的に外部の妨害があり得なくないことから、うなずいた。
一瞬渋ったのは、採用はともかくリターンマッチが嫌だったらしい。

…その後も採用のための履歴書の選別が続いた。
だが、肝心のパイロット・整備士志望がゼロだった…。

「…そりゃそうだよな。
 連合軍でも勝てないような相手なのに、来てくれるわけはないか…」

「当初のプラン通りでもあと一人は最低必要ですが…。
 私がIFSを使えればまだいいんですけど…」

「いや、ユリちゃんは指揮やサポートをしてくれないと困るよ。
 ただでさえ索敵や連携が弱いんだから」

「そうですね。
 指揮車両からのオペレートをした方がよさそうです。
 …問題はどうやってこのパイロット不足を補うか、ですね」

「簡単な手があるわよ」

うなだれていた二人は眼上を見つめた。

「アキト君が教習するという条件だったら、
 女の子のパイロットは集められると思うわよ」

「…却下です。
 将来的にはともかく、現段階でそれをやると連携出来ないパイロットが生まれかねません。
 素質的にも選別するのに時間がかかりすぎます」

「あら、残念ね」

眼上は麦茶をすすった。
そもそもIFSを導入している人間でなければいけないが、
仮に適性検査のためだけに、素質がないにも関わらずIFSを入れさせた、
となると本人が問題なくても家族からのクレームがあり得る。

「…ユリちゃん、そっちのほうは何人くらいまで絞れそう?」

「とりあえず経歴上で100名までは絞れますが、
 あとは一人一人見てみるしかないと思います。
 眼上さんはどう思います?」

「そうね…事務、経理、会社の清掃そのほか保守あたりに一人ずつとりあえずとるとして…。
 この100名なら、こうなるわね」

眼上はさっとユリの見ていた履歴書の束を手に取ると、
10名分ずつ、3つの職業に割った。
30名まで絞れたことになる。

「眼上さん、そんな簡単に絞っていいんですか?」

「知っての通り、私は見る目がある方よ?
 それに履歴書見た枚数なんて、そこらの30代の人事部の10倍じゃすまないんだから。
 ここから先は実際に会うしかないんじゃなくて?」

ユリは、小さくうなずいた。
この日は、残りの970名すべてに採用見送りの返信をする作業だけで終わってしまった。
翌日、30名の女性すべてに面接を行った。
…しかし、結局その30名との面接は、ほとんどが空振りに終わった。
採用できたのは会社の清掃10年のプロが一人だけだった…。

「…想定外でした。
 仕事の事が全く話せない人ばかり集まるなんて…。
 交通費を出してあげたので赤字にしかなりませんでしたね…」

「…スキル的には悪くなかったんだけど、ねぇ…」

ユリと眼上はさすがにため息を吐かざるを得なかった。
新卒採用ができない時期(即採用のため)ため、中途採用の形をとっていたので、
社会人経験のある人物のみを選んだつもりだったが、それでも問題が噴出していた。
…今回の不採用の998名のうち、男性76名、女性922名…。
この922人全員、ホシノアキトファンクラブに所属していたことが明らかになったのである。
30名に絞ったうちの29名も、ホシノアキトファンクラブの女性である。
(実は男性も36名がホシノアキトファンクラブに加入していたらしい)

「事務と経理…今回は保留にしましょうか…。
 最悪パートタイマーでもいいです…」

「ユリさんに負担が大きいわよ、それじゃ」

「…眼上さん、いっそ会社に入ってくれませんか?」

「嫌よ。
 私はプロデューサーが天職だもの」

ユリはため息を吐かざるを得なかった。
せめてラピスがいれば…と彼女は考えた。

「ひとまず、今日はもう遅いですし帰りましょうか…。
 明日は眼上さんと一緒にエステバリスの購入について話をしてきます。
 アキトさんはコスプレ喫茶でお別れイベントするんですよね?」

「…う、うん…。
 あんまり行きたくないけど義理があるから…」

アキトもまた、ため息を吐いた。
PMCマルスのスタートがこのコスプレ喫茶だったことから考えれば、出ないわけにはいかなかった。

(ファンクラブの人がいたら…いや居るだろうけど、
 釈明の一つもしないといけないだろうなぁ…はぁ…)

…前途多難だった。















〇地球・佐世保市・コスプレ喫茶『サーフェイス』─アキト

俺は今日一日の事を振り返って…もう振り返りたくないが、振り返っていた。
店長のみならずオーナーも来ていた。
…半年もしないうちに、店が2店舗から10店舗になり…。
全国展開までしそうな勢いで増えているのが俺のおかげだと、
めったに来ないオーナーがわざわざ会いに来てくれた。
もっとも、佐世保市に会社を立てるわけだから会おうと思えばいつでも会えるわけだが…。
今回のお別れイベントは、店ではなく大きなホテル会場まで使ってくれた。
…どんだけ儲けたんだ、オーナー。
俺のお別れ会と言いながら、
料理の半分近くを俺一人で準備し、
始まってからも下手な歌を歌わされたり、
一発芸をしてほしいと言われてビール瓶を手刀で切り落としてみせたり、
PMCマルスの説明プレゼンを(しかも説明スライドまで準備してくれていた)させられたり、
何というか俺をねぎらうというよりは俺を消耗させる会になっていた。
最終的にはみんなに囲まれてもみくちゃにされて終了がなかなか切り出されなかったり…。
俺が消耗しきったものの、辛うじて滞りなく終了できた。
何というか嬉しい気持ちはないでもないが、よくわからない会になってしまったな。
終了後、すでに0時を回っているが、
店に戻ってサーフェイスのメンバーだけで本当の「お別れ会」をしていた。

「ホシノさんが退職かー…寂しくなるなぁ」

「いろいろとお世話になりました。
 眼上さんとの出会いがなかったら会社興すのも無理でした」

「店長、寂しくなるなぁじゃなくて、
 稼げなくなるなぁ、の間違いじゃないんすか?」

「そうだそうだ。
 …それにしても『テレビに出るのが嫌だー』ってごねてたアキトが、
 芸能人はじめちまうんだもんな、びっくりしたよな」

…俺もまさか芸能人やらされるとは思わなかったよ。
今も向いてないと思うくらいだ。

「PMCだっけ?
 木星トカゲと戦うなんて、かっこいいじゃん。
 みんなで応援してるからね。
 でも怪我すんなよ、女の子たちが泣いちゃうぞ」

店長はケタケタと笑った。
…この店の人達も明るく振る舞ってはいるが、木星の機動兵器で家や家族を失っている。
決して佐世保は安全な街ではないんだ。

「しかし、意外だったよ。
 元パイロットだって?」

「正確にはちょっと違うんですが、そう思っていただいていいっす。
 …ホントはコックになりたいんですけど、ちょっといろいろありまして」

「そういえば変わったIFSつけてるよね。
 見たことないや」

「パイロットが足りてなくて困ってるんだって?
 誰か行ってあげた方がいいんじゃないか?」

「…お気持ちは嬉しいですが、命がかかる仕事です。
 そんなことをお願いできません」

「アキトォ、俺はついていってもいいんだぜぇ~?」

「マエノさん…」

マエノさんがニコニコして俺の背中に寄りかかってきた。
…いや、そういわれても。

「マエノさんは…悪いっすよ。
 …大家族で、大変なんでしょう?
 ここよりは給料安いんですよ?」

「大家族だからバイトの掛け持ちが多いんだ。
 お前と同じでいろいろできるんだぜ」

マエノさんは、自分の手の甲に貼られたシールを取った。
そこにはIFSの紋章があった。

「…あ」

「昔工事現場でIFS仕様のロボットが面白そうだったんで、
 つい入れちまったんだ。
 お前には借りがあるからな。
 整備員友達を集めてシーラも来てくれるってよ。
 断ったりしないよな?」

俺はあっけにとられてしまった。
こんな…こんなあっさり、しかも近くに素晴らしい人材が居たとは…。

「…ぜひ、お願いします。
 店長、すみません。
 二人そろって抜けてしまいますが…」

「いーっていーって!
 前みたいに人が足りないなんてことめったにないし。
 二人がどんどん有名になれば、ウチだって濡れ手に粟。
 でも、ホシノさん、代わりにたまには顔出してくれよ?
 女の子が目を輝かせて待ってんだから」

「あ、あはは…はい」

…店長ちゃっかりしてるな、ほんと。
でも、これでだいぶ盤石になるかもしれない。
色んな事があったが…いい思い出になったとおもう。
この店で働けて良かったな…。
ほんの少しの寂しさを覚えながらも、店を後にした。















〇地球・佐世保市・アパートの一室・ホシノ家─ユリ

今日はエリナさんとプロスさんにエステバリス購入の協議と、
配送の手続きを行っていました。
エリナさんがかなり値切ってくれました。

「宣伝広告費としてこれ以上ないものをくれるわよ。
 プロスさん、値切ってあげて」

「いえ~、しかしですねぇ。
 値切るにもネルガルにも余裕がありませんし…」

プロスさんからするとアキトさんは『情緒不安定なDV夫』なので、
かなーり不安なんでしょうけど…最後は快く三割引きで答えてくれました。
…もちろん、初期購入だけですけど。
それに初戦闘後、CMを一本撮影しなければいけなくなりました。
まあ、CMのギャラなんて数百万円で終わりですし、
3台で30億円の陸戦エステバリスが、21億円になったので…破格です。
これだけでほぼ1台分が浮いちゃいました。
もっともいくらか特殊な装備を試す都合上、
浮いた分の半分くらいは別の装備の購入に当てざるを得ませんでしたが。
通常トレーラー1台と重力波ビーム搭載トレーラーくらいは、
自前で持ってなければ困りますし、必要経費はまだ足りてないくらいです。
…一回の戦闘でどういうことになるのかは、まだ不明ですし。
そんなわけで滞りなく購入の相談は終わって、
ついでにエリナさんと個人的に話をしてきました。
ユリカさんの事も色々聞いては来たんですが、
アキトさんが知らないことはエリナさんも知らないそうです。
ラピスの事も聞きましたが、まだ目覚めないですし健康状態は良いそうです。
もっとも、研究所からネルガルの病院に移されて眠り続けているだけなのですが…。
アカツキさんとの話し合いは持てるかどうかも問いましたが、

「アカツキ君は、戦いもしないアキト君には興味がないって」

と、ナデシコなしでも勝利して見せなければ話す事すらも嫌、と。
…ずいぶんな言いようで、少しむかつきますね。
とはいえ長話になりましたが、少しはすっきりしました。
私も仕事仲間以外の人間関係がありませんし…。
今は対立していても、ナデシコの仲間と話せる機会というのはやっぱり特別です。
エリナさんも個人的な話には、リラックスして応じてくれて…嬉しいものです。
アキトさんと離れてしまうと、私はどうも心細いです。
うっかりしていると私は本当に未来から来たのかすらも、
不確実な事実に思えてしまうので…。

ただ…エリナさんには一つ聞きたい事があったんですが、勇気が出ませんでした。

私は飛行機の最終便で戻り、食べ損ねた晩御飯を食べて、
家でシャワーを浴びていたらアキトさんも戻ってきました。
二人とも午前2時の対面に、疲労しているのが良く分かりました。

けど、私はアキトさんに報告されたことでびっくりしました。
…まさか悩んでいたことを一晩にして解決してくるとは思ってもみませんでした。

しかし、アキトさんの強運が、最近怖いくらいです。

コックの仕事をしようとしたら、高額の時給が発生するコスプレ喫茶にスカウトされ、
コスプレ喫茶で働いていたら芸能界にスカウトされ資金集めが順調に進み、
芸能界で働いていたら格闘試合に誘われて資金集めを加速させ、
私がミスマル父さんの娘と判明して娘婿になって立場が安定して…。
挙句に、一番問題だったパイロットと整備士があっさりとスカウト成功。
…なんでしょう、クローンだったという不運を差っ引いても、あまりある強運です。
宝くじの一等に当たるくらいのレベルを短期間で2、3回くらい繰り返しています。
かつてのアキトさんの不幸すぎる生い立ちや育ち、人生全体の不幸を取り戻すがごとく…。
新手のわらしべ長者みたいな事になってますね。
いえ、総合的に見ると結構大変なことはしたんですけど。

「いやホッとしたよ。
 まずは生き残れそうで良かった」

「油断はできませんけど、
 この世界ではアキトさんが妙に運が良くて良かったです」

「うん。
 これで…何事もなく戦争が終わったら、いうことないんだけどね」

…アキトさん、その間はユリカさんの事をひっこめましたね?
私もそう思ってないわけではないですし、別にいいですけど…。

「それじゃ、明日は早速テンカワさんをスカウトに行ってきます。
 アキトさんは、眼上さんとヤガミさんと仕事でしたっけ」

「うん。
 エステバリスが手に入るなら、また宣伝に行かないとって」

眼上さんは本当にプロデューサーとして超一流です。
彼女の考えはまず外れません。
既にエステバリス購入の報告をした時点から、
イベントの手続きや下準備を行っているようでしたし。
各芸能事務所が喉から手が出るレベルの才覚を、
自分のやりたい事を通すためだけに使う、流浪の大物プロデューサー。
…この人との出会いこそが、この世界でのアキトさんの最大の幸運だったんでしょうね。
そんなことを考えながら私たちは眠りました。
これからも大変ですから、ね。















〇地球・東京都・渋谷・電車乗り換え通路─ホシノアキト

俺達は変装をしながら…いや、ナオさんだけは素でサングラスかけてるんだが。
乗り換え通路の途中で見える、大きなガラス窓からスクランブル交差点を見ていた。
午後3時から始まる、PMCマルスの主力兵器のお披露目イベントの下見だ。
ここからだとスクランブル交差点の様子や広さも一目瞭然だ。

「こ、こんなところでやるんすか!?」

俺も東京都内で仕事をしたことは多いが、渋谷に来るのは初めてだった。
ニュース番組で時たま見かける渋谷も、実際に見てみると人の多さと派手さに驚く。
この密集地帯で、エステバリスを見せるって…!?

「もちろんよ。
 宣伝は派手に打たなきゃ意味がないの。
 あなたのネームバリューと、PMCマルスへの全日本からの期待。
 それに応えられるくらいの檜舞台を作ってあげたわ」

眼上さんはサングラスしてても分かるくらいニコニコ笑っている。
それと同じくらいナオさんも笑っている。

「いや~よかったなぁアキト?
 これでまた有名になっちまうなぁ?」

「…ナオさん喧嘩売ってんすか」

「お?買ってくれるのか?」

「…はぁ。
 勘弁してくださいよ…」

…ナオさんのペースに乗せられるとどうも勝てない。
なんていうかタイプは違うんだがウリバタケさんのノリに近いものがありつつ、
言い合いになると俺では全く歯が立たないくらい口が達者だ。
まあ、こういう人が近くに居ると俺の口下手をフォローしてくれるから、
それはそれで助かる人材なのかもしれない。
…この間のファイトでどうも気に入られてしまって、
マブダチと言わんばかりのなれなれしさを出しているのは困りものだけどな…。

・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。

その後、トレーラーをナオさんが操作し、
俺は外部で待機…どうも派手に登場する算段らしいが…。

「性に合わないなぁ、こういうの」

俺はビルの屋上で、ギャラリーに混じって静かに待機していた。
周囲の人も、俺には気づいていないらしい。
…いや、何人か気づいているな。
もっとも、下から見上げている女の子たちだ。
上がってこない所をみると、気を遣ってくれているようだ。
ファンクラブの子ほど、街中では気を遣ってくれる。
…面接の時もそうしてくれればなお良かったんだけどなー。
お礼とばかりに小さく手を振ると、はしゃいでくれて…。
これくらいは、微笑ましいコミュニケーションだ。
そんなことをしていると、お披露目イベントが開始したらしい。

『それでは、エステバリス、デッキアップ!』


ぐおおおおん…。

「「「「「「おおおーーーーーーー!」」」」」」

この日の為に雇われたコンパニオンの子のアナウンスと共に、
ナオさんの操作でトレーラの荷台が起き上がり、エステバリスが起こされていく。
…この程度の油圧式ジャッキアップなど、時代的に考えれば古すぎるテクノロジーだ。
だが『二足歩行ができる巨大な人型ロボット』というジャンルは、
現実では趣味的要素を含みすぎているため、一世紀前から完全に兵器開発には用いられなくなった。
ビーム兵器やミサイルやステルス戦闘機の方が本来はよほど強いからだ。
それを覆すのがグラビティブラストとディストーションフィールドだっただけのことだ。
…しかし考えてみればガイが喜んだように、エステバリスという存在そのものが、
人々にとってファンタジーであり身近なSFとなってあらわれたんだろうな。
そんな事を考えていたら、エステバリスが完全にデッキアップされ、固定された。
当然というか、周囲で観察していた人たちは歓声に沸き、
手元のカメラや端末でエステバリスを撮影し続けている。

わああああああ…。


「…ここに飛び込めってか」

──眼上さんは、俺の身体能力を正確に把握している。
計画書を見た時、俺は呆れかえってしまった。
普通だったら立てないぞ、こんな計画。

『それでは!
 続きましてPMCマルスの若き会長にして、
 最強のエステバリスライダー、ホシノアキトが搭乗します!』

ばっ!

俺は派手に大げさな変装を脱ぎ捨て、背より高いフェンスを乗り越えた。

「えっ!?」

「ここに!?」

「アキトが!?」

「跳んだ?!」

しゅたっ。

俺は落下しながらビルの壁を思い切り蹴りつけて、エステバリスの肩に飛び乗った。
このビルがガラス張りだったらできなかったが、これくらいなら軽い。
人間の能力は本来3割しか出せないが、俺はコントロールで10割出せる。
ようやく、俺もこの辺のコントロールが戻ってきた。
もっとも、負荷を計算しないと怪我じゃすまないことなんだが。

うおおおおおおお!?

今度の歓声は驚きだった。
…ここまで派手にやらなくてもいいだろうに、ホントに…。
俺は軽く手を振って…笑顔はちょっと苦手だから、ほどほどにしつつ、
エステバリスの外部ハッチスイッチを押して、アサルトピットに乗り込んだ。

『エステバリスが通りまーーーす!
 前に立たないで下さーーーい!』

コンパニオンのアナウンスに合わせて、警備員が観衆をうまく追い払う。
エステバリスを進めさせ、空砲の入ったラピッドライフルを構えた。
この空砲は街中でも撃てるようにケースレス弾で特別高価だ。
だが、それでもどうしても撃つべきだと眼上さんは譲らなかった。
実際に戦えるかどうかはおいても、カッコよさが伝わらないといけないと。
…たしかに必殺技が一個もないゲキガンガーなんてだれも見たくないよなぁ。
とはいえ陸戦兵士とやってることは変わらないんだけど…。
ラピッドライフルを、何台もある大型モニターに向ける。
当然、破壊などできないが、そこにバッタが映っている。

ダダダダダダダダダ……!

俺がライフルを撃つと、連動して映像のバッタが爆発する。
コテコテの子供だましだ。

わああああああきゃああああああ…。

しかし、二足歩行機動兵器というインパクトが勝ったのか、
観衆のほとんどは、想像以上の熱狂に沸いていた。
…こんなんでいいのか、本当に。















〇地球・ネルガル本社・会長室

「…あれいいな。
 僕がやればよかったな…」

「…バ会長」
















〇地球・佐世保市内・雪谷食堂

「うおーーー!」

「なんかすげーな」

「勝てんじゃねぇかこれ!」
















〇地球・東京都・立川市・ミスマル邸

「わーーーー!
 アキト君すごーい!かっこいい!」

「…ほう。
 あれがエステバリス…。
 二足歩行のロボットとは、また古典的な」
















〇地球・佐世保市・雪谷食堂─テンカワアキト

俺は回鍋肉を中華鍋で炒めていた。
まだ様にはなっていないけど、辛うじて店に出すことを許されるレベルにはなった。
…これから、あと何年かかるかわからないけど…一人前のコックになりたい。
それが何処から来たのかわからないような俺を拾ってくれたサイゾウさんへの恩返し。
だけど…。
だけど…!

ウーーーー。

警報。
来た。
あいつらだ。
あいつらが…また…!

「あ、あ、あ、あああーーーーーーーーーっ!!」

俺は恐怖に支配されてしまった。
震えて、叫ぶことしかできなくて…情けないって思っても、やめられないんだ。

「ったく、またかお前は。
 二階で頭を冷やしてきやがれ」

「うあぁっ!うあああーーーー!」

俺は頭を抱えて二階への階段を目指した。
分かってる、あいつらがここを攻撃しないっていうのは分かっている。
あいつらの目的は連合軍だ。
だが流れ弾が飛んでこないと、だれが言い切れる?
俺はあいつらが憎いのに…アイちゃんの、みんなの命を奪ったあいつらを見ると…。
震えて逃げることしかできない、だって当たり前だろ?
銃やミサイルが自分に向けられて、どうして平気でいられる?
いつ自分に向かってくるのか分からないのに、なんでそれが想像できないんだよ。
兵士だって死んでいるのに、なんでみんなは他人事で居られるんだよ…。
おかしいだろ!!

「おーい!弱虫アキト!
 お前が戦ってるわけでもないのになに怯えてやがる!!」

「やめねぇかバカ」

「けどおやっさん、
 さっきのエステバリスのデモンストレーション見たらよぉ…」

下の階から、常連客が悪口を言っているのが聞こえる。
サイゾウさんがかばってくれてはいるが…。
…あいつの言っていることが、単なる悪口でないこともわかっている。
あいつは『ホシノアキト』と比べて、俺が弱虫だと言っているんだ。

この食堂に訪れた『ホシノユリ』という、とてもかわいい女の子。
その女の子と結婚している、俺に顔立ちがそっくりの男『ホシノアキト』。

初めてみた時は単なる芸能人としか思えなかった…。
だけど事もあろうに、一般企業でありながら木星トカゲと戦おうとしている。
軍ですらほとんど敵わないほど強いのに…。

そんな勇敢な『ホシノアキト』に対し、
空襲一つで怯える『テンカワアキト』。
そりゃ情けないと思うだろうよ…。
こんなに顔立ちが近いのにと…俺だって思うよ。

「落ち込むな、バカ」

サイゾウさんが店の事を一度置いて声をかけてくれた。
空襲が終わったんだろう。

「…サイゾウさん、俺は…」

「お前はお前だろ」

短く発したサイゾウさんの一言で、俺は何とか立ち直れた。
パイロット崩れと噂される俺を励ましてくれる…。
サイゾウさんに憧れる気持ちは膨らむばかりだ。
…俺はトラウマがあるだけなんだ。
パイロットじゃない…。
店に戻ると、メガネをかけたお団子頭の、中国人らしい女の子が居た。
…あれ?どこかで見かけたような気が…。

「サイゾウさん、ラーメンいっちょ」

「あいよ」

「それと後ろのテンカワさんを後で貸してもらえませんか」

「え?」

「あん?あの半人前以下になんの用事だよ」

俺は不意に呼ばれて間が抜けた返事をしてしまった。
…あんなかわいい子が、どうしたんだろう。

「少しお誘いしたい事がありまして」

「「「「おおおおお~~~~?」」」」

「テンカワにも春が来たかぁ?」

「バカ言え、こんな別嬪さんがあんな脱走パイロットに」

「でもよぉ、テンカワは在軍経験ないんだろぉ?」

「うるせぇ!だまってめしくえねぇのか!!」

…俺は好き勝手言っている常連さんたちに、ため息を吐いた。
女の子に誘われるなんてそんなにない事だし…。
だけど、あの子の見覚えがあるのは確かで…。
昼の部の営業が終わってから、俺は会いに行くことにした…。















〇地球・佐世保市・喫茶店『公爵』─テンカワアキト

近場の喫茶店に呼ばれて、席に着いた。
…俺は冷えたおしぼりをもてあそんで、気持ちを落ち着けるのに必死だった。
目の前の彼女は…まだ名乗っていない。
名乗るタイミングを見ているのか、俺が落ち着いてくれるのを待っているのか。
彼女は涼しい顔をしてクリームソーダを飲んでいる。
俺は話の内容によってはすぐに席を立ちたいので、何も頼んではいない。

「テンカワアキトさん、始めまして。
 私はこういう者です」

彼女は、名刺を差し出した。
そこにある名前は、さっき俺が考えていた人物と同じだった。
『ホシノユリ』…!

「ホシ…」

「しーっ」

ユリさんは俺の発言を止めた。
…それはそうか、彼女は有名人だ。
わざわざ国籍まで違いそうな変装をしている。
俺の言葉一つで周りの人は気づいてしまうだろう。
俺たちと少し離れた場所に陣取った、店の常連さんたちにもだ。
…昼休みは終わってると思うが、
野次馬しに来ているあの人達は何の仕事をしているんだろ?
だが彼女が会いにきた理由も、さすがに察してしまった。

「…なんの用なんすか」

「あなたをパイロットにスカウトに来たんです」

やっぱりか…。
だが…何を言ってるんだこの人は。
俺の様子を見て、パイロットにしようなんと思わないだろう。
…かわいい顔をして、素人を木星トカゲに突き出そうっていうのか。
そもそも俺は…戦うのも嫌で、兵隊はもっと嫌いだ。

「兵隊になれってことかよ…」

「…あなたは木星トカゲにトラウマがあるんでしょう?
 しかもIFSを付けているせいでパイロットくずれよばわり。
 火星ではIFSなんて一般的なのに」

「!」

ユリさんは俺が店の人にいくら説明しても信じてくれないことを、
信じてくれていたようだった。
だが、それとこれとは話が別だ。

「…そ、そうだよそれがどうしたんだよ」

「店員さん、アイスコーヒーひとつ」

ユリさんは、俺の質問には答えず、アイスコーヒーを注文した。
俺の前に置かれるアイスコーヒー。

「熱くならないで下さい。
 拒絶してもかまいませんが結論を急いでも自体は好転しません」

「…」

俺は冷静でないのが分かってて、
アイスコーヒーを一気に口に含んで飲み込む。
だが…想像以上に苦くてむせてしまった。

「げっほっ!けほぉっ!」

「アキトさん、落ち着いて」

「気やすく呼ぶな!」

俺はちょっとカッとなって怒鳴ってしまった。
木星トカゲと素人を戦わせるような人に、親しそうに呼んでほしくなかった。
とはいえ、彼女のリアクションが想定外すぎて固まってしまった。
…彼女の目が潤んでいた。
いや、怒鳴ってしまったのは悪かったけど、泣くなんて…。

「えっ、あっそのっ、怒鳴ってごめん」

「女の子を泣かすなバカタレ!」

ゴチン!


「いってぇ!?さ、サイゾウさん!?」

「あいつらが野次馬根性でついてくから気になってきてみりゃ、
 何情けないことをしてんだ。
 こんなかわいい子と、
 落ち着いて話す事もできねぇほど落ちぶれたか」

「…そんなんじゃねっす。
 ただ、図星ばっかこの子が言うから…」

まさかサイゾウさんまでついて来てしまうとは思わなかった。
心配をしてくれてるんだろうけど。
ユリさんは涙をぬぐって俺のほうを見た。

「…テンカワさんは悪くありません。
 その、夫によく似てて名前が同じなので、
 つい名前で呼んでしまったんです」

「なんだとぉー!?」

「そうだよなぁ…いるよなぁ…。
 あんなかわいい子でスタイルいいもんなぁ…」

サイゾウさんは野次馬連中を横目でにらんだ。
…幸い、彼らはユリさんの正体に気づいていないようだ。
サイゾウさんは名刺を差し出された。
だが断った。
…さすがサイゾウさんだ。店に居た時から気づいていたんだろう。

「お嬢ちゃん、こいつもまだ未成年だ。
 一応、スカウトするにしても俺も話を聞いてもいいだろう?」

「さ、サイゾウさん!」

「テンカワ、少しだまっとけ。
 この子はお前に損をさせる為に話をしに来たようには見えねぇ」

「な、なんでそんなことわかるんすか!?
 どんなこと言ったって、要は兵隊ですよ!?」

「お前は…ったく。
 本当に鈍い奴だな」

俺はサイゾウさんがあきれた顔をしているのをみて、
何か意味があることには気づけたが、その先の事が読めなかった。

「お嬢ちゃん、話を続けてくれ。
 どうもこいつは一人じゃ話を聞くのが苦手みたいだ」

「はい。
 …わが社は対人戦闘は避け、
 木星トカゲの攻撃にのみ専念することを目的とした警備会社です。
 連合軍の街の被害も小さくないので、撃ち漏らしを少なくするのが目的です」

「…兵隊じゃないのか」

…少しだけ信頼してもいいかとは思えた。
兵隊を嫌っているのは、場合によっては人殺しも平気でするからだ。
任務であれば、敵なら躊躇なく殺す。
そんな奴らを好きになれるわけはない。
…どんなに木星トカゲから俺達を守ってくれていてもだ。

「そうです。
 こちらではIFSを使用した人型機動兵器エステバリスが採用されています。
 しかしIFSを使用した機動兵器のパイロットはほぼ連合軍が独占…」

「…なるほどな。
 それなら合点が行くな」

「新規にIFSを打ちこんでくれる人を探すのは困難…。
 それに倫理観が欠如している人に来られるのは困ります。
 真面目に食堂で働いている人なら、助かります」

サイゾウさんは頷いた。
…つまり、火星では普通の俺は、そもそも希少な人材なんだな。
状況で価値が変わりすぎておかしい話ではあるが。
だが、どうにもそれだけじゃここまでわざわざ来ないと思うが。

「…それだけかよ」

「IFSの扱いに習熟しているだけでもかなり貴重なんです。
 それに別に研修期間でやめてもらっても構いませんよ。
 少なくともエステバリスライダーの操縦データさえ手に入れば、
 後々の人のために役立てることはできます」

「不自然だ」

町の食堂にIFSを付けている少年が居るってだけで、
あのレベルの有名人が直接スカウトに来るのもんか。
それにすぐやめてもいいなんて都合が良すぎるだろ。

「あなたが夫に似ている…というだけでは足りませんか?」

「説明になってないぞ!」

…正直、この発言は俺をいらだたせた。
ただでさえ、ホシノアキトという存在が目の上のたんこぶなのに、
それが理由でコックを辞めさせられて、パイロットにされてたまるか。

「顔立ちだけでなく…将来の夢も一緒なんです」

「!」

「…訳あって、今は戦うしかありませんけど」

「…芸能人をしていたのも、関係あるんすか」

「そうなんです」

俺は初めてこのホシノ夫婦を見かけた時を思い出した。
確かに将来町食堂を始めたいと言っていた。
…あれだけの技量があっても今始めない理由がわからなかったが、
何となくわかった気がした。

──この人たちは俺と同じなんだ…。

俺が怯えてコックに集中できていないように、
何か木星トカゲと戦争していることで、問題が起こっている。
確かに…避難生活におわれて将来の見通しが立たないような地域も多い。
仕事をしようにも、どうしようもない人も多い。
その理由は分からないにしても…戦争が終わらない限り、
なにをするにも不安が付きまとう。
…俺も分かっていたことじゃないか。

「テンカワさん。
 …出撃、しなくても構いません。
 トラウマが治るまで居てくれるだけでもいいです。
 絶対に理不尽な要求はしませんし、
 すべての行動に拒否権を付与します。
 …ですから」

「…テンカワ、受けろ」

「サイゾウさん!?」

「…そんな顔すんなよ。
 どのみちお前があと何か月かトラウマ抜け出せなかったら、
 首にするつもりだったんだ」

俺はショックを隠せなかった。
サイゾウさんのやさしさに甘えていた自覚もあった。
だけど首になるというのは想定していなかった…。
そういう所が、俺の甘さなんだとは思うけど…。

「お前がどんな目にあったかは知らん。
 分からん。
 けどな、自分のやりたい事をできないくらいに弱ることがあるなら、
 それから逃げたら何もやりとげられないんじゃねえか?」

「それは…」

俺はサイゾウさんに何も言い返せなかった。
もし俺が怯えるのをやめなかったら、
夢を…コックになるという夢を、木星トカゲに奪われてしまう。
俺がトラウマを振り払えていれば、奪われずに済んだものを。
サイゾウさんはパイロットになれと言っているんじゃない。
木星トカゲに立ち向かっていない俺を叱っているんだ…。

「それにな。
 別に明日やめて帰ってきても、
 俺もこのお嬢ちゃんも責めないぞ。
 少なくとも一日お前はお前なりに、
 自分の弱い部分に向かい合ったってことなんだからな」

「…俺、パイロットなんかになりたくないっす」

分かっている。
サイゾウさんはそんなことを言っていないんだ。
でも、言わなければいけないと思った。

「将来を決めろって話じゃねーだろう。
 このお嬢さんのダンナだってそうだ。
 あの感じだと昔はコックの修行をしていたようだし、
 今は芸能人で、これからパイロットだろ?
 色々やってるじゃねえか」

「あ、最近はこの仕事の資金集めにコスプレ喫茶で働いてましたよ」

「そんなこともしてたのか?
 そりゃ面白い奴だなぁ」

「ええ、とっても面白い人です」

俺はホシノアキトとの実力差ではなく、
その行動力と精神力の差に打ちのめされた。
ホシノアキトは俺と1つしか歳が離れていない。
にも関わらず…『将来コックになるため』という一つの目的のためだけに、
こんな遠回りで、複雑な事をたくさんやっている。
やりたくないようなこともたくさんやっているはずだ…。
俺はこれだけ恵まれた環境に居て、自分のトラウマという一つの問題だけで、
身動きが取れない状況になってしまっているというのに…。

「テンカワ、若いうちはいくら失敗してもいいんだ。
 俺の言う事が理不尽だと思うならそれから逃げたって良い。
 だが、いろんなことを理解し、失敗し、味わい、やり直し、試し…。
 それから戻ってきたっていいんだ。
 人生は料理とおんなじだ」

「…サイゾウさん」

「そんな顔するなっての。
 PMCに行っててもコックの修行はちゃんとつけてやるからな」

「そうですね。
 テンカワさんは、パートタイマーでもいいです。
 何日か遠出しなきゃいけない場合もありますけど、
 当面は一日三時間程度、訓練をする形で…」

「それなら仕込みと昼のピークはばっちりできそうだな。
 どうだ、テンカワ?」

泣きそうだ。
…俺は拒絶しか考えていなかったのに…二人は俺の事を考えてくれていた。
ユリさんはどこか俺をホシノアキトと重ねているように見える。
それでも、今は心地の悪い感じがしない。
最初は…木星トカゲに無理やり突き出して盾にされるかも、って思っていたのに。
なんだか心が凄く軽くなった。
それに、こんなに甘やかされた条件を出されても応じられないほどはガキじゃない。

…勇気を出して立ち上がるしかないだろ!テンカワアキト!

「…はい!
 俺、やってみますっ!」

「ふっ…。
 そういうわけだ。
 不束者だがよろしく頼むぜ、お嬢ちゃん」

「サイゾウさん、それ結婚申し込まれたときにいうやつっす」

「そうとは限らないんだよ、無教養め」

サイゾウさんは俺に軽いげんこつを落とした。
小突かれてなお、俺は笑ってしまった。

「ええ、こちらこそ…」

ユリさんが手を差し出した。
俺も固く握手をした。
彼女が微笑んでいる…。
どこか懐かしい、見慣れたような笑顔で…。

「アキトがパイロットになるぞー!」

「保険金かけとこーぜ」

「死なない程度にがんばれよぉー!」

「おーーーーまーーーーえーーーらーーなーー!」

バタバタと…野次馬根性を出していた常連さんたちは、職場に戻っていった。
…ちゃんとお代は置いてあるな。

…俺は戦えるのか、自分で問うても分からない。
またパニックになるかもしれない。
それでも…俺は木星トカゲに夢を奪われたくない。
俺にはこの夢しかない。
子供の頃に目指したコックしか…。
賭けるしかないだろ…この人との出会いに…!















〇地球・佐世保市・雪谷食堂─ホシノアキト

俺はイベントが終わり、
業者さんにエステバリス3台をトレーラー配送してもらえるように頼んで、
眼上さんとナオさんと共に佐世保に帰った。
大分夜遅くなってしまったな…。

「…あ、ユリちゃんからメールが来てる…。
 これは…。
 二人とも、先に帰っててくれますか?」

「ええ…どうしたの?」

「三人目のパイロットに、会いに行くんです」

…ついにこの時が来てしまったか。
俺は…自分に出会って、何を話すつもりなんだ?
何を話すべきなんだ…。

「じゃ、俺はさっそく社屋を守る事にするぜ。
 まだ引っ越しの荷物が届いてないからソファーで寝るけど良いか?」

「…なんで着の身着のままこっち来ちゃったんすか」

「はっはっはっは。
 まさか東京都から戻る時に忘れるとは思ってなかったからな。
 このくらいの気温なら風邪もひかねぇさ」

…ちょっと呆れてしまうが、
俺も社員用の寝袋とか仮眠室の布団とかも買っておくべきだったんだな。
そんなことを言いながら、明日は社屋の設備を整えようと話し合って解散し…。

今はこの雪谷食堂の前に立っている。
既に閉店の時間だが、灯りがまだ強い。
第二の故郷と言えるこの場所に…また俺は…。
…入るの迷ってるが、あまりためらっていると変装を見破られるんだよな。
ええい、ヤケだ!

「ユリちゃん、お待たせ」

「アキトさん。お疲れさま」

ユリちゃんの労いの言葉が、ぼんやり聞こえる。
…サイゾウさんが俺をじっと見ている。俺を…試しているのか。
そして『テンカワアキト』。
あいつは、俺を値踏みしている。
俺が何者であるのか、知ろうとしている。
…覚られるわけにはいかないが、姿をさらさずにはいられないだろう。
俺は帽子とサングラスを取った。

「初めまして、ホシノアキトです」

──俺は、自分がテンカワアキトではないと、自ら宣誓した。

二人は、俺の次の発言を待っている…何を伝えるべきだろう。
いや…まずはパイロットになってくれることに礼を言うべきか。
そうだな、俺はホントはパイロットなんかやる人種じゃなかったもんな。

「えー…テンカワ…君…。
 パイロットの件を、ひとまず受けてくれてありがとう…」

「…あんた、結構あがり症なんだな」

ぐっ。
こっちはそれどころじゃないのに、テンカワアキトめ…!
初対面なのにそこまで言うか。
俺は昔こんなに礼儀知らずだったのか…。

「…悪い、性分なんだ」

イズミさんからセリフを拝借して、何とか持ち直す。
サイゾウさんは、ふっと小さく笑った。

「まあ、不器用なところはお前と変わんねえな、テンカワ」

「…似たもの同士って感じします?」

「ああ」

…やっぱりサイゾウさんには御見通しだな。
とはいえ、俺はもう話す事がない。
…自分の事なんて分かりきっているしな。

「そういえばホシノ…さん…」

「ホシノでいい。
 年もそんなに変わらないし、対等でいい。
 俺もテンカワって呼ぶから」

…正直、自分に敬語を使うのも使われるのも嫌だ。
なんか気持ちが悪い。
どうも兄弟っていう感じもしないし…。
敬意もなければ上下関係もそれほど必要じゃないだろう。

「…じゃ、ホシノ。
 お前は…本当に、町食堂をやりたいのか?」

…何を聞いてるんだ?

「ああ、そうだけど。
 それがどうした?」

「いや…なんか似合わないなって」

…ちょっと話が飛んでる気がするが、言いたい事は分かった。
『芸能人で食べていけるなら、それでもいいのではないか』ということだ。
確かに生き延びるだけならそれでもいいが…。

「テンカワはパイロットが本当は嫌だって聞いた。
 それと同じと思ってくれ」

「本当は、ユリさんからそう聞いていた。
 …けど、あんたの口から聞きたかった」

…そうか、結局戦う時は俺がいっしょだからな。
ユリちゃんがどれだけ信頼できても、俺の口から聞かねば信頼できないわけか。

「…もう一つ、聞きたい。
 料理の修行は、両立できるのか?」

「ああ。
 …試してみるか?」

テンカワの不安は分かる。
だが…俺もサボっていたわけじゃない。
毎日家庭用のコンロで火力が足りないながらも練習は続けていた。
俺自身が大量に食事をとる都合上、練習を繰り返しても料理は無駄にならない。
それでもまだ勘は完全には取り戻せていない。
だが、この時期のテンカワアキトに負けるほどは悪くないと思う。
…久しぶりに、この店でやってみるか。

「サイゾウさん、厨房お借りして良いですか」

「かまわねぇよ。
 この間、心得があるのは見てるからな」

「ありがとうございます」

俺はテンカワからエプロンを借りて、厨房に立った。
…皮肉だな、ここからまたスタートラインに向かうとは。
だが…それでも!















〇地球・佐世保市・雪谷食堂─テンカワアキト

俺はホシノの動きの見事さに驚いた。
調理のレベルは俺と比べても一段以上は上だ。

いや、それもそうだが、なにより雪谷食堂の食材の位置をすぐ覚えている。
無駄が少ない、いい動きだ。

「…なるほど、言うだけの事はあるわな」

「ええ、自分で練習して毎日大量に食べてますから」

「お待たせしました」

…なるほど、大食いだと食費がかかるが、反面練習がしやすいのか。
そんなことを考えていると、俺とサイゾウさんの前に、半チャーハンが置かれた。
俺はさっそく頬張って噛みしめる。

…油の量が正確で、ぱらっと仕上がって全体のバランスが良く、うまいチャーハンだ…。
機械調理や素人だとどうしても油が多くなりがちで胃にもたれるが、
これくらいなら万人受けする油の量だ。
それでいて材料にうまく均等にいきわたっている…。
焼き目も、いい。

「…うまい」

「…おい、ホシノ、ちょっとこっちこい」

「はい?」

サイゾウさんは、ホシノを厨房に連れて、火加減を見せた。

「お前、元々経験があるし、調理の修行はよくできてるな。
 だが家庭用のコンロで練習してるだろ?
 鍋の振りが小さすぎだ。もっと火が通せるぞ」

「…うっす」

「ま、十年はええ。
 が、コックとして一人前だとは思うぜ」

「どうもっす」

…サイゾウさん、指導までしてくれてる。
ホシノも、妙に従っているな。

「ふっ。
 おいアキト。
 お前、ほんとーーーーに兄弟いないのかよ。
 返事と態度までお前にそっくりじゃねぇか」

「いえ、だからいませんって」

…ああ、確かにああいう返事するな。
でも…似てるところ抜きにしても、なんだかよく分かんないなこのホシノアキトって人は。
本当に芸能人なのか?腰が低いし料理もするし…。
いや、不本意にやってるそうだからそれはそうだけど…。

「厨房はやっぱいいですね」

「お前、ずいぶん楽しそうだったな」

「…ええ、毎日でもここで料理したいっす」

…ホシノアキトの夢、町食堂を始める夢。
俺と同じ夢…。
俺を引き込むための口実かと最初は思ったが、そうじゃない。
ホシノは…本当に料理をしたいんだ…。

「ま、その調子ならすぐにでも店が出せるだろうぜ。
 研鑽、忘れんなよ」

「はいっ!」

「…ホシノ」

「ん?」

「…世話になる。
 よろしく」

「…ああ!」

俺達は固く握手した。
俺は今度は自分から手を差し出した。
ヘンな話だが…地球に来てから初めて『仲間』が出来た気がした。
姿かたちも夢も、鏡写しのように俺そっくりな、仲間。
サイゾウさんが言った兄弟という感じは、なぜかしなかったが。
一緒に、同じ夢に向かっていけるような気がして…。
そうだ、そのためにも…。

──木星トカゲに一矢報いて…俺はコックになるんだ!




























〇作者あとがき

どうもこんばんわ。
『お話はリピートと比較が重要』が座右の銘の武説草です。

二組のカップル、二人のアキト、離職と就職、就職と採用…。
ああっ、ちょっとは大人になったつもりでも~?
悩んでる内容やレベルが違っても~♪
やってることはあんまり変わらない~それが人間~♪
3つすすんでも2つ下がる~って♪
かしらかしらご存知かしら~♪

そういえば5年ほど前にパトレイバーを全部見て、
それから実写映画のほうも見たんですが、
実写のほうは「特車二課」じゃなくて「庶務二課(ショムニ)」っぽくなってますね。
今回のエステバリスお披露目イベントの元ネタである、
実物大パトレイバーのデッキアップイベント、迫力あって好きです。
スケール感が分かりやすくてワクワクしました。
しかし、お台場ガンダムもそうなんですが高層ビルが増えた時代になると、
意外とちっちゃく見えるというのもご愛敬ですね。
あれを見ると8メートル級ロボをトレーラー運用というのも、
あながちできなくないんだなーなどと(重量には目をつぶっていますが)。
そんなわけで次回へ~~~ッ!
















〇代理人様への返信

>9話分
>テンカワアキトくん不幸www
>しかも次回、不幸が更にやってくる模様w
基本的にテンカワ君は不幸体質がよーく似合いますねw
迷惑な人間に付きまとわれるタイプの主人公力にあふれていますね、彼は。

>しかし中の人?はどうなるんだろうなあ。
>ユリの方にもいるんだろうし。
これは説明が長くなってしまっているんで微妙に分かりづらいんですが、
中の人などいない!!です。
テンカワアキトとしての記憶を封印したまま、
ホシノアキトとしての生まれ直して人生を歩んでいるので、人格は一つです。
『人格』が変わっているのではなく『性格』が変わっている感じです。
身近に言えば仕事している時の性格と、
プライベートの時の性格が異なっているように見えるようなものです。
仕事の事を忘れてプライベートを過ごしたり、逆もしかりで、
本人が意図しないままモードが切り替わるような状態だった、
みたいな設定になっております。(素直に二重人格にすればよかったかも)

>10話分
>すいません、前回トップだけ更新して投稿の方を更新してませんでした(爆)。
いえ、いつもお忙しい中掲載ありがとうございます。
こちらこそ毎度量が増えがちですみません。
11話もまた最長記録を更新したので…今度は素直に分けようっと。

>それはさておきいちゃいちゃ回ですねー。
>男女じゃなくて女の子同士、男同士のですがw
こういうシーンが好きで書いてたらほとんど一話まるまるそういう回になっちゃいましたw
伏線というか前置きな感じのシーンが多くなりがちでしたが、
後悔はありませぬ。

>しかしこいつら(アキトとユリ)大丈夫か?
>ここまで素朴だと、戦争とか抜きにしても一般社会でやってくには危なっかしいことこの上ないw
これについては2つ目の「D」(本編で話す機会がないので出しちゃいますが)、
『detune』
が良く効いてます。
意味1.パワーダウン、グレードダウン、わざと性能を落とす
こちらは後に明らかになるので説明は割愛します。

意味2.電子音楽で、音高を微妙にずらした音を重ねて響きにふくらみを持たせること
純粋な別の人生をぶつけて精神的なパワーダウンをしつつ、
感受性のふくらみを大きく持たせたいのでこういう設定を考えてみました。

…とはいえ、本編や時ナデ、他二次創作に比べると、
欲望が薄すぎるわ、純粋すぎるわでちょっと大人しすぎるかな、とは思いますが、
今後のメンバー加入やらなんやらで揺さぶられざるを得なくなってきます。
どうぞお楽しみに~。













~次回予告~

会社が動けば社員も動く。
社員が動けばお金も動く。
経済を回す車輪に、小銭が回る回る。
人が集まり機材が集まり場所も確保され、ついに始動したPMCマルス!
しかし出来たばかりのPMCマルス。
色々と問題があるようでして…?
PMCマルス、『社員をほぼ300人計画』の発動を、ああ君は見たか!?

「そんなに雇うわけないでしょ…バカ」

dアニメで90年代アニメをちょこちょこ流しながら書いている作者が送る、
『あ~~~。ナデシコでゲキガンガーにこだわるスタッフの気持ちってこんな感じなのかもな~』
と勝手に文化直撃世代の自分に影響を与えたものを創作物にねじ込む気持ちを理解したまま描く、
ナデシコ二次創作、

『機動戦艦ナデシコD』
第十二話:dilatant-膨張する-
をみんなで見よう!




















感想代理人プロフィール

戻る 





代理人の感想 
パトレイバーかよwww
と笑ってたらやっぱりパトレイバーでした。
まあ実写パトのイベントであんな危険なスタントはやってなかったと思いますけどw

まあホシノアキトもテンカワアキトも見てて尻を蹴飛ばしたくなると言うか、「もうちょっとどうにかせえ」感強いですなあw
その中で超マイペースなナオさんが割とマジで癒しw

>かしらかしらご存知かしら~♪
懐かしいなおいw


>中の人などいない!
なるほど、二重人格と言うよりはペルソナ、躁鬱みたいなものか?
(二重人格というのは、互いの人格が互いを別人と認識しているのが条件)
とはいえさすがにあのレベルは珍しいなあw
何か適切な名称があるのかもですけど。


※この感想フォームは感想掲示板への直通投稿フォームです。メールフォームではありませんのでご注意下さい。 

おなまえ
Eメール
作者名
作品名(話数)  
コメント
URL